第四の剣・斧槌剣・3
──アオーン、アオーン。
薄暗くなった空の下に、狼の遠吠えが木霊し続ける。
何かに急きたてられるように、何かを祝福するように、絶え間なく互いの声を確かめ合っている。
私はヒエンに続いて、ギルドハウスの外へと足を踏み出した。
そこには、町のいたるところで満月に向かって吠える無数の狼たちの群れと、それに怯える住民の姿があった。
「何これ、どういうこと!?」
「襲い掛かってはこないようだが……」
「ていうか、ちらほら狼じゃない動物も混じってない?」
てっきり狼の群れの襲撃かと思って周囲を見渡していたけど、雄たけびをあげる獣たちの中には、狼以外にも獅子だの虎だの馬だのから、どこかから逃げ出してきたかのような鹿や豚、羊、果ては兎やトカゲといった、サイズを問わず様々な動物たちが顔を覗かせている。
更に空を見上げれば鷹や鳶が、水辺には亀や鰐までが集まって、最早ホワイトサロンの町並みはちょっとしたサファリパークと化していた。
そして、動物たちは皆一様に、一心不乱に空を仰ぎ、咆哮をあげている。
暴れることもなく、人や家屋を襲うでもなく。
統率さえ取れたようにも見える光景に、私は違和感を覚えた。
何かが──変だ。
それを裏付けるように、空が薄闇に包まれていく。
星々さえもまだ輝くことを遠慮している雲間に、苺みたいに真っ赤な満月が、支配者のように君臨していた。
「この気配……あの獣たちは皆、人間だ」
「どういうこと……!?」
ヒエンの呟きに、後から私たちに続いたジークが閃く。
「……人狼だ!」
「えっ、あれ全員!?」
「状況から判断するにそれしか無いだろう。でなければ、とんだ魔導テロだ」
「これだけの人数を変化させて、尚且つぼくとジークくんを以てして魔力の残滓も感知できないとなるとね。」
人外だけが嗅ぎ分けられる特有のものだろうか。
ついでにそこにヘルメスさんも加わって、ジークとヒエンの発言にうんうんと頷いてみせてくれたので、どうやら彼らの見解通りの事態になっているようだ。
紅い満月のもと、人狼たちが一斉に集まって、自我を失っている。
ホワイトサロンの町の人々が怯えた様子で、変化した動物たちと距離を取っているのは──彼らが直前まで人間の姿であったところを目撃していたからなのかもしれない。
そして、獣に変化した人狼たちもまた、我を失ったとしても、人間としての理性を必死に保とうとしている。
『レディーーーーーッ!!!!』
「エルヴィス、しっかりして!アタシはここよ!」
そんな中で、聞き覚えのあるカップルの声が聞こえて来た。 店の影でひと際大きな単眼の狼を必死に宥めるスプライト族の女性。
まさしく、変化したエルヴィスと、シンディの二人だった。ていうか、明らかに他と遠吠え違いすぎるだろ。ひと癖ありすぎる。
そういえば、卒業してからこっちのほうで仕事したりもしてるとか言ってたような。
私は慌てて、この異様な光景のなかで唯一馴染みのある友人のもとへと駆け寄った。ジークに止められたような気がしたけど、今はそんな場合じゃない。
「シンディ、どうしたの!?」
「ザラ……!どうしたも何も、エルヴィスの人狼症が暴走してるのよ!アタシの声も届かないみたいで……!」
「他の人も、同じ?」
「そうよォ!もぉ、何がどうなってんのよォ……アタシを見てったら、ダーリン……!!」
あのエルヴィスが、シンディの制止も聞かず、血走った瞳で一心不乱に吠えている。今にも駈け出して、いたいけな羊なんかを食べてしまいそうな、恐ろしい迫力さえあった。
「ほ、吠えてるだけなら、問題無いんじゃ……?」
「いや……そうでもなさそうだ」
雲で月が隠れた一瞬、ヒエンの警戒が鋭くなった。
