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無限の少女と魔界の錬金術師  作者: 安藤源龍
4.月の魔力は愛のメッセージ
221/265

第二の剣・弓弦剣・5



 勝負の内容を告げられた瞬間、ヒエンとシルヴィウスはほぼ同時にずっこけた。

 しかし、相手から視線は外さなかった。戦うべき相手そのものは変わっていない。

「音楽なら、余計に負けられない」

 誰にともなく、ヒエンはそう呟いた。

 同じく出鼻を挫かれたようにつんのめったままのザラ達のほうは構わず、ただ一心に、人間の英雄であるというアンジェリーヌ・ブランシェントの声に耳を澄ませた。

『二人とも、心の準備はいいかい?』

 訊かれるまでもなく、頷き合う。準備を窺いながら、それでいて耳にした者の神経を強く煽り、揺さぶる詩聖の声色は、ヒエンにある種の嫉妬の念さえ覚えさせた。

『では早速、第一問ッ!』

 ──デデェン!!

 どこからともなく、激しい電子楽器の音が響いた。どうやら、アンジェリーヌが魔法の琴でかき鳴らしたらしいサウンドエフェクトは、華麗で懐かしい月夜には似つかわしくないコミカルさを醸し出していた。

『これから私が弾く竪琴(ハープ)は──一方が最高級の素材と職人の手によって製造された、神に捧げられし聖なる竪琴、マラットサバ・ノチウ。値段にして当時の一千万ソル。そして一方は、学生が音楽教室で練習に使う、市場にもよく出回っているような一般的な竪琴。値段にして三百ソル。君たちには、どちらが正解のマラットサバ・ノチウであるかを、音色だけで判断してほしいッ!』

「マジでただのクイズじゃん!」

「伝説の英雄がやっていい事なんか!」

 場外から野次が飛ぶ。最早ただの観客となってしまったザラたちには、それくらいしかやることがないのだろうが。

 やや拍子抜けしたものの──ヒエンは早くもこの勝負の行方が、自分の望むものになることを予感していた。

 神に捧げらえた一級品と、人間が使う玩具なんて。比べるべくもない。

 自然とヒエンの口角には、微笑みが刻まれた。

『じゃあ、今から弾くから。二人はこれを着けてくれ』

「なん……なんですか、コレ」

『目隠しだよ。正確には現物じゃなくて、私の魔法と超絶技巧で音色を再現するだけなんだが、念の為ね。あと面白いから。君の方は、是非、眼鏡の上から装着しなさい』

 そう言ってアンジェリーヌが両者に差し出したのは、人間の目元が間抜けなポップアート風に描かれた、視界を塞ぐ為の帯だった。

 見ればヒエンのほうは困り眉に三白眼で、シルヴィウスが持つほうは異様に眉毛が太く、繋がったデザインになっていた。

 細かく、そしてしつこく、目の模様が顔の正面に来るように指示されながら、ヒエンとシルヴィウスは嫌々帯を目元に巻き付けた。顔を上げた瞬間、ザラ達が居る方向が爆笑の渦に包まれる。ヒエンは殺意を覚えた。

『二人とも、最高だよ。やっぱりこういうのは普段から真面目そうな人に着けるのが一番だね』

 何を言っているのか分からないが、笑いを堪えながら苦しそうにするアンジェリーヌにも、今すぐ消えてほしいと思った。

『ごほん。まずはAのほうから弾くとしよう』 

 しかし、ふざけた獣人の女性は、旋律を奏でる瞬間だけは、真摯で誠実な空気を纏うのが感じられた。

 ヒエンにとっては珍しい、けれど、どこかでこの身体の持ち主であるモニカの記憶が懐かしいと思うようなメロディの中に、楽器が持つ個性を探し出す。目を封じられたことは、却って聴覚に神経を集中させた。

 楽曲自体のレベルは、さほど高いものではないのだろう。けれど、ひとたびアンジェリーヌが弦を弾けば、その単調な展開も、時間や空間の移ろいさえ感じられる物語になる。

 だからこそ、この楽器には歪がある、ということに、ヒエンはいち早く気付いた。

 アンジェリーヌが爪先で弦に触れ、擦れた瞬間ではなく、ほんの少し遅れて、音が鳴る。本来の音階から三十二、否、六十四分の一ほどずれたような和音の中に、木材が軋むような雑音が混じる。奏でれば奏でるほどに調律が緩み、旋律から“ハリ”が失われていき、最後の一小節に差し掛かる頃には、まともに鳴ってさえいなかった。

 ──駄作だ。こんな物が名器である筈がない。

 そう見切りを付け、ヒエンは次なる演奏を待った。

「……全然分かりません」

『すぐに分かられたら困ってしまうよ。では、Bの竪琴だ』

 アンジェリーヌが最初の一音を奏でた、たったその一拍で理解する。

 ヒエンの中で、もう答えは決まった。

 先ほどよりも、一曲の時間が短く感じられるほど、流れるような美しい節回し。音の強弱も抑揚も見事に、より具体的に表現され、何よりもアンジェリーヌが曲の中に、彼女自身のメッセージを、魂を宿らせようとしているのが伝わってきた。

