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冒険者ギルドへ立ち寄る。

 婦人科と歯医者の梯子をしてきました。

 そして婦人科は検査結果確認のため二週間後に、歯医者には状況観察と虫歯治療のために一週間後ぐらいを目処に再び行くことになりましたとさ。

 原因がわからなくて歯が痛いのは怖いですね……。

 


 


 無事に氷ダンジョンを踏破できたので離脱を試みる。

 ダンジョンといえば最下層に到達できると、一瞬で離脱可能なシステムが構築されている印象が強かった。

 勿論そういったダンジョンもある。

 一階ごとに入り口に戻れるお気楽なダンジョンもあるそうだ。

 だがこの街のダンジョン……服ダンジョンと氷ダンジョンに便利なシステムはなく、一階ずつ戻らなければいけないらしい。

 服ダンジョンのときは孤児たちに戦闘を行わせていたなぁ……と思い出す。

 氷ダンジョンはスヴェンを育成しながら戻ることになりそうだ。


 いろいろと機会を失ってしまったランディーニがやる気に満ち溢れている。

 スヴェンもつられていた。

 他のメンバーはフォローはするよー、程度に力を抜いている。

 私もそうだ。


 そんなわけで帰路は当初予定していたよりも、ゆっくりとしたものだった。

 ドロップアイテムも豊富で冒険者ギルドや商人ギルドも喜ぶだろう。

 何しろレアドロップの数が多い。

 スヴェンなどはドロップする度に飽きもせずに喜んでいた。

 帰路でも宝箱が出たのには驚いたが、行きよりも数は減るがちゃんと出現するのが一般的とのこと。

 

 五階はさすがに手こずっていたがだんだんと上がって行くにつれて、スヴェンの魔法は正確さを増していった。

 師匠もいいのだろう。

 ランディーニは的確にスヴェンを指導しており、こっそりとノワールが感心していたほどだ。

 相性もスヴェンの性格も良かったからだと思う。


 これなら孤児たちの中に混じっても、浮かないで活躍できるだろうレベルまで仕上がった。

 何よりスヴェンの瞳が希望にきらきらと輝いている。

 家族といたときに纏っていた仄暗さは完全に払拭されていた。


 さて、冒険者ギルドで待っているだろう家族とどう対峙するだろう。

 その覚悟はできたのか? などと考えている内にダンジョンの外へ到着した。


「そういえば、スヴェン君。家族とは話し合うの?」


 雪華がどストレートにぶっ込んでいる。

 ランディー二がおろおろして可愛い。

 スヴェンはぐっと唇を噛み締めて拳を固く握り締める。

 わずかな時間、思案していた。


「話し合うつもりはないです。でも! 自分の言いたいことは言おうと思っています」


 お、強い。

 力と同時に自信もついたようだ。

 ランディーニがよくやったとばかりに羽で頬を慰撫している。

 スヴェンもまた嬉しそうに羽に己の頬を擦りつけた。


 激しい変貌を遂げたスヴェンを見て他の家族はどう思うのだろう。

 真っ当な反応をしそうなのは母親ぐらいだ。

 冒険者ギルドでの話し合いなら、さすがの父親と弟も暴力には出ないはずだが……果たしてどうだろう?


 冒険者ギルドの入り口を潜る。

 中にいる人たちの声がぴたっと止んだ。

 そんな中で一人だけ腰を上げた人物がいる。


「スヴェン!」


 母親だ。

 

「……母さん」


「スヴェンを連れてきてくださって、ありがとうございます」


 母親が深々と私たちに頭を下げる。

 スヴェンを見た瞬間の、ほっとした表情は演技ではない。

 やはり母親はスヴェンをきちんと己の子供として大切に思っているのだろう。


「父さんと、弟は?」


「……個室で話がしたいわ」


「部屋を借りられるかのぅ?」


「あ、はい。空いていますので御案内いたしますね」


 沈黙を守っていた受付嬢も声をかければ普通に対応してくれる。

 受付嬢に付き従う背後で、周囲もざわめきを取り戻した。

案内された個室の内、いくつかからは怒号がしている。

 もっと静かに話し合ってほしいものだ。


 母親が最初に中に入り、私たちも続く。

 先に座るように促されたので、頷いてソファに腰を沈めた。


「……父さんたちとは、はぐれてしまったわ」


「え!」


「しかも五階で」


「五階で?」


「一人じゃ戦闘も難しくてね。私はひたすら逃げてきたんだけど……」


 母親はぎりっと歯を鳴らした。

 スヴェンの顔色も蒼白だ。


「二人は戦ったんじゃないかと思う」


「そう、だね。二人ならそうするよね」


「だから恐らく……二人は死んでしまった……と」


「そう、なんだ」


「……一人で生き残ってごめんなさい」


「や! 母さん一人でも助かって良かった! 良かったよ?」


「こうなってしまった以上、貴男と二人で今後の生活について考えていきたいんだけど……」


 父親と弟を失ってしまったスヴェンに悲しみの色はない。

 ただ衝撃は受けたのだろう。

 母親の言葉になんと応えたら良いかわからないようだ。


「……今まで、どうにか貴男を守ろうとして頑張っていたんだけど、結果として貴男を追い詰める嵌めになってしまった。私には母親の資格がないのかもしれない。でも! 二人が死んだ以上私たちは唯一の血縁よ。難しいかもしれないけれど、私と二人の生活を考えてはもらえないかしら?」


