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服の露天をやるようです。1

 ダウンロードして放置しているスマホゲームが幾つかあるのですが、そのうちの一つを久しぶりにプレイしたところそろそろ課金をしないと厳しい予感……。

 今まで貯め込んだアイテムがあるのでしばらくは無課金で楽しめそうですが。

 

  


「……うーん。まずは服の屋台にしようかな?」


「なれば、商人ギルドで許可をもらうとしようかのぅ」


「最初は絨毯一枚の商いから始めるんだっけ? あー、それなら屋台じゃなくて露天になるのかしら」


「そうじゃな。まぁ、奥方であれば即時店を借りられそうではあるが……」


「商人ギルドへ行く際に、イグナーツ殿を頼ってみては? 伝手があるとないとでは随分と扱いが違うのが商人ギルドでございますし」


「それもそうね……」


 ノワールのアドバイスに頷きながら食事を続ける。

 どれも美味しい。


「じゃあ、イグナーツ殿には私が直接連絡してくるね!」


「よろしく」


 雪華は物凄いスピードで食事を終えると足早に出て行った。


「眷属を出しても良さそうじゃが。イグナーツの顔を立てておいた方が無難じゃろ」


「許可はすぐに下りると思います。絨毯を借りに参りますか? 専門店がございますが」


「……絨毯なら面白い物を持っている。使ってみるか? 奥方なら使いこなせるだろうよ」


 もぐもぐと御機嫌に食事をしていたペーシュが、空いているソファの上に一枚の絨毯を吐き出す。

 大きな絨毯は目の覚める青地に、所狭しと美しいブーケが緻密な刺繍で飾られている。

 うっとりするほど好みの図案で、そっと撫でればひんやりとした感触が伝わってきた。

 座れば涼しく過ごせる予感がする。


「こ、これは……」


「さすがはペーシュ殿。実物を見るのは初めてじゃよ」


「商売繁盛が約束された絨毯じゃな。しかも……ふむ。これは販売地によって変化もするとは! 伝説級ともなれば我が儘も同様じゃろうが……奥方の前では借りてきた猫になるらしい」


 ノワールは感激に言葉がでないようで、彩絲は感心。

 ランディーニの説明で出された絨毯は、ペーシュという持ち主に相応しい特殊な絨毯らしかった。


「こんなに大きな絨毯で販売してもいいのかしら?」


 絨毯一枚の販売スペースと聞いて、玄関マットより多少大きい物を想像していたのだが、この絨毯は六畳近い大きさがありそうなのだ。


「問題ないな。絨毯屋で売られていない物を持ち込む場合は、商人ギルドの許可が必要だが、イグナーツに見せれば十分だろう。あれは商人としてなかなかに優秀だからな」


 ペーシュに優秀と認識されているイグナーツの凄さに改めて感心する。

 良い商人と縁が繋げて嬉しい。


「この絨毯は乗せる物や者を選ぶ。孤児院で子を雇うなら、孤児院で絨毯を広げる必要があるな」


「そうなのね」


「ああ。商品の方はダンジョンドロップ品なんで問題ないだろうが……売るのが勿体ないとされる可能性はあるな。絨毯が嫌がったら一度商品を下げればいい」


「絨毯が嫌がるとか。ふふふ。何だか可愛いわね」


「普通は恐怖か嫌悪なんだがな。まぁ、奥方はその辺りも驚くほど寛容だから、絨毯も気に入っているのだろう」


「嬉しいわ」


「嫌な奴は乗せた上で取り込むからなぁ……なかなか凶暴で容赦ない奴なんだよ」


 絨毯に乗った途端に消えるホラー話は何処かで見た気がする。

 あれは小説だったか、漫画だったか……アニメかもしれない。


 全部違う話で、それぞれ幾つも作品がありますよ。

 麻莉彩はどの媒体でも一作品以上見ていると思います。

 意外と多いんですよね、絨毯にまつわる怪異。

 高級品ですし、人の執着が強い物も多いのですよ。


 夫の説明があった。

 なるほど強く記憶には残らなかったが、絨毯が時に恐ろしい物……という認識はあったようだ。

 

「あぁ……そちらも事実だったんですね。私が聞いた話ですと、商売が下手過ぎて許せなかったから、食われた……というものでした」


「妾が聞いたのは男女の褥として使用を試みたら、二人仲良く食われた……じゃったな」


「商品価値を落とそうとした者が報復に食われた……じゃったのぅ、我の場合は」


「あー、それはそれで全部正解かな。ちなみに食われると永遠の真闇を彷徨うんだ。ほとんどの場合が衰弱死するぞ。骨になると定期的に吐き出されるが……奥方の前ではしないと思う」


