旦那様は奴隷を推奨しています。げ、幻獣ですとぅ!
ステータス決めるのが凄く楽しくて調子に乗った気がします。
出てくる妖精や幻獣の特性など、よく知られるものとは違ったりするかもしれませんが、この作品内だけの設定と言うことでご理解頂けると有り難いです。
「それでは、順番にご説明致します。まずは、妖精シルキー。家事妖精としてあちらの世界でも知られているとか?」
「ええ。そうですね。あちらの世界のとある国では、確かに認識されているようですね」
紅茶好きなメシマズ国では妖精が広く認識されている。
シルキーがいればメシマズ国じゃないはず? との議題が出た際に、料理上手のシルキーですら慣らされたメシマズ味覚を矯正できないとか、かの国のシルキーに限りメシマズ標準装備とされているとか、そもそもシルキー料理したっけ? などと、壮絶な議論がなされたとか。
『家事妖精シルキーでございます。現在闇色の薔薇で一番能力が高いシルキーということで、私が立候補させて頂きました。どうか、末永くお使い下さいませ』
足首まであるロングスカートの裾を摘まみ深々と頭を下げるシルキーは、知的系熟練メイドといった雰囲気を纏っている。
私好みの清楚系メイド服が眼福だ。
シニョンにつけられたシンプルなヘッドドレスが最高すぎる。
「仕えた家は三家と少ないですが、それぞれ百年以上勤めあげておりますので、妖精特有の気まぐれさは皆無に等しいでしょう。その点でもお手を煩わせることはないと思われます」
「シルキーは妖精の特性として家事が好きなだけであって、必ずしも主人に従順なわけじゃないから、熟練はありがたいと思うわ」
「え! そうなの?」
「はい。個体差がありますが、新人シルキーは自分が好ましい形での家事を優先してしまうのです。それがたまたま主人の嗜好にあえば問題ないのですが、そうでなかった場合は厄介な存在となってしまう場合もあるのです」
知らない話だった。
この世界限定のシルキー話かもしれないが、一緒に生活するなら特性について知っておくのが雇い主の義務だろう。
「えーと。妖精には、人と同じようなスキルってあるの? あ、後は種族的に駄目なこととか嬉しいこととかも教えて欲しいです」
「本人達に聞かないのですか?」
「遠慮して言えないこともあるでしょう?」
主に対して不敬とか、契約を結ぶ前だとしても、否、前だからこそ気にするだろう。
優秀な妖精なら尚のこと。
「それではまず、ステータスから。こちらをご覧下さい」
妖精 シルキー
HP 10000
MP 10000
SP 10000
スキル サバイバル料理
どんな過酷な状況でも、味&栄養的に満足できる料理が出せる。
家庭料理 一般的な料理を美味しく料理できる。
宮廷料理 高級料理を美味しく料理できる。
特殊清掃 アンデット系を殲滅させる攻撃スキル。
休憩小屋召喚 高級宿屋レベルの休憩小屋1軒を召喚できる。結界機能搭載。
育児 人間よりも良い子に育てられるらしい。
介護 受けた者は死の間際まで幸福でいられるらしい。
救急 一通りの応急手当ができる。使用後休憩小屋で休憩させれば完治。
指導 主に家事指導。戦闘指導もできる。スパルタ。
魔法 *生活魔法 家事妖精につき、類を見ない充実の生活魔法。
着火 火を付けることができる。火種を必要としない。
浄水 無制限に水を生み出すことができる。
汚れた水の浄化、塩水を飲料水に変換も可能。
清掃 各種道具を使いこなし短時間で清掃が行える。
風呂 数人がゆったり入れる浴槽を短時間で設置できる。簡易結界&覗き防止
機能付。シャンプー、リンス、ボディーソープ、入浴剤常備。
灯火 明かりを灯すことができる。明るさの調節も可能。
霊的なものを寄せ付けない効果有り。
洗濯 武器防具まで新品仕上げ。
熟成魔法 望むアイテムを一瞬で熟成できる。
発酵魔法 望むアイテムを一瞬で発酵できる。
蟲殺魔法 敷地内の害虫を瞬殺する。蟲系モンスターにも有効。
固有スキル 素材鑑定 素材の良し悪しを判別できる。
家結界 庭を含めた敷地内を結界で保護できる。
想像料理
主の想像した料理を作れる。主との信頼関係で出来が左右される
明朗会計 家計を良い感じにやりくりしてくれる。節約上手。
