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ダンジョンアタックで奴隷の見極め 彩絲編 3

 日本刀と刀の違いって? と調べた結果。

 ドロップ品を変更しました。

 なぜにもっと早く気がつかなかったのか……。

 思い出したように某日本刀擬人化ゲームをやる人間としては、もう少し日本刀について学んだ方がいいよねなどと思いつつ、作品を書くことを優先してしまう今日この頃です。




 二人と別れてから宝箱を二つ回収したようだ。

 装備に自信がない貴方に(装備耐久値を一定時間僅かに上げる腕輪)とダンゴーアタックスルー(ダンゴーの転がりアタックを一回だけ避けられる指輪)が出た。

 装備が心許なければ即座に使い、そうでなければ売却する方が良いと言われている、悪くないアイテムだった。

 王都初級ダンジョンの利点として、宝箱及びドロップアイテムは既に鑑定された状態である点が上げられる。

 残念ながら採取物の鑑定はされていないが、レベルが低い冒険者にとっては十分過ぎる有り難いシステムだろう。


 戦闘は、じめじめしたところが好きなコンビ・フロッガとダンゴーが合計六匹で現れたときも、素早く担当を決めて無駄のない連携で止めを刺していた。

 安心して見ていられる。


 一階で達成できる依頼を完成させたので、二階へ下りることにしたようだ。

 一応彩絲に確認を取ってきたので、以降確認を取らず自己判断で下りるようにと告げる。



 二階へ下りた途端、キリキリとレッドローズが襲ってきた。

 二階は武器をドロップするモンスターしかいないせいなのか、攻撃的な性質のモンスターばかりなのだ。

 

「私はキリキリを、ネマはレッドローズを、ネイは採取をお願い致しますね?」


「了解です」


「確かに承りました」


 ローレルがキリキリに向かって詠唱する。

 氷系で一番弱い呪文・アイスボールだ。

 使い手は飲み屋に行け! と言われるほどに攻撃力が弱い呪文のはずなのだが、ローレルが放ったアイスボールの威力は本来のものとかけ離れており、新人は必ず怪我をすると言われるほどのキリキリの両鎌攻撃は発動される前に、その首を跡形もなく吹き飛ばされた。

 首を失ったのを理解できないのか、しばらくふらふらとその場で体を揺らした二体は仲良く倒れ込んだ。

 ドロップアイテムは、武器としてよりも農具として使われる鎌が二本だった。


「手伝いますわ~」


 うんと軽く頷いたローレルは、ドロップアイテムを回収してネイの手伝いに回る。


「助かります。ありがとうございます。依頼達成まで残り十枚です」


「! さすがに早いわね! 本当にすばらしいわ!」


「ローレルさんが、あっという間に倒してくださったので、ちょっと焦ってしまいました」


「あらあら、うっかりしておりましたわ。次から気をつけますわね」


 二人が採取しているかまのはは、キリキリの鎌に似た形の葉で大きさは人の背丈ほどもある。

 近くにキリキリがいるとなぜか品質が良いので、余裕があるのならキリキリが生きているうちに採取を完了させたかったのだ。

 倒してからもダンジョンに死体が完全吸収されるまでに時間があるので、一般的にはその時間に採取するのが望ましいとされている。

 ただ、優秀すぎるネイは戦闘中に一人で完了させるつもりだったので、つい零してしまったのだろう。


「もぅ! 二人とも、狡いよ! 私だってお喋りしながら採取したいのに!」


 ネマのマインゴーシュは痺れ効果が付与されている。

 一撃でも与えてしまえば、モンスターは痺れて動けなくなってしまうので、二人とも安心して戦闘を任せているのだ。

 ただネマの体に合わせたマインゴーシュなので、与える傷はどうしても小さくなってしまう。

 ゆえに、一瞬で全身を麻痺させられないケースもある。

 今回がそれだ。

 ネマは余裕を持って距離を取っているが、レッドローズの触手がまだ数本うねっている。

 採取の時間が取れるのは有り難いのだが、ネマとしては物申してしまいたくなるのだろう。

 二人が和気藹々としているだけに。


「ネマ姉のおかげで、ろーずの採取時間が多く取れる。おかげでかまのはの採取も終わった。普通は一回の戦闘で採取依頼が完了できるほど余裕はないはずなのに。感謝している」


「もうもう! 解ってるってば! 仲良しの二人が羨ましいだけなのっ!」


 拗ねているネマを見るローレルの眼差しは優しい。

 これを今はこの場にいない二人がやった日には冷徹に見下ろすだろう。


「よし、これで、とどめっと!」


 レッドローズの弱点である正面の大口おおぐちにマインゴーシュを叩き込む。

 死を覚悟したレッドローズによる、最後の種飛ばし攻撃も痺れが回っていて勢いがない。

 マインゴーシュを巧みに使い高確率で爆発する種を素早く弾きながら、閉じられなくなってしまった口の中を蹂躙した。

 きぃよぇええええ! と激しい断末魔の尾を引かせながら、レッドローズがその身を痙攣させる。

 隣にいたレッドローズも、痺れからくる震えではないだろう震えで全身を波打たせた。


「もういっちょ!」


 全く同じ流れでもう一体のレッドローズの弱点を勢いもよく攻撃したネマが、ドロップアイテムである鞭二本を回収し、手早く人間と変わらないレッドローズの赤い体液を、丁寧に拭い取りながら、採取状況を確認に来た。