 ──間違いない。

 演奏が終わるや否や、確信を持って、ヒエンは目隠しを首まで落とした。

「絶対にBだ」

「……Aじゃないでしょうか」

 再び、シルヴィウスと睨み合う。これで、まずは一問目の勝者が決まる。

「ふん、素人め。楽器として優れているのはどう考えてもBのほうだ」

「確かに……僕もバイオリンしかやったことがありませんし。でも何か……こっちかな、と」

 この男も不可解なことを述べるものだ、と、ヒエンは訝しんだ。この男程度の人生で聞いたことがあるのならば、尚更、最初に演奏した竪琴は安物の筈だ。

『よし。二人とも、自分の答えに迷いはないみたいだね?』

「当たり前だ」

「もうこうなったら、勘でしかないですよ……」

『では、正解発表といこう。正解はぁぁぁ~~~……──』

 アンジェリーヌが大きく息を吸い込み、にわかに緊張が走る。

『Aのほうがッ、一千万ソルのマラットサバ・ノチウでしたァ~~~~~ッ!!!!』

「なっ……!?」

 自分の耳を疑った、色んな意味で。

 後ろでは、観客(ザラ)たちが落胆に沈んでいた。

 ヒエンは審判であるアンジェリーヌに掴みかかろうとして、その実体が透明な空気のようなものであったことを思い出した。

『まずは、えーと。こっちの羊君に一点だ』

「ありがとうございます」

「ま、待ってくれ!そんな筈はない!明らかに音が良かったのは後者だろう!そんなまともに奏でられない楽器に大層な価値があるとは思えないぞ!」

『ざんね~~~ん。価値は価値でも、音楽的ものじゃなくて骨董品としての希少性でした~~~。君は博物館に飾られた古代の出土品に値段を付けられるのかなぁ~?』

 半透明であるにも拘わらず、例え輪郭がくっきりしていてもこれ以上増すことはないと思えるほどの憎たらしいあかんべえで、アンジェリーヌはヒエンを揶揄った。

 ヒエンは辛抱たまらず、歯を食い縛った。

「ッ……人間ンンンンン~~~~!!!!」

『まあ、あと高すぎるヤツだから、私も普通に緊張しちゃった。実物じゃないのにね!』

「この恨み晴らさでおくべきかァァァ…………!!」

「あわわわ。ヒエンが着実に人類へのヘイトを蓄積させていってるよぉ」

「流石に意地悪だな……」

 クイズ勝負と聞いて引っ込めた筈の鯉口に手を伸ばしそうになるほど、ヒエンの自制心はめちゃくちゃに掻き回されていた。

『逆に、君のほうはよく分かったね』 

「ああ……。僕、死霊術師(ネクロマンサー)なんですが。たまに、ああいうギッシギシの琴を弾いてる死霊が蘇ることがあって、耳馴染みがあったので。シンプルに好みで選びました。フフフッ、僕が好きになるってことは、どうせ大したものじゃないんだろうと思ったんですがね……これも死人のお陰ですよ、死体万歳……!」

 肩を揺らすシルヴィウスに、ヒエンはただただドン引きしていた。こんな人間が居るのか、居て良いのか。未だに自分が理解できない生物が居ることに、嫌悪感が募った。

『気を取り直して第二問!!今度はさっきの逆だ。私が弾く竪琴は同じ物。だけど、どっちかは指一本で奏でる、超手抜きの演奏だ。二人は、どっちが五本の指で弾いた本気の演奏か、正しいほうを当ててくれ。さあて、これを外したら恥ずかしいぞ~~~!!』

 先ほどと同じ効果音を伴って出題された二問目は、今度こそヒエンにとって外せない

ものだった。

 奇しくも、あのふざけた一問目で、このクイズが油断ならない真剣勝負だということを身をもって体験したヒエンは、心を入れ替えて、アンジェリーヌの指示通りにもう一度目隠しを装着した。

『まずは、Aの演奏だ。集中したまえよ~♪』

 人間(モニカ)の聴覚という不慣れな機能に苦戦しながら、それでも懸命に、空気に散る竪琴の音色を拾い集める。

 明らかに、一本の指で、一度に奏でられる音の数を越えている。整った音の粒が次々と押し寄せるさまは、訓練された軍隊の動きのように精緻で、隙が無い。

 これが正解でなければ、嘘だ。

 しかし既に、ヒエンは禁断の実を口にしてしまった。もう先ほどまでと同じ感覚には戻れない。

 疑心が襲う。

 確信があればあるほど、その価値観が否定されるのではないかと、らしくもない考えが靄のように思考を掠めた。

(下らない。──ぼくはぼくを信じる。ぼくが、選んできたものを。)

