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旦那様は分限者です。食後のクエストチェック。

 暑さに日々消耗しています。

 ホラー企画は二話目が仕上がりました。

 

 

 


 異世界の粉茶は大変美味だった。

 向こうでは嗜む機会がなかったので、戻ったら是非試してみたいと思う。

 口の中のさっぱり感は、しみじみ食後のお茶に向くようだ。

 

 周囲も食後のお茶を美味しい! と笑いながら飲んでいた。

 語らいもうるさくない程度に盛り上がっているようだ。

 そんな中で私はふと、しばらくクエストチェックをしていないのを思い出す。

 王都の拠点は一応押さえたし、手料理も振る舞ってみた。

 何となく、ダンジョン攻略などが新しく発生している気がしつつ、クエスト画面を展開する。


*奴隷達を見極めよう。をクリアしました。

*王都での拠点を決めよう。をクリアしました。

*料理を作ろう。をクリアしました。



 新しいクエストが発生しました。



*王都での拠点を整えよう。

 なかなか家具が揃いませんね?

 王都にも随分と問題の多い者が増えているようです。

 ……もう一度、大鉈を振るわないとまずいかもしれませんねぇ。


*親しい人に料理を振る舞おう。

 守護獣屋を営む蟷螂人の透理、露天売りの狼族エリス・バザルケット、弩級立会人の柘榴沙華、王城に仕えしリゼット・バロー、王都ギルドマスターのアメリア・キャンベルあたりなら、許可できますよ。

 貴女の中では親しい人というよりは、信を置ける者、その心根がお気に入りの人といった感じでしょうかね?


*王都ダンジョン攻略をしよう。

 くれぐれも気をつけていくのですよ?

 彩絲と雪華、ノワールとランディーニの五人パーティーしか駄目です。

 取り敢えず今は初級ダンジョンだけで満足してくださいね。


*王都を堪能しよう。

 ついでにトラブルを解決しましょう! 何てクエストはありませんよ。

 トラブルはできうる限り回避しましょうね?

 異世界ならではの品もまだまだ多いので、楽しめると思います。

オススメ異世界商品マップ参照のこと。


 クエストの優先順位が変わりました。



*王都での拠点を整えよう。


*親しい人に料理を振る舞おう。


*王都ダンジョン攻略をしよう。


*王都を堪能しよう。


*王都を出てみよう。

 彩絲と雪華のテリトリーに行くのも面白いでしょうね。

 オススメ市町村マップを参照のこと。


*拠点を作ろう。

 オススメ拠点マップを参照のこと。


 ……新しいクエストが四つもでていた!

 どうやらまだ王都を出なくてもいいらしい。

 あの王妃が大分大人しくなって、王城内が落ち着いてきているのだろうか?

 些細なトラブルで収まっている時点で、何となく察せられた。

 守護が厚いせいか、まだ異世界テンプレ鉄板の盗賊に遭遇! とか、人攫いに遭遇! はない。


 想像してはいけません。

 フラグが立ってしまいますから!


