服の露天をやるようです。2
友人七人とランチ予定なのですが、なかなかメニューが決まりません。
個室でまったりは確定しているんですけどね。
スタミナをつけたいから肉! という意見が上がっているのですが、その肉もいろいろ種類があるんですよ。
孤児院への移動は大蛇騎乗となった。
大蛇たちがやる気に満ち溢れているので、人目を惹くとわかっていても使ってしまう。
夫からはほどほどにー、と少しだけ不機嫌気味なコメントをもらっている。
男性の目を引くのはよろしくないが、私が尊重されるのは好ましいので、葛藤するのだとか。
無事に孤児院に到着する。
何人かの孤児が出迎えてくれた。
シスターたちは子供たちの背後で様子を窺っている。
「約束通り露店の販売員を募集にきたぞ。最愛様の露天を手伝う者の募集じゃ」
話を知っている孤児たちがわっと歓声を上げる。
シスターたちも子供たちほど感情的ではないが喜んでいるようだ。
「でも、その前に腹ごしらえじゃろ? 我らは食事済みなので存分に食べるがいい」
ランディーニの言葉にノワールは、自慢げにするのは主に相応しくないのでは? と小言を言う。
勿論孤児やシスターには聞こえない声でだ。
まとわりつく子供たちを捌きながら厨房に向かう。
「おや、最愛様。御機嫌は如何でございますか?」
そこにはヴォルデマールがレードルを握っていた。
意外だが料理もするようだ。
「昼食の差し入れを持ってきたの。今日のメニューは何かしら?」
「本日はパンとスープになっております。寄附をいただいたので、珍しく魚のスープでございますよ」
「あら、素敵。では肉料理を提供しましょうか……一人三個まで。喧嘩は駄目よ?」
私はノワールに目配せをする。
取り出してもらったのはコッコーの唐揚げ。
醤油ベース、塩ベース、ほんのりカレー風味の三種類。
希望したらノワールが再現してくれました。
彼女のスキルが最高なのか、彼女の腕前が凄いのか。
どちらもだろう。
唐揚げは大好評だった。
子供も大人も揃って目を輝かせている。
ノワールがさもありなんとばかりに大きく頷いていた。
食事はあっという間に終了する。
請われたノワールがレシピを教えていた。
教会主催のバザーで唐揚げが販売される日が来るかもしれない。
三種類の味をそれぞれ屋台で出すのも、異世界あるあるよね。
食事が終わったところで露天の話をする。
希望者は挙手! と言えば、全員手を上げた。
うん、知ってた。
年齢で弾くべきか考えて、この世界では無用かと思い直す。
彩絲のアドバイスだと、六畳程度の絨毯であれば四人の販売員が必要とのこと。
私を中央に、四人を四隅に配置して売るらしい。
随分人が必要なのね? と質問すれば、盗み対策とのことだった。
一番良い場所に配置されても盗み対策は必須なようだ。
「じゃあ、この絨毯の上に乗ってみてね」
随分と教育は行き届いているらしい。
順番に並んだ子たちは、いそいそと靴を脱いで絨毯の上に乗っている。
途端に三人ほど子供が空を舞った。
「あら」
と声を上げている間に、彩絲と雪華が子蜘蛛と子蛇を使って助けている。
「ふむ。うぬらは、失格じゃな。何か、良からぬ事を考えたのであろう?」
男子一人、女子二人はもじもじと恥ずかしそうに俯いた。
吹っ飛ばされるなんて、結構マズいんじゃあ? と内心修羅場だったのだけど、最初なので牽制したとランディーニに囁かれる。
私以外の皆も絨毯との意思の疎通ができるのかしら?
「きゃあ!」
「うお!」
絨毯に乗っている子たちから悲鳴が上がる。
見れば絨毯の上は三グループに分かれていた。
「えーと?」
首を傾げれば絨毯の意思が伝わってきた。
販売員として合格。
販売員としては不合格だが人間としては問題ない。
人間として問題あり。
……の三つに分けたとのこと。
人間として問題あり?
マズくない?
あー、でも子供だからこれからの教育次第かしら。
私が思案しているうちに彩絲と雪華がシスターを招き寄せる。
人間として問題ありに分けられた子供たちを引き渡して耳打ちした。
頷くシスターと顔色を悪くするシスター。
思う所があるようだ。
子供たちは彩絲と雪華の圧に負けて、大人しくシスターの指示に従っている。
「貴方方は経験不足です。今後選ばれる可能性があるので精進してください」
ノワールに経験不足と言われた子供たちのほとんどが頷いて納得したようだ。
何人か不服そうな顔をしている子もいたが、文句は言ってこない。
「……貴方方は販売員として合格したわ。頑張ってくれるかしら?」
人数はぴったり四人。
男子二人、女子二人。
自己紹介をしてもらう。
「カール 十歳です。頑張ります」
ワイルド系イケメン。
赤髪、赤目。
活動的な印象。
「クルトと申します。 十二歳になります。よろしくお願いします」
クール系イケメン、眼鏡付。
青髪、青目。
勉強ができそうな印象。
「ダクマー 八さいです。計算を間違えないように気をつけます」
綺麗系美幼女。
緑髪、緑目。
慎重で真面目な印象。
「エーリカ 六さい。たくさんうります!」
黄髪、黄目。
やる気が前面に出ている印象。
可愛い。
しかしカラフルな容貌だ。
何とも異世界らしい。
『全員貴族の落とし胤じゃよ』
ランディーニに囁かれる。
この街って、そんなに貴族が多いのかしら?
