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ごめんなさい、旦那様。

 久しぶりの更新です。

 今回の話を書くのに、五話分ぐらい遡って読み返してから書き始めました。


 そして、気がつけば7000文字越え……。

 食事描写が好きなんですよ。

 

 あ。

 そこまでグロくないと思いますが、昆虫食注意でお願いします。

 



 全ての依頼を無事に完了したので、冒険ギルドに足を伸ばす。

 扉を開けると、途端に中の空気が変わった。

 ギルド職員の緊張感が冒険者達に伝播した感じだ。


「依頼完了しました。確認をお願い致します」


 カウンターに行けばギルド長が現れたので、前に行ってギルドカードを差し出す。


「お預かりします……全て水晶評価、ですか。これだけ内容が違う依頼に完璧な対応ができるのは素晴らしいことです。ギルドマスター権限で、銅へランクアップさせて頂きます」


「銅、ですか?」


 2つほど飛ばしてのランクアップ。

 ラノベ的には、そこまで派手でもない。

 今でも十分以上に人目を引いている自覚はあるけれど、絡んでくる者が減ったと思えば、ありがたいくらいだ。


「はい。守護獣達の強さも考慮いたしました」


「考慮して、これかのぅ?」


「貴方方の戦闘の強さだけでしたら、金でも問題ありません。しかし急激なランクアップは必要以上に人目についてしまう。それを望まれないかと思いましたので、銅とさせて頂きました」


 仲が宜しくないらしい彩絲への対応も全く問題はない。

 最初からこうであったなら、かなりの好印象だったのだが、すんでしまったことを憂いても仕方ないだろう。


「ありがとうございます。それでは、こちらをどうぞ」


 情報が書き込まれた新しい銅のギルドカードが手渡される。

 これで当初の目標だったランクアップは、想像していたよりも早く達成できてしまった。

 食事をしながら、今後の予定を考え直す必要もあるだろう。


「宿や食事処などの紹介は必要でしょうか?」


「何件か宛てがあるので、気持ちだけ頂きます。ありがとう」


「将来有望な方へのサービスは惜しみません。必要の際はお声がけくださいませ」


 ギルド長お薦めの宿や食事処も気にはなったが、今日行くべき所は既に決まっている。

 機会があれば、聞けば良い。


 夜に向く依頼もあるからと、掲示板を覗いていた二人に声をかけてギルドを後にする。

 扉越しに緊張感が一気に解放されるのを感じて、思わず笑ってしまった。


 獣肉萌館に宿泊の予約を入れてから、フルコース無料券を貰った店、ラフレ・シアンへ向かう。

 匂いの強い料理に特化した店なのかしら? と改めて首を傾げてしまったのは、ここだけの話だ。

 聞いたメニューを考えるとフランス料理かイタリア料理っぽい系列の気がする。

 異世界の食材が楽しみだ。


「いらっしゃいませ! ようこそ、ラフレ・シアンへ!」


 扉を開けた途端、元気な声がかけられる。


「ふむ。あの馬鹿息子はいないようじゃの」


「中に引っ込んでいるかもよ?」


 ひそひそとやりとりする二人の隣で、店員に声をかけた。


「きちんとした予約は入れていないのだけれど、店長さんに今夜伺うと言った者です。

私はアリッサ。連れは守護獣の彩絲と雪華と申します」


「店長をお呼び致します。大変恐縮ですが、今少しお待ちくださいませ」


 丁寧な対応が更に凄くなった。

 やはり二人は有名人なのだろう。


「おぅ! 待ってたぞ! 三人分のスペシャルフルコース。ちゃんと用意してるからな!」


「うむ。楽しみじゃ、ブラックサモンのムニエール」


「私はジャンボスネイクを使った料理があれば嬉しいかなぁ」


「……共食いじゃな」


「正確には違うでしょ! それに彩絲だって、蜘蛛食べるじゃん!」


「ゴールデンスッパイダは、クリーミーで美味じゃぞ?」


「ブラックサモンは魚料理、ジャンボスネイクはアミューズで使ったぞ。ゴールデンスッパイダは、ミニプリンならできそうだが……どうする?」


「追加料金は払うので、ぜひお願いしたい!」


 クリーミーな蜘蛛……昆虫食はなぁと思うも、形が残っていないのなら、食べられるかと思い直して、黙っておく。


 丁寧に掃除が行き届いてはいるが、そこまで高級感はない店内を突っ切って個室へ案内される。

 通された個室は、別世界か! と叫びたくなる豪奢具合だった。

 引いて貰った椅子の背凭れの装飾を壊しそうで、凭れかかるのを躊躇う。

 彩絲と雪華は慣れているのだろう、全く気にしない様子で寛いでいる。


「食前酒はスイーティーモーレンのスパークリングワイン。ミネラルウォーターは最近流行のビューティーウォーターに、パープルベリーの果汁を落としこんだ物だ。他に頼みたい物はあるか?」


