天橋の夜明け・3
「まあまあ。此処で悩んでいても仕方ありません、バルバトス兄弟が現れるまで、町でも散策してみてはどうでしょうか」
そんなウーさんの提案により、私たちはいったんカムラッドを後にした。
箒をかっ飛ばしたのでもう少し休憩したいというヘルメスさんにも一度別れを告げ、知らない町に放り出されたお友達グループの修学旅行に逆戻りだ。なら何故、彼女はあんなに速度をつけて飛んだのか。答えを訊いてもろくな正解じゃないだろうことは明らかだった。
今はどんな些細なことでもいいから情報収集も兼ねて遊びに行こう――そう切り出そうとする直前で、ミストラルの声が路地裏に響いた。
『思い出したァ!!!!』
「何!!!???」
『ジュエル、見たことがあるぞ!!』
「マジかよ!?」
下手な混乱を招かないよう、人が集まる場所では容易に発言しないミストラルが、ここでまさかの気づきを得てしまったらしい。
アルスは腰の鞘からミストラルを晒すように引き抜き、意味は無いとわかりつつも、その喋る刃に詰め寄った。
『うう~~~ん……確か……!!何だったかな~~~……!!』
「思い出せって!!」
「ミストラル頑張って!」
私も微力ながら応援に加わる。今はどんな小さなことでもいい、情報が欲しいのだ。勝手もわからない空の上の町で右往左往するより、記憶にありそうな身内から引き出せる話なら何でもいいから聞き出したい。
『ここまで出てきてるんだよな~~~!!』
「もうちょっとじゃん!ホラよく見て!」
剣の“ここまで”が全然よくわからないけど多分人間でいう喉あたりだろうか。ミストラルは元人間らしいしね……。
私たちに急かされながら、地に響くような唸り声を上げていたミストラルが突然、ぴたりと音を発しなくなった。
『……ギャンブルだ』
「あ?」
彼の中で何かが符合したらしい。ぼんやりと思い出をなぞるような声色で、捻りだす。
『そうだ。確か二十年前……カミロと旅をしていて……あれは……プトレマイオスのはずれの……そうだ、暁不知の谷で、ステラスプレッドをやっていた時だ……!』
「何それ……」
「ロクな記憶じゃなさそうだな……」
『チップの中に、一枚だけ違うものが混ざっていて……今夜の記念にと、ボロクソに負けて全裸になった我からカミロが奪っていった』
「それが、ジュエル?」
『ああ。確かそうだった。妙なコインで……ジュエル、と彫られていたような……とにかく、見たことも無い柄だったから印象によく残っている。創世記以前の遺跡で、そういった物の発掘作業に立ち会ったこともある。あれは何巻に書いたんだったかな~~~……』
そうだ、彼は人間時代、カミロと親交があったとも。旅の相棒だったのよね。その記憶が正しいのなら、カミロに会って聞いてみれば、ジュエルの所在にも目星がつきそうだ。
しかし、カミロに会うにしても……神出鬼没のあのオジサンは、一体どこを捜せば居るというのか。
これからまたドラゴンに乗って地上まで降りて……となると。ウーさんにも結構待ってもらうことになりそうだしなぁ。何よりグリムヴェルトが大人しくしていてくれるかどうか……。
「カミロがそう都合よく……」
「オレがどうした」
「どうわひゃ!!?くさい!!」
目を伏せようとした瞬間、肩からお酒の匂いが漂ってきた。反射的にのけ反ると、カミロはそんな私を指差して笑った。
間違いない、噂をすればクズ聖人カミロ本人が、「よっ」と気怠そうに挨拶をしていた。
「アンタ、もしかしてザラをストーキングしてないか?」
「そうだそうだ」
ここまで偶然の再会が重なるとそう疑うのも仕方ない気がするけどストーカー云々に関してはジークは自分のこと棚に上げ過ぎ。
カミロは私のボディガード二人の視線を軽々潜り抜けて、魔硝剣ミストラルのほうへ向いた。
「で。何の話だよ」