次に紅い月光がホワイトサロンに降り注いだ時、町に集った人狼たちは、既に獣として覚醒していた。
「エルヴィス……」
『グゥオアアアアアッッ!!』
牙を剥いたエルヴィスが──猛然と、シンディに襲い掛かった。
突進でシンディの小さな体を押し倒すと、咄嗟に自身を守ろうと掲げたシンディの腕に、躊躇いもなく嚙み付いた。
「シンディ!」
「平気……!これくらい……!」
シンディは自分の腕に食らいつくエルヴィスを抱き締め、頭を撫でながら、必死に彼の名前を呼んで宥めようとしていた。
彼女の薄いブラウスに、真っ赤な血が滲んでいく。
「大丈夫、大丈夫よ……」
狂気の色を宿したエルヴィスの瞳の中には、あの紅い月が映っている。
──正気じゃない。誰が、どう見たって。
シンディが冷や汗を流すたび、狼の牙はより深く、スプライト族の細腕を穿つ。
「……ッごめんね!」
私は杖を取り出し、いつかの幻魔戦のように、エルヴィスに向かって電撃を放った。
このままじゃ危険だと思ったからだ。エルヴィスだって、こんなことやりたくてやってる訳ないに決まってる。
でも、本物の狼に変化した彼を今すぐシンディから引っぺがして追い払えるほどの腕力も技術も、私にはないから。
せめて少しでも痛まない、怪我しない程度に痺れてくれればそれでいい。
……なんて考えは、甘かった。
『グワゥッ!!』
エルヴィスは素早く翻って私の魔法を避けた。その口元からは、シンディの血が滴り落ちている。
あの時とは違って、危機を判断する力は残っているんだ。
それなのに。
どういうことだろう。エルヴィスがシンディを襲う理由なんて、無い筈なのに。
とにかく、今はシンディが心配だった。
腕を抑えるシンディを抱き起こし、震える彼女の体を支えた。
「シンディ、大丈夫!?」
「ええ……」
シンディの肌にくっきりと残された獣の歯型から、とめどなく血が溢れてくる。
私は持っていたハンカチを破いて、シンディの腕にきつく巻き付けた。
その間にも、エルヴィスは低く唸り声を上げ、酷く憤ったように私たちを威嚇していた。
「斬るか?」
「ヒエン、だめ……!」
刀を携えたヒエンが間に立ちはだかり、エルヴィスと間合いを計ろうとする。
「エルヴィス……負けないで……」
痛みに耐えながら、シンディが絞り出すように訴えた。
それが届いたのかもしれない。
エルヴィスの血走った瞳に、寸の間、光が戻ったように見えた。
何かを振り払うように、エルヴィスは大きく身震いすると、再び空へ向かって吠えた。
「待って!!」
そして、そのままシンディを振り返ることなく、町並みへ走り去って行ってしまった。
エルヴィスの後姿を視線で追ううちに、気付いた。
こうなっているのが、私たちだけではないことに。
ほどなく、あちこちから、同じようにして、変化した動物たちに襲われている人々の叫び声が響き渡った。
その中でも、ひと際鋭く、耳に届くものがあった。
「バーリン!正気を保ちなさい!」
『グア、ガアアアアアァァァ──────ッ!!!!』
空気がびりびりと振動するほどの、地を裂くような咆哮。
人間や動物、まして魔物の声でもない。
生まれて初めて味わった、今まで聞いたこともないような音だった。
獣と呼ぶには余りにも荒々しい存在は、私の上空で翼を広げ、私を見下ろしていた。
黒鉄のような鱗に覆われた、黒光りする体表。鋭い咢と角。少しでも触れることさえ恐ろしい鈎爪。そして、丸太のように太く長い尾。
──竜だ。
それも、巨大なドラゴンだ。固く分厚い鈍色の体表から、鉄竜とでも呼ぶべきだろうか。
モビーディックの町を訪れる際に背に乗ったワイバーンくんたちと比べると、彼らがいかに可愛らしく、人間の為に飼いならされた魔物モドキだったのかが分かる。