「取り敢えずはいいかな。飲み物が切れたらお薦めを聞くよ」


「おうよ! では、アミューズを運ばせよう」


 流れるような所作でワインが注がれる。

 フルートグラスの中で弾ける気泡の音が静かに響く。


 運ばれてきたアミューズは、楕円皿の中央にこじんまりと重ねられた彩り豊かな野菜のミルフィーユ。

 どうやらこの中にジャンボスネイクが隠れているらしい。

 しゃきしゃきの食感の中、やわらかな歯ごたえを感じる。

 鶏のささみのような味と食感だ。

 淡泊で匂いが薄い。

 皿の横に描くように置かれたニンジンのソースをたっぷりとつけると、肉の甘みも増した。

 初めての蛇料理はとても食べやすく、違う食べ方もしてみたいと思う。


「次は、前菜だぞ」


「6種類もあるんじゃな!」


「普通は3種類なんだけどな……色々食べさせたいと思ったら、倍になった。これでも絞り込んだんだぞ?」


 イケメンスタッフが運んでくれた丸い大皿には、一口サイズの前菜が6種類盛り込まれている。


「順番に説明するぞ。この黒くて丸い物は、名付けもまだの新種キノッコ。汚れを取ってパウダーソルトをかけてある。隣がコッコームハムハ。隣がくり抜いたミニトマトゥにのぶたんのレバーペイストを詰め込んだ物。隣がギンメのマリネ。隣がズーチ入りイモッコのフリッター、赤パップリンを乾燥させて粉末にした物をかけた。最後はブッカとダイコーンのオイル蒸しになっておる。味はしっかりつけてあるからな。そのまま堪能してくれ」


 まるで絵皿のように綺麗な盛り付けにうっとりする私の両隣で、二人は即座に舌鼓を打ち始めた。


「新種のキノッコは食感が素晴らしい! 見つけた者の名前をつければ良いのではないのか?」


 固めの林檎を食べているのに似た食感だった。

 キノコは出汁が最強と考えていたけれど、新種キノコの食感が斬新に好み過ぎた。

 これは生のままで食べるべき物だ。

 火を入れて食感が変わってしまったら寂しい。

 薄くスライスしてサラダに散らしても良い気がする。

 パウダー状の塩気で程良く味にもアクセントがついているのが、料理人としての矜持だろう。


「一般人なんだろう。だから名前がつけられない。御方さまなら、馬鹿らしいと笑われるね。それにしてもコッコームハムハ良いわ。こんなジューシューなムハムハは初めて!」


 向こうでの鶏ハム。

 一時期ブームになった時、夫が作ってくれ、私も作ったのを思い出して首を振る。

 一輪の薔薇の花に見立てて盛り付けてあったので、崩すのが勿体なかった。

 ジューシーでやわらかく、意外にもあっさりしている。

 白胡椒の小さな粒が花粉に見立てて入っていた。

 香りと食感にアクセントがつくのも好ましい。


「これはのぶたんの亜種から取った希少部位の白レバーを使ったペイストだ。味もさることながら色も自慢の一品だぞ!」


 店長の説明通り、紅色に近いミニトマトの中に真っ白いレバーペーストが入っている様子は目にも鮮やかだ。

 白レバーは普通のレバーより臭みがなく、更に牛乳系の素材でよくよく漉して練り上げているのだろう、舌触りも最高になめらかだ。

 トマトの酸味が加わると濃厚すぎないのがポイントな気がする。


「ワカサギ……に、似てるかな?」


 ギンメはサイズといい、味と良いワカサギだった。

 こちらの方が苦みに嫌味がなく食べやすい。

 酢は効き過ぎずに、3種類の野菜、ニンジン、ピーマン、赤パプリカに似た異世界野菜が千切りで、良い感じに味が絡んでいた。

 

