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無限の少女と魔界の錬金術師  作者: 安藤源龍
3.双子とホムンクルスと、時々オトン。
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ザラと雪の皇帝・3




 カミロと私たちは、ケネスさんに王宮前のテントの中まで案内された。

 魔法で灯された硝子の暖炉の前に立つと、それまで忘れていた身体の冷たさが刺すように襲ってきた。

 私とアルスが騎士の人から受け取ったやたら甘くてネットリしたコーヒーを啜るいっぽうで、カミロはジークを連れだって、オリバーくん含めたいかにも国の重鎮が集まっていそうな大きなテーブルで何やら会議していた。

「魔族のガキ、錬金術でそれ増やせ。いいな」

 会話の合間から聞こえてきたのは、ジークへの指示だった。なるほど。

 その間にも――テントに続々と担架が運ばれてくる。血の気の無い表情で魘されている獣人に追随する療術士(ヒーラー)たちの中に、見知った姿があった。

「グレン!」

「――ザラ、アルスくん!手が空いてるなら、手伝って!」

 どこかでロザリーとデートしている筈のグレンだった。

 滲む汗と、本人のものではなく、どうやら被害者たちの返り血に染まった彼女は、こちらに気づくと早速私たちを呼び止めて手招きをした。私はアルスと目で合図を送り合い、袖をたくし上げながら、グレンと共にベッドが並ぶスペースまで駆ける。

「アルスくん、そこにある私の鞄と、毛布を取って!」

「了解!」

「ザラ、ちょっと、この人に声をかけ続けていてあげて」

「う、うん!」

 グレンに従い、私は今しがたベッドに横たえられた獣人の女性の手を握る。

 首から大量に出血し、身体はとても冷たい。当の本人は痛がって苦しんでいるというよりも何か――自分の中に侵入してきているものに怯え抗うように、イヤイヤと叫んで、グレンを拒絶する。女性の手を握る私の手にも、自然と力がこもる。

「お、大人しくしてください……!大丈夫ですから!」

「いや、いやぁッ……!!わ、私――ワタシ、は――ニンゲン、ニンゲンなの……!!来ないで、来ないでぇ!!やめてェェェ!!」

「しっかり気を保って!……ア、アルス、この人を抑えて……!」

 グレンが治療術の準備を始めようにも、この女性は今にも暴れて脱走しそうな勢いだ。とてもじゃないが、私一人で落ち着かせることができない。

 戻ってきてくれたアルスが両腕を塞いでも、それでも振り払われてしまう。こんなに怪我を負っている人のどこにこんな力が残っているというのか。

「何なんだコレ、さっきもこんなのだったぞ!」

「ウェンディゴ化が始まってるんだ……精霊に魂を乗っ取られて、人肉を欲するようになる」

「グレン……!」

「ごめん、もうすぐ終わる……!」

 ようやく二人がかりで女性を抑えつけ、グレンの詠唱を待つ。

「――“清流を噛み砕く豚よ、生命の鏃を吐き出せ。その身を仮初の棺に葬り、夜明け待つ安寧の闇へ導かん”」

 詠唱が終わり魔法陣が収束すると、女性はがく、と、シーツの中に墜落するように気絶した。

 ――気絶?それにしては、握った手に違和感がある。……脈が無い。

「……仮死状態にした。ウェンディゴ憑きに噛まれた人には――今のところ、それしかないんだ」

 放って置けばウェンディゴ化が進み、城下町でそうしていたのと同じように、何の罪もない町のひとびとを襲う。

 グレンの言い方から察するに、噛み傷のような怪我は癒せても、ウェンディゴ化じたいに対しては効果的な手段が無いらしい。

 オリバーくんが、カミロが取り出した特効薬……のようなものを素直に受け入れる筈だ。他で眠っているひとたちも、同じようにしたのだろうか。

 それを行い続けるグレンの精神状態を想像したら、ぞっとしなかった。

「理屈は、わかるけど……!もっ……元に戻せる……よね……!?」

「当たり前だろ。私が命に代えても――全員元通りにしてみせる」

 グレンの視線に既に迷いは無かった。杖を握ったまま額の汗を拭うと、すぐさま次に運ばれてきた人のもとへ向かおうとする。グレンが言うなら、間違いはないだろう。

 けど――こうするしかないの?