 瞼を強く閉じて、精神を研ぎ澄ませる。

『次はBあ~、怖いな~、上手くやれるかな~。でも大丈夫さ、だって~私は~天才だからぁ~♪』

 わざとらしい小芝居を挟みつつ、アンジェリーヌが二回目の演奏を始めた。

 出だしから素っ頓狂な跳ね方。急かされるように忙しなく運ばれる指使いの気配が、リズムを乱す。つっかえて、本来在るべき筈の譜割りに音が当てはまらない。

 疑うべくもなく、瞭然だ。

『ふう~~~……こんなものか。生まれて初めてやったよ、こんなこと。かの音楽の神はこれを歯でも出来たっていうんだから、不思議を通り越して不気味だよねぇ。さて、二人の答えは?』

「うーん……引っ掛け続きでB、ですかね」

「Aだ。これほどの技量の持ち主だ。そんな遊びをする暇も無い程──きみは自分だけの演奏の練習に打ち込んだ筈。きみが真の音楽家だというのなら、自分の努力を無視するような真似はしないだろう」

 ヒエンの鋭い指摘に、アンジェリーヌは隠そうともせず、にやりと不敵な笑みを浮かべた。

 それだけで察したらしいシルヴィウスも、答えを聞くまでもなく、降参したように両手を挙げた。

『正解。先に弾いたAこそが、私の正式な演奏だ。これで同点になったねぇ!気分はどうだい?』

「正直に言うと早く帰りたいです」

「面白くなってきた」

『結構結構!その余裕もこれまでだ!第三問!』

 三度、アンジェリーヌが独特の効果音を自ら再現する。

『今度は楽器も演奏も全く同じ。違うのは、弦、ただひとつ。君達が当てるべきは、悪戯好きの牛の魔物、“ヘッドリー・カウ”の腸から作った幻のガット。外れのほうは私が酔っぱらって作った樹脂製の弦だ。特徴は……そうだな、やはり何と言っても、聴く者を魅了する魔力だろう。君達には些か簡単すぎるかな?』

 ここに来て、出題者から明確なヒントが提示された。

 ──という事は。恐らく、音楽に関する教養ではなく、魔力を察知する魔導士、あるいは魔導生命体としての力量を測るつもりのようだ。

「う、牛の魔物の大腸を弦に……。なんか可哀想だなぁ」

「え。でも、ジークって普通に牛肉食ったりするよな?」

「食うぞ。……というか、ヘッドリー・カウは牛だけじゃなく羊や鉱石にも化ける魔物じゃなかったか」

「え~っ。ますますジークじゃん。私、そんなの出てきたら戦えないかも……」

「俺ではないが?」

「てか、八百年前の魔物ならもうとっくに滅んでたりしないか?」

「え~んジークが滅んじゃった」

「俺ではないが???」

 これから真面目に魔力探知を行わなければならないというのに、後ろの仲間達は呑気にそんなやり取りを交わしていた。

『ほらほら、目隠しして』

 アンジェリーヌに促されるまま、ヒエンとシルヴィウスも三度、剽軽な柄の帯で視界を塞いだ。

『まずはAの弦だ。曲は~……そうだな。私を褒め讃える曲にしよう。て~ん~さ~い~び~じ~ん~……♪』

 相変わらず美しい主旋律に対して、余計な鼻歌が被さってくることに苛立ちを覚える。しかも、その歌声もつい注意が引かれてしまうような個性的な魅力に溢れているので、一層性質が悪い。

 だが、ここでもヒエンは動じなかった。

 先ほどまでの“聴かせる”導入とは違い、アンジェリーヌを讃える為に作られたという軽薄な音楽は、どこか身勝手で、狂気的なまでの陽気さに満ちている。

 音譜が跳ね回り、景気よく伸びたかと思えば、調子に乗って何階も跨いだ高低差を生む。

 しかし、今回の問題はそんな馬鹿馬鹿しい楽曲のあらすじではない。

 ヒエンは自らの魂の触覚を、モニカの肉体に流れる魔術の回路に張り巡らせるように意識した。

 月から堕ちた先の土地で“気”だとか“チャクラ”だとか呼ばれていた魔力の流れを、呼吸とともに練り上げて、外に広げていく。

 一番に感じたのは、やはり、アンリミテッドであるザラの膨大な魔力だった。そして次に、宿敵である太陽神マリーチーの加護と、既に魔族としての枠を越えつつあるジークウェザー達の重厚な風格。逆に、最も魔力を感じない──あるいは、魔力とは全く違う(ソース)を秘めているのは、アルスだ。