偶然だろうが必然だろうがこうして巡り合えたのならそれが幸運な結果だ、私たちはカミロに、グリムヴェルトを討つ――いや、討たない為の武器を創るのに、色々あってジュエルという貨幣をを必要としている旨を打ち明けた。
「ジュエルだァ?何だっけなソレな……」
『二十年前、暁不知の谷でお主が勝手に持ち去って行ったチップだ。覚えていないか』
「あーあー!アレな!そんな名前だったな。そーだそーだ、お前がバカ負けしてケツの毛まで毟り取られたのがあんまりにも面白ェから記念に貰ったんだった。確か財布にずっと……」
カミロは早速自分の財布を取り出し、中身を確かめた。グシャグシャの紙幣や次々おっこちる硬貨を拾い上げながら、何度も何度も――首を傾げる。
そして焦った顔で、今度は荷物を漁り始めた。腰や太ももにに提げた革のベルトポーチを開けたり閉めたりして、お次はジャケットの裏側や靴底まで改めている。
「あァ?無ェな……」
「行こうか、みんな」
「はーい」
「オイ待て待て!マジで持ってるって!何なら昨日遊んでたって!!」
「じゃーその遊んでる間に失くしたんじゃないのー。どうせ酔っぱらってたんでしょ」
「酔ってねえ。飲んでる途中だ」
「はいはい」
うーん、ミストラルはいいとしてこのオジサンに期待した私が馬鹿だった。放って置いて、自分たちの足で情報を稼ごう。
私たちが五人連れだって、大通りに戻ろうというところだった。
嫌な偶然というのは、重なるものね。二度あることは三度ある、三度あることはもう諦めて後の五、六回に備えよう。これを今日より家訓とします。
「っかしーな~……」とか言いながら自分のパンツの中までまさぐり始めた聖人の後ろで、銀色に輝く六角形の小さな板を手に、不敵に微笑む二人組の姿があった。
「聖人のオジチャーン。探してるの、もしかしてコレかにゃ?かにゃ?」
「チョリッピッピース!つかちゃんザラとゲンぴっぴじゃん!?あん時の幻界小僧も居るし!ここまで来るとオクサレコネクトRe:Dive通り越して運命という名のDestinyじゃね~!?」
――で、で、出たな~~~~!!
物陰からニヤニヤと卑しい笑みを浮かべてこちらを窺っていたのは、疑うべくもなく、魔界の強盗集団・バルバトス一族の筆頭格、ソーマとルドラだ。
いつだったかホロロギオンで見た時と同じ、緑色の肌に鱗と翼を持つ人間界バージョンの出で立ちだ。何、人間界と魔界を股にかけて悪さしてんのよこいつらは。
『あれだ!あのコインだ!!』
すかさずミストラルが叫ぶ。でしょうね。カミロはまんまと、あの兄弟にジュエルをスられてたってことだ。何やってんだか。
「ちょっと!それ返してよ!!」
「イヤむりむりむーりむり!俺たちバルバトス一族が一番できねーのはァ~、早寝早起きと一度盗んだものを返すことなんだよね~!!あと節約とかスキップも出来ね~~~!!葬式のマナーもよくわかんね~~~!!」
「おいらスッキプ出来るっちょりよ!!ルンルルーーーーン゛!!!!」
「マジかよ裏切ってんじゃねーよこの異端児ブラザ~~~!!染色体の反逆だろ~~~が~~~!!!!」
「……なんか、見るたびにテンション上がってない……?」
「部下がいないと解放的になるタイプなんじゃないのか……」
ジークの冷静な分析にちょっとツボってしまいそうになる。それともあれか……何かこう……キメてはいけない薬をキメてしまっているのか……はたまたキメてなさすぎて禁断症状を引き起こしているのか……。
「つーワケでさいならっきょ!!」
「あ!!逃げた!!」
「待てーッ!!」
あの兄弟について思考を巡らせることのなんと無駄なことか、一瞬でも気を抜いて時間を浪費してしまった自分を悔いるばかりだ。
ルドラとソーマはジェルコインを持ったまま、大通りの建物の屋根を伝ってスタコラサッサと逃亡してしまった。
私たちも人混みを掻き分けながら、バカ兄弟の翼がはためく方へと街並みを駆け抜ける。