 夫と一緒にワカサギ釣りに行って、二人揃っての凄まじい漁猟に、ワカサギ釣りマスターの称号をふざけてつけられた、観光地での想い出が蘇った。


 食事を堪能しようと決めたのに、夫の顔ばかりが浮かぶ。


「ほほぅ。イモッコをこんな食べ方をしたのは初めてじゃのぅ」


 彩絲の感心していた、ジャガイモのフリッターチーズ入りは、ちょっと洒落た感じにジャガイモを食べたい時の料理という印象が強い。

 粉末状の赤パプリカも、向こうでは調味料コーナーに必ずある物だ。

 ここにきて、馴染みのある味に、ますます想いが募る。

 食事を一端中断して、夫に謝罪をした方がいいのだろうか。


「オイル蒸しはダイエットに良いらしいと聞くけど……本当なのかしらん?」


 味付けとして油を少量しか使わないから、ダイエット料理として有効という話を夫と一緒にテレビで見ていた。

 夫も頷いていたので、間違いはなさそうと、雪華に告げかける。


 何故か涙が頬を滑った瞬間。

 視界が切り替わった。


 真っ暗闇の中でぎゅうぎゅうと誰かに抱き締められる。

 必死の抱擁は、夫によるものだ。

 何一つ見えなくても、間違えはしない。


「全部私が悪かったの。ごめんなさい。喬人さん」


 縋るように抱き返せば、視界が一気に明るくなった。

 眩さに目を細めて、光が緩やかに二人を照らす頃に、しっかりと目を開ける。

 少しやつれたように見える夫の姿があった。


「無茶、させたよね? 今もさせているよね? それも、ごめんなさい」


「いえ。私の方こそ、すみませんでした。貴女の為と自分で決めておきながら、側に居られない八つ当たりを彼女達にしてしまった。今夜夢の中で、きちんと説明して謝罪をしておきます」


「うん。そうして貰えると私も嬉しい……こっちのご飯美味しくてね。今も、ご飯を頂いているところなんだけど……喬人さんと一緒に食べたいなぁって、思ったよ」


「ラフレ・シアン。良いお店ですよね。お孫さんは残念に育ってしまったようですが」


「あのままなの、馬鹿孫は」


「知っていますが、内緒にさせてください」


「ああ。タイムパトロールが来ちゃう?」


 オタクでは結構信じている人が多いのではないかという、出処はどこかのSF小説あたりかと推察する都市伝説。

 時空を操ってはいけない。

 歴史をねじ曲げてはいけない。

 どこからともなく最強のタイムパトロールがやってきて、排除されてしまうから。


「それとも、喬人さんがタイムパトロール?」


 私が眠っている間に、もしかしたらこうして私と話している間にも一瞬だけ時間を止めて。

 こっそりと職務を全うしている姿を想像する。

 ぜひともそんな攻略対象がいる乙女ゲームを出して欲しい!


「さすがにそれはありませんよ。あんな激務はごめんです」


 どうやら激務らしい。

 ますますそんな孤独な攻略対象を癒やす乙女ゲームを所望する。


「……喬人さんが、私に何をして欲しくてこの世界へ送ってくれたのかは解らないけど。全部終わったら、喬人と一緒にしばらくこっちの世界でグルメ三昧したいな?」


「ええ。喜んで手配しましょう。貴女が食べた物は必ず一緒に食べますから、ちゃんと覚えておいてくださいね」


「きっちりメモしておくことにする」


 蕩けるように笑う夫の額へキスをする。

 触れるだけのキスだ。

 それ以上したら、離したくなくなるから、ぎりぎりの理性で我慢した。


「この空間の維持は、大変なんでしょう? 名残惜しいけど……そろそろ閉じた方が良いと思うんだ」


「……この空間は、貴女が望めば何時でも繋げます」


「ありがとう。でもこうやって抱き締めて貰ったから、ね。大丈夫だよ。あー、でも。危なくなって咄嗟に呼んじゃったらごめんね?」


「そういう時こそ呼んでください」


 夫からのキスは眦に届く。

 自然目を伏せて、その優しい温もりに感じ入る。


「次に会う時は正常な空間で会おうね?」


 微苦笑を浮かべる夫の鼻先を軽く噛む。


「ね?」


「……解りました。緊急時は許してくださいよ?」


「そうならないようにするから!」


 離れた温もりが既に恋しい。

 それでも私は夫の腕から抜け出る。


「監視、してくれてるのは、続けて欲しいな」


「許可なくても続けますよ?」


「ふふふ。だよね。安心した……念話は今まで通りで問題ない?」


 空間を作り出すほどには負担はないだろうけれど。

 日常生活に支障が出るほどであれば、控えるつもりだった。


「無問題ですね。この程度であれば、麻莉彩が乙女ゲームの選択肢でちょっと迷う疲労感しか覚えません」


 解りやすい説明に思わず噴き出した。

 