 あ、夫からの駄目出しだ。

 着々と生活環境が整いつつある屋敷は、泥棒に狙われる気がする。

 何せ各種美女を取り揃えております! という、女性だけの屋敷なのだ。

 御方の最愛という称号を、正しく捉えられない者の押しかけなどもあるかもしれない。

 ここは早めに、王都でも実力者の面々をお誘いしたいところだ。


「アリッサよ。明日は如何な予定にするかの?」


「迷っているのよ……一日、家でゆっくりしようかしら? というのが、今のところ一番かな」


「家具もあとちょっとで揃うんだけどね」


「それも優先度が高いけれど、料理を振る舞いたい方たちがいるの」


「……守護獣屋の透理、弩級立会人の柘榴沙華、王城乳母のリゼット・バローあたりかぇ?」


「あとは、狼族のバザルケットさんと、王都ギルドマスターのキャンベルさんかしら?」


「キャンベルか……」


 彩絲と雪華が眉根を寄せる。

 逆にそれ以外の人物を招くのは問題ないらしい。


「……主様が王都で一目置かれている方々と面識を得ていると周知されれば、防犯上も安心できるかと思われます」


「おぬしらに含むところがあるのは構わぬじゃろうが、キャンベルの持つ王都ギルドマスターという看板は、奥方様を守るのに悪くないものじゃぞ?」


 ランディーニの言葉を聞いて困ったように額の皺を深くした二人だが、僅かな沈黙を経て、食事に招待するメンバーの中にキャンベルを入れてもいいと了承してくれた。


「招待状とか出すべきですよね?」


「そこまで畏まる必要はないのじゃが、招待状は残るからのぅ。皆喜ぶのではないかぇ」


「オーダーではございませんが、一点ものの百合の印章が透かし彫りされたレターセットの用意がございます」


 ノワールがすかさず招待状を書くのに相応しいレターセットを出してくれた。

 便せん、カード、封筒、百合の封蝋が並べられる。

 筆記用具は万年筆だ。

 一時期凝って使っていたので、書くのは難しくない。


「招待状のマナーはどんな感じになっているのかしら?」


「カードには必要事項を、便せんには簡単な挨拶を書くのが最良とされております」


「気心知れた相手となると、カードのみの場合も多かろうて」


「目下の者にもカードのみじゃなぁ」


 では、カードとは別に挨拶を入れよう。

 親しくなってから出したとしても、やはり挨拶が必要だと思うし。


「カードは私が書きましょう。日時は何時とされますか?」


「気軽にランチがいいかしら? それともアフタヌーンティー?」


「アリッサが作るアフタヌーンティーを堪能したい!」


「和菓子特化にしてもいいのじゃぞ?」


 和菓子特化のアフタヌーンティー。

 向こうの世界でもあった。

 なかなか乙なものだったし、私らしいかもしれない。

 招待者は目新しさを喜んでくれるだろうか?

  

「では三時より開催にいたしましょう。こういった気軽なアフタヌーンティーでございましたら、一週間以降の開催でしたら問題はございません」


「なるべく早く開催したいかな。ダンジョンにも行きたいし!」


「あーやっぱり行きたいんだ?」


「ええ。彩絲と雪華、ノワールとランディーニでの五人パーティーであれば行っていいと、主人からの許可もおりたのよ!」


「さようでございますか……では不肖、私めも久しぶりに励みましょう!」


 いつも以上にノワールの気合いが入った。

 ノワールのステータスを思い出して、何となく納得ができてしまう。


「まずはカードを仕上げてまいります。一週間後の三時に、同伴者不可の記載も追記せねばなりません」


 バロー、キャンベルあたりには、自分も連れて行け! と強要する輩がいるかもしれない。

 確かに追記は必須だろう。


「ノワール。手紙のマナーブックのようなものがあれば……」


「そこまで気にする必要はないと思うけど。そういうところもアリッサの良いところだからねぇ」


 雪華にぷにぷにと頬を突かれる。

彩絲には反対側の頬を撫ぜられた。


「はい。こちらにございます」


 ノワールが素早く出してくれた本のタイトルは『誰にでもわかる、基本のお手紙マナーブック』だった。


 ぱらりと開いて目次に目を通す。


 初めてのアフタヌーンティー開催における、招待状の書き方。


 ドストライクな項目を見つけて読み始めた。


 身分が上の方へ。

 身分が下の方へ。

 身分関係なく、敬意を払っている方へ。

 そこまで呼びたくない方へ。

 できれば来てほしくない方へ。


 思わず噴いてしまった。

 異世界の招待事情も向こうと変わらないらしい。

 