神話や伝承に描かれる、正真正銘の強大な力の象徴。
感情を抱く間もなく、ただただ圧倒される。
──あれも、人狼?まさか。
「ザラ!!」
「ザラくん!!」
シンディ達を治療していた筈のジークとヒエンに名前を呼ばれて、初めて自分が呆気に取られていることに気付いた。
しかし、もう遅かった。
私の身体はドラゴンの尾に巻き取られて、見上げていた筈の空へと放り出されていた。
天高く持ち上げられた私は、悲鳴すら忘れて、絶句した。
浮いてる。
足場が、無い。
ジークとヒエンが私の名前を叫んだ理由、こういうことだったのね。
ていうか、足下に町がある。へー、こんな風になってたんだー、綺麗に門が並んでるのねー。巨大化したグリムヴェルトもこんな気持ちだったのかしらー。あいつはあれはあれで地に足が着いてたのね、なんつって。
私は祈りを込めて、尻尾の向こう側にあるドラゴンの顔を覗き込んだ。
流石ドラゴン、顔ひとつとっても瓦礫くらいの圧がある。瞳の大きさだけでも、片方ずつボールくらいの大きさがありそうだ。
一応、念のため。万が一にも、通じるかもしれないことを信じて。
私は、ドラゴンに問いかけてみた。
「あ、あ、あの、これは、何かの間違いでは……」
何だって突然、私をこんな所まで誘拐することがあるんですか。アンリミテッドだから?いつもの?魔力が一番美味しそうとかそういう理由?
割と思い当たる節があるだけに、向こうの言い分にも納得するつもりはあったのだけれど。
『グルルルル……フシュウウウヴルルル……!!』
「全然話通じそうにない!!」
返って来たのが雷か自動車のエンジンくらい低い唸り声だったので、私はドラゴンとの対話を早々に諦めさせられることになった。
『アン……リミテッド……!!』
あ、やっぱり。
ドラゴンって人語介するんだろうか。それともやっぱり、元は人間なんだろうか。ドラゴンに変身する人狼症なんて、そんなのアリ?
そんな私の思考を置き去りにするように、ドラゴンは翼をはためかせて、ひと際高く上昇した。
更に地面が遠のいていく。
「ひぎゃああああぁぁぁ──────っ!?!?」
──と思ったら!!
ドラゴンは体を捻り、今度は一直線に急降下し始めた。
嘘でしょ。
お腹の底から頭のてっぺんまで、ひっくり返るような衝撃が突き抜ける。
私を尾に抱えたドラゴンは速度を維持したまま、その鋭角な角で──地面を思いっきりにぶち破った。ひと息に跳び上がったのは、この為の助走だったとでもいうかのように。
砂糖菓子でも崩すように、ドラゴンの強力な頭突きで、ホワイトサロンの地面を深く潜って、次々と地層を破壊していく。
私はというと、土塊や瓦礫の破片にぶつかりそうになりながら、それでも何故か、ドラゴンの胴体の影に隠れて、何とかやり過ごせていた。
「どどどっ、どこまで下る気ですかぁっ!?」
『グゥオルルルルルッ、グガァ────ッッッ!!!!』
無駄だと分かりつつも、問い詰められずにはいられなかった。
私は鉄の竜と共に、満月の光の届かない、地下の世界へと迷い込むことになってしまった。
/
「ザラが攫われた……!」
「あれは、ドラゴン……なのか……!?」
──ホワイトサロンの町に突如として現れた竜、そしてその竜が穿った巨大な穴に向かって、ジークとヒエンが息を呑んでいると。
「──彼はバーリン。私と同じ七魔将の一人よ」
そんな彼等の様子を知ってか知らずか、謎の声が迫って来ていた。
“七魔将”の名を口にした女は、戦闘装束に身を包んだ、ダークエルフの魔導士だった。
ジークはヒエンと共に警戒体勢で、大仰なダークエルフの女の声に振り返る。
