現在の冒険者ギルド。後編
義妹さんに誘われて義姪っ子ちゃんの発表会を見てきました。
小さい子が頑張る姿は何時でも可愛いものです。
しかし皆痩せている子ばかりで驚きました。
いい運動になっているのかしら……。
案内してくれた受付嬢が扉の外で待っていた。
「皆様には大変申し訳ございません。乱入者を止めきれませんでした……」
受付嬢がぎりぎりと歯を噛み締めている。
髪は乱れ、頬と額にはひっかき傷のような跡もあった。
副ギルドマスターの巨漢を考えると、華奢な受付嬢が止めるのは無謀でしかない。
それでも受付嬢の矜持として、挑んだのだろうか。
「脳内花畑の人間を止めるのは難しい。貴女に説明をしてもらってもいいかしら?」
「そう言っていただけて有り難いです。私のわかる範囲でよろしければ、御説明いたします。どうぞこちらへ……」
受付嬢は新しい個室へと案内してくれた。
やはり他の個室からは怒号が響いている。
一般的な冒険者ギルドはこんな感じなのだろうか?
「うるさくて申し訳ございません。罪を犯した者への糾弾もこちらで行っておりまして……」
なるほど、そういうわけか。
それなら激しいのも納得だ。
きちんと罪を贖わせたい者と少しでも罪を軽くしたい者の攻防なのだろう。
「……お入りください」
中には二人ほど人がいた。
後片付けをしていたようだ。
直しきれなかった壁に大きな穴が空いている。
「申し訳ありません。少し前に使用していた者たちが暴走しまして……」
「……少々お待ちください」
壁に穴の空いた部屋に主を留まらせるのに抵抗があったのだろうノワールが、一瞬姿を消した。
次の瞬間には大きな穴を含めて壁には素敵な壁紙が貼られる。
片付けをしていた職員二人が反射的に拍手をしていた。
さらには洒落たティーテーブルと椅子までがセットされる。
「こちらはあとで回収いたしますが、壁紙ははがしませんので安心してください」
「ありがとうございます。今後高貴な方を案内する部屋とさせていただきます。些少ではございますが、壁紙代と作業代をお支払いいたします」
「有り難くいただきます」
受付嬢が頷くと、職員二人は深々と頭を下げて部屋を出て行く。
代金の準備などをするのかもしれない。
立ったまま座ろうとしない受付嬢を促せば、受付嬢は丁寧なお辞儀をしてから腰を下ろした。
ノワールがお茶の準備を始める。
「いろいろとお心遣いいただきまして恐縮です」
「気にしなくていいわよ。ノワールが必要だと思ってやっていることなのだから」
雪華が艶然と微笑む。
場を支配する笑顔といえば彩絲が得意な印象だが、雪華のそれもまた見事なものだ。
「それでも、ありがとうございます。最愛様、彩絲様、ノワール様」
一度席を立ってから深々と頭を下げる。
できる限りの礼儀は尽くしておく、そんな気概が感じられた。
「それにしてもまぁ、ギルドマスターと副ギルドマスターは恋人関係だったの?」
最初にそれを聞くかなーと、内心で突っ込みを入れてしまう。
ノワールも同意見だったらしい。
唇が似たような言葉をなぞっていた。
「恋人というよりは熟年夫婦という認識ですね。常にお互いを支え合うような……理想的な関係に見えました」
「実際婚姻関係ではない?」
「……の、ようですね。種族的な問題らしいと噂で聞きました」
「あー、同じ種族ではないものね。でもそこまで寿命の差はなかったような?」
「そうなのですか? 私ども人間ではその辺りは詳しくないので、介入はできませんでした……というか! そもそも上司の恋愛事情に口を出すわけにもまいりませんでしょう?」
「確かに」
雪華の言葉にノワールと二人で頷いてしまった。
実際関係が良好であれば、恋人だろうが、夫婦だろうが、同僚であろうが関係ないしね。
仕事さえしっかりしてくれればそれで。
「……それでも仕事はできる方々ですし。長命ですし。最低でも落ち着くまでは引き続きマスターとして励んでいただきたいものです」
「それでいいの?」
「数多の冒険者ギルドがございますが、当ギルドが健全な経営状態であれば職員としては死ぬまで働き続けたい程度には良い環境ですので」
仕事ができるだけでなく、人情味溢れる職場なのだろう。
そうでなければ外部からの介入でとっくの昔に崩壊しているはずだ。
「さて。本来であればギルドマスターの口から、お伝えいただきたかったことを申し上げますね」
置かれたティーカップの中身を一口飲んで、幸せそうな表情のあとで、如何にも仕事モードといった生真面目な顔をした受付嬢が語り出す。
「まず、元冒険者ギルドマスターはギルドマスター解任の上で犯罪奴隷となりました。この街で嫌がられる仕事に就かせる案もございましたが、迷惑をかけられた誰かが速攻で滅多刺しにしそうなので、鉱山へ送られることになりました」
「死ぬまで?」
「いいえ。課せられた罰金分の働きがあれば解放されます。そこそこ実力がある者でしたから、真面目に頑張れるのであれば解放も難しくはないでしょう」
「子供も多いみたいだから、死なずに頑張ってほしいものね」
