服の露天をやるようです。5
大好きなゾンビゲームにMODを入れて楽しんでいるのですが、大元のゲームがバージョンアップしたので、新しく入れ直しました。
最初からプレイするのはお約束なのですが、日本語化がまだなので、一部日本語表記、それ以外は英語表記の状態でプレイ中。
いけると思ったのですが地味にあれ? となりますね。
早く日本語化されるのを祈ります。
目に眩しいほど着飾った女性の前に一人の小柄な女性が躍り出た。
そして某作品の蛇女帝のようにのけぞりながら服を指差す。
「その高貴なる衣装を、高貴なる我が主に差し出しなさいませ!」
突っ込み所が多すぎて、どうしたらいいかわからない。
自分の表情が、すん! と無表情に成り代わるのを自覚してしまう。
高貴な我が主とやらは使用人の無礼を咎めない。
自分の気に入った物を差し出させるスタイルを貫いてきたのだろうか。
まだ若く見える女性は口元を扇で隠しているが目は笑っている。
性格はあまりよろしくなさそうだ。
「返事をなさいませ。時空制御師の最愛っ!」
「こちらの方を最愛様と認識してその態度か。恥を知れ」
まだ人化から戻っていなかった雪華が出現させた蛇の尻尾で、無礼な発言をする使用人を弾き飛ばした。
主人に向かって弾いたのだが、他の使用人が庇ったために主人は無事だった。
が。
数人の使用人も一緒に弾き飛ばされる羽目に陥っている。
「若いからといって許される態度ではないのぅ。名を名乗るがよい」
彩絲が私を庇うように前に出る。
虹色の瞳が美しく輝いた。
「……妾に名乗れと申すのかぇ?」
「そうじゃ。貴様は王族か? それよりも上なのか? 王族より同等、もしくは上に立つ者が最愛様方じゃ。更に時空制御師様の最愛様といえば、神にも近しいのじゃが」
神に近いのは夫であって、私ではないけれど! とは心の中でだけ呟いておく。
言ってしまったら彩絲の発言を台無しにしかねない。
「直答を、許すと、申しましたのに……まだ不敬を重ねますの?」
彩絲の言葉に乗って緩く威圧をかけた。
微笑は一応暗黒微笑を目指している。
「なっ!」
何と女性は威圧に負けて地面にへたり込んでしまった。
そこまで高貴な地位ではなさそうだ。
この程度の威圧に耐えられないとなれば、少なくとも王族を名乗ってほしくはない。
「時空制御師の最愛様には、我が主が大変失礼をいたしました! 我が主の御名はマルガレーテ・ボプツィーンと申します。歴史あるボプツィーン公爵家の御息女でございます」
素早く地面に額ずいた使用人が女性の名前を教えてくれる。
彼女は真っ当なのかな?
続いて三人の使用人が同じように額ずいた。
他の使用人は飛ばされた使用人を助けに行っている。
誰一人としてへたり込んでいるマルガレーテを助ける者がいないのには、思わず失笑してしまう。
「たかだか公爵家の息女如きが、ここまで無礼を働くとは! 謝罪もできぬとあらば族滅もあると心得よ」
「ひ!」
族滅と聞かされてもマルガレーテは怯えるばかりで謝罪の言葉が一切ない。
ボプツィーン家の教育に、ごめんなさい! をしっかりと入れてほしいものだ。
「ボプツィーン公爵家は現女王に従順な家系でございますれば、族滅は勘弁していただきたく……」
「……そなたは?」
新しい人物の登場だ。
この場に横やりを入れてくるのだ。
それなりの御仁なのだろう。
白髪が見事な老婦人が、深々と頭を下げながらも口を出してきた。
虹色に輝く瞳は美しいが威圧も凄い。
その圧にめげもせず、老婦人は年齢を感じさせない声音で名乗った。
「ブラウンシュヴァイク公爵家が当主、シュテファーニエ、と申します」
マントを翻してのお辞儀。
格好良い。
『……フラウエンロープ家と並ぶ名家でございます。シュテファーニエ様は若い頃より長く当主を務めておられます』
『ボプツィーン公爵家は現女王に従順な家系というのも本当じゃよ』
ノワールとランディーニが情報をくれる。
どうやら真っ当な御仁らしい。
「同じ公爵家を賜る者として、最愛様への不敬を深くお詫び申し上げます」
直角のお辞儀。
後ろに編み込まれた長い三つ編みが、はさりと前に垂れる。
「しゅ、しゅふぁ、にえ、さま」
「我は貴殿に名を許しておらぬ。次はないと申したな?」
「そ、そんなぁ……」
「族滅はなくとも、うぬのせいで降爵になるやもしれぬなぁ」
「え?」
「貴殿の最愛様への不敬はそれほどのものじゃと知れ。最愛様。族滅でなければどんな罰になろうとも、自分が後押しをさせていただきますので、お心をお伝えくださいませ」
真っ直ぐな青い瞳が美しい。
澄んだ湖水に似た色合いだ。
私は彩絲に首を傾げてみせる。
彼女なら正しく裁いてくれるだろう。
「ボプツィーン公爵家の教育は如何なものか?」
「自分から見て比較的厳しい部類かと」
「なればマルガレーテの無知は何とする?」
「子沢山の家系でございますれば、時に異端が生まれる場合もございます」
「彼女だけが例外だと?」