 アンジェリーヌの演奏が終わる。

『それでは、次にBの弦での演奏だ。いち、にの、さん、て~ん~さ~い~……♪』

 ぴしり、と。

 網目のように展開した自分の力の流れに、魔物が持つ不快な気配が引っ掛かった。

 演奏そのものは、何一つ変わっていない。むしろ──輪をかけて、蠱惑的になった。

 理性では危険だと分かっていながらも、強烈に誘い込まれてしまう、甘い罠のような香り。

 魅了(チャーム)の魔法が付与された、負の魔力だ。成程、きっとこの弦を使えば、どんな三流楽師であっても、人々の耳を欺くのは容易だろう。

 ただ聴いているだけでも、頭の中で旋律が反響して、眩暈がしそうになる。

 次に目隠しを外した時、ヒエンは、鏡映しのような険しい表情を浮かべたシルヴィウスと目が合った。

 魔物に対する嫌悪感は、どうやら生きる世界を隔てても共通しているらしい。

『二人とも、眉間に皺が寄っているよ。面白いな。綺麗な音には違いないのに』

「ご冗談を。少しでも魔道を齧ってれば、これがヤバイ代物だってすぐに気が付きますよ……」

「不本意だが同感だ。古代の英雄とはいえ、よくこんなものを持ち出したものだよ」

 ヒエンの推測が正しければ──今しがた使われたBの弦こそが、魔物の腸から作られたというものだ。

 まさしく魔力を秘めた妖しい響きは、およそ人間が日常的に用いて良い物の範疇を越えている。時代が時代なら、禁書や呪物と並んで、封印されて然るべきものだっただろう。

「普通にめっちゃ良いと思っちゃった……」

「流石、危機回避どころか危機にわざわざ向かっていくタイプの女……」

「オリヴィエだってポカーンとしてたじゃん!」

「ウルサイ。バーカ」

「バカって言うほうがバカなんですぅ~っ!!」

 もしかしたら、ザラが怖いもの知らずなのは、あの魔術への無頓着っぷりから来るものなのかもしれないと、ヒエンは密かに予想してみたりもした。

『つまり、二人とも答えは同じ、Bということでいいのかな?』

「ああ。撤回はしない」

「言わずもがなって感じですね」

『──正解だ。これでそれぞれに一点ずつ。また並んだね』

 無頓着な方からも、喜びの声が上がった。

『なるほど。二人とも、魔力感知は並み以上といったところだったか。それにしても、よくあそこまで確信を持てたものだ。私の演奏も、なかなか悪魔的な中毒性があると自負していたんだが』

「ああ……そういえば……。あの弦じゃないと綺麗に肉を切断出来ない実験体があって……わざわざ注文しに行ったことがあるんですが、そこで店主の方が実際に演奏してくださった音によく似てて……僕の決めてはそれですかね」

 この状況で、シルヴィウスという非倫理的な精神病質者が、音楽を聴いて過去の思い出を想起するという事態そのものが異常だった。

「ふふふ、僕は音楽じゃなくて悲鳴を奏でる為に使ったのに……悪いことしたなぁ……」

 アンジェリーヌの自負に違わず、彼女が持つ音楽性というのは、観客を選ばず、無理矢理に感情を引き出すもののようだった。

 ヒエンも思わず息を呑んだ。シルヴィウスは気付いているのだろうか。自分がすっかり、詩聖の旋律の虜になっていることに。

『ようし。では続きといこう!ここで勝負は決まってしまうのか!?第四問デデェン!!』

 今度は音階を直接口にしながら、アンジェリーヌはどこからともなく二冊の薄い冊子を取り出し、ヒエンとシルヴィウスにそれぞれ配った。

 現代で用いられる純度の高い紙ではなく、動物の皮を鞣した、まだら模様の浮かぶ表面には、しかし、今でも尚変わることのない五本線が引かれていた。

 楽譜だ。しかも、相当に複雑な。

『これはねぇ。生前の私が最も気が狂っていた時に作った曲でねぇ。見て分かる通りほぼほぼ曲の形を成してないんだよ』

「自分で言うのか……」

「まあ、なんか、ワーッってなっちゃう時、ありますよね。僕も死体の合成が上手く行かない時は、訳の分からないものを作っちゃいますよ」

『ウンウン。創作に携わる者は皆、一度は通る場所だよねぇ』

 偉大な詩人の詩興と偏執狂のフラストレーションを一緒くたに考えても良いものなのだろうか。ヒエンは黙することを選択した。

『四問目はズバリ!楽譜通りに弾いてるのはどっちでSHOW!?』

 わー、と、またしてもどこから取り出したのか分からないタンバリンを振りながら、アンジェリーヌは回答者である二人を煽るように、軽妙なステップを踏んだ。

 そもそも、ヒエンだって、まるで正確に楽譜が読めるかと訊かれれば、否と答える。答えたくないので、わざわざ言葉にはしないが。

 シルヴィウスのほうも、眼鏡を掛けたり外したりしながら、小節の中にびっちりと、かつ出鱈目に詰め込まれた黒い連符の数や種類を確認しては、諦めたように溜息を吐いている。あちらも正確さには欠けるだろう。