「そうですね。最低十年不真面目であれば三十年といったところでしょうか」
十年であれば第二の人生を再スタートできそうだが三十年となるとそれも難しい。
「副ギルドマスター、ギルドマスターの愛人も解任で犯罪奴隷になりました。子供は孤児院へ預けられます」
「引取先は決まっているの?」
「二人とも娼館ですね。待遇は悪くない場所なので、こちらは頑張れば五年程度で解放されるかと思われます」
「……孤児院に預けられた子が大きくなったら、どんな説明を?」
「完全な捨て子なので残念ながらわからないと告げるようです。犯罪者の子供というだけで、理不尽なめに合うのでこの街の孤児院では、全てその対応ですね」
犯罪者の両親でもいた方がいいと思うか、いない方がいいと思うかは、個人で違うだろう。
ちなみに私はいない方がいい派だ。
何しろ両親兄弟が猛毒だったからね。
「余談ですがギルドマスターの本妻とは離婚で、子供たちの親権は母親が持つそうです。あぁ、でも蘇生待ちの子供に対しては、年齢も年齢ですし、親権は放棄したようですね」
「ああ、あの駄目息子。蘇生費用の負担は当然本人になるんでしょう?」
「はい。自分の蘇生費も含めて借金として冒険者ギルドが肩代わりをします」
「え、珍しくない?」
「調教の余地がある……更生できそうだという職員がおりまして。彼の元で下働きをさせる予定になっています」
調教とはまた、大丈夫なのだろうか。
そもそもその職員、どんな趣味なのかしら。
「何人か困った冒険者を更生させた実績もありますし、父親がいない以上悪影響が少ないと判断されました」
母親は真っ当みたいだし、父親も強さはあったみたいだし。
これで更生すれば、ギルドに都合が良い冒険者になるのかもしれない。
「ギルドマスターに贔屓されていた職員は全員減俸ですね。ぎりぎり生活できる給与で十年以上働かなければならない、という人物もおりますよ。犯罪奴隷に落ちるか、薄給で働くか選べといったら、全員薄給を選びましたね」
「次はないと理解しているのであれば、しっかり働いてくれるでしょうね。あ! 彩絲とランディーニへ攻撃を仕掛けてきた輩の罰金に関してはどうなったのかしら?」
「そちらはエリアス殿が纏めてくれました。既に準備はできていますので壁紙代金と一緒にお渡ししますね」
「エリアスというのね。感謝を伝えたいわ」
「後日場を設けますか?」
「服ダンジョンか氷ダンジョン中心に攻略をしている冒険者なの?」
「ええ、そうですね。この街出身の冒険者ではありませんが、長く頑張っていただいております」
「では、都合がつく日で大丈夫なのでお願いします」
「はい。責任を持って手配いたしますので、御安心ください」
ほっとしたような表情を浮かべた受付嬢は年相応に見えた。
そういえば彼女の名前を聞いていなかったと今更思いつく。
「いろいろとありがとう。そう言えば名前を伺っていなかったわ。教えてもらっても問題ないかしら」
驚いた彼女がふわっと笑う。
とても愛らしい笑顔だった。
「名乗らせていただけて光栄です、最愛様。自分はリーゼと申します。よろしかったら今度、御用件がございましたら御指名くださいませ」
終始そつのない対応に満足だった私は二人を振り返る。
二人も同じ感想を抱いたのだろう揃って頷いてくれた。
「ええ、そうさせてもらうわ」
荒れるギルド内で真面目な彼女の負担は大きかっただろう。
これで少しでも彼女の評価が上がればいいと思いつつ、私はそう答えた。
柊麻莉彩 ひいらぎまりさ
HP ∞
MP ∞
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スキル 鑑定∞
偽装∞
威圧∞
奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図
王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲
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特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。
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特殊アイテム
リゼット・バローのギルドカード
魚屋紹介状
衣類屋紹介状
称号 時空制御師の最愛
最近アイスチュロスの記事をよく見かけます。
ドバイチョコと一緒に買いに行こうか迷います。
ただ暑さに負けて遠出をする気力がないんですよね……。
映画は見に行きましたけど。
久しぶりに食べた新宿立吉の串揚げはおいしかったんですけど。
次回は、 服を売るか、スイーツを提供するか……。(仮)の予定です。
お読みいただいてありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。




