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三聖女の日常 武志摩美望編

 別視点版でお届けします。

 三人一度に書き上げようと思ったのですが、案の定長くなりすぎてしまって、それぞれ書くことにしました。

 三人の中で、私は頭脳派! でもって超絶ナイスバディで、世の男性を皆魅了しちゃう、罪なあてくし! とか、素で思っている困ったちゃんです。


 本編の隙間に挟みつつ、三ヶ月経過→有栖姫凛、半年経過→雲母愛魅視点で書く予定でおります。




 美望は聖女の一人として、異世界に招かれたらしい。


 初めは相手が何を言っているのか、理解できなかった。

 しかしふと、宇宙科学が大好きな主人が鬱陶しいくらいに熱く語っていた、私達が住んでいる銀河系以外にも世界は存在すると思うんだ! という説を思い出して、何となくではあったが、自分が今まで住んでいた違う世界へと招待されたのだと認識できた。


 目覚めたのは豪奢な天蓋付きベッドの上で、馥郁ふくいくたる豊かな芳香に刺激されてのことだった。

 ゆっくりと半身を起こして周囲を見回せば、品の良い高価な調度品に囲まれた広々とした一室が映り込む。

 部屋の隅に静かに控えていたメイドの他に佇んでいた一人の見目麗しい男性が、優美な所作で歩み寄り、恭しく美望の手首を取り、キスを落としながら潤んだ瞳で説明をしてくれたのだ。


 曰く、この世界では対処しきれない災いが起こってしまったので、異世界から災いを鎮められる超常能力を持つ乙女=聖女を招いたのだと。

 招く際に、こちらの世界と美望達が住む世界のことわりが違った為、本人の意思を確認出来る前に誘拐したかのような状況になってしまった事を、まずは深く詫びられた。


 そして……。

 聖女として、美望の他に、姫凜と愛魅が招かれたこと。

 一日十分間だけ祈りを捧げる日々を一年間重ねれば、災いは浄化され、向こうの世界へ帰れること。

 こちらと向こうの世界では、時間の流れが一年=一時間と違うが故に、美望達がちょうど料理教室から出て一時間……何時も三人でお茶を楽しんで三時間以上は帰宅しない……後に、料理教室を出た場所へ戻れること。

 必要であれば、こちらの世界の記憶は消せること。

 一年間、祈りの時間以外は王族と同じ待遇で過ごせること。

 謝礼として、向こうの世界にも存在する国宝でもある高価な宝石を3点まで望めること。

 許されるのであれば、聖女の血を受け継ぐ高貴な御子を残して欲しいこと。

……などが説明された。


 主人がいるのでさすがに子供を残すのは無理だが、向こうの時間で一時間。

 こちらの世界で一年間に渡りはするものの、一日の拘束時間は短く極々簡単な仕事の報酬が、国宝宝石3点と考えるならば、割りの悪い仕事ではなかった。

 美望は鷹揚に頷いて了解する。


 男性は美しい面立ちに典雅な微笑を浮かべて、美望の手の甲へ再びキスをした後で、王様に報告へと行ってしまった。

 残されたメイドの一人が、歓迎の晩餐会をするのでお支度を手伝わせて頂きたいとかしずくので、これも了承。

 案内されたクローゼットには、向こうの世界でも超一流がつくデザイナーが作ったような、美しいドレスが並んでいた。

 全部、美望の物らしい。

 また、過ごしていく内に必要であれば買い求めることも出来るようだ。


 彩りも鮮やかな数々のドレスを眺めながら、料理教室で愛魅が恥知らずな御薬袋から貰って上げようとしたネックレスの美しいサファイアの煌めきを思い出して、サファイアがないかと尋ねる。

 すると二人がかりで宝物を捧げ持つ敬いをもって開かれた箱の中には、御薬袋がしていた物よりも高級なサファイアのピアス、ネックレス、リング、ブレスレット、サークレットの5点セットが並んでいた。


「これにあうドレスと靴を用意して貰えるかしら?」


 と命じれば。


「畏まりました、聖女様」


 と深々と頭を下げたメイド達が、手早くドレスとインナー、靴などを用意してゆく。

どんな生地を使っているのかは解らないが、美しい光沢を持つマーメイドラインのドレスは美望自慢のボディラインをより綺麗に見せた。

 

