こんなにうまい話があるなんて
まず、とある場所を訪れその目に飛び込んできたものは、高いビルや低いビル、形さまざな民家だった。
その中に、ちらほらと人を見かけた。
とは言えども数を数えると30人前後だろうか、皆一様にそれぞれの赴くままの服装をしている。
ふと、隣に人影が歩み寄った。
「あなたも、参加者ですか?」
声をかけられた方へ目をやると、柔和な表情を浮かべた青年の姿だった。
「は、はい。そうです」
「そうですか。なら、これに参加した理由って……。いやすみません。みなさんも、あなたも同じような理由でしょう」
彼が言う理由、それは自分にも理解ができた。
ウォール街大暴落。
思い浮かべるだけでうんざりするような言葉だが、おそらくここに集まっている者の大半はウォール街大暴落による被害者。すなわち失業者だろう。
「気にしないでください」
「いやぁ、でも、このご時世にこんなにうまい話があるなんて、ですよね」
本当に彼の言う通りだ。
参加賞で大金がもらえる上に、クリアするだけで倍以上の金が手に入るなんて、うまい話にもほどがある。
とは言えども頭ではそれを理解していても、迫り来る現実からはどうしても背を向けたくなるものだ。
明らかに怪しい話だが、どうせ人1人死ぬことのないような話だろう。そう思いこのゲームに参加した。
「ところで、お名前は?」
「ローガン。ローガン・J・エヴォリオです。今後とも宜しくお願いします」
「俺はウィズです。ウィズ・トアーレ」