倉庫 アイテムボックス。時間停止&瞬間選択機能搭載。無限収納。
称号 家事を極めし者。規格外家事妖精。戦える家事妖精。アンデットに恐れられし者。
蟲殺しを極めし者。
「……シルキー?」
『お仕え致しました主に冒険者の方が、お前がいれば冒険中も快適に過ごせるだろうと申されまして……励みました』
「普通はどれだけ励んで取得できないから! 攻撃スキルも魔法も無理だから! 種族的に!」
「ええ。彼女は既に家事妖精の域を逸脱しております。また彼女のスキルや魔法には彼女独自の進化を遂げたものすらございます。故にアリッサ様にご推薦申し上げるのです」
「蟲&蟲系モンスター瞬殺は嬉しいなぁ……ダンジョン攻略にシルキー連れて行くとか、どんなラノベだろう……」
彩絲と雪華とシルキーがいれば、どんなダンジョンも攻略できる気がしてきたのは気のせいでもないだろう。
攻撃は二人が、それ以外は全部シルキーが受け持ってくれそうだ。
「妖精・幻獣との契約は名付けで成立いたしますので、全員説明後に名前をお決め下さいませ」
断られるとは思っていない口調。
最初にどどーんとハイスペックな人材を持ってくるという手を使われたのかもしれないが、このシルキーとはぜひとも契約したい。
スペックもさることながら、性格が良さそうだ。
彩絲と雪華や奴隷達が万が一暴走しても、一人で止めてくれる予感がある。
「続いて、妖精ブラックオウル。妖精の中でも一二を誇る頭の良さで知られている種族です。また索敵上手なので旅のお供にはもってこいですね」
『知謀を求められてとのこと。ぜひとも我をお使い下さいませ。アリッサ様の御身は勿論、大切な方々も護れるように知恵を絞りましょうぞ!』
真っ黒いメンフクロウが、ぐるりと頭を回す。
可愛い。
凄く可愛い。
もっさもっさにしたいが、許して貰えるだろうか。
私の興奮を察知したのかシルキーが、ささっと紅茶の入ったカップを差し出してくれる。
どうやら沈静効果のあるハーブティーだったようだ。
香りを嗅いだだけで、めらっと燃え上がった駄目な欲望を瞬時に消してくれた。
「それでは、ステータスはこちらになります」
空中に浮かび上がるステータウインドウは、黒薔薇の飾りがされていた。
妖精 ブラックオウル
HP 1000
MP 50000
SP 1000
スキル 交渉 交渉事を有利に進められる。
隠蔽 都合の悪い事を隠し通せる。
封音 音を消す。漏れないようにする。密談時に使用。
奇襲 敵に多大な損傷を与えられる。
速攻 必ず先制攻撃ができる。
暗殺 対人殺傷に大ダメージ。
隠密 敵殺傷に大ダメージ。低確率だが即死効果有。
解錠 どんな鍵でもダメージなく開けられます。
詳細鑑定 真偽で気になった点を徹底的に暴ける。
魔法 *風魔法
ウインドアロー 敵を風の矢で貫く。単体絶大ダメージ。
ウインドカッター 敵を風で切り裂く。連続ダメージを与えられる。範囲。
ウインドウォール 風の壁で敵から身を守る。全体。
ウインドサークル 風の力で敵を攻撃範囲から飛ばす。範囲。
ウインドウイング 空を飛ばすことができる。一部の罠を100%回避。単体
ウインドクリーン 空気系(毒霧、眠り香他)のダメージを回復。単体
転移魔法 主もしくは自分が一度行った場所なら異世界でも転移できる。
混乱魔法 知能が高い者にほど絶大な効果がある。混乱死、混乱衰弱に至る。
固有スキル 知謀 あらゆる場面に置いて主に都合の良い最高の提案ができる。
索敵 モンスター他敵対心を持つ者をいち早く察知できる。
危険度が高ければ高いほど、遠くから察知可能。
暗視 暗闇でも明瞭に見える。
遠視 遠くても明瞭に見える。
真偽 人や物の価値を明確に見抜く。
称号 異世界を行き来し者。風魔法を極めし者。完全隠蔽ブラックオウル。
時空制御師の友人。
当然だが称号に釘付けになった。
「……主人がお世話になっております」
『ふおっふおっふおっ。黙っておってすまんのぅ。御方の奥方様』
「あちらでもお目にかかったことがありますよね?」
動物系カフェに行きたいと溜息をついていた時、夫が連れてきてくれた一羽のクロメンフクロウ。
