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夏に恋をした私の話。

作者: 佐藤

彼はナツといいました。私の初恋の相手です。

これはひと夏と数ヶ月の私の恋のお話です。


それは去年のある夏の朝でした。

身を焦がす太陽だとか、耳を裂くような蝉時雨だとか、そんなありきたりなものに溢れた夏の朝でした。

目覚めたばかりの私の部屋に彼は居ました。名前をナツというそうです。

初めての友達でした。


彼が私の部屋に来たその日から、私の時間は流れ始めました。

彼が見せてくれるもの。向日葵とか海とか。それらはとても綺麗で、とても鮮やかでした。


それから二週間ほど経ち、彼が部屋に来なくなりました。


秋を迎えたある日、白衣の先生が私に告げます。


「ながく昏睡状態だった貴女が目覚めたのは奇跡です。しかしながら、残念なことに、貴女の体は弱いのです。眠っていないと生命を維持できないほどに。おそらくあと数ヶ月で死んでしまうでしょう。」


それから時は流れ、春になりました。

私は今、窓からかつてのひまわり畑と海を眺めながらこの日記を書いています。


もうすぐ私の命は尽きます。

その前に。いなくなってしまったナツくんに伝えたいことがあります。


私はあなたの事が好きだった。


‥撤回。ナツくんなんて、いなかった。

日記なのです。正直に書いてしまいましょう。

私はただ、誰もいない病室の悲しさを、ありもしない人を想って誤魔化していただけ。

ナツくんなんて、夏に人格をこじつけたただの妄想。


死にかけの私は今、過ぎてしまった夏に想います。

「私は生きていたかった。もう1度、夏を迎えてみたかった。私は今、あなたを強く求めている。」


何かを強く求める激しい想い。

この感情は‥『恋』

‥でしたっけ。


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