「もう! 解った。負担がないなら良かった……」


 なかなか別れを切り出せない私の気持ちを慮ったのか、夫の姿が静かに何時の間にか忍び寄ってきていた闇の中にとけてゆく。


『二人に謝罪した後に、夢で会いに行きますよ』


 完全に闇に包まれても念話が届く。

 夢で会うのも恐らく、念話同様夫の負担は少なそうだ。


「私も会いたくなったら、夢で会いに行くよ!」


 何時でも歓迎しますよ、と返事があって。


 視界が元に戻る。


 目の前には、フォークが刺さった蕪と大根を重ねてミルフィーユ風にした前菜が鎮座している。


「ん? アリッサよ。如何した?」


 時間経過はなかったパターンらしい。

 二人の皿にもまだ前菜が残された状態だった。


「主人に会って謝罪をしていたの」


「そうなんだ! 良かったね!」


 いきなり突拍子もない話をしても、まるで疑われない。

 それが、時空制御師。

 私の愛しい夫。


「二人にも謝罪しに、今夜夢で会いに行くって」


「我の非も大きかった。わざわざ謝罪に来られることもないんじゃがのぅ……」


「……私と主人の我が儘に付き合わせて、ごめんなさい」


 深々と頭を下げれば、二人がおろおろと狼狽える。

 店長が楽しげに笑って、話に入ってくれた。


「主の我が儘を聞くのも守護獣の誉れだ。そこは、喜んで! で言いだろうよ」


 何か言いかけた二人だったが、私に向かって不承不承頷いてくれた。


「さ。次はスープだぞ。憂いが晴れたなら倍美味しいと思う。堪能してくれ」


 蕪と大根の食感と野菜本来の甘みに加えて、植物系油の甘みまでをも堪能しきると、中央に凹みがあるスープ皿が運ばれてくる。


「スカイビーンズのポタージュじゃ。上に乗っているのはスカイビーンズの葉じゃが、面白い形をしておるじゃろ?」


 鮮やかな緑一色のスープの上に、典型的な雲の形をした葉が一枚浮かんでいる。

 実と葉がなっている本来の姿を想像すると、おかしくて可愛らしい。


「スカイビーンズの塩ゆでは食べたことがあったが、葉は初めてじゃ」


「あ! 味はビーンズの薄い感じ」


 甘みとほんの少しの青臭さが、実に野菜らしい。


 異世界食材は料理されると、向こうの世界の食材とあまり変わらない印象を受ける。

 採取の依頼などを受けて、食材そのものを見た方が異世界気分をよりリアルに体感できるような気がした。


「さぁ、まだまだわしのスペシャルフルコースは続くぞ!」


 店長の言葉通りに、お忍びで王族も足を伸ばすというフルコースを満喫する。


 魚料理は、彩絲絶賛のブラックサモンのムニエル。

 真っ黒い鮭の切り身は、話に聞いていても衝撃を受けた。

 味は食べ慣れた高級鮭で、たっぷり脂の乗った身がすっと口の中にとろけていく食べやすさだった。

 喉を通る時まで鮭の香りが残っているのを考えると、向こうの世界の物より美味な気もする。


 魚料理用にと少なめに出された白ワインは、フルーティーでさっぱりと口腔に残っていた魚油を綺麗に流してくれた。


 口直しのソルベは、食前酒と同じスイーティーモーレンのシャーベット。

 刻んだ皮は綺麗な青色で驚かされる。

 味は酸っぱさの弱いレモンが近い。


 肉料理は、まるうしのステーキ。

 綺麗な真円の肉が分厚く切られて、ミディアムレアに焼かれて出てきた。

 生きている牛が見てみたい。

 味は和牛のA5ランクのやわらかさ。

 脂っこくないので、結構な量のステーキがあっという間に腹の中へと消えてしまった。

 ソースはなく、ピンク色の岩塩を細かく砕いた物が、皿の端にちょこんと乗っていたのみ。

 せっかくなので使ってみたが、まろやかな甘みも感じる塩だった。


 肉料理用にとこれも少なめに出された赤ワインは、スモーキーで濃厚。

 肉が思いの外さっぱりしていたので、ワインの重みが実感できた。

 渋さがないスモーキーさは、経験がなくて不思議な風合いだったが、美味しいのには間違いなかった。