頭が良くて人懐っこくて可愛くて、もさもさも散々させて貰った。
今にして思えば、夫は友人だから安心して連れてきたのだろう。
普通のフクロウのように私を無闇に傷付けたりしないからと。
『その節は可愛がって頂きましたなぁ。奥方様の撫で方は大変に至福でございました故、今後もどうぞ遠慮なく、えー……もふり? くだされ』
何時の間にか薄いクッションが置かれていた膝の上にふわっさあっと飛んできたので、そっと頭を撫でる。
つるんとした毛の感触が最高だ。
「……ブラックオウル? 貴女、称号も転移魔法も隠蔽していましたね?」
『うむ。そちは御方を妙に恐れておるからの』
「優しい人ですよ? ……身内には」
「はい。とてもよく、存じ上げております。私などの考えなぞ遠く及ばぬ方だとも! だからこそ、畏れ敬うのです。今回はとても良いご縁を繋いで頂きましたから、自ら断ち切らぬように誠心誠意手配致しますので、アリッサ様には、どうかご安心下さいませ」
夫を知って畏れ敬うのならば問題はない。
ブラックオウルもそれを見越した上で、称号などを隠したのだろう。
余計な気を遣わせないために。
それはノースロップに対する信頼の証に違いない。
「さすがは、闇色の薔薇の主。素晴らしく良い人材を用意しましたね?」
「ありがとうございます。人材の質という点、またアリッサ様に相応しい人材を揃えるという点では、百合の佇まいの主も同じだったと思われます。ただ彼女は若い。若さ故に御方を理解し得なかった……」
「それ以前の問題でしょう。客を侮った挙げ句偽ろうとするなどとは!」
「無論でございます。驕り高ぶった者の愚かなる選択であることは間違いございません。同業者として、アリッサ様とナルディエーロ様には深くお詫び申し上げます」
深々と頭を下げられる。
プライドを持つならば、こういった風に持って欲しい。
少なくとも私はそう思う。
「ノースロップさんが謝罪する必要はないと思いますが、謝罪を受け取ります。百合の佇まいを二度と利用することはありませんが、こちらにはまた足を運びたいと思っておりますから」
「光栄の極み。ぜひとも宜しくお願い致します」
「……百合の佇まいの情報はどこまで掴んでいるの?」
「アリッサ様達があちらを出まして後、主立ったメイド達が館を辞し、館主が情報を再収集し始めたところまでです。アリッサ様達との契約が終わりました頃には、こちらにも情報開示の打診がありそうですね」
「メイド達は一生懸命だったわ。もし介入できるなら次の就職先の口利きをしてあげて欲しい。アリッサもいいかな?」
「当然! 彼女達に悪意はなかったし、館主の有り得ぬ命令には不服の色を乗せていたしね。退職は館主への抗議の意味もあるから、良質なメイドという風に紹介して貰えると嬉しいです」
「確かに承りました」
ノースロップがひらりと手を振ると彼女の肩へ漆黒の鳩が一羽止まる。
くるっぽーと鳴いた鳩は私達に向かって愛らしく頭を下げると、瞬きする間に姿を消してしまった。
「伝書鳩です。妖精ブラックピジョン。登録が必要な上数カ所のみですが、転移ができます。一連の流れを伝言しメイド達が向かうであろう従者斡旋所に向かわせました」
素晴らしくフットワークの軽い手配だ。
これで困った上司から解放されたメイド達が、今度は良い上司に恵まれればいい。
ブラックピジョンとは拠点を幾つか持つようになったり、知己ができたりした時には、何羽か契約するのも良さそうだ。
「それでは引き続き、騎獣としての紹介です。幻獣ユニコーン、幻獣バイコーン。本来は人を乗せませんし、馬車も引きませんが、アリッサ様なら喜んで乗せるし、馬車も引くと申しております」
『幻獣 ユニコーン。本来は乙女しか触れさせませんが、奥方様にはぜひ騎乗して頂きたい。浮遊魔法が使えますので、どんな重い馬車でも全力で引いてご覧に入れましょう!』
『幻獣 バイコーン。重力魔法が使える。奥方の要望にはちゃんと応える。ぜひとも契約して頂きたい』
どちらも漆黒の馬。
額には白銀に輝く、ユニコーンには1本の角、バイコーンには2本の角。
鬣と尻尾が艶やかに美しい。
大きさは世界ギネス記録を持つベルジャン種くらいだ。
どうやって乗るんだろう?