 ましてや、聴いたこともない曲だ。それをたった一度で判別しろというのは、難問に他ならない。

 やはり、英雄というものは侮れない。

『それじゃあ、聴いてくれ。──“バードウーマン”、Aバージョン』

 アンジェリーヌが指を弾いた途端、何故か、月の光が呼応するように絞られていき、伝説の詩聖たった一人を照らすだけのピンスポットライトになった。

 この現象は、ヒエンを以てしても、全くの意味不明だった。

『ヴォオオオオォォォォッーーーーーー!!!!!』

「!?」

 突如、詩聖アンジェリーヌは激しく髪を振り乱しながら、地の底から湧き上がるような咆哮をあげた。

『キエェェェェーーーーーーーッッ』

「!?!?」

 かと思えば何オクターブも高いハイトーンで絶叫し、もはや正しい和音(コード)にすらなっていない運指で、千切れんばかりの勢いに任せ、竪琴をかき鳴らした。

『♪くだらねえ超常現象 いかついレジスト ハイウィンド さっきよりも 歯車の自転は虚ろじみた収縮を重ねる 再滑走再滑走 アルハンブラの奇石に乗せて証明し続けろ』

「なんっ……何だこの歌は!?」

「もう今どこを歌っているのかすら……」

 とてつもなく速い歌詞の展開に、半音ずつ上下する音階。中途で合いの手のように挟まれる咆哮のせいで、楽譜を追うどころではなかった。

『♪壊滅的自虐的インダストリアルオートメイショーーーーーーンッ!!!!ウォイ!!ウォイ!!ウォイ!!死に晒せ!!死に晒せ!!死んで生まれてまた殺せ!!!!』

 アンジェリーヌの時代を先取りまくった熱狂的なパフォーマンスは、まるでそこにスタンドマイクが存在するかのような幻覚を見せた。

「パンクへの造詣がエゲツないな。流石、悪魔と契約していただけのことはある……か」

「八百年前の吟遊詩人、怖えぇ~~~ッ!!!!」

 感心する魔族(ジーク)と、ひたすらに怯える人間(ザラ)の反応が対照的だった。

 呆気に取られている間に、手渡された楽譜に記されたぶんのワンコーラスが終わった。

『ハア、ハア……いかがだったかな?』

「す、すごかった」

「僕、嫌いじゃないですね……」

『フ、フフフ、そうだろうそうだろう。だがこの曲はちょっと、消耗が多いのでね。一度、休憩を挟ませてもらうとしよう。誰か蜂蜜酒を持ってないかい?』

「あ、こっちにそういうの出すの得意な錬金術師がいまーす!」

『頼むちょっと、お墓参りみたいなものだと思って分けてくれ。連続でやったら吐くかもしれないんだ』

 そう言うが早いか、アンジェリーヌはジークのもとに向かって駆け出した。

 ジークの錬金術で無事、ご所望の蜂蜜酒を摂取することが出来た英雄は、上機嫌になって戻ってくると、咳払いをしながら、再び竪琴を手に取った。

『じゃあ、Bバージョンだ。行くぞ。いいな。君達ももっとノッて、声とか出していいからね』

「いや、こっちクイズ中なんで」

『ああ、そうだったそうだった。じゃあそっちの君達(オーディエンス)!まだまだ足りてないよ!!もっと踊りたまえ!!』

「い、いえーい」

『もっとだァ!!』

「いえーい!!」

『行くぜ新生アトリウムーーッ!!“バードウーマン”、B!!』

 そして、先ほどと寸分違わぬコンサートが開催された。完全にアンコールだ。違いが分からなかった。

 強いて言うなら、休憩を挟んだ後のほうが、というか、最初にワンコーラスをやった後の方が、疲弊からか、観客のコール任せになっている箇所が多かったように思えた。

 歌詞がところどころ飛んでいたり、ロングトーンの拍がいい加減なところでぶつ切りになったりしている。

 とても、この演奏が、正しい意図のもとに行われているとは思えなかった。

「答えはAだ」

「流石にAでしょう」

「……」

「……」

 三本先取が勝敗を分けるルールだというのに、同点のまま賭けに出ないのもどうかとは思うが。

 とはいえ、こればかりは、譲る気にもならなかった。どう考えたってBのほうがおかしいのだ。未だに耳鳴りがした。

「死霊術師。これで二人とも不正解だったらどうするんだい?」

「五問目がありますよ。あなただけに正解されても困るので。答えを変える気はありません」

「ふん。面白い。こんな勝負でなければ、きみとは良い遊びが出来そうなのに」

「ええ。僕も、是非ともあなたとあなたの魂を解剖してみたいところです」

 長らく理不尽な駆け引きをし合ったせいか、ヒエンとシルヴィウスの間には、奇妙な友情さえ芽生え始めていた。

『正解は──B!!!!』

「はあ!?」

『残念。というわけで、決着は次に持ち越しだ』

「どうなってるんだ!こんなの、いかさまだろう!」

『初めに言ったじゃないか。この曲は私が狂っていた時に作ったものだと。よく見てみなさいよ、こういうところに“もうここは観客に歌わせる”とか、“ここは忘れていいものとする”、“この辺はアドリブで”とか書いてあるだろう!!Bの演奏はそのメモに忠実に従ったまでのこと!よって楽譜通りなのはBだ!』