「つまりあのおっさん、バルバトス兄弟がジュエルとやらを持ってる事を知ってたワケだ。回りくどい事させるぜ」
私と並走するアルスが、してやられた、と苦い顔で鼻を擦った。
流石にジークとフュルベール、ベルナールくんは魔族の血が入っているだけあって足が速く、人間である私たちを置いてさっさとバルバトス兄弟に迫っていた。
……あるいは、アルスが私に気を遣ってくれているのかもしれないけど。そうよね、アルスなら屋根くらい飛び乗れるし。
魔族を追って魔族が駆ける。屋根を越え、塀を越え、柵を越え。私はその速度に付いていくだけでも精一杯だ。アルスが誘導してくれなかったらとっくに見失っている。天幕の中で再現された偽物の空の下でも、有翼の魔族たちは自由自在に飛び回って見せる。
「鬼さんこーちら、プッチョヘンザァーーーッ!!」
「はいルドラさん速かった、白が赤に変わる、緑の方もう一問ご辛抱。三人で参ります大事なだ~いじなアタックチャ~ンス!!」
「耳が腐りそうだ……」
「おれも~バカになりそう!!」
「手遅れだろ」
怪鳥の獣人が商店街の門を、飾り付けられたガーランドを、洗濯物のアーチを潜り抜けるさまを、道行く人々が歓声すら上げて見守っていた。彼等の逃亡劇にカメラのシャッターを切る人までいる始末。まあ何か、大道芸だと思ってもらえるならそれはそれで騒ぎにならなくていいのかな。
バルバトス兄弟がジークたちに追い立てられて、狭い地下通路へ入ろうという時、やつら逃げ出したタイミングでいつの間に私たちから離れて、いつのまにまた追い付いているカミロが、バルバトス兄弟の前に立ちはだかった。
「カミロ止めて~~~!!」
そのスゴい聖人パワーで自分の持ち物を盗んだ悪党に制裁を加えるはず。私はてっきりそう思っていた。
「よォ、コソ泥クソチキン共」
「に~ちゃん、アタイ怖いポヨ!」
「で~じょぶだソマ子ォ~に~ちゃんが蛍見せてやっからな~~~今のうちに好きなだけドロップペロペロしとけ~~~ッ」
「うん!!ペロペロペロペロ!!!!」
しかし、カミロはまるで兄弟にその先の道を譲るように、あっさりと身を翻した。
「神の御遣いであるオレ様からありがて~啓示だ。ソイツは預けてやる、この先のダクトを抜けて行きな」
「んお!?よくわかんねーけどセンキューマイメェーン!!」
「次の箱で会おうぜー!!ウヒャッホー!!」
「はあ……!!?」
私は自分の目と耳を疑った。なんと、カミロはどういうつもりなのか、自ら進んで盗品を持ち帰らせるような真似をした。
兄弟に一足遅れて地下通路の入口まで行くと、カミロは嵐が過ぎ去った場所で何てことのないように酒瓶を口にして一服していた。
「ちょっと、カミロ……!!罠だよね?何か考えがあって逃がしたんでしょ?」
きっと取り逃したように見せて、私たちにこう、有利になるような嘘を吐いた、とかであってほしい。
混乱しつつも期待を込めてカミロに詰め寄る。
返ってきたのは――舌をひん剥いた嘲笑だった。
「ンなわきゃねェ~~~だろが」
「貴様……!!」
一寸の迷いもなくジークが食ってかかり、カミロの襟首を掴み上げた。その速度、毎度ながら怖いよ。
けどカミロは流石というか、むしろ尚のこと真剣になるように、私たちを鋭く見据えた。
「お前らが欲しいのはあのコインだろ?だったら、このオレ様から勝ち取ってみせな」
ふざけているようには、到底見えなかった。面喰ったジークが力を解くほどに。
カミロは挑発する手招きで、私を煽った。
「博打勝負だ、アンリミテッド。あいつらが逃げ切るか、テメーラが差し切るか。アレを手にするに相応しい運命力ってヤツ、見極めてやらァな」
――。
『カミロ……!あやつらに手を貸した上で、ジュエルを取り返してみろと言うのか?』
「ああ。別にタダでやってもいいけどよ。あの吸血鬼共も、コイツらを試してるんだろ?だったらオレもせっかくだし、天界の住人として試練を与えるとしよーじゃねーの」
