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とある家族の選択。

 ちょっと足を伸ばすと心惹かれるイベントがいろいろとあるのですが、暑くなってきたのでなかなか足を運ぶまでに至りません。

 が!

 先日蛇窪神社へ行ってきました。

 巳の日に行くと特殊イベントがあると聞いたので。

 想像以上に混んでいました。

 やはり人間困ると神頼みですよね……。

 可愛い御朱印帳や巳の日限定発売の御守りなどを買ってきました。

 これで宝くじが当選する、はず!

 


 自分が頑張れば良い状況になると信じて実行してきた結果。

 夫と次男は屑になった。

 元々夫は屑の片鱗が見えていたが、長男が産まれて幾分か真っ当になった気がしたので夫を切り捨てずに活動を続けたのだが。

 経済的な理由から望んでいなかった次男が、生まれたときから雲行きが怪しくなってしまう。

 育てやすかった長男と違って、次男は難しい子だった。

 だから自分は次男にかかりきりになってしまったのが駄目だったのだろう。

 夫に任せたはずの長男は萎縮して常に怯えの色を見せる子に、自分が真摯に面倒をみたはずの次男はただの我が儘な子になってしまったのだ。


 この時点で迷った。

 真っ当な長男だけを連れて離婚すべきかもしれないと。

 しかし情が邪魔をした。

 幼い頃から肩を寄せ合って過ごしてきた夫や、実に子供らしい反応をする次男を見限れなかったのだ。


 いろいろな意味で有名なパーティーと出会わなければ、ずるずると現状維持を図っていただろう。

 が。

 第三者が介入することにより、自分が考えていたよりも夫や次男が取り返しがつかない屑だと認識してしまった。

 認識できてしまった以上一緒にはいられない。

 

 家族冒険者として名を馳せる者も少なくないが、それ以上に崩壊するパーティーが多いのは情が邪魔をした結果なのだと、多くの者が語っている。

 当事者ですらもそう言っていた。

 当然自分もそうだと思っている。


 だが夫と次男は違った。

 我慢が足りないせいだと顔を見合わせて笑ったのだ。

 その会話を聞いたときの長男の顔は未だによく夢に見る。

 まさしく自分の家族に絶望した瞬間の顔だった。


 彼女たちと会話をしている最中に浮かんだ、記憶の中の長男と今の長男の顔は同じく暗い。

 けれど。

 美しい女性の袖を掴む長男の顔には安堵の色が宿っていた。


 自分には一度も見せたことがない表情だった。


『……御迷惑をおかけして申し訳ない。必ず迎えに行くので、その子をお願いいたします』 


 悔しかった。

 だからこそ、彼女たちに向かってそう告げたのだ。


『おい!』

 