 ヒエンとシルヴィウスは二人して、アンジェリーヌが示した譜面の上を凝視した。

 確かに、音符の近くに、ミミズがのたくったような走り書きが散見される。伝説の詩聖は、こんなものをメモだと言い張るつもりらしい。

「字が汚さ過ぎるだろう!!」

「というか、メモだと分かったところで多分、古代文字は専門外すぎて解読不可能なんですが……」

 シルヴィウスの発言に、ヒエンははっと気が付いた。そうか、もし読めていたら、長命種であるぼくのほうが有利だったのかもしれないと。

 しかし、楽譜に記されたアンジェリーヌの悪筆は、やはりどう足掻いても、気が狂った寄生虫の舞か指向性のある埃にしか見えなかったので、その仮定も無意味なものだた。

『では、最終問題!これで私の後継者が決まると思うと、気持ちも昂ってくるねぇ!』

「あなたの、ではなく、あなたの武器の後継者ですよ」

『良いじゃないか、武器を受け継ぐということは、私の意志も受け継ぐということだ!』

「いえ、全然違いますので。大丈夫です、間に合ってますから」

「そうだとも。無理は良くないぞ、英雄殿」

『何を結託しとるんだ君達は。あーあー、私、大英雄なのにな。嫌われたものだよ!』

 アンジェリーヌから正式に継承権を認められるべきアーク・オブ・アルテミスは、七曜の剣としての奇跡の力もさることながら、一対の短剣を変形させ、一振りの両刃剣(ダブルブレード)と、弓矢、そして竪琴へと姿を変えるというその特殊な性能でも、ヒエンの興味を強く惹きつけた。

 基本的にあまり人間に好意を抱いていないヒエンでも、モニカの肉体で現界してから気付いたのは、人間たちが創る文明の利器による多彩さと、その利便性だった。

 ザラのもとに仲間が集うのも納得できる。

(手に入れるんだ、何としても。)

 決意を新たにするヒエンの前で、当のアンジェリーヌが、とうとう、その弓弦の剣を構えた。

『最後は──君達の感受性を総動員した、決着に相応しい問題だ。今から、私が二曲の異なる歌を唄う。テーマはどちらも、私の仲間を想ったものだ。どちらが私の本心か、当ててご覧』

 弓に張られた赤と青の弦は、軽く撫でる奏者の指先に反応して、音が鳴る度、紫色のグラデーションを映し出した。

「どちらが、本心か……。どういうことです?」

『そのままの意味さ。私は吟遊詩人だ、行く先々で求められる歌を唄ううち、真実だけではなく、時には虚構も旋律に乗せて、人々に遍く披露してきた。例え私自身がそう信じていなくとも、雇い主の為なら、家族や仲間を貶めるものも、誇りも信念も無いものだって、躊躇わずに唄い上げたとも』

「なるほど……要するに、嘘を見抜けば良いだけの話ですね?」

『そうとも。簡単だろう?──見抜ければの話だけどね。私も一応、ほら、英雄と呼ばれたほどの伝説的人物だ。そんじょそこらの音楽マニアなんかじゃ、私の表現は看破できない。本当の私を──知ることなどできない』

 初めて、このアンジェリーヌという女性の試すような視線に、背筋が凍るほどの寒気を覚えた。

 吸血鬼を斃した騎士王の仲間。類まれな芸術家であり、弓の名手でもあった彼女が、紛れもなく強大な傑物の一人であるということを、その気さくな人懐っこさで忘れさせられていた。

 自分が思い描くように自分を表現し、相手の受け取り方さえも巧みに操る。決して手の届かない天才。

 それが、世界を変えるのに必要な力だと言うのなら、受け継いでも良いのかもしれない。

『それでは、唄うとしよう──“アルテミス抒情詩”』

 夜の風の中に溶ける雨音のような静けさに乗せて、アンジェリーヌの掠れた歌声が、空気を揺らした。

 歌い手が泣いているのかと錯覚するほどの、切なる息継ぎ。

 古代語で紡がれる歌詞は、深く切ない鎮魂歌のようでもあり、恨みつらみが込められたどす黒く、重い呪詛のようでもある。

 メリハリのないリズムが淡々と刻まれ、同じようなフレーズが何度も繰り返し登場する。祈りと諦めが混在したような、どこか乱暴で、それでも捨てきれなかったものだけを集めた愛らしい我楽多のような手触りは、悔恨にも似た、苦い懐かしさを伴っている。