 なかなか痛いところをついてくる。

 二人が生きてこの場にいたら、スヴェンは家族と絶縁できただろう。

 また母親が亡くなっていた場合も絶縁したはずだ。

 弟や父親だけが生き残った場合でも恐らく絶縁したに違いない。

 だがスヴェンは確かに、母親が何時だって自分を庇ったり、庇おうとしたりしてきた過去を自覚している。

 唯一の真っ当な血縁を切って捨てるのは難しいだろう。


「……三人が戻ってきたら、僕は。孤児院に入ろうと思っていた。絶縁をした上で」


「スヴェン!」


「母さんが一生懸命僕を庇ってくれたのは覚えてるよ。結果もっと酷いことになる方が多かったけど、それでも僕を優先しようと頑張ってくれたのは母さんだけだった。だから、母さんだけが生き残って、僕と二人で一緒に頑張っていこうって言ってくれて。凄く、嬉しい。うん。嬉しい」


 スヴェンは言葉にして自分の内面と向き合っているようだ。

 私たちが考えていたより母親の愛情を受け入れられるらしい。


「僕、師匠たちに教えてもらって、結構魔法が使えるようになったんだよ」


「そうなの! 凄いわね。この短期間でよくそこまで努力できたわ」


「うん。師匠たちのお蔭なんだ。だから! 魔法を使うなと言うなら、母さんと一緒にはいられな……」


「言うわけないでしょう! 貴男には魔法使いとしての才能があるわ。その才能は存分に発揮されるべきよ。何度言い聞かせても二人は理解できなかったようだけど!」


 またしても大きな歯ぎしり音が響く。

 母親はスヴェンの才能を認識しており、その才能を存分に振るってほしい、振るうべきだとも考えていたようだ。

 スヴェンの顔色がわずかに明るい色を取り戻した。


「ありがとう、母さん。そんなに僕の力を認めてくれていたなんて思わなかったよ……」


「ごめんなさい。貴男のいないところで散々言って聞かせたのだけど……全く聞く耳を持たなかったのよ、二人とも」


 これはまた。

 想像より頑張っていたようだ。

 本人の前で言えば、その場で本人が害されると考えて、あえていないところで繰り返し言い聞かせていたのだろう。


「……それでも、さ。母さん。僕、やっぱり辛かったんだ」


「そうよね……ごめんなさい。いたらない母親で……」


 ぼたぼたっと母親の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。

 スヴェンの瞳が大きく見開かれる。

 珍しいのだろう。

 限界を超えて孤軍奮闘していた母親の涙は。


「だからさ! 一年くらい? 距離を置こう。そうしたら僕もきっと母さんの有り難みがわかると思うんだ。僕さ。師匠たちの助言で孤児たちとパーティーを組ませてもらう予定なんだよ。同年代の人たちと一緒に揉まれたら、母さん孝行もできる気がするし」


「スヴェン……ありがと……」


 家族以外の人々との交流が大切なのは母親もわかっているのだろう。

 悲しさは拭い切れていなかったけれどたった一人の、息子のために一端距離を置く覚悟を決められたようだ。


「皆様にも感謝を申し上げます。息子が短い時間でこんなにも情緒豊かな反応ができるようになるなんて……ありがとうございます」


 まだ涙声のまま母親が深々と頭を下げる。

 本人たちが切らぬと決めた縁ならば、繋がっていた方がいい。

 特に今回の場合はそう思う。

 切り捨てなければならない縁はあれど、やはり一度繋がっていた縁ならばできるだけ切りたくないのが人情なのだ。


 散々悩んだのでその件に関しては拘りもあるが、寛容さも持っていると自負している。


「いいえ。気にしないで。縁を切らずに済んで良かったわ。教会には私たちが話をするので安心して、貴女も自分の生活基盤を整えてください」


「はい。息子のためにも慎重な冒険を心がけようと思います」


「ああ。今回のダンジョン踏破でスヴェン君はなかなか頑張ったんですよ。得た資産の相談などもされるといいのでは?」


「そうなの? スヴェン」


「そうなんだよ、母さん! 師匠たちと一緒に攻略した経験は本当に得がたいものだったよ。精算をしたら母さんにも渡すね。へへへ。初めて親孝行ができるかな?」


「っ! こうして元気に笑ってくれるだけで、十分に親孝行だわ」


 感極まったという感じで母親がスヴェンの体を抱き締める。

 スヴェンは照れたような笑顔を私たちに見せながらも、母親の背中にしっかりと腕を回して抱き返していた。




 柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

      

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛  



 一家族で一つまでですが、お米が以前購入できた値段で販売していました。

 うきうきと入手してきましたが、ブレンド米なんですよね。

 以前にも食べたブレンド米で、美味しいので問題はないのですが。

 今後もストックができる程度に、定期的な安価販売があると嬉しいですね。


 次回は、 現在の冒険者ギルド。前編(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。 


 

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