「アリッサにも思う所はあるじゃろうが、守護獣屋の店主とギルドマスター、王城の者には『身分が下の方へ』を参照せねばなるまいぞ?」


 なるほど、ランディーニの中ではそんな区分らしい。

 ノワールも否定しないので、バザルケットと沙華には『身分関係なく、敬意を払っている方へ』で書いても良さそうだ。

 しみじみ不相応だと思うが、今の私は王族同等もしくはそれ以上に高貴な存在となっている。

 最低限守らねばならないこちらのルールは、やはり遵守すべきだろう。

 守らねば自分の大切な人を損ないかねないのだ。

 ささやかな拘りを捨てねば駄目な場合もある。


下書き用の紙まで出してもらって悩んでいる間に、ノワールはいかにも貴婦人の手蹟といった優美で嫋やかな文字で書かれたカードを見せてくれた。


 百合月ゆりのつき五日 三時より

 御方最愛主催のアフタヌーンティーを開催いたします。 

 お越しを心よりお待ち申し上げます。


 尚、同伴者は不可とさせていただきます。

 御方の御意志によりますので、あらかじめ御了承くださいませ。


「百合月?」


「ああ、奥方は知らなかったのぅ。一年を十二ヶ月と分けるのはあちらと変わりないのじゃが、一月と表現するのではなく、百合月、薔薇月ばらのつきといったように、花の名前で表すのじゃ、奥方の感覚では優美じゃろ?」


「そうですね。素敵です」


「カードのみの招待だと、もっと文章を盛り込むけど、手紙も添えるならこれで十分なのよね」


「ふむ。アリッサの衣装を考えるのも楽しみじゃ」


「ふふふ。その辺りはお任せします。文章は……こんな感じでどうかしら?」


 二種類の下書きを見せる。

 ふむふむ、こっくり、あらいい感じ! うむなかなかに典雅じゃの、と四人のお墨付きをもらったので、丁寧に清書した。

『誰にでもわかる、基本のお手紙マナーブック』がなければ、とてもではないが合格がもらえる文章にはならなかっただろう。

 こうしたマナーブック以外の本を読む時間を取ってもいいのかなぁと悩みつつも私は、封蝋までをきちんとこなせたらしい。

 ノワールが奴隷たちに指示をして、それぞれ招待状を届けてくれた。

 さすがに王城へは、彩絲が行ってくれた。

 返信が楽しみだ。


 ……しかし、こういったお誘いの場合、果たして返信はあるのだろうか?

 こちら側が親しくしたいと思っていても、相手側はそうでないかもしれない。

 向こうの感覚では、無視されても仕方ない薄い関係性だ。

 招待状を送って置いて今更だが、失礼に当たる気もしてくる。


 私が眉根を寄せて首を傾げていると、質問するまでもなくランディーニが返答をくれた。


「心配せずとも、御方の最愛からの誘いを疎む者はおらぬし、当然無礼にも当たらぬよ。何事にも例外はあるものじゃが、今回奥方が選んだ者らは皆良質じゃ。奥方からの好意を汲んだ喜びに満ちた返信が、きちんとあるじゃろうな」


「そうでございますね。それぞれ立場が違う方々ですが、主様と友好的な関係を保ちたいとお考えでしょう。遅くとも明日には返信があると思われます」


 夜遅い手紙は失礼ではないかと思ったが、そうでもないらしい。

 相手によっては、それだけ急ぎだったのだろうと、喜ばれる場合もあるようだ。


 ちなみに、一番早い返信は沙華から雪華に念話でもたらされた。

 

 喜んで伺います。

 手土産を楽しみにしていてくださいね!


 と、有り難くも申し訳ない返信だった。

 手土産不要も追記しておくべきだったかもしれない。

 こうなったらお土産をたっぷり持たせようと鼻息を荒くしたところで、ノワールが就寝を促してくる。

 大人しく従えば、皆も自分のベッドへと足を運んだようだった。





キーボードが暴走するので買い換えました。

タイプを変えたので、素敵に音がします。

音に急かされる感じは、今のところ執筆作業を速やかにしてくれるようです。


次回は、旦那様は考察する。私は同意する。前編(仮)の予定です。


お読み頂いてありがとうございました。

次回も引き続き宜しくお願いいたします。


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