「ザラ……これ、捨ててきて……」

 後ろでに私に真っ赤な包帯とガーゼを渡そうとするグレンの目が、疲労でじっとりと据わっているのに気づく。

「グレン!あなたが倒れそうじゃない!」

「ただの……魔力切れだから。回復薬(ポーション)で何とかする」

「休憩しなきゃだめだよ……!」

「人手が足りないんだ。私が休んでる暇なんか無いよ」

 一歩進むのにも苦労しているようなグレンの身体を支え、せめて椅子にでもと思って引き寄せようとしても、頑なに拒まれる。アルスもとっくに他の療術士さんの手伝いに行ってしまった。

 どうしようかと思っていると、テントの幕を潜って、会議を終えたらしいカミロがグレンを一瞥した。

「十分だ、オレが代わる」

 カミロは顎先で、“だからそこの女は茶でも何でも飲んでこい”と示した。

「……誰?」

「私の知り合い。頼りになる人だよ。ここはカミロの言葉に甘えて、グレンは少しでもいいから休もう。ね?」

 ちなみにジークの姿は無い。……自分のやるべき事をやっているのだろう。

 それでもグレンは譲らない。私とカミロを無視して通り過ぎようとする。

「引っ込めっつってんだ役立たず!患者より先に癒やし手がくたばってどうする、タコ!」

 そんな彼女を、カミロが怒鳴りつけた。聞いたこともないカミロの荒々しい怒号に、私だけでなく、遠くのアルスや初対面のグレンでさえ面喰っていた。

「……でも、私は……一人でも多く……助けたいんだ……!私がやらなきゃ!」

「驕るんじゃねえガキ。命の危機を感じて死に物狂いで暴れる患者が、たとえ泣き叫ぼうが血反吐吐き散らそうが、オレたちは治療を続けなきゃなんねんだよ。人助けなんて生易しいモンじゃねえ、ケンカだ、命のやり取りだ。それをテメエは、お綺麗な自己犠牲で成り立たせようとしてる。恥を知りやがれ」

「……っ!」

「カミロ!グレンはそんなつもりじゃ――!」

(だァ)ってろ。テメエみてえな罪滅ぼしでやってる療術士は、いつか何もかも失うぞ。分かったらさっさと行け」

 虹彩の違う双眸が、グレンを射貫く。

 最後の“罪滅ぼし”という文句が効いたのか、グレンはそれまでがちがちに張っていた緊張を解いて、力なく肩を落として笑った。

「……はは。何だか全部お見通しみたいだね」

「グレン……カミロも心配してるだけだと思うの。言葉は最悪だけど……」

 叱咤激励したいのか罵倒したいのか分かりづらい、カミロらしい台詞だった。

 きっと、グレンの心を折ってでも、彼女に時間を与えるつもりだったんだろう。

 カミロにはそういう、偽悪的というか、人外らしく人間を試すような一面がる気がする。聖人の言葉は、無事に少女に届いたようだ。

「うん、大丈夫。分かってるよ。少し休んだら、またバリバリ働くよ」

 杖を置き、心もとない足取りで別のテントに移っていくグレンの後ろ姿を見送って、私はほっと胸を撫でおろした。

「カミロ、ありがと……」

「うるせえ。オレぁ、あの手の()()()が嫌ェなんだよ。テメーも責任持ってオレ様の手足となりやがれ」

「りょーかいです、せんせーっ!」

 こうして宣言通り、グレンが戻ってくるまでのきっかり十分間、私はカミロに奴隷のように扱われた。

 私一人じゃ何が出来るかも分からないし、無辜のひとたちの為に祈り癒しを与えるカミロの立派な姿には胸を打たれたので、大概のことは積極的に協力したけど、「酒取ってくれ」という要求に対しては頭を引っ叩いて返事にした。

 ばたばた走り回っているうちに、グレンがすっきりした表情で帰ってきた。

「グレン、もう大丈夫なの?」

「うん。色々ドーピングしてきたから、ばっちり」

 心なしかさっきより顔色がいい。ははーん、さては恋人の応援を貰ってきたわね。サムズアップにも元気が見て取れる。

「いいか、そこらに居る連中にもローテ組ませろよ。バカのひとつ覚えみてえに流れで作業しててもどうせ被害者は増えるんだからよ」

「はいはい。――ほんと、ザラはいつも面白い人を連れてるね」

 すれ違いざまにグレンに微笑まれた。確かに……変な男に囲まれている……変態サーの姫じゃん私……。

 と、そんなことより、今は目の前でどっかにテントの外へ出ようとしているおっさんが問題だ。

「カミロ、どこ行くの!」

 グレンと無事バトンタッチを終えたカミロが、王宮やオリバーくんたちがいるところとも違う場所を眺めながら、爪先で雪を蹴りあげている。

「同郷が悪さしてんだ。落とし前つけてきてやる」

 それって――その、ウェンディゴとやらに直談判に行くと?この中を?酔っ払ってほぼ戦闘力皆無のカミロが?