低めの脚立が必要なサイズだ。
「……どうやって乗るの?」
『後ろ向いて首に跨がって頂けますか?』
「こんな、感じ? え! ひやいっ!」
乗った途端下がった首が持ち上げられる。
首を滑り台な感じにして滑った後は、胴体の位置に尻が固定された。
『俺も同じように乗ってくれればいい。人型なら三人までは乗れる。スキル馬装と乗馬の効果で、初心者でも安全快適に乗れる』
ユニコーンに跨がれば、バイコーンが説明してくれた。
尻から頭部までを保護してくれるクッション性の高い椅子に座りながら移動している感覚だ。
振動も揺れもない。
手首には優しく馬毛が絡んでいた。
『手首の毛から、主の意思が伝わるので特に指示する必要もない。また特に指示がない場合は、周囲の景色が楽しめる安全歩行となる』
何時の間にか広くなったように錯覚する部屋の中をユニコーンがかっぽかっぽと小気味良い足を音をさせて歩く。
バイコーンは隣で説明を続けてくれる。
『馬車も二台用意してある。ノースロップがおまけにするようだ』
「我が儘な二頭が細かく注文を付けた馬車なんで、気に入って貰えると思いますよ。ステータスはこんな感じになります」
幻獣 ユニコーン
HP 5000
MP 8000
SP 1000
スキル 長距離移動 移動が長いほど疲労が軽減される。
耐寒移動 寒い場所での移動に滅法強い。
前蹴 敵に蹴りで攻撃。獣系モンスターに大ダメージ。
踏潰敵を踏み潰す攻撃。
自分より小さいモンスターに大ダメージ。
咆哮 一定時間敵の行動を停止させる。停止時間は相手の強さによる。
魔法 *光魔法
ホーリーアロー 敵を光の矢で貫く。単体絶大ダメージ。
ホーリーウォール 光の壁で敵から身を守る。全体。
ホーリーサークル 聖なる光で敵を浄化。アンデット系に大ダメージ。範囲。
浮遊魔法 物を浮かせられる。主に馬車を浮かす。敵を浮かせたりもできる。
幻影魔法 幻を見せることができる。
固有スキル 乗馬 馬に乗れない人を乗せられる。
馬装 高級馬具をつけているような快適な乗り心地を与える。
嗅鋭臭いで敵を判別できる。偽装隠蔽が通じない。
後蹴敵に蹴りで攻撃。人型モンスターに大ダメージ。
称号 スレイプニルに勝ちし者。時空制御師を乗せし者。長距離覇者。
幻獣 バイコーン
HP 5000
MP 1000
SP 5000
スキル 水中移動 水中を迅速に移動できる。馬車も濡れない。
俊足移動 早く移動している最中は疲労が軽減される。
耐熱移動 暑い場所での移動に強い。
後蹴
突進 敵に馬身をぶつけての攻撃。自分より大きいモンスターに大ダメージ。
角での攻撃が決まると即死。
嘶き 主のいないバイコーンを複数召喚できる。
魔法 *闇魔法
ダークアロー 敵を闇の矢で貫く。単体絶大ダメージ。
ダークウォール 闇の壁で敵から身を守る。全体。
ダークサークル 闇の力で敵を異界へ送り込む。範囲。
重力魔法 重力を操れる。馬車を軽くできる。敵を押し潰せる。
固有スキル 乗馬
馬装
嗅鋭
前蹴
称号 スレイプニルに勝ちし者。時空制御師を乗せし者。駿足覇者。
「あ。結構違ったりするんだ」
そして夫を乗せたことがあるんだ。
シルキー以外は関わりが深いのかな?