男子陣が私を窺うように、恐る恐る注視しているのがわかった。
私と対立する形になるように、わざとやったってことね。
躊躇う理由はない。
「いいよ。私が勝ったら、ジュエルコインを借りるからね」
「ケチくせえこた言わねェで、勝ったら好きに持っていきゃあがれ」
「……約束だからね」
カミロは根は善人だし、こういう気紛れは起こさないタイプだと思っていたけど。
天界から連れ帰ってもらった恩もある。ここは正々堂々、引き受けるのが礼儀だろうと思った。
「オウ。ただし、テメーが負けたら今後一切、ホムンクルスと吸血鬼に関わるんじゃねェ」
「はあ!?カミロに決められるような事じゃないでしょ……!」
「だが負けられなくなっただろ?」
「――ふうん。あっそ。私の性格、よぉっく知ってるみたいね」
「おーおー。ズイブン昔、よぉっく似たのとやり合ったからな」
数秒のあいだ、私とカミロのあいだに火花が散る。
私の意地っ張りの部分を突っついてくるなんて。そうなの。従う義務はないだろうけど―そういうコト言われるとムキになっちゃうのが私の可愛いところなのよ。
「みんな、行こう」
私はカミロから視線を外し、兄弟が消えた地下へ進む。
「あの翼が厄介だなー。船の外に出られたらマズくないか?」
「あ!じゃあじゃあー!おれたちドラゴン持ってくるよ!ジークさん達は、先に行ってて!」
案じるアルスに、フュルベールくんが元気な挙手で提案した。なるほど、せっかく五人もいるんだから、わざわざ全員でぞろぞろ追うことは無いわね。
「そっちで捕まえられたらそれはそれで問題無いし、間に合わなかったら俺たちが追う」
「いいだろう」
「……お願いしていい?」
「まっかせて!」
どれだけしっかりした街並みでも、ここが通常では人の手の届かない場所にあるのは間違い無い。
今は閉ざされているからいいけれど、ジークを除いて翼を持たない種族である私達では、あのままバルバトス兄弟に地平線の彼方まで飛び去られてしまうと、大幅な足止めを食らうことになる。ジーク一人に行ってもらうワケにもいかないしね。
という訳で、私たちは地上組(っていうのも何かヘンだけどね)と空中組の二手に別れることになった。
「えと……じゃあ、その代わりなんだけど」
互いに背を向ける直前で、フュルベールくんが、はにかみながら私を引き留めた。
「万が一の為に……魔力を分けてほしい」
あー。君たちもそういう感じ。
私ももう慣れてきたもので、特に抵抗も無い。協力してもらっている立場だしね、何に使うかはわかんないけど惜しまないでいこう。
「分かった。えーと……どうするのがいいのかな……」
「じゃあハグで!」
「む……」
「いいよ」
何故か隣でジークが不満そうにしている。いいでしょうがよアンタはもう。あでも目の前でパートナーが同性とスキンシップしてたら気持ちの良いもんじゃないか。私だったら嫉妬で気が狂って死ぬわね。
いや、でも、変な話ね、この兄弟たちもアルス同様、下心を微塵も感じないというか、ね。
そういう欲求みたいなのがあるって認めることすら嫌……というか。私そんなんばっかだから勘違いされ易いのかな……。ここの所、ジークのお陰で変な告白は減ってるけど。
私の無限の魔力を分け与えるべく、そっと二人まとめて抱き締めた。
「え……」
――なんか。
ほんの一瞬、肩を組むように触れ合っただけなのに。
「いってきまーす!」
「行ってきます」
「き、気を付けてね……!」
私は、ジークに声を掛けられるまで、身体に残った体温に呆けていた。
「ザラ、時間が惜しい。行こう」
「ああ、う、うん……」
我に返って、地下へ続く鉄の階段を降る。
何だったんだろう。フュルベールくんとベルナールくんを近くに感じた瞬間、不思議な感覚に陥った。
ジークやアルス、ましてやビビアンやフェイスくんとも違う。一番似たものを最後に感じたのは、多分結構最近。妙な安心感だった。