「一人じゃ危ないよ!」

「お前はここで右往左往してろ。いいな」

 まるで子供にするように厳しく言いつけられて――反論しようとしている間に、カミロはさっさと寒空の下へ消えて行ってしまった。

 えっ。ちょっ。ああやっていつもいつの間に現れたり去ったりしてるの。何それ聖人パワー!?

 追いかけようにも、それこそ今私がこの場を離れるべきではない。助けてくれ、という誰かの絞り出すような声なき悲鳴に、足が竦む。

 どうしよどうしよ、そうだ、まずはジークを呼びに行こう。




.




 ひと際慌ただしそうにしている王宮近くのテントの下に、見慣れたワインのような赤髪がちらついていた。

 つい先ほど、騎士や力自慢のギルドのハンターたちが建材を組み立てた即席の『対策本部』で、カミロと会議をしていたお偉方が詰めている場所だ。

「エルフェンバイン、セレーナ両将軍、報告を」

 垂れ幕の内側では、外套を脱いだオリバーくんが、急ごしらえの質素な腰掛に身体を降ろしながら、部下の人たちを集めて次々と命令を下している。大量の書類を手に眉根を寄せる姿は、一国の王様というよりも、企業の社長のようだ。

「はっ。先ほど、崖下に派遣した先遣隊からアンデッドらしき魔物の群れを発見したとの報告がありました。ヴァシュカ様の騎馬隊との挟撃を予定しています」

「町内に配備されていた騎士部隊だけでは人員不足が懸念されます。街道警備の者も呼び戻しましょうか」

「いや、そちらは引き続き頼む。くれぐれも殺すなよ。――マルヴァレフト!町の封鎖はまだか!」

「今しがた北門の所有者から閉門許可を取り付けました。念のため、隣町にも警戒を呼びかけます」

「感謝する。誰か、ロキ補佐官に連絡を!」

「はいはい、呼ばれなくても到着したよ。大変なことになってきたな。ちょっと通信機借りるぜー。全く、従兄使いが荒いよなー」

 鎧姿の獣人の男女、ホワイトサロンでも見かけたメガネをかけた角族の女性、不躾に部下たちを掻き分ける軍服姿のヒューマーの男性などが、目まぐるしく入れ替わり立ち替わりでオリバーくんと言葉を交わしていく。

