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旦那様は奴隷を推奨しています。立会人は吸血姫。 

お久しぶりです。

奴隷関連の話が落ち着くまで更新です。

スライムも書きたいんですけどね。

予告とタイトルが違っていてすみません。

書いている内に想定しない登場人物が増えてしまった結果のタイトルです。




「そうじゃ! アリッサ。あの愚か者に、我らの情報に関する漏洩防止を契約書に入れるよう指示せねばならぬな」


「……契約違反って、基本的にどんな罰があるの?」


「うーん。一応漏洩した場合は、それがどんな些末なものであっても犯罪奴隷に落ちる、っていうのが原則なんだけど……」


「抜け道があると」


「うむ」


 二人の様子から察するに館主は確実に逃れる術を持っているようだ。

 だったら最初から漏洩した場合の罰則を明確に設けておこう。

 館を訪れて、奴隷を購入した。

 その事実以外の全ての情報漏洩を禁ずる。

 漏らそうとした場合、使った器官が失われるように手配しよう。

 口頭であれば、喋れなくなる。

 文書であれば、文字が書けなくなる。

 思念であれば、理解ができなくなる。

 そんな罰則を。


「……可能かな?」


「おぉ、えげつない! あ! 褒め言葉だよ?」


「鬼畜じゃな。無論褒めておる。しかしそうなってくると犯罪奴隷に落とすよりも難しい契約となるだろう。立会人を手配させた方がよかろうな」


「いい人知ってる?」


「あ! 私知ってる。随分会ってないけど……たぶん王都にいると思うから、ちょっと捜して貰うね」


「奴か……我も手伝おう」


 部屋の中に驚くしかない数の蛇と蜘蛛が一瞬でどこから現れた。

 丁寧な対応をしてくれていた熟練であろうメイド達も瞬時に卒倒する。

 超一流の冒険者でも状況把握には多少なりとも時間を要するだろう。

 館内は恐らくそれなりの防御機構が備わっているはずだから。


「じゃあ、宜しくお願いしますね」


 蛇と蜘蛛達に向かって頭を下げると、揃って頭を下げてくれた。

 圧巻の光景だ。

 向こうでは絶対に見られない。


「どんな方なの?」


「純血種の吸血姫じゃな」


「ふおぅ!」


「あ。やっぱり凄く嬉しそうだね」


「二人もそうだけど、向こうの世界では想像上の種族だからね!」


 しかも、吸血姫!

 厨二病と言われても大好きだ。

 二次限定だからクール系眼鏡吸血姫も萌えるが、ツンデレ幼女吸血姫も良い。

 ツインテールなら尚良い。

 だが一番気になる点は、瞳と牙。

 勝手な私基準でその二つが至高であれば、デブで不細工なニートでも構わない。

 ……って、こっちの世界にニートはないか。

 引き籠もりはいそうだし、純血種だという彼女はどちらかと言えばそちらの気もしないでもない。


「ん? 見つけたって!」


「早いね? こっちはまだ時間かかるっぽいのに」


「詫びの品を考えておるのじゃろ。謝罪もなしに詫びの品とは、実に不遜な考えじゃがな」


「何もないよりは真面まともなのかもしれないけどねぇ。私的には真摯な謝罪の方が好ましいかな」


 プライドが高すぎるのだろう館主に望むのは酷かもしれないが、客の見下しは本来断じて許容できない対応なのだ。

 高級店の名も廃る。


「お久しぶりですね。彩絲、雪華」


「のんびりしてるトコ、ごめんね。沙華さか


「元気そうでなによりじゃ、沙華」


 瞬間移動関連の能力だろうか。

 目の前の空気から生み出されるようにして現れたのは、10代にしか見えない少女。

 凡庸なといえる特徴のない体躯。

 フードがぱさりと下ろされて現れたのは豪奢な金髪。

 そして何より美しい深紅の瞳。

 目線が絡めばそれだけで魅了されてしまいそうな抗いがたい衝動が、胸の奥から突き上げてくる。

 