シルキーも接触ぐらいはしたと思うけど。
『時々に応じてメインで使う方を選んで欲しい。旅の安全を迅速に確保できると思う』
『移動手段としては当然ですが、戦闘でもお役に立てると思いますよ!』
確かに騎乗として使うだけでは勿体ない気もする。
妖精・幻獣達にフォローしてもらって、パーティーを分けてレベル上げ的なものをお願いするのもありかな?
「さて、アリッサ様。如何いたしましょう? 当館はアリッサ様のご要望にお応えできましたでしょうか?」
「ええ。素晴らしいです。要望以上ですよ! 当然全員と契約させて頂きます」
「それでは、名付けをお願い致します」
「えーと……シルキーはノワール。黒そのものを表現する言葉よ。ブラックオウルは、ランディーニ。黒百合の一品種ね。ユニコーンがホークアイ、バイコーンがモリオン。どちらも黒色の宝石なの。色で統一してみたけど……どうかしら?」
『素敵な名前をありがとうございます。今後はぜひ、ノワールとお呼び下さいませ』
『ふおっふぉ! 我に花の名前をつけるとはのぅ。全く以てセンスの良い』
『宝石ですか! 何とも華やかで煌めかしい名前ですね! 大切に致します』
『綺麗で格好良い名前を頂戴した。名に恥じぬよう努めると誓おう』
「うん。どれも似合う名前だと思うわ。アリッサは名付けのセンスがあるわよね!」
沙華にまで褒められて照れくさい。
気に入って貰えたのは本当に嬉しいのだけれど。
「それでは、名付けによって契約は無事締結致しました。一応書面にも認めましたので、ご確認下さいませ」
テーブルに置かれた書類を沙華と二人で読み込む。
基本的に名付けが完了した段階で絶対服従だそうだ。
ただし、余りに主らしくない行動や言動が続くと妖精・幻獣の方から名前を捨てて立ち去ることもあるらしい。
食事は必要ないが人と同じ物を楽しめるようだ。
またスキル等を使用すると、主のSPによって自動回復するらしい。
SPが少ない主は警戒が必要とのことだが、私には関係のない話だった。
「代金は必要ないとのことだけれど、お礼がしたいなぁ。何か欲しい物はありますか?」
「……初めての申し出でございます」
「え? そうなの? あの人は何もしなかったの!」
「御方は……仲介する報酬はあってしかるべきだから、望む物を申し出て欲しいと」
「言葉は違うけど、ちゃんとしてるのね。良かった」
疑ってごめんなさい、喬人さん!
……こちらこそ、百合の佇まいの一件は失礼致しました。
や。良い人選んで貰ったし。
さくっと因果が巡ってるみたいだから、気にしないで欲しいな!
では、麻莉彩も気にしないで下さい。
そうそう、武器・防具屋へ行く前に指輪ボックスを覗いて見て下さい。
色々なアイテムが入っていますので。
あ! そうだね。
せっかくだから、使わせて貰うよ!
ええ。それでは、また、後程に。
ありがとう!
「……アリッサ様?」
「は! すみません。ちょっと主人と会話をしてました」
「さすがの御方だわ……異世界声の念話なんて……普通はできないのよ?」
「御方でしたら何でもありなのでございましょう……アリッサ様。もしよろしければ、あちらの世界の花を頂けないでしょうか?」
アルラウネならば花は大好きだろう。
女性へのプレゼントとしても無難な一品だ。
「解りました。それでは……こちらで!」
指輪の中から、鉢植えと切り花を取り出す。
鉢植えの方はまだ蕾。
切り花はざっと1ダースな12本。
選んだ花は。
「ブラック・バカラ。向こうの世界で一番黒が強い薔薇です」
「っ! なんて美しい漆黒! こちらの世界ではこんなに黒が強い薔薇はございません! 鉢植えも切り花も、大切にしたいと思います!」
嬉しそうに微笑まれる。
アルラウネの魅了と謳われるのに相応しい、印象深い屈託のない笑顔だった。
妖精・幻獣全て漆黒を纏っています。
黒いユニコーン萌えとか、厨二病な気もしますが、そこはそれで。
次回は、旦那様は奴隷を推奨しています。指輪ボックス検索中。 の予定です。
お読み頂いてありがとうございました。
次回も引き続き宜しくお願いいたします。