「うん! 終わったよ、っと。採取はどう?」


「ネマ姉が良い感じに引き延ばしてくれたので、どちらも無事採取完了。ありがとう。ローレルさんも、ありがとうございます。余裕を持って採取できました」


「私の手伝いはいらなかったみたいだけど、そう言ってもらえると頑張った甲斐があるわ。ネマもお疲れ様でしたわね」


「まだまだいけるよ! ……二階の依頼って、あと何があったっけ?」


 ろーずを一ダース。

 棘を取った状態の、良質な物。


 かまのはを五十枚。

 なるべく損傷のない、良質な物。


 の、二件は達成した。

 これで半分だ。


 そしてこの階で達成できる依頼はあと一つ。


「ムライの日本刀五本、もしくは大太刀一本」


「日本刀で達成になりますわね。彼女たちの戻りを待つのも兼ねて、大太刀を狙うのも有りだと思いますけれども……」


 三人の間に沈黙が訪れる。

 同じことを思っているのだろう。

 別に二人が戻ってこなくてもいいと。

 むしろ戻ってきてほしくないと。


「……主様の喜ぶお顔が見たいので、大太刀を狙いたいです」


「そういう理由なら納得できるね」


「ええ。むしろ喜んで頑張れますわね」


「……て! 呼び水になったのかなぁ? ムライが三体来たよ!」


「では、一体ずつ片付けましょうか」


 言いながらもローレルが放った呪文はアイスボールと見せかけたクラッシュボールだ。

 アイスボールよりも威力はないが、モンスターの動きを一定時間止められる効果がある。

 人型モンスター・ムライの弱点は人の心臓と同じ位置にある核。

 動けない間にそれを砕いてしまえばいい。

 現時点では三体とも見事その場に縫い止められている。


「よっ! ほーうっと!」


 ネマは何と振り下ろされた日本刀の上に乗り、ネマを振り払おうと一度高く持ち上げ直した日本刀を滑り台にして勢いをつけて、正確にマインゴーシュを心臓部分へと打ち込んだのだ。

 根元まで突き入れれば、まずは日本刀がムライの手から滑り落ち、続いて体も崩れ落ちた。

 残念ながらドロップアイテムは日本刀一本だった。

 初級ダンジョンは質の良し悪しはさて置き、ドロップ率は低くないのだが、倒す敵全てがアイテムドロップするのは出来すぎている。


「さすがは、ネマ姉! 私も頑張らないと!」


 戦闘は苦手だと申し訳なさそうに申告するネイだったが、少なくとも先ほど醜態をさらした男性冒険者よりはよほど優秀だった。

 足止めされているムライを揶揄うかのように足下でステップを踏んで、視界を混乱させる。

 腰をかがめたムライはネイを掴もうとして躍起になった。

 間違えて自分の腕を掴んでしまい、苛立たしげに地面に向かって日本刀を打ち付ける。

 その日本刀を足場にしてネイはムライの頭上へ仁王立ちになった。

 なかなか笑いを誘う光景だった。

 侮辱されたと感じたのかムライの日本刀が何と、己の頭ごとネイを切ろうとする。

 当然ネイは素早く避けたので、日本刀はムライの頭へ深く刺さってしまった。

 慌てて食い込んだ刃を抜こうとする隙を突いたネイが、ソードブレイカーの力を存分に発揮させてムライの武器を完全破壊する。

 ショックにか全身を硬直させてしまったムライの核を狙いすまして放った一撃は、呆気なくムライを絶命させた。


「あ! 大太刀が出ました!」


 武器を砕いたのが良かったのだろうか?

 ネイ自身の運が良いのだろうか?

 運気上昇系の装備は、クレアしかつけていない。

 それとも比較的じめじめした環境なので、ローレルのチョーカーが威力を発揮しているのかもしれない。

 何にせよ、その幸運と同じだけの不運が待っていないといいのだが。

 クレア&ネラと行動しなければならないのが不運ならば、この運の良さも当然といえるけれども。


「おぉ! 凄いね!」


「私の方は残念ながら、日本刀でしたわね」


 ローレルが肩を竦めると、たゆんと大きな胸が揺れる。

 ネマがこっそり自分の胸を持ち上げてしょんぼりしていた。


 ローレルの戦闘は、なかなかにえげつなかった。

 水の最弱呪文・ウォーターボールを口・鼻・眼球のない瞳に向かって延々と放ち続けて、ムライを溺死させたのだ。

 ムライ自身もそんな死に方をするなんて想像もできなかったのだろう。

 虚空を湛えているはずの瞳が驚愕に白黒していたようにも感じられた。

 避けようと掌でそれぞれの部位を隠そうとすれば、威力の上がったウォーターボールで弾かれるのだ。

 どうしようかと考える間もなく大量の水に襲われ、翻弄され、殺された。

 

 さすがに水系魔法に長けた人魚族だと、背筋を這い上がる悍ましさとともに賞賛する。


 大太刀も無事入手できて依頼を達成させた三人は、料理が好きなアリッサが使うかもしれないからと、クウェがいる状態でたっぷりとるみくを採取して三階へと降りていく。

 リス族と外見大きさがよく似ているクウェのアイテムは弓だった。

 サイズがちょうど良いからと弓をサブウェポンにしようか相談するネマとネイの様子は愛らしく、ついローレルと同じ慈愛の眼差しで二人を見詰めてしまった。

 



 そろそろギルドに戻った二人を戻さないといかんと思いつつ、三人のためにもこのまま戻らせない方がいいんじゃないかと思いつつ。

 方向性は決まっているのですが、まだ着地点を決めていないので、試行錯誤しています。


 次回は、ダンジョンアタックで奴隷の見極め 彩絲編 4 の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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