「初めまして、アリッサ様。吸血姫・沙華と申します。この度は契約における立会人として、お呼び頂きまして誠にありがとうございます」


「ご丁寧に痛み入ります。こちらの世界に参りまして日が浅く、解らないことも多くて恐縮ですが最後まで宜しくお付き合いくださいませ」


「ふふふ。容姿の劣る吸血姫に嫌悪するどころか、そのように興味深げに微笑んでくださるとは、さすがに御方の奥方でいらっしゃる」


 沙華が、ぱん! と手を叩くと、絨毯からソファの上に移動して寝かされていたメイド達が揃って飛び上がる。


弩級どきゅう 立会人、 アーマントゥルード・ ナルディエーロです。此度アリッサ様の奴隷契約に絡んだ全ての契約に立ち会います。主人にそう伝えなさい」


 メイドの一人が足音を立てて走って行く。

 残った二人は深々と頭を下げてから、新しい客への飲み物と軽食の準備を始めた。


「二つの名前があるのですか?」


「はい。沙華は御方につけて頂きました。あちらの世界には深紅の毒花で曼珠沙華という名前の花があるとか。貴女にとても似合う花ですよとおっしゃられまして。とても光栄なことですので、親しい方達にはそうと読んで頂いております」


「確かに美しい花には毒があるを地で行く花ではありますけれど……女性の名前として毒に纏わるものを使うとか……」


 有り得ないくないですか、喬人さん?


「……本当にお優しい方ですね? ですが、純血種の吸血姫にはこれ以上相応しい名前はないだろうと、とても気に入っております。毒も含めての、私ですから」


 そうですよ?

 毒であると認められるのが嬉しい人ですから、そうと、つけたのです。


 相槌を打つ夫の声が聞こえる。


 だが、そこはそれ。

 毒だと、断じるには潔すぎるのではないかと思う、この方は。

  

「毒は薬にもなるものです。私でしたら、そう、ですねぇ。宝石のガーネットの和名にしますね。柘榴ざくろ石。石は無骨ですから、柘榴、と。真理の不安を打ち消す効果とか、血液の循環を良くするとか、そんな意味もありますから、貴女にぴったりかと思いますよ……うーん、あるかな?」


 ありますよ。

 確かに柘榴は素敵な名前ですね。

 さすがは、麻莉彩です!


 またしても妻に甘すぎる夫の声が聞こえたが無視をして、サファイヤの指輪をとんとんと叩く。

 ぽん! と一個の指輪が現れた。

 よく手入れされた爪の大きさほどのティアドロップ型宝石が嵌め込まれた指輪。

 勿論嵌まっている宝石は柘榴石だ。

 周囲は小粒のダイヤモンドで飾られている。


「ああ、ありました! 信頼、という意味もありますので、受け取って頂けませんか? 形あるお詫びということで」


「こちらには存在しない宝石です。希少すぎます! それに、御方から名前を頂くだけでも僥倖なのです。こちらが何か差し上げるというのなら、喜んでお望みの物を差し上げますが、逆は有り得ません」


