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旦那様は実家がお嫌い。後篇

 読みやすいように色々と模索中。

 なかなか思うとおりに行かなくて申し訳ないです。

 今回も性的に不愉快な描写や、薄いですが虐待の描写がありますので、読まれる際にはご注意ください。

 私は夫の勇姿を堪能すべく、ゆったりしたキルトのファブリックが掛けられた革のソファに腰深く座り直した。

 専門職人の手による繊細な刺繍は肌に優しく、荒んだ気持ちを宥めてくれる。


「警察呼んだから帰ってください。帰りの交通費はありますか?」 


 理解ある縁戚が遠方に隔離してくれているので、都心に出てくるのはかなり難しいはずでした。

 私達への慰謝料でそれこそ、無賃乗車を疑うレベルの金銭状態なので余計です。


『お前も一緒じゃないと帰らないぞ!』


『そうよ! いえ。あの女を追い出して、この家で家族仲良く暮らしましょう?』


『料理の腕前上がったのよ!』


『夜のご奉仕は、私があんな子供ガキより上手にするから!』


 近親相姦願望を持つのは自由ですが、実行していいのは二次の世界だけだと思います。


「あ……来たみたいですね。縁戚の方にも連絡を入れていますから、きちんとお詫びをして、今まで以上に尽くしてくださいね」


 接近禁止を破る度に、罰則と罰金が課せられるように手配がすんでいます。

 豪農の縁戚は徹底した等価交換意識の持ち主なので、働けば働くほど、認めてくれる方です。

 心の底から反省すれば、一般的な家族の交流を持つ援助すらしてくれるでしょう。

 夫もお世話になった手前、それを拒否できません。


 が。


 その、真逆を行く義家族達に取っては地獄のような生活でしかないようです。


『俺達を見捨てるのかぁあああ!』


 義父の絶叫が夜の住宅地に響き渡ります。

 明日は周辺宅へお詫びに伺った方が良さそうです。


「毎回お手数おかけして申し訳ありません」


 迅速に駆けつけてくれた警察官は、夫の後輩でした。

 今も精神病院から出てこられない元彼女から長い期間ストーカーされた経験があるので、義実家への腹立ちは人一倍強く、毎回きっちりと縁戚の迎えが来るまで、確保していれくれます。


「お気になさらず。恋人は選べますが、親姉妹は選べませんからねぇ」


 好青年以外の何者でもない笑顔も、義家族へ向けられるのは年若さを感じさせない堂々たる警官の厳しい表情です。



 パトカーの中へ全員が押し込められ、後輩と窓から顔を覗かせていたらしいご近所の方へ軽い会釈をした夫は、扉を閉めると厳重に施錠をし直した。


「お疲れ様でした」


 玄関先で労われば、夫が私の身体を抱きしめる。


「カレー少し冷めちゃいましたから、温めますか?」


「いいえ。大丈夫です。代わりに、コーヒーを淹れて貰えます?」


「ええ、勿論」


 私は夫をソファに座らせると、夫自らブレンドしたお気に入りのコーヒーを濃い目に淹れる。

 時間がある時はミルで引くところから始めるが、急ぐ時はドリップ式を採用した。

 夫はたっぷり入ったコーヒーの豊かな香りを嗅いでから、一口口に含む。

 目端に残っていた緊張と嫌悪がやわらかくほぐれた。


「……昔から気持ち悪かったですけど、最近は度を越していますねぇ」


 深々とした溜息が零れる。


「正直に言っていいなら、妹さんが特にドン引きだわ」


「……もう少し丁寧口調でお願いします」


「そう? こっちの方がいいかなぁと思ったんだけど」


「迷うところなんですけどね。コーヒーを飲み終えて、食事を再開した頃合でお願いしたいです」


「わかりました」


 自分用に淹れた少なめのカフェオレには、砂糖が少量入っていた。

 微かな甘味も脳が痺れるようだ。

 見ているだけだった私も、随分と緊張を強いられていたらしい。


「本当にお互い家族には恵まれませんでしたからね……喬人さんとの子供なら欲しい気もしますけれど。どうにも踏み切れなくてすみません」


「それは私も同じです。貴女に似た子なら溺愛しそうですし、自分に似た子なら接し方を迷います。万が一アレらに似ていた日には、気持ち悪いアレらと同類になって虐待しかねません」


 虐待にも色々ある。

 私の場合は解りやすいものだったが、夫に向けられた執着モノは虐待とは判断されにくい。

 夫本人の意思が揺るがなかったのと、縁戚の理解が功をそうしたのだ。

 度を越した過干渉は虐待なのだと、もっと広く認知されて欲しい。

 夫のように苦労する人は少ない方がいいはずだ。

 今でこそ自由にしている夫だが、幼い頃は自分が壊れそうになった事も少なくなかったという。

 私が夫にふさわしくない人間だから、と離れようとした時に色々と話してくれた。


「まぁ、麻莉彩はまだ若いですからね。ゆっくりといきましょう」

「ええ。そうしましょう」


 兄弟に性的なイタズラをされていたせいで、どうにも性行為というものに抵抗がある。

 夫はどこまでも優しく、心地良い時間と安堵を与えてくれるので、いつかは綺麗に払拭されそうだが、今はまだ難しかった。


 次は、旦那様は義実家が更にお嫌い、となります。

 前後篇になるか微妙な感じです。


 少々体調が思わしくないので、更新日は未定とさせていただきます。

 完結まで書き続けますので、その点は安心してお待ちいただければありがたいです。

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