「ハーゲンティ殿、薬の量産体制は整ったかな」

「材料が必要だ。既に解析して、効果の裏も取った。レシピに起こしたものを用意してくれ」

 そしてちゃっかり混ざっているジークを発見。この面子の中でも多分オリバーくんに次ぐ年少者だろうに、ぜんぜん迫力で見劣りしてない。老け顔なのか、威圧感ゆえなのか。

 ジークの後ろには、蝙蝠っぽい獣人の老紳士と、ローブを引きずる龍人の男性、フードを深く被った小柄な男の子が並んでオリバーくんの指示を待っている。

「そうなれば――猊下。魔導士・錬金術師・商人ギルドとの交渉をお任せしたい。代わりに教会騎士の指揮はこちらで執ろう」

「仰せのままに、我が君。警護に人数が避けない以上、私が出向くのは必然ですな。この日の為に鍛えた精鋭です、どうか陛下の下で存分に使ってやってくだされ」

「ドラゴ宰相はどこだ!元老院と諜報局に圧力をかけて来い!」

「はい、ここに。やっと私の出番ですねぇ……。そちらでも気をつけてくださいねェ、陛下……対策本部から情報漏洩なんて冗談、ワタシ笑える自信がアリマセンので……♡」

「陛下。アトリウムの王様が、帰るって言って暴れてる……」

「はあ……ユーリ殿下はどこにおられる」

「見かけてねえな。ヴァシュカ様んとこじゃねえの。大方、ダウンタウンの避難でも指揮してるんだろ」

「全くあのお方は…………」

 お。ようやく流れが止まった。今なら私が割り込んでも平気だろう、と算段をつけて、一人オリバーくんの前に躍り出た。

「私、捜してきましょうか?」

 オリバーくんはちらと私を垣間見ると、指先で眉間の皺を揉みほぐした。束の間の逡巡があり、

「うむ。……うむ。緊急事態ゆえ、頼んでも良いだろうか」

 舌を鳴らすような溜息と共に、ミッションを仰せつかった。

「任せて!」

「一人じゃ危ねえよ、俺も行く!」

 すかさず、隣のアルスも身を乗り出す。

「ありがとう。……ついでに……」

「カミロも心配だから捜すんだろ?いいぜ!」

 どっちが口実か、なんて優先度はないけどさ。

 この状況で、オリバーくんの友人として出来ることがあるなら何でもやりたい。カミロとユーリ殿下を見つけ出す、責任重大だ。

「待て、俺も同行する――」

 うん。本来はそのつもりだったんだけど。むしろジークの力を借りるためにここまで来たんだけど。

 ジークが任されていることを考えると、迂闊に仕事を放棄しろとは言えない。

「ジークにはジークのやる事があるでしょ!」

「だが……!」

「私の望みは、ヴィズの人たちを助けることだよ。ジークなら、一緒に叶えてくれるよね?」

 隣に居なくたって――互いに同じ目的に向かっていれば、背中合わせで立っているのと同じだ。

 私ははっきりと、自分の要求を伝えた。私はジークと一緒に居ることじゃなくて、一緒に戦うことを選びたい。

 こういう時、私が絶対譲らないと分かっているらしく、ジークはじっと私の瞳を見て、固く頷いた。

「……いいだろう」

「あとで何でもしてあげるから」

「要らん。これはお前への愛ゆえの奉仕だ。対価を受け取れば契約になる」

「あっそ……」

「……む。待て。今のはお前なりの建前だったな。やり直そう。何かしてくれ」

「うちクーリングオフはやってないんで」

「何ィ~ッ」

 何でコイツすぐ人の心読んでくんのよ。思ってないわよ。我儘言ったあとは合法的にジークをデートに誘えるとか思ってねーっつーの。秒で機嫌悪くなったし。

 むくれる私の代わりに、アルスがジークの肩を叩いた。

「じゃー行ってくるぜ!ザラの事は俺が守るよ」

「アルス。――彼女は、俺の大切だ」

「ん。誓うよ」

 ここもすっかり相棒然としてきたわね……。ジークとアルスはぐっと力強く腕を交わし手を握り合い、互いの視線に何かを託すように頷き合っている。

 何?キスしそうな距離じゃん、二人。

 てゆか最近、ジーク置き去りにすること多いな、マジごめん。




.




 パレードでお見かけしたユーリ殿下は、オリバーくんの側近のケネスさんが予想していた通り、城下町を川沿いに下った元・貧民街で、舞台とは打って変わった凛々しい剣幕で民を導いていた。

「怪我をした方はこちらへ!魔物は騎士団の方々が抑えてくださっています。どうか慌てず、隣に居る方の体調を気遣って差し上げてくださいまし。身体を冷やさないように、この先の宿で毛布を受け取ってください」

 遠くから笑顔で手を振っている姿を見ただけではわからなかったけど、想像していたよりももっとずっと芯の通った声だった。艶やかに掠れていて、ゆったりとした語調には摑みどころのない上品さがある。

 一方で、ユーリ殿下と共にパレードに出演していた旦那さん――ヴァシュカ殿下は、式典で着ていた礼服ではなく、勇ましい戦闘用の出で立ちで、オリバーくんと同じく部下に囲まれていた。