「では、美しい方にお会いできた栄誉ということで。賛美の証に」


 ぽかんと開いた口には初めて見る純白の美しい犬歯があった。

 プライベートな質問ができる関係になれたなら、ぜひ、吸血鬼の牙がどんなものであるのかを詳しく聞いてみたい。

 向こうの世界では色々と検証されていたものだ。


「くっく。受け取っておけ沙華。そしてこれからは、柘榴沙華と名乗るが良い」


「羨ましいなぁ……私もつけて欲しい!」


「え? 付けるとしたら貴女達の名字は柊になるでしょ? 家族なんだし。私と夫と同じの」


「本当に?」


「最高じゃな!」


 私からの名前を欲しがるので、つけるまでもないと説明すれば驚くほど喜ばれた。

 三人の様子を驚きの眼で見守っていた沙華は得心したように大きく頷いた。


「それでは、アリッサ様。有り難く頂きます。そしてこれからは柘榴沙華と名乗りましょう」


「あー押しつけてしまいましたね……すみません。やっぱりいきなり失礼過ぎますね。今からでも……!」


「とても嬉しくて光栄なのですよ、どうぞ前言撤回はしないでくださいね? ……御方同様に友人と扱わせて頂いても?」


「喜んで!」


 くすくすと笑った沙華は指輪を右手の中指に嵌めた。

 向こうの世界での意味と同じならば、仕事を成功させたい時の嵌め方だ。

 全力で契約の立会人を勤めようという意思表示なのだろう。

 そもそもの関係性もあるが、初対面でもこれだけ態度が違ってしまうのだから苦笑するしかない。


「お待たせして申し訳ありませんでした。ただいま、主が参ります」


 沙華の訪れは衝撃だったのだろうか。

 散々待たされたのが嘘のように、館の主が楚々と現れる。


「ようこそ、我が館・百合の佇まいへおいで下さいました。館主、オフィーリア・フィッツシモンズと申します!」


 ドレスの裾を丁寧に摘まんで深々と頭を下げる。

 弩級の立会人というのは、やはり影響力の強い存在のようだ。


 そうですよ。

 一応説明をしておきますね。

 こんな感じになります。


 役職称号について。


 初級 見習いに毛が生えた程度。

    接客に制限有。


 中級 1年以上勤めて、問題なしと認められた階級。

    一般人が安心して仕事を頼める。


 上級 5年以上勤めて、仕事が良質と認められた階級。

    地位在る者がこぞって頼みたがる。


 超級 10年以上勤めて、仕事が良質と認められた階級。

    報酬的に一般人が頼むのは難しい。

    貴族でも上位、王族、超資産家などを相手にする。


 弩級 10年以勤めて、仕事が良質と認められた階級。

    超級以上の実績があるが、安価で利用できる為、万人に重宝されている。

    どんな高貴な相手でも拒否できる。

   

 弩級は、長命人種が時間を持て余す感じで得る役職称号になります。

 沙華は弩級称号持ちの中でもトップクラスの実力の持ち主ですので安心してください。

 また依頼主を慎重に選ぶので、信頼もできますよ。


 と、夫説明があった。

 案の定、沙華は実力信頼共に得がたい人物のようだ。


「へぇ? 着替える暇とかあるんだね」


「奴隷達はどうしたのじゃ?」


 沈黙を守る沙華の様子を伺いつつ、二人が質問を投げる。


「あの…… 弩級 立会人アーマントゥルード・ ナルディエーロ様?」


「私の友人達の質問には答えないのですか?」


「し、つれいいたしました! お二方がご友人とは露知らず! 着替えは弩級の立会人様に相応しい装いをせねば不敬に当たると思いまして整えた次第でございます。また奴隷の準備は代金に相応しい装備を調えておりますれば、今少しお待ち頂ければと!」


「もう、十分に待ったと思うの。今の状態で連れてきて貰えるかしら?」


 奴隷がいない状態で契約は有り得ない。

 馬鹿らしさに呆れながらも私は言葉を紡ぐ。


「ですが……」


「連れて来なさい!」


「はひぃ! 急ぎアリッサ様ご所望の奴隷を連れてきなさい!」


 多少の威圧をかければ怯える館主の指示でメイド達が慌てて姿を消す。

 四人の冷ややかな眼差しを一身に受けた館主はしかし、大きく息を吸うと深々と頭を下げて対面へ腰を下ろした。


『スキル 威圧∞』を会得しました。

 と、頭の中にやわらかい女性の声が聞こえる。

 奪取ばかりしていたので、自力でスキルを会得したのは初めてかもしれない。

 しかも、初めて会得スキルが威圧とか、∞とか……ねぇ?