 サラダは、透き通ったガラスの皿に小ぶりサイズで出てきた。

 ドレッシングは、鉄板のフレンチドレッシング系。

 緑しか見えないサラダだったが、判別できただけでも10種類の野菜が使われている。

 ここまでの数はなかなか使われない。

 味的にみれば癖のある野菜は少なかったが、1種類ハートの形をしている物がとても気になった。

 これもなっているところが見てみたい。


 チーズは……こちらの世界的には、ズーチーは……フロッグズーチー。

 つまりは、蛙のチーズだった。

 爬虫類から、どうやってチーズ? と思ったら、蛙肉にあたる部分が蛙チーズになっているらしい。

 ぱかりと腹を割るとチーズがみっしり詰まっている、異世界らしい蛙というかチーズだ。

 少し赤みがかっていて血の色を思わせたが、スプーンで掬って食べたそれは、ウォッシュチーズの癖がないタイプによく似ていた。

 何故かほんのりとワインのような香りが漂っている所も突っ込みどころだった。


 デセールには、力が入っていた。


 まずは彩絲が所望のゴールデンスッパイダのミニプリン。

 レモンチーズケーキのねっとり系。

 そんな味だ。

 容器が蜘蛛で出てきたらどうしようかと思ったが、花の形の愛らしい器に入ってきたので一安心。

 所謂ゲテモノ料理屋さんにいくと、蜘蛛容器で出てきたりもするらしい。

 そちらには決して足を向けまいと誓う。


 生ピンクピルンの花飾り盛り。

 一人一個の大盤振る舞いだったが、果肉の甘さとやわらかさは最高で、手を加えずとも十分だと思える最高級品。

 ソースや飾り用の他の果物も添えられなかった潔さに、思わずうんうんと頷いてしまった。

 旬の果物は、そのまま食べるのが一番に該当する逸品だ。


 キャラメルのアイスクリームクラッシュナッツ入り。

 ナッツはたぶんクルミ。

 よく煎ってから粉砕した物。

 キャラメルはビターだけど、焦げた感じが鼻につかない程度で、食欲をそそる。

 ここにきてそそられても困ってしまうが、デセールを食べ尽くすのに役立ちそうだ。


 3種類のクリを使ったモンブラン。

 色の濃さが違ったので、たぶんそうだと思う。

 味の違いは、それぞれ使っている砂糖の味につられて判断できなかった。

 砂糖は、和風砂糖、洋風砂糖、中華風砂糖の3種類。

 ザラメの食感を残すモンブラン生地が印象深かった。

 モンブランを支える土台はタルト生地。

 中に生クリームとチーズクリームとモンブランクリーム。

 よく味がぶつからないと感心するほど、違うタイプの味が詰め込まれている。

 とても、食べ応えがあった。


 デセールを攻略する三人は無言。

 店長はデザートワインのグラスに、蜂蜜のようなワインを注ぎながら、満足げな微笑を浮かべている。


 〆はハート型のビター&ホワイトチョコレートと、エスプレッソ。


 三人揃って、最高に美味しかったです! と、結構大きな声を店長に向けてしまった。


 結局、酒代や追加料理の全てを無料にして貰ったお礼にと、夫が収納しておいてくれた物の中から希少食材を出せば、またしても三人分の無料フルコース招待券を貰ってしまうと言う素敵なオチまでついた、最高のディナーだった。



 ごめんなさいで、仲直りっと。

 書いていてすっきりです。

 メインの部分よりも、食事描写が多いのは、仕様です。

 すみません。


 これからの予定を話し合うのは、宿に行ってお布団に潜ってからになりそうです。

 お風呂に入っている時だと湯あたりしそうですしね。


 次回は、安心してね、旦那様。になります。

 今後の予定を話し合ったりステータスの確認をしたりする回……のはず。

 夜食は食べるかも?


 最後までお読みいただきありがとうございました。

 次回もお読みいただければ嬉しいです。


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