「あんたは?」
「私は七魔将、ミリアーデ・アグナラグント。彼とは今日のバディってところ」
艶やかな黒髪をわざとらしく掻き上げたミリアーデと名乗る変人の登場に、ルナティックの面々は思わず気構えた。
「ザラを何処に連れて行くつもりだ」
「……分からないわ」
「はぁ?何だよ、それ」
悔し気に爪を噛むミリアーデを批難するように、アルスが声をあげた。
今のところ明らかになっているのは、あのドラゴンが七魔将であること、そして突然暴れてザラを誘拐し、地下へと逃げた、という事実だけだ。
ジークやアルス達にとっても、訳の分からないことだらけなのに、唯一何かを知っていそうなミリアーデは、しかし、問い詰められていることに対して突然ヒステリックな態度をとって見せた。
「バーリン……彼は、ドラゴンに変身する人狼なの。彼も今夜の狂月に中てられて、暴走しているのよ。いつもはこんなことしない!」
「じゃあ、さっきのドラゴンが勝手にやってるってことか?」
「ええ、そうよ。彼の目的が何なのかも、その理由も、私には分からないのよ!ええ、どうせ私には分からないわ!相棒が正気を失うなんて誰が予想出来たっていうのよ!?こんなことなら、占い師に聞いておくべきだったわ。相棒の体調の変化とかね!」
かなり強めの語調で、身振り手振りも交えながら、ミリアーデハは大袈裟に嘆きを表現していた。
あの紅い月が、本来、今宵、七曜の剣の継承権を巡って戦う筈の戦士である七魔将でさえも狂わせてしまった。
そして、竜に変化する人狼の存在。このことは、ジーク達にも衝撃を与えたが、それ以前に──
「何でこの人こんな芝居がかっちょるん?」
「七魔将、アブナいやつしか居ないからな……」
「やっぱ条件がサイコであることなんだろうな」
ヤイバとオリヴィエは、アルスのひとつ後ろで、声を潜めながらミリアーデの様子を揶揄していた。
「バーリン、どうして私を困らせるのよ!だから彼を連れてくるべきじゃないって言ったのに!」
「怖い怖い」
「情緒強めやな……」
そしてそれを受けても尚、どころか、輪をかけてミリアーデは烈しく感情を露わにするのだった。
「こいつに話を聞いても仕方ない。ザラとあのドラゴンを追おう」
これ以上話し合うことは無駄だと判断したジークは、ミリアーデを無視し、改めて仲間達を窺った。
「そうは言うがのォ、ここにそのまま飛び込めっちゅうんか?下であのドラゴンが口開けて待っちょるかもしれんぞ」
ヤイバの懸念も最もで、ドラゴンが地面を破壊して下って行った大穴は、光の無い不気味なトンネルと化していた。
それも、力技で空けた道だ。下手に刺激をすれば、前も後ろも塞がってしまう可能性がある。そもそもが、七魔将の罠かもしれない。
「ヘルメス女史のカエルの魔法は……」
「「「「絶対ヤダ。」」」」
ヒエンの提案はすげなく却下され、ヘルメスはやや不服そうにしていたが、これに異を唱える者は居なかった。発案者のヒエンですら、即、考えを改めるほどだった。
ということで、残されたジーク達ルナティックのメンバーは、ホワイトサロンの地下──恐らくはドワーフ達の地下王国とその遺産が眠る場所へ向かう策を講じることになった。
周囲では人狼達が暴れ始めていることもあり、あまり猶予は無い。
ジーク達がやれ誰か飛行魔法を持っていないか、軽量化はどうだ、ジェット気流はどうだと論じているところへ、不意に、一頭の狼が現れた。
「何だ、この……狼?」
幾つもの虹色の角と、白銀の毛並み、第三の眼を持った、奇妙な四足歩行の獣。
魔物やキメラとも思える風貌に一同は再び警戒したが、その狼のような何かは、ジークとアルスに懐くように頭を寄せると、体を撫でようとする二人の手からするりと逃れた。