 七英雄を賛美し、後世に正しく伝える為の詩ではなかった。この曲は少なくとも、誰かを悦ばせる為に創られたものではない。

 ──人間ではないヒエンには、理解出来ない感情だった。

 何故、アンジェリーヌがこれほどまでに、無念をひけらかして、近しかった者たちに八つ当たりをするような、やけくその愚痴を並べ立てるのか。

 ちくしょう、ちくしょう、と。

 旋律と言葉の奥に隠された揺らぎから、ただそんな憎しみだけが伝わって来る。

 嫌い、だったのだろうか。

 共に肩を並べ、世界を救った仲間のことが。

 それが、彼女の本心だと言うのなら──何故そんな人間が、英雄になどなれたのだろう。

 考える暇もなく、アンジェリーヌは次の曲の為に竪琴の弦を調律した。

『続いて、“栄光の調べ”』

 前の曲と打って変わって、華やかなメロディが、わっと波のように押し寄せた。

 どこを切り取っても完成された音楽になり得る豊かなハーモニーと、ドラマチックで壮大な転調。

 仲間一人一人の勇敢さを語り、それぞれの人物の起源まで遡り、世界各地の音楽が取り入れられた構成は、まさしく移ろいと旅路を感じさせる冒険譚そのものだ。

 不思議と、耳を傾け、その世界に浸っているだけで、心身に力が漲っていくようでもあった。

 先人たちの偉大な功績を追体験し、奮い立たせてくれる応援歌のような安定した拍子に、自然と体が動き出す。

 誰もが一度聞けば忘れられない音楽だった。

 愛される為だけに生まれた、祝福と親愛の調べ。

 アンジェリーヌが会釈をする頃には、誰からともなく拍手があがった。

「こんなの……」

『分からないかい、小鳥の君。君ならば──理解してくれると思ったんだが』

 正反対の二曲を歌い終えたアンジェリーヌの目元に、ふと、翳りが垣間見えた。

 最初から指名する気でいたヒエンを小鳥の君と呼び、はちゃめちゃに振舞って見せたのも、全ては、彼女の意思の奥深くに眠る、真実の孤独がそうさせていたのかもしれない。

 人間の身でありながらも、ヒエンと同程度かそれ以下の情動しか持ち合わせていないシルヴィウスは、不躾に、淡々と提案した。

「あの、じゃあ僕、不利なんで。死霊とか喚び出して聞いてみてもいいですか?」

「何やそれ!!」

「卑怯だぞーっ!」

 たちの悪い酔っ払いのような、場外からのブイーングも何のその。シルヴィウスは白々しくふんぞり返って、主催者の采配を待った。

『うーん、ヨシ!』

 そしてアッサリ受け入れられるのであった。

「あーっ!!勝ち誇った顔してるーッ!!」

「ずるじゃ!ずるしよるぞ!ヒエン!おめぇも何かせえ!!頭カチ割れ!!」

「乱闘なら数で勝ってるぞ!」

 この際、興奮する部外者のことは無視しよう。

 どの道、この一問──否、一戦で、勝負は決まる。

 アンジェリーヌの許可のもと、宣言通り魔術を用いたシルヴィウスは、蘇らせた死霊たちに片っ端から聴取を行っていた。

「さっきの聴いて、どっちが良かったかとかあります?」

『ウ゛、オ゛ォ……ウラ……ヌス……』

『最初のは……気持ち良い……』

『後の方は……なんか……キラキラしすぎてて腹立つ……』

『どうせ俺達は……日陰者……』

「うんうん、分かります。なんかいけ好かないですよね。でも、そんなものなのかもしれませんね」

 蒼い炎を纏った骸骨に次々インタビューしたところで、一体どれほどの収穫があるのかは分からないが。

 ヒエンは、もう一度、アンジェリーヌの言葉を思い出した。

 テーマは“仲間を想った歌”。

 月で天使と二人ぼっちだったヒエンにとって、未だ感じたこともない、動いたこともない心の部分に、きっと答えはある。

(モニカなら知っているだろうか。)