「アーマントゥルード様の立ち会いで契約を結べるとは光栄の極み。こちらが、契約書にございます」


「……まずは、アリッサ様へお渡し下さい」


「失礼致しました……さすがは、アーマントゥルード様! 美しい指輪でございますねぇ。こちらは初めて見る宝石ですが、どういった物でございま……」


「アリッサ様から信頼の証にと頂いた指輪です」


「そ、そうでございますか! そ、それでアリッサ様! 契約書の内容はこれで、ようございますね?」


「……まだ拝見してもいませんので、解りかねます。少し……黙れ」


 隣に座ったアーマントゥルードから流れてくる絶対零度の気配に、しみじみ同意しながら再び威圧をかけて命令する。

 館主は口をぱくぱくしつつも声は出さなかった。

 先程より強い威圧をかけたので、もしかすると出せなかったのかもしれない。


「……一般的に奴隷に関する契約はこれで問題ないのかしら? 金額って書く物じゃないの? 向こうじゃ明細ないとか、有り得ないんだけど」


「こちらでも有り得ませんね。個別の明細は必須です。高額になればなるほど明細はより詳細になるものです」


「し、失礼致しました。め、めいさいはこちらに……」


 震える手が何枚かの書類をテーブルに置く。

 視界の端に奴隷達が入ってくるのが見えたので、二人に目配せをする。

 二人は心得たとばかりに頷いて、奴隷達に歩み寄った。

 装備の価値がどれほどの物か確認するのだ。


「館主よ」


「どうぞ、私の事はオフィーリアとお呼び下さいませ」


「……館主よ、この不当な代金の根拠は何処にある? 確かに優秀な能力の持ち主ではあるが、この館は血統を重んじるはずだ。違ったか?」


「アリッサ様が、異界から来られまして特殊な価値観をお持ちとのことで、敢えて、厳選致しましたのですが、何か問題がございましたでしょうか?」


 問題しかないだろう。

 血統には全く拘らない。

 最高の人材が得られるのは本当に嬉しい。

 だが適正価格から著しく逸脱しているのだ。

 こちらから色を付けてもいいくらいだったのに、余計に欲をかいた状態で人を見下すから取り返しのつかない事になる。 


「適正価格から逸脱しているよね?」


「奴隷館は本来そういったものでございます」


「……我は立ち会い人としてここにおる。双方納得いく形での契約を締結する為にな。アリッサ様が納得されていない以上、不当な請求は認められない」


「アリッサ様は異界より来られた方。こちらの流儀はご存じないのでございましょう。いいですか? 奴隷館というものはですね……」


「装備説明に偽物の効果をつけるのは問題でしょう? 呪いの品を押しつけられても困るんだけど?」


 二人が鑑定を! と訴えるので鑑定すれば、見た目は豪奢なだけの装備は半分以上がメッキ品。

 マイナス効果を与える物まであった。


「装備しただけで暴飲暴食をしないと精神崩壊する? 使う度に同じダメージを負う? 見た目が醜くなったまま元に戻らない? 定められた対象者に得た収益の半分以上が転送される? 何で、そんな不良品に大枚叩はたかないといけないわけ?」


「アリッサ様は、鑑定が、使えるので?」


「使えるけど、それが何か?」


 想定外の事が続くのか、お茶を飲んで気持ちを切り替えようとしている館主をとことんまで追い詰める。


「私は確かに異界から来たけどね。貴方と違って常識はあるの。ぼったくった挙げ句に不良品を押しつけて、極めつけは幾ら相手が立ち会い人だからって個人情報垂れ流しとか、人を馬鹿にするのもいい加減にして!」


「アリッサ様の仰るとおりですね」


 契約書がぼうっと青白い炎を上げて燃え上がる。

 消し炭は目の前で踊ってすぐに残らず消え失せた。


「これが新しい契約書です。アリッサ様、ご確認下さい。彩絲と雪華も見て貰える? あぁ、そこの人達。彼女達の装備を全て外して下さい。そして下着を含めて動きやすい衣装に整え直して欲しいのです」


 メイド達は館主に確認を取りもせず手早く衣装を整えている。

 一人のメイドが下着を見て眉根を寄せているのを見ると粗悪品だったのだろう。

 目に見えるところでも愚かな選択をしていたのだ。

 目に見えないところは当然しでかしているに決まっている。


 見た目が醜くなる装備品は、付け続けていると徐々に醜くなりそのまま戻らないタイプの物だったので、現時点では効果は発せられていないように思う。

 暴飲暴食の方も大丈夫のようだ。

 館の外へ出たら一応確認してみよう。


「……さすが沙華だね! 完璧な書類。ってーか、適正価格ってこんなに低いんだ?」


 トータル1銀貨で良かったらしい。

 1銀貨1000ギル、1水晶貨1000000ギルなので、ざっと1000倍。

 ぼったくりにも程があるだろう。


「オークションでも適正価格の百倍がせいぜいだからのぅ。ここまでくると犯罪行為じゃな」


「ええ、そうですね。後は装備品に関するあからさまな偽り表記は完全な犯罪です。犯罪奴隷に落として10年の強制労働が妥当でしょう」


「こ、これ! これ! 契約書!」


 館主が契約書と沙華を何十回となく交互に見ている。

 大変せわしない。


「ああ、私の情報漏洩に対する罰則をこう変えて貰っていいですか?」


 沙華に説明すると素晴らしくイイ笑顔で頷いてくれた。


「いいですねぇ。今後の参考にさせて貰っても?」


「ええ、構いませんよ。罰は罪に相応しい物でないといけませんからね」


「ろ、漏洩! 情報漏洩に関する罰が! こんな! こんな!」


「それだけ重要な方なのですよ、アリッサ様は。情報収集不足ですね。情報屋を変えることをお薦め致します。弩級 立会人アーマントゥルード・ ナルディエーロの名において友人アリッサの望む契約を締結する」