「ちょっと……胸が見え過ぎていないかしら?」


 谷間の半分が丸見えだ。

 王族との食事会には不敬ではないだろうか。


「美望様のお胸は大変お美しゅうございますから、是非にそのままで頂きたいのでございますが、どうしても気になさるのであれば、こちらを……」


 胸元部分だけを隠すレースの付け襟が素早く差し出される。

 大輪の薔薇が一輪だけ描かれた繊細なレースから見える肌は、下品ではないだろう。


 三人がかりで衣装を整えられて、髪の毛を梳られる。

 全体をアップにして、緩やかに巻かれた髪の毛が一房ずつ両側へと垂らされた。

 計算し尽くされたルーズさは美望自慢の髪を可憐に見せる。

 サークレットがセットされ、纏め上げた髪にはサファイアをふんだんに使った青薔薇モチーフのピンが何本も挿された。


 化粧は極々軽く白粉をはたかれ、紅をさされたのみだ。

 メイド達もほとんど化粧をしていなかったので、そういったお国柄なのかもしれない。

 それでも向こうの世界よりも明らかに肌つやの良い顔に満足した美望は微笑を深くした。


 美望専用メイドと紹介された中でもリーダー格のメイドが先導し、大食堂へと案内される。

 既に姫凛がいい年をして子供っぽいデザインのピンクが目にうるさい服を着て、並べられた料理を凝視していた。

 そういえば、料理教室へ美望を誘ったのは姫凛だった。

 料理教室はセレブが通う中では、一番料理が美味しいと評判だったらしい。

 姫凛は美味しい物に目がない、凄まじい食道楽なのだ。

 偏にぽっちゃり程度の体型を保っていられるのは、周囲の優秀なトレーナー達によるものだろう。


 あと一人、愛魅がまだ来ていない。

 一生懸命貧乳を隠せるドレスを選んでいるに違いない。

 無駄な努力だとというのに、ご苦労な話だ。


 美望が一番艶やかな身体のラインを保っており、姫凜は胸が大きめの幼児体型、愛魅はよく言えばスレンダー、美望に言わせれば背ばかりがひょろりと高い貧相な身体だった。

 せっかく丁寧に忠告してあげたのだが、逆ギレされたので、それ以降は嫉妬してごめんなさい。スレンダーで羨ましいと褒めるようにしている。

 三人の中では一番権力を持っているので仕方ない。

 主人がもう少し地位の高い男性だったら楽なのだが、お金を自由に使わせる甲斐性はあるので、我慢している。


 やっと姿を現した愛魅は毒々しい深紅のドレスを着ていた。

 しかも装飾過多。

 胸の上に大輪の赤い薔薇が咲いたようなデザインだ。

 用意されていた扇で、嘲笑を隠して、眦を下げる。

 凄く似合っているわ! と、言う時の眼差しに、愛魅は満足げに微笑んだ。


「此度は異世界よりお越し頂いた聖女様に感謝の意を示す食事会じゃ。どうぞ心ゆくまで召し上がって頂きたい!」


 開催の挨拶がそれだけ? と思いもしたが、姫凜が、


「ありがとうございます、王様! こんなに美味しそうなお食事をたっくさんご用意頂いて! 姫凜、感謝感激です!」


 などと宣って、下品に食べ始めてしまった。


 もしかすると姫凜の食欲に関する報告を事前に受けていて、気を遣ったのかもしれないと思い至り、とっておきの笑顔を浮かべて王様に会釈をしておく。


「……陛下とテーブルを囲めます栄誉に深く感謝致します。王妃様はお出でではないのでしょうか?」


「……妃は、少々体調を崩しておってのぅ……体調が戻ったら、挨拶に向かわせようぞ」


「そうでございましたか。王妃様に、どうぞお体を労れますようお伝えくださいませ」


 色々と説明を聞いて判断するに、聖女と侍るのは、王族にあっても栄誉のはず。

 だとするならば、王妃が席にいないのはおかしい。

 王妃は王に疎まれているのだろうか。

 もしかすると聖女は、王妃にもなり得る存在なのではないのだろうか。


 思慮深く考える美望の隣に座っていた愛魅が、当たり前のように下品な質問をする。


「王妃様以外にご寵愛の方はおいでではないのでしょうか?」


「……うむ、そうじゃ。皆からは側室を薦められておるのじゃがのぅ……」


