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無限の少女と魔界の錬金術師  作者: 安藤源龍
1.魔族にズッキュン
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祭りだワッショイ・3


 


 勝利の末、キョウはヘンリーから、シンディ――ひいてはザラの居場所を聞き出した。

 場所はエメラルド・カレッジ・タウンの路地裏から更に奥の森にあるという廃墟らしい。

「ケッ。そんな近くなら、虱潰しに捜してりゃ見つかったじゃねえか」

「監禁する側も拠点にできる場所じゃないと、だもんねぇ」

 ジークはさっそく仲間たちを召集し、控室でそのまま作戦会議を始めた。ネロとマーニが憎々しい顔で、町の地図を見つめている。

「とはいえ、やっぱりヘンリーから聞いたって証拠がないと殺すって話だったみたいだよ」

 サイコ女め、とネロが毒づく。

 既にジークとネロは今にでも飛び出して行かんばかりに勇み立っている。

 キョウは先ほどの試合で疲弊し、苦笑を浮かべて手をひらひらと振っていた。

「みんな!私は……」

 一足遅れてグレンが駆け込んでくる。救護班として今日一日中あちこち駆け回っているグレンにも、疲労の色が伺える。彼女を見かねて、ジークは努めて真摯に言葉を選んだ。

「キョウを診てやってくれ。それに、シンディ相手じゃ、お前も本気を出せないだろう」

「ごめん……」

 歯痒そうに肩を落とすグレンに、ジークは不敵に微笑んでみせた。

「適材適所だ。行くぞ、バカ弟子1号2号」

「はーい」

「ええっ!?おれもぉ!?」

 男(?)四人一組。いつだって囚われの姫を救いに行く勇者は、仲間を連れている。

 ザラ救出作戦、開始。




.

.

.




 校下の町は、坂の上の子供たちの城と同じように浮かれていた。

 誰もが、水面下で少女が廃屋で人質に取られているなんて考えもしていないだろう。隣人と挨拶を交わし、果物を売り、愛犬を連れ、新聞を買っていた。

 緊張感の無い人間の笑顔に苛立ちを覚えるほど、ジークは怒っていた。毎回トラブルを運んでくるザラにも、ザラに因縁をつけるシンディにも、いつも一歩遅れる自分にも。

「センパイ、怖い顔しないの」

「……生まれつきだ」

「地図だと、この辺りやろか」

「ああ。見覚えあるな……そうか、あの偏屈ジジイの家だったとこか」

「あ~…………」

 ネロ曰く元は騎士団の剣術指南役だったという老人の屋敷は、確かめるべくもなく、既にゴールが近いことを知らせていた。

「…………あかんやん…………」

「…………アレ、行くの?ボク自信ないよ」

「……オゲレツだな……」

「うーむ……」

 裏路地を幾つか過ぎて、町はずれの鬱蒼とした森林に入るころ、まるで手招きをするように桃色の霧がジークたちの行く先に立ち込めていた。

「これほんまに大丈夫なやつです?もうお腹いっぱいやねんけど……」

「ハーゲンティの御守(アンチチャーム)貰ったろ……」

 無意識に鼻と口を塞ぎながら、ジークたちは草木をかき分けて進んでいく。

「ネロセンパイの炎で全部吹き飛ばせないの~?」

「いっそコペルニクスごとぶっ飛ばしてみるか……」

「ゴメンナサイ。めっちゃ睨まれてるから。ボクが軽率でした」

 暫くして、更に濃くなった桃色の瘴気に包まれた、錆色の楼閣が姿を現した。

「マーニ」

「なに?」

 歩みを進めながら、ジークは弟子に耳打ちする。シンディへの対策は十分に整えたが、今回の魔力の跳ね上がり方を見ると、他にも奥の手を隠している可能性がある。せめて出来うる覚悟はしておこうと、ジークは、同じ錬金術師であるマーニにしか頼れない“ある秘策”を打ち明けた。

「……!」

 マーニが正気を疑うような視線を投げかける。

「……信じらんないよ。魔族ってもっと……エゴの塊だと思ってた」

 ジークは鼻を鳴らして返事にすると、再び先頭に立った。古びた門が、歓迎するようにひとりでに開いた。

 乾いた風が肌を撫ぜる。瘴気はふわりと上昇し、また広がる。まるで食虫植物のように、美しく大口を開けて、ジークたちを待ち構えている。

「それで……作戦とか、ありますのん?」

 ジークとネロが目くばせする。そんなの決まっているだろう。

「真ッ正面からブッ込む!!」

 性別不詳の錬金術師と馴手の龍人の親友二人は、同時にため息を吐いた。






.

.

.

.

・以下、オマケ。ゲバラのプロフィールと魔法について。


【ヘンリー・ゲバラ】


性別…男

年齢…18歳

身長…174cm

種族…ヒューマー

誕生日…6/6

家族構成…父、母、妹

特技…特に無し(むしろ何をやっても平均以上にも以下にもならない)

好きなもの…勝負ごと、強い人、高いところ、ホラー

嫌いなもの…退屈、ルール

所属…封印科二年

 学園最強魔導士の一角。見た目はどこにでも居そうな好青年風だが、いつもニヤニヤ気色悪い薄ら笑いを浮かべている。同窓会には来なかったのにニュースで現在の姿を知ってしまうタイプ。嫌味を言えば言うほど好感度が上がってしまうので扱いには気を付けよう。

 長らく、熱中できるものの無い無味乾燥な人生を送ってきた。両親に勧められるままヘルメスに入学し、百虫の卵に見初められると、次第に本性を露わにし、まさに今楽しい盛りである。彼は赤ちゃんなんだ、許してやってくれ。勝負事以外では、あまり害はないどころか、優しくて大人しい、森のくまさんのような人物。

 某5のつく御曹司アイドルとフルーツゾンビのフィギュアが主従のように並んでいるのを見て思いついたキャラクター。清楚な見た目とキモい能力で最強ってギャップアリアリでいいじゃないですか。あとはるろうにの実写の人のイメージもあります。

 ちなみにメインで仲間パーティーに加わることは今後ありません。


・得意魔法…【百虫の卵】

 レア度、危険度ともにMAXのマジックアイテム。

 一度に数種類、数十~数百体の魔法蟲(サイズは卵と同じで、ラグビーボールよりやや大きいくらい)を生み出す。

 生み出される虫にもそれぞれ特徴があり、種類によって違う行動を取る。魔力を分散させることで単純化・量産、集中させることで巨大化や複雑化が可能。虫ならではの生態を持ち、毒針や粘液、鱗粉、噛みつき、熱殺等厄介な特技が揃っている。中には時間をかけて進化させることで強化と量産を可能にする種類もいるが、コスパが悪いのでヘンリーはあまり使いたがらないようだ。一体ずつの耐久力はそれこそ虫レベルだが、何しろデカい・多い。苦手な人は対峙するだけでもSAN値減るんじゃなかろうか。しかもしっかり体液も出る。女の子口説くときは蝶々出しとけ。たまにカブトムシを出してその辺の木で樹液吸ってるのを見て和んでいるらしい。

 ヘンリーの魔力最大値が平均的なのが唯一の救いか。


.


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