 契約書を破り捨てんばかりに握り締めている館主を絶対零度の瞳で見下した沙華は、速やかに契約を締結してくれた。

 情報漏洩に対する罰則は勿論だが、私に対する犯罪行為が多すぎて慰謝料が強制的に支払われる為、奴隷購入料金は無料となり、更に水晶貨一枚が支払われる。

 当たり前だが、奴隷達は全員私の奴隷になっていた。


 私が持っている契約書が破棄されない限り、奴隷達は私に逆らえないらしい。

 ただ奴隷であるのだと他者に示す必要があるので、一般的には首輪や刺青などといった解りやすい所有の証を付けさせるようだ。

 首輪は如何にも奴隷めいていて嫌だし、刺青は背徳的な感じが強いので、揃いのネックレスや指輪を思い浮かべる。 

 

「本来契約締結には契約者達の名前全てを音にする必要があるのだけれど、アリッサ様は……私の友人なので特別契約にしてみました。初めての贔屓です」


「いいの?」


「今回は契約相手が犯罪者だったから大丈夫ですよ。さ、早く水晶貨を持って来なさい! アリッサ様の支払った物と慰謝料で2枚分!」


 館主は縋るような眼差しで沙華を見詰め、私を見詰め、彩絲と雪華を見詰め、挙げ句メイドを凝視するも、全員揃って有無を言わさぬ眼差しをしていたので、とぼとぼと肩を落とし、長い耳をへたらせながら奥の部屋へと足を運ぶ。

 間を置かずして、銀色のトレイに水晶貨2枚を乗せて戻ってくる。

 さすがに貯め込んでいたらしい。

 これが全財産という悲劇もなさそうだ。


「せ、せめて! 奴隷所有の首輪は当店で!」


「首輪なんて無骨な物を彼女達にさせるつもりはないし、この館で物を買う予定は金輪際ないなぁ」


「最後まで恥知らずだったね!」


「同意せざるえぬなぁ」


「私もです。さぁ! 行きましょう。まだ他にも買われる予定があるんですよね?」


 いっそ清々しいほどに屑だった館主を無視して話を続ける。


「ええ、騎獣になる奴隷と今回みたいことがあった時の為に参謀的な奴隷が欲しいんですよ。紹介もして貰ったので……そちらはまともだと嬉しいです」


「ここが例外でしょう。紹介された方も事の顛末を聞かれたら驚かれるでしょうね。あまりにも非常識な話ですから!」


 今までも色々としでかしていたのだろうが、表沙汰にはならなかったに違いない。

 あの愛らしい容姿の幼い館主に騙された恥ずかしさで誰にも言えなかった……なんて理由もありそうだ。

 私的には望む奴隷が手に入ったので、紹介してくれた宿に思うところは全くない。


 沙華は次の奴隷館にも一緒に行ってくれるようだ。

 ありがたい。

 私と沙華が横並び、背後に彩絲と雪華がついて奴隷達を引率する。

 奴隷達の表情は、奴隷とは思えぬほどに晴れ晴れとしたものだ。


 メイド達が入り口まで着いてきて深々と頭を下げる。

 館主は挨拶に出ては来なかった。

 そういえば、最後まで謝罪がなかった。


吸血鬼=男性。

吸血姫=女性。

な感じで書いています。

この話だけの設定です。


次回は、旦那様は奴隷を推奨しています。よ、妖精もありとか! の予定です。


奴隷達が出揃ったら守護獣含めて、ステータス回を設けたいと考えています。

主人公以外ほとんど考えていないので時間がかかりそうなのですよ。


お読み頂いてありがとうございました。

次回も引き続き宜しくお願いいたします。

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