「ヴァシュカ様、馬の支度が整いました!」

「ユーリ、行ってくるよ」

「はい。……ふふ、あまり部下の方たちに無理をさせてはだめよ」

「約束はできないな」

「ご武運を」

「……貴女こそ。あまりお転婆をなさらぬよう」

「あら。わたくしにそのような諫言は相応しくなくってよ」

「では――互いの健闘を祈りましょう。――山を迂回して魔物に奇襲を仕掛けつつ陛下の先遣隊と合流する!馬の腕に覚えのある者は俺に続け!」

 騎馬兵を伴って軽やかに雪原へ繰り出していくヴァシュカ殿下の背中を見送るユーリ殿下が、不安そうに俯いたのを見計らって、そっと近づいて声を掛けることにした。

「ユ、ユーリ殿下、ですよね」

 名前を呼ぶと、ヴィズの姫君は雪解けのように笑った。

「まあ……。わたくしを殿下と呼ぶなんて、さては陛下のお使いの方ですね?このような状況下で、よく来てくださいました」

「は、はい。カーネリアン陛下が今すぐに来てほしいとのこりょですゅっ」

「緊張しすぎだ、ザラ」

 こんな美人の皇女さまを目の前にして緊張するなってのが無理だよ。

 エルフの特徴が色濃く現れてた黄金に輝く髪の毛、長く尖った耳、涼し気な目元、気品に満ちた小さな口元。ユーリ殿下は私を訝しむこともなく、両手で頬を覆って、大げさに困ったような素振りを見せた。お茶目な人だ。

 私はかくかくしかじか、オリバーくんから預かってきた伝言をユーリ殿下に一言一句間違えずきっちり伝えると、彼女は妖しく目を細めた。

「他国のお偉方のご機嫌取りね?わたくし、大の得意でしてよ」

「すみません、うちの王様が……」

「とんでもない。それもこれも陛下の強硬な手段が悪いのです。貴方がたも気を付けてくださいね。あの方に見初められてしまったら最後、地獄の労働生活が待っていましてよ。ああ……何故わたくしはあの時、陛下の脅しに屈して、パレードでの披露宴など承諾してしまったのでしょう……」

 お、おう……あのオリバーくんをここまで悪し様に言えるなんて。それだけでこのユーリ殿下の器もわかるというものだ……恐らく只者ではない。それだけの信頼関係の裏返しでもあるのだろうけど。

 ユーリ殿下を乗せた馬車が無事出発したのを確認すると――私とアルスは、たった今新帝通りから吹きつけてきた冷たい雪の嵐に向かって駆け出した。その上空には、光る羽根が舞っていた。

 ――カミロが居る。






.


.

.

.

・ユーリ皇女はもともとヴィズ三国のうち“霧の国”で『道化姫』と呼ばれていたご落胤で、腐り切った宮廷内のスケープゴートのような役割を担っていて、最近まで外に出たことすらありませんでした。特技は外交と慈善活動。

いっぽうのヴァシュカ王子はカーネリアン陛下の説明にもあった通り、ヴィズ三国のうち“嘆きの国”の王族で、“霧の国”との領土争いの末に敗れて、自分の一族や領民の首を差し出す代わりに捕虜となって生き延びました。実は当時、“嘆きの国”も王族を筆頭にした略奪や不正貿易等が横行しており、国営すら危ぶまれるところまで切迫していた為、ヴァシュカ王子はあえて外側からの粛清と破滅を選びました。その後祖国を裏切った見せしめとして地位の低いユーリ皇女の側仕えを務めるに至りました。特技はゲリラ戦と乗馬。


・カーネリアン陛下の部下一覧

(何せこの辺も作ったのが10年くらい前なのでメモ探し出すのに苦労しました…。)


【ケネス】…側近。スラム育ちの元チンピラ傭兵。カーネリアンが王位継承戦争やってた頃からの忠臣。ハイエルフ。

【エルフェンバイン】…軍師。官兵衛タイプ。ユキヒョウ獣人。

【セレーナ】…軍師。半兵衛タイプ。鹿獣人。

【ロキ】…陛下の遠縁で元はただのワガママ王子。超有能事務官。ヒューマー。

【マルヴァレフト】…メガネ秘書。割と新参。アトリウム国王の秘書は実の姉。ホルン族。

【ドラゴ】…魔術宰相。前王の暗殺に加担していた元反逆者。最初は陛下にも毒盛ってた。龍人。

【ジョルジオ】…国教十字軍のトップ。剣術指南のおじいちゃん。蝙蝠獣人。

【キリビ】…アサシン部隊長。嘆きの国から国王暗殺にやってきたもののあえなく捕縛され、故郷の掟に従って舌を噛もうとしたら故郷そのものを燃やされた。褐色肌黒猫獣人。

【シェムハザ】…騎士団長。元は囚人だが国の武闘大会で優勝し、勲章を授かってしまった。若い。ヒューマー。


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