 突然骨が湧き出したら驚くので、出す前に一言教えてほしいところだ。

 絨毯からふわっと冷気が漂ってきたので、わかってくれたらしい。

 言葉が使えなくても意思の疎通ができるのは有り難かった。


「……ん。早いな」


「雪華の上に乗ってきたのじゃろう」


 そろそろお腹いっぱいかな? という頃合いに、イグナーツが到着したようだ。


「御前失礼いたします。商売の許可がご入り用とのことでお持ちいたしました」


 イグナーツがトレイの上に置かれた許可証を差し出してくる。

 ガラスでできたカードのようだ。

 左端に私の名前が刻まれている。

 右上には無限大のマーク。

 それだけで規格外のカードかな? と推測できたので、心の準備はできた。


「問題が起きた場合、商人ギルドが全力で解決する。この街であればどんな商売をしても咎められない。いきなり店舗販売を始めてもかまわない……といった意味の商人ギルドカードになります。販売の許可だけでなく、商人ギルドからのあらゆる優待が受けられるカードとなっております。この街で発掘された希少石ブルーダイヤモンドで作られておりますので、衝撃には強いですが火には弱いので御注意くださいませ」


 一気に説明される。

 うん、思ったより凄かった。

 凄かった!

 ブルーダイヤモンドのカードって何?

 人工ダイヤモンドの板なら知識としてはあるけれど、天然ダイヤのカードって……持つのが怖いくらいだよ!

 ……説明を聞くとほんのりブルーがかっているのに気がつきました、このカード。

 

「初めて見るカードじゃな」


「そもそも御方様用に作られていたカードらしいです。情報が残っていたので新たに作り直した物を急ぎ共有して、手配いただきました」


「さすがだのぅ」


「恐れ入ります」


「これでお心の赴くままに販売いただけると思います」


「あ、この絨毯を使おうと思ったんだけど大丈夫かしら……」


 ソファに掛けっぱなしの絨毯を指差す。


「何の問題もないと思われますが……拝見いたしま! ……これはまた、すばらしい絨毯でございますね。存分に御活用くださいませ。持ち主が最愛様である以上、良き商いができるかと思われます」


 イグナーツのお墨付きなら大丈夫だろう。

 一流の商人に評価された絨毯もどことなく嬉しそうだ。


「当初の予定通り、孤児院の子たちと販売しようかと考えているのだけれど……」


「……他の皆様方も御一緒されますか?」


「彩絲と私は久しぶりの装飾品擬態かしら?」


「じゃな」


「我はそのまま、奥方の肩の上におる予定じゃよ」


「自分は気配を消して待機をさせていただきます」


 ノワールは有名人だからね。

 違うお客さんを招いてしまう。

 

「で、あれば大丈夫でしょうか」


 ペーシュは既に消えている。

 皆の手に負えないときには出てきてくれるだろう。


「……両隣は知り合いを手配いたしましょう。お嫌でなければ」


「子供たちもいるしね。安全策は多い方がいいでしょう。お願いします」


「では、絨毯販売通りの一番良い場所を手配しておきます。何時頃から販売なさいますか?」


「逆に、何時からがいいのかしら?」


「本日の昼以降であれば何時なりとも」


 凄いなぁ。

 申請とかないのかしら。

 たぶん優遇枠を使わせてもらえるんだと思うけれど。

 一番良い場所なんて、結構な争奪戦がありそうだよね。


「では昼御飯の差し入れがてら人を借りに行くとして……午後一くらいから、お願いしようかしら?」


「確かに承りました。入り口に案内人を手配いたしますので、指示に従っていただければ恐縮です」


「わかりました。楽しみにしています」


 イグナーツは満足げに深々とお辞儀をして宿をあとにした。

 これからいろいろな手配をしてくれるのだろう。


 自分たちは朝昼兼用ですませてあるので、孤児院の子たち用の差し入れを考える。

 鍋一杯の具沢山スープ辺りが無難だろうか。

 既に昼の準備はすんでいる気もする。

 シスターたちに聞いて、ノワールの収納や私の収納から引っ張り出してもいい。

何にせよ、行ってみないことにはわからないな、と腰を上げれば、彩絲と雪華のファッションショーが始まってしまった。

 この二人は飽きもせずに私を着飾りたがる。

 基本が装飾過多なんだよね。

 可愛かったり、綺麗だったりして楽しくはあるのだけれども。


 今回は服の露天をやるのでそれに相応しい装いとやらになった。

 

二階でドロップした、黒い総レースのワンピースだ。

 かなりのレアらしいので、こちらもドロップした品ですのよ? と接客するらしい。

 粒ぞろいな真珠のネックレス、真珠のブレスレット、真珠のベルトもしっかりと身につけさせられた。


 こんな高級品を身につけて接客とかどうなの? と思ったのだが、逆に普通の服を着る方が問題らしいので仕方ないと自分に言い聞かせて教会へ向かった。





 柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

      

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛  

 





 寝ぼけていたらずっとスキップしていたスマホのバージョンアップをやっていました。

 いきなり画面トップの時計が太文表示されていて驚きましたよ。

 今のところ文字表示が変更された以外に気になることはないので一安心です。

 ゲームのバックアップを取っていなかったので、凄くどきどきしました。


 次回は、 服の露天をやるようです。2(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。 

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