多分私、あのまま放って置かれたら、二人に頬ずりしてたかもしれない。たまに思うんだけど、異様にカワイイわよね、あの兄弟。え?そう思うの私だけ?そうですか……。やっぱジークに似てるからかな~……。やだな~……。
アレ。ていうかアルスが着いて来てないぞ。と思ったら、何やらミストラルがカミロに絡んでいるようだった。アルスならすぐ追い付くだろうから、先行っちゃうわよ。
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『……どういうつもりだ、カミロ。いつものお主なら、あの娘にも快く協力してくれる筈だろう。試すなどと……今はふざけていられる状況ではない。お主もそれは承知していよう』
「あーあー、うるせぇ無機物。石くせー口で喋んな。ケイ素が伝染る」
一人と一振りの口論の板挟みになって、アルスは半ば諦めたように立ち竦んでいた。
自分の腰から提げた魔硝剣を無視して、ジークとザラに続けば良かったのだろうが。以前幻界でこの二人が永らく再会が叶わなかった旧友だと知って以来、下手に無視できないのがアルスの性分だった。
そして。何よりわざわざザラに“勝負”を持ちかけたカミロの考えに、思うところがあった。
「なー、ミストラル。多分だけどさ……俺がカミロでも、似たようなコトするかも」
『なぬぅ!?お主にも底辺ギャンブラーの血が流れているというのか、アルスよ……!』
「そうじゃねーけど……」
カミロという男の性格を鑑みるに、あまり具体的に口にはしないほうがいいだろうなと、アルスは直感した。その証拠に、ちらと視線で窺っただけで、不機嫌そうに眉を顰められた。
「クソガキ、テメ~も知ったようなツラすんじゃねえ。このオレ様の崇高なる意志を推し量るとか百年早ぇーんだよ」
「はいはいそりゃ失礼しました。けどよオッサン、あんた、偽悪もほどほどにしねーと、一番大事なヤツに愛想尽かされても知らねーぞ?」
今は忠告だけに留めておくのが最善だろうと判断した。
(ザラを危ない目に遭わせたくないから、グリムヴェルトから手を引かせたいってのは分かるけどさ。)
丸きり不器用なカミロの愛情の裏返しに、アルスは呆れるばかりだった。どれだけ思い遣っても、本人に伝わらなければ意味がないと思うのだが、と。
自分なら何もかも正直に打ち明けて、その上で双方納得する形で落ち着くように、譲歩し合う。
実際に今もアルスはそうして、ザラに協力しながらも、もし本当にどうにもならなかったら、トドメは自分に任せるよう約束している。
それが出来ないのがこのクズ聖人カミロなのだろう。カミロはアルスの指摘に更に気分を悪くしたらしく、
「ムカつくガキだ。てめえの若ェ頃にそっくりだなァ、ミストラルさんよ。てんでデリカシーのねえサイコパス気質とかなっ」
「あ痛っ!?」
とうとうデコピンで直接的に不満をぶつけた。
「ケッ。胸糞悪ィ親子だ。つーかテメーラ一族は全員クソッタレだ」
カミロは背中を向けて、路傍の石を乱暴に蹴り上げた。こうして感情を隠せないからこそ、いつも酒に酔って、悪態をついていた。
『アルスは我に比べたらかなり繊細で分別のある子に育ったと思うぞ』
「うるせーってんだよッ」
「あだっ!今のは俺じゃないじゃんかよぉ!」
「テメーの所持品のツケだボケ」
聖人のデコピンはかなり痛い。アルスが数少ない時間で学んだことの一つだった。
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・気が付くとすぐに男だらけになるけどその変わりたまに出てくる女子が十人分の可愛さしてるからいいか。
・他のアイテムを集める話も書こうと思ったのですがおつかいクエストなのにどれもこの話と同じくらいの長さになりそうなのでバッサリカットしたいと思います。そのうち番外編で追加したい。