旦那様は時々頼まれ講師。口移しのロイヤルミルクティー。
ご無沙汰しすぎていてすみません。
長くなりすぎてしまい、何度が挫けておりました。
今回は全七話分。
仕上がっていますので、週1程度のペースで投下していきます。
いじめ描写などがさらっと出てきますので、ご注意ください。
「そういえば、明日は講師の仕事が入っているんです」
心配性の夫は私から目を離したがらず、基本的には在宅仕事に勤めている。
が!
ハイスペックすぎるし、私に害さない人間へは表面上人当たりが良い。
相手がビジネス上信用できると判断すれば、講師を引き受ける時もあった。
「今回は、どこなの? って言うか、何の講師?」
早めの夕食の後。
砂糖なしのロイヤルミルクティーと生クリームとカスタードの焼き立てシュークリームを堪能しながら、問う。
「カジュアルフレンチ、ちょっと和風テイスト入ってますよ! 対セレブ女性向けの料理講師です」
「ぶふっ! そのままのタイトルで募集したら面白そうね」
「頼んできた人が、言った通りを伝えましたよ?」
「ぶはっ!」
「良い友人なんでね。引き受けました。それ以上にまぁ、色々と……思う所もあるのですよ、今回はね」
「聞いても良いなら、聞かせて欲しいかな?」
隣り合って座って食べるなんて、どれだけラブなの! と、夫の許可を得て付き合いのある女性に幾度か言われたけれど、夫がそうしないと、不機嫌になるので致し方ない。
それが当たり前になってしまえば、今のように会話の途中、なだらかだが間違いなく男性の少し骨ばった肩に頭を乗せる。
すいと顎を撫ぜられて、ペットのようだと思うも、夫の蕩けそうな笑顔を見れば、別にペットでもいいか! と思いながら、横上目遣いに見詰めた。
「……そんな目で見詰められたら、どんな秘密も話してしまいますよ」
くすくすと笑いながら額へキスが落とされるので、鼻先を擦り合わせて情を返す。
「所謂本当のセレブと言われる方々は、自分が醜態を晒せば、それだけ家名が落ちると理解していますからね。内面はさて置き、表面上はとても穏やかに和やかな講習に終始するんです」
「背負うものが多い方は大変よねぇ……」
「おや。私も結構なセレブですよ?」
「貴方は私に何も背負わせてくれないじゃない」
「ふっふ。私の愛はどんな重荷より重いと思いますけどねぇ」
「喬人さんからの愛が重いと感じる日が来ても、それを苦痛と思う日は永遠に来ませんとも!」
乙女ゲームに耽溺している身としては、夫の愛が重すぎるのを通り越して、軽く押し潰されるレベルなのは百も承知している。
同じ事を他の誰からされたとしても、苦痛を感じ脱兎のごとく逃げるだろう。
元々私は家庭環境もあって、干渉・束縛されるのが大嫌いなのだ。
「愛ですね?」
「私の愛だってなかなか重いでしょう?」
「重いと思う日は永遠に来ないでしょうけれど、私だけが許されている嬉しさを忘れることもありませんから」
不意に口移しでロイヤルミルクティーを飲まされて、そのままディープキスに雪崩れ込まれそうになり、背中を必死にタップする。
「たっぷ! たっぷ! たっぷですよ! 話の続きを所望します!」
「はいはい。では、続けましょうね。キスの続きは後にします」
「そっちは忘れて良いんだけどなぁ」
思わず生温い微笑を浮かべてしまった。
最近夜が滅法激しい。
スキンシップも過多だ。
何か悩むことがあるんだろうな、と思うも、本人がそうと決めない限り、私には話して貰えない。
だからただ、その甘さを甘受する。
それが一番、夫の悩みを払拭するのだと、認識しているからだ。
「そんな生粋のセレブな集まりに、異分子が紛れ込んでしまったんですよ」
「排除できないんだ?」
「夫達は良い人らしいんですよ。だから申し訳ないと言うよりは、可哀相で排除できない、と」
「……喬人さんの友人にしては、甘くないです?」
「夫達の天然な坊ちゃん的優しさを愛でたいんだそうで。損ないたくないと」
「うわぁ」
これ以上はないほど、夫の友人だ。
とにかく仕上がって良かったです。
次回は
旦那様は時々頼まれ講師。幼妻&妖艶妻&マダムなやーん。
になります。
年齢がばれそうなタイトルです。