 けれど、肝心のモニカはここには居ない。ヒエンが身体から追い出してしまったからだ。

 縋る思いで、友の居る月を見上げた拍子に、いつもよりも多く息を吸った。

 寄り添うような慰めも、温かな励ましなんてものも要らない。ただ、もっと切に、求めるものがある。

「……Aのほうだ。ぼくなら──そう唄う」

 あの、暗くて陰惨な、出会いを呪うような歌を。定められた運命に抗えず、何もかもを諦めて捨て去ってしまったような歌こそが、ヒエンの胸を打った。

 だから、ザラ達には申し訳無いけれど、これが間違っていても良いとさえ思ってしまった。

 人々の生を音で彩った英雄が、ここに確かに在る、熱を帯びた何かを否定するというのなら。

 そんな英雄なんて、人間が作り上げたまやかしに違いない。そもそもの七曜の剣というものの価値さえ疑わしくなる。

「では、僕はBを。僕が嫌いなものは、大抵、多くの人に愛されるものですから。英雄の本心なら、そういうものなのでしょう?」

 彼の心にもまた、何かが届きかけたのだろう。

 それまでは善しとも悪しきとも感想を抱かなかったシルヴィウスが、死人の骨を弄びながら、自嘲するように呟いた。

 アンジェリーヌは二人が導き出した答えに満足した様子で、ゆっくりと頷くと、鼻から大きく息を吸い込んだ。

『結果発表ォォォ〜〜〜ッッッ!!!!!!!!』

「うるさ」

「何でまだ声出るんだ」

 無意識の内に、拳を握り込んでいた。

 それは不安からではなく、今にも湧き上がりそうになる歓喜を抑えこもうとする、モニカの肉体に刻まれた防衛反応だったのかもしれない。

『勝者は──小鳥の君!!おめでとう!!』

 アンジェリーヌがひと際派手な手つきで竪琴の弦を弾いた。指を端から端まで行ったり来たりさせて、終わらないファンファーレを奏で続ける。

「やっ……たぁ~~~!!すごいよ、ヒエン!!」

 一目散にザラが駆け寄ってきた。ヒエンに抱き付こうとして、またもやボーイフレンドと義兄に首根っこを掴まれた少女は、舌を出して笑っていた。

「もっと褒めていいぞ」

「偉い!最高!アトリウム(いち)!」

「当然だ。ぼくを誰だと思ってる!」

「……女学生の身体を乗っ取って好き放題してる魔族……」

「浅い。浅いな。その程度でぼくを理解した気になっていたとは」

「オマエが褒めろっつーから褒めてやってんだろ。ったく」

「は~。最後のはこっちでも意見が割れてたんだよ。ヒヤヒヤしたぜ。でも、よく頑張ったな!」

「流石、ワシのご先祖様がムキになって封じただけのこたぁあるわ!」

「フン。どうやら虚勢じゃなかったみたいだな」

 ヒエンを囲む仲間達が、代わる代わる頭を撫でたり、肩を組んだりして、その勝利を讃えた。

『ここに──弓弦剣アーク・オブ・アルテミスの正式な継承者を定めよう』

 美しい歌声と卓越した演奏技術で、仲間達を守り支え、そして今日まで正しく彼等の雄姿を語り継いできた詩聖の手から、赤と青のグラデーションが織り成す、オーロラのような弓が託される。

 自分(モニカ)の腕の中で淡く光る弧を慈しむように抱え、ヒエンはこの武器に込められた持ち主の意志ごと、引き受けてやることにした。

「はあ……これで二連敗ですか。ハハハ……一体どうなっちゃうんでしょう」

 狂霊の魔騎士は茫然と、一人、乾いた笑みを零す。

 生者でありながら、死者の世界としか交わることのできない男は、憐れで、孤高で、誇りに満ちていた。

 誰かを思い浮かべて、みっともなく膝を付いたりもしない。それはヒエンにとっての理想の姿でさえあった。

『最後に、君の歌も聴きたいな』

「今はもう、唄えないんだ」

『構わないさ。歌は心で奏でるものだ。それに、今夜なら──きっと、届く』

 大地から見る月は、遠く、大きい。

 今までただ睨み付けることしか出来なかった遥か上空の故郷も、アンジェリーヌの言う通り、今夜なら、少しだけ近付けるような気がした。

 獲得した七曜の剣はこれで二振り。

(待っていてくれ。)

 独りぼっちの“彼”のもとへも届くよう願いをこめて、ヒエンは、旋律を紡げなくなった嘴で声高に唄いあげた。

 酷い音痴になったものだ。けれど、ザラ達は爆笑しながらも、ヒエンの歌声を最後の一音まで聴き逃そうとしなかった。

『──というワケで今日は朝までパーティーだ~~~ッッ!!!!酒を持って来ォーーーいッ!!!!』

 詩聖アンジェリーヌを見送るべく開催された宴会は、魔騎士も死体も学生も巻き込んで、陽が昇るまで続いた。

 歌い疲れて喉は枯れ、踊り疲れて足は痺れて、酒を飲み過ぎた頭では、最早何も考えられない。

 天国のような心地のなかで、詩聖は豪快に笑いながら、夜露と共に姿を消した。







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・弓弦剣編、完です。


・後ほど七魔将と七英雄の項目を追加しておきますのでそちらも是非~ッ。


・ブクマ、コメントだけでなく、誤字報告等も常時受け付けています。よろしくお願いします!

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