そして、ドラゴンの穴とは別の方向へ、軽やかな足取りで飛び出した。その場で立ち止まり、ジーク達を振り返る姿は、まるで道案内を買って出る忠犬を思わせた。
この場でただ一頭、正気を保つ、狼に似た獣。元が人間かどうかも不明だが、明確な意志を持ち、ジーク達を待っている。
「ついて来いって言ってるみたいだな」
「行くぞ!」
ルナティックの面々が歩み始めると、やはり、獣は先導するようにどんどんと先へ駆けた。
時折に後ろを振り返っては、ジーク達が付いて来ていることを確認を素振りを見せていることからも、やはり、その冷静さが垣間見える。
獣が目指しているのは、町の外の丘から繋がる、地下通路への入口だった。
恐らく、この先がドラゴンの行き先へと繋がっているのだろう。
そこで、ジーク達は意外な人物との再会を果たした。
「ジークウェザー!」
「フェイ……!?」
紅い月明かりの中に、もうひとつ、己の意思を強固に保っている狼が居た。
ジークの友人でもある魔族のフェイユゥが、獣の目的地である丘の麓で、この狂った夜空を仰いでいた。
狼のような獣もフェイの隣まで来ると、後のことは自分達でどうにかしろと言わんばかりに静かに佇むばかりだった。彼の案内もここまでだということだろう。
ジークは丘の下に設けられた旧坑道への入口で、フェイと手早く情報を交わした。
「何故こんな事になっているのか、貴方なら何か知らないか?」
フェイユゥ──マルコシアスは、狼の魔族だ。
人狼の特効薬を製造するべくジークの元を訪れたという彼なら、きっと何か手掛かりをくれるかもしれないという期待から来るものだった。
「分からないが……恐らく人狼達は、月の力を辿って集まっていたのだろう」
フェイもまた、ホワイトサロンでの出来事を把握していたようだ。もしかしたら、彼もこの獣に案内されたのか、あるいは彼が獣にジーク達をここまで案内するよう命じたのかもしれない。
「月の力……七曜の剣か?」
その言葉に反応して、オリヴィエとヒエンが、過去に獲得した剣である銀龍鈎、アーク・オブ・アルテミスを懐から取り出した。念の為、ジークから預け返されていたのである。
「ふむ。その武器が何かしらの形で月の恩恵を受けているということか」
「ライバルも似たようなものを持ってる」
「なるほど……。では、私も同行しよう。力になれる筈だ」
「助かる!」
フェイは逡巡し、ジーク達一行の姿をそれぞれ観察すると、坑道の奥へ進もうとする一行にぴったりと付いて、共に駆け始めた。
「え!?この人、誰だよ!?」
「カッコイイ獣人が増えた!?」
「こいつ、魔族やねぇか!?」
「俺の友人だ!必ず力になってくれる!」
仲間達は突然の助っ人の参戦に驚きを隠せないようだったが、その足は迷うことなく前へと進み続けた。
「アタシ、先に行って様子見て来るわね~ん♪」
その中でヘルメスが、箒に乗って頭一つ飛び出たかと思うと、あっという間に古いレールの敷かれた坑道の闇へと消えてしまった。
恐ろしいのは、その後の光景だった。
「うわ、なんか、こっちにも付いて来てるぜ!?」
「やっぱり七曜の剣のせいなのか……!?」
ヘルメスを追い、ジーク達を追い越すようにして、獣の群れが坑道を駆け抜けて行った。
狼、虎、鷹、鹿……種族の統一性の無さから、やはり、人狼が変化したものであることが窺える。ホワイトサロンで見掛けたような者の姿まであった。
彼等も、町からここまで、フェイの言う“月の力”とやらを求めてやって来たとでもいうのだろうか。
「ますますザラが心配だ……!」
「俺達も急ごうぜ!」
ジークとアルスは意気込んで、地下へと向かう獣達と並走した。
.