『この街の貴族ではないぞ。有名らしくてな。わざわざ捨てにくる』
育てられぬなら生むなと言いたい。
この世界では避妊薬や魔法などはないのだろうか。
「皆さんは絨毯に選ばれました。優秀な販売員になってくれると判断されたのです。無理はしないで、誠実に、確実に頑張ってください」
「「「「はい!」」」」
声の大きさ高さなどはばらばらだったが、揃った返事は小気味よい。
「では、売り場に移動しますよ」
ノワールの先導で孤児院を出る。
何人もの子供たちが手を振って見送ってくれた。
頑張れよー! や、お土産を忘れないでねー! などの声もする。
子供たちは大蛇騎乗の移動に大はしゃぎだった。
怖がる子がいても良さそうだけど、この街では好意的に受け入れられているようだ。
既に情報を得ているのかランディーニが先に飛ぶ。
子供たちの可愛い感想を聞いているうちに絨毯販売通りに到着した。
受付で申請すれば男子の入場も可能だ。
カールとクルトの分を忘れずに申請しておく。
イグナーツが確保してくれた一番良い場所とは、通りの中間地点にあるようだ。
一番盗まれる確率が低い、という点から評価されているらしい。
和気藹々と徒歩で移動した。
「本日はよろしくお願いいたします」
「最愛様のお隣で商売できるとは光栄です」
「何か疑問点等ございましたら、遠慮なく聞いてくださいまし」
絨毯は子供たちが四人がかりで敷いてくれる。
ノワールが気配を消して手伝っていた。
ランディーニは一番小さいエーリカについている。
私は設置の間に両隣に挨拶をした。
イグナーツ手配の人物なので信頼できるはずだ。
当然のように女性。
右側の女性は妖艶タイプ。
左側の女性は可憐タイプ。
うん、眼福です!
『ふむ。どちらの御仁も礼節を弁えた商売人のようじゃ』
バレッタ型に擬態している彩絲が教えてくれる。
彩絲の目に叶ったなら更に信頼度をあげても良さそうだ。
「最愛様、準備が完了しました」
「はい、ありがとう」
『あ、忘れてた! この子たちも着替えさせた方がいいわね。売り子たちはさて置き、買い物客は子供というだけで、上から目線で押してくる輩もいるから』
『そうじゃのぅ。孤児院の衣類は清潔ではあるが、微妙に着古した感じが否めぬ。その辺りも侮られる要因だからのぅ』
二人からアドバイスがあった。
ノワールが不意に姿を現す。
「わ! びっくり」
カールが声を上げる。
ノワールはそんな彼の頭を撫でた。
「言い忘れていたが、四人には着替えをしてもらう。目隠しをするからこの場で着替えなさい」
ノワール収納から新品か新品に限りなく近い服が出された。
女児は当然として男児も歓声を上げる。
「この服は貴方たちの服にしていいわ。今回販売員をしてくれる御褒美の一つね」
給与は支払うが、それ以外に何か特典があってもいいはずだと考え、そう決めた。
自分専用の服が嬉しいのだろう。
周囲が振り返るほど大きな喜びの声が響き渡った。
柊麻莉彩 ひいらぎまりさ
HP ∞
MP ∞
SP ∞
スキル 鑑定∞
偽装∞
威圧∞
奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図
王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲
浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)
ウインドアロー ウインドカッター
固有スキル 弱点攻撃
魔改造
簡単コピー
特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。
サファイアのネックレス
サファイアの指輪
サファイアのイヤリング
特殊アイテム
リゼット・バローのギルドカード
魚屋紹介状
衣類屋紹介状
称号 時空制御師の最愛
先日大好きなチョコレート菓子が当選したのですが、お試しセットだったので、個包装が二つ……。
違う味でどちらも美味しかったんですが、物足りなく感じてしまいました。
このチョコレート菓子を堪能するために、主人がくれたアフタヌーンティーセットを用意したんですけどね。
スコーンとサンドイッチは手作りしました。
他は市販の物を使いましたが楽しめましたよ。
家アフタヌーンティーとかしみじみ贅沢ですよね。
主人には感謝です。
次回は、 服の露天をやるようです。3(仮)の予定です。
お読みいただいてありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。