 王様の返事は曖昧だった。

 王自身望んでいるのか、いないのか看破しきれない微妙さに、美望は眉根を寄せながらスープを啜る。

 姫凜がみっともなくがっついているので解ってはいたが、向こうの世界での一流料理に勝るとも劣らない味だった。

 一年間、姫凜の欲望は満たされ続けるだろう。


「では、聖女は側室になり得るのでしょうか?」


「愛魅! 失礼ですよ! 控えなさい!」


「はぁ? あんたの言い方こそ、私に失礼よ!」


 本当にこの短気はどうにかして欲しい!

自分の言動が、美望にまで害が及ぶと気が付いていないのだ。

王族、それも国の頂点でもある王様にたいして、愛魅の言葉は許されるものではないだろう。


「陛下! 友人の不敬をお許しくださいませ。陛下があまりにも気高くおられるので、主人ある身にも関わらず、恐れ多い夢を見てしまったのでございます! どうぞ、どうか、お許しを!」


「ちょっと! 美望っ!」


 立ち上がりかけた愛魅を背後に控えていた騎士らしき方が、静かに椅子へ戻るように指示する。

 雄々しい威圧に負けたのか、ふて腐れた表情で椅子に座り直した愛魅に、王様は穏やかにお声がけをなさった。


「……過去には、聖女を娶った王もあったようですのぅ。愛魅殿には、一年間よく考えて結論を出して頂きたいものですじゃ。側室に課せられる義務は、大変に重いものですからの。美望殿は貞淑であられるのじゃなぁ。こちらの世界では一夫多妻、一妻多夫どちらも許されておりましての。聖女を迎えられるのは王とて誉れとされておるのじゃ。許すまでもないこと故、心配めさるな」

 

「陛下には、お優しいお言葉をありがとう存じます。愛魅……貴女のように聡明な人が何も考えずに、王様に問われるはずもなかったのに。浅はかでごめんなさいね。もし、愛魅が罰せられるようなことがあったらと……心配してしまったの」


「まぁ……貴女は心配性だからね、仕方ないわ」


 愛魅は美望の謝罪を言葉通りに受け止めて肩を竦めると、フルートグラスに注がれたシャンパングラスを一息に飲み干した。


 美望は、愛魅の暴走を止めてくれた王様と騎士へ感謝の眼差しを込めた丁寧な会釈をしてから、シャンパンを一口口に含む。


 これで三人の中では、美望が一番好印象だろう。

 三人の中から、側室、もしくは正妃を選出……となったなら、まず美望が選ばれるはずだ。

 優しい主人には申し訳ないが、正妃となって共に国事を成す決意をしたならばきっと。

 喜んで離婚届に判子を押してくれるはずだ。

向こうの世界での生活も悪くはないのだが、こちらの世界で正妃として生きる方が良いに決まっている。

 美望の知識と知恵を以てすれば、正妃としての務めなど容易くこなせるはずだ。

 二人は向こうへ帰したいが、美望に忠誠を尽くすなら残っても構わない。


 こちらの世界で一年間、正妃になる為の勉強に勤めようと、真面目な美望は一人、自分に誓った。



 武志摩美望 たけしまみむ


 HP 50 成人女子一般的

 MP 30 物足りない感じ

 SP 100 荒淫に耐える体力です 


 固定スキル 魅了 鉄板です。それなりに強いです。

       している最中は国内トップレベルに上昇します。


 称号 聖女(淫乱)

    性欲的に満たされていれば、それなりの聖女です。



 注意!! 現時点で、彼女は自分の称号も固定スキルも知りません。



 現代版お花畑思考の方が書くの楽でした。


 王妃は魅了が使えないのに気が付いて、絶賛引き籠もり中。

 王様は魅了されていたと気付けたけど、まだ精神不安定につき、宰相の脚本通りに『聖女に疑われない王家』を演じています。


 次回は、旦那様は奴隷を推奨しています。テンプレですか? です。


 お読み頂いてありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。


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