「他にも数名危うい者もおりますが、ここまで酷いのは彼女だけと断言いたします」
彩絲とシュテファーニエの背筋も凍る冷ややかなやり取りに、本人のマルガレーテは我関せず。
どころか物欲しげにトルソーの服を凝視し続けていた。
駄目だ、こりゃ。
そう思ったのは私だけではなかったようだ。
「……そこな者。愚かな主を連れて去るが良い。そして己が見たことを誠実に家の者に伝えよ。我から当主へも連絡をさせていただく」
「は。畏まりました。ブラウンシュヴァイク公爵家当主様に従って行動いたします。御助力に感謝いたします。最愛様、誠に申し訳ございませんでした」
覚悟を決めた使用人と目が合ったマルガレーテが何か言いかける。
恐らく服が欲しい! と言いたかったのだろう。
使用人の目が悲しげだったから。
しかし覚悟を決めた使用人はマルガレーテを昏倒させると背負った。
他の真っ当な使用人とともにシュテファーニエと自分に深々と頭を下げて、素早く去って行く。
「……さて。こちらの衣装。次期当主に購入したく思うのだが、可能であろうか」
「勿論大丈夫ですよ。光栄です」
「我が孫娘なのだが聡明でな。自慢の孫なのじゃよ。うむ。どれもすばらしく選び切れぬ。三着ともいただきたいのじゃが……」
「一着500ギルになりますので、合計で1500ギルになりますね」
「随分とお値打ち価格じゃなぁ……」
「ダンジョンドロップ品ですから」
「はっは。普通ダンジョンドロップの高級な品には付加価値がかかるのじゃよ」
言いながらもお値打ち価格の誘惑には勝てなかったらしい。
素早く銀貨一枚と銅貨五枚が用意された。
「良いお取り引きをありがとうございます」
「こちらこそ、有り難い取り引きじゃった。孫に見せるのが楽しみじゃよ。きっと大喜びするじゃろ」
シュテファーニエは腕を組み満足げに何度か頷いたあとで、絨毯の上を端から端まで眺めた。
「そろそろ品物が完売しそうじゃが……まだ販売は続けるのだろうか?」
気がつけば何時の間にか子供たちも二人が完売、もう二人は残り一着を客とやり取りしている最中だった。
「そうですね……今日はこれぐらいが無難でしょうか。雪華はどうしてます?」
「……完売させて、店の撤収をしている最中じゃよ」
「では今日はそろそろ撤収しましょうか」
「なれば、我と夕食なぞ、どうじゃろうか? 最愛様は食に深い興味がおありと聞いておるのじゃが」
広くばれているようだ。
私の食い意地があれなのを!
大変好意的に見られているようです。
そこまで恥ずかしがる必要はありませんよ。
夫のフォローがあった。
でも夫は私に甘いからなぁ。
「ふふふ。地元の料理を試すのが趣味なのです」
「大変好ましい趣味じゃな。我も仕事で他の土地を訪れる際には、必ず地元の料理を頼んでおるよ」
あら。
シュテファーニエは私と同じ食特化の人らしい。
同志のお誘いは純粋に嬉しかった。
「孤児たちに公爵家当主との食事は敷居が高かろう。雪華とランディーニに送らせよう。
それとも、皆。御当主の御相伴にあずかりたいか?」
「「「大変光栄ですが、孤児院の皆と夕食を共にしたいと思っております」」」
「おります!」
三人と一人が深く頭を下げる。
微かに声が上擦っていたのは緊張しているのだろう。
ご落胤の多い孤児院所属の孤児にとって、貴族との食事は多くの地雷があるのだ。
「そうであろうのぅ。今日の頑張りを友人たちに話してやるがよいぞ」
「「「「はい! ありがとうございます」」」」
子供たちの返答に不愉快な色など微塵も見せず、微笑んで孤児たちの望む言葉を与える
シュテファーニエの姿は、領民に慕われる当主そのものだった。
柊麻莉彩 ひいらぎまりさ
HP ∞
MP ∞
SP ∞
スキル 鑑定∞
偽装∞
威圧∞
奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図
王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲
浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)
ウインドアロー ウインドカッター
固有スキル 弱点攻撃
魔改造
簡単コピー
特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。
サファイアのネックレス
サファイアの指輪
サファイアのイヤリング
特殊アイテム
リゼット・バローのギルドカード
魚屋紹介状
衣類屋紹介状
称号 時空制御師の最愛
秋のアフタヌーンティーが気になります。
サツマイモ、カボチャ、クリに各種葡萄。
好きな物ばかり何ですよね。
次回は、シュテファーニエと屋台飯。(仮)の予定です。
お読みいただいてありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。