『任されました』 


 夫がすかさず文句を言おうとするのを許さずに、熟練メイドの風格を漂わせた女性が頷いた瞬間。

 全員の姿が消え失せる。

 転移だ。

 使える者などいないはずのそれ。

 黙って静観していた女性が主人で、仕える誰かが使用したのだろう。

 凄まじい。

 できる者の周囲にはできる者が集まってくるのだ。


 ならば自分は。


 長男と一緒に真っ当な道を行くのであれば。


 夫と次男を切り捨てねばなるまい。


 切り捨てたとて、長男が自分と一緒にいてくれるかは微妙だ。

 頑張ってはいたが長男のフォローをほとんどできていなかった自覚はある。

 謝罪をしても一緒にいられないのであれば、せめて家族の絆を切らないでほしいと懇願してみよう。

 自分の内面に向き合って結論に至れば、心どころか体までもが随分と軽くなっていることに気がつく。


 夫と次男の存在は、どうしようもなく自分を消耗させていたらしい。

 長男が受け入れてくれなければ、一人で生きていこうと静かに決めて、未だに消えたパーティーに向かって罵声を浴びせ続ける夫と次男を凝視する。


 紛れもない憎悪の眼差しで。



 背後から殺気を感じて振り返る。

 そこには母しかいなかった。

 まさか母が自分と父に向けるはずがないだろうと思いつつ周囲を警戒した。

 母は勘が良い。

 恐らくモンスターの出現を察知したのだ。


 きょろきょろと辺りを見回していると父が話しかけてきた。


「何だ? どうした?」


 父は察知能力が低い。

 戦いでは使えない兄ですら察知能力は高いというのに。


「モンスターがいるっぽい。母さんが警戒してるから」


「お、そうなのか。金になるモンスターだといいんだけどな!」


 四階のモンスターは強い。

 家族全員で一丸となって戦っても一体を倒すのがやっとだ。

 兄がもっと使えればいいのだが、絶望的に攻撃力がない。

 母曰く、兄は魔法攻撃が得意なはずとのこと。

 だが実際兄が魔法でモンスターを倒したところなど一度も見ていない。

 父が魔法嫌いだからだ。

 治癒魔法なら良い。

 支援魔法でも文句は言わない。

 ただ攻撃魔法は許せないらしい。

 父親の威厳がなくなるからでしょ、と母は溜め息とともに吐き捨てていたが、父には最初から威厳などはなかった。 


「三人で戦えるかな?」


「足手まといがいないから、いけんだろ!」


 父は自信満々だがどうだろう。

 今まで兄を囮として使っていたから辛うじて倒せていたのだ。

 

「え! 母さん?」


 何時も勝手に走り出すのは父だ。

 だから母がいきなり走り出すなんて思ってもいなかったので出遅れてしまう。

 父と二人で残されたら、自分を囮や盾に使いそうだ。

 慌てて母の後を追った。


「お、おい! 待て。一人で先走るな!」


 何時も母が言っているのと同じ内容の言葉を背中に、全力で母が向かった方へと走る。


「え?」


 母が曲がったはずの角。

 しかしそこに母の姿はなかった。

 代わりにいたのは。


 巨大な蛙。

 チアシードドリンク。

 しかも三体。

 仲良く並んでこちらへ向かっている最中だったようだ。

 本来対峙しているはずの母は一体何処へ行ったのだろう。

 などと考えている時間は短かった。

 チアシードドリンクが揃って大きく口を開ける。

 逃げなきゃ! と思ったが、混乱していたらしい。

 チアシードドリンクに突っ込んでしまった。

 しかし、それが功を奏したようだ。


 チアシードドリンクは一瞬躊躇ったようで、攻撃がこなかった。

 その隙に思い切りジャンプをし、更にチアシードドリンクを足場にして反対側へと降り立つ。

 足の裏に粘つく感触を覚えたが、少しジャンプをする力が減っただけですんだのはラッキーだった。

 そのまま全力で離脱する。

 息が上がったが攻撃範囲から逃れるために角を曲がった、その瞬間。


「ぎゃあああああああ!」


 絶叫が聞こえた。

 父の、声だ。

 短く呼吸をしながら、そっと悲鳴のした方向を覗く。


「ひ!」


 父が血まみれで倒れていた。

 チアシードドリンクの攻撃をもろに食らってしまったのだろう。

 今戻れば助けられるかもしれない。

 だが一人で戻れば殺される可能性が高かった。

 自分が持っているポーションでは父の怪我を癒やしきれない。


「か、母さんを呼んでこなきゃ!」


 だから自分は走った。

 走り去る自分の姿を見た父が、絶望の中で絶命したなんて、知らないままに。



 屑な長男が女ばかりのパーティーに拉致されて苛ついていた。

 だから思うがままに次男と叫んでいたら、妻がモンスターの気配を察知したと次男が教えてくれた。

 索敵能力が高い自慢の妻だ。

 次男もなかなか要領がいい。

 駄目なのは長男だけだ。

 次男が産まれるまではもっと出来が良かったはずなのだが……。

 今は長男がいない分、効率のいい戦い方ができるはずと考えていたそのとき。

 突然妻の姿が消えてしまう。

 あり得ない。

 妻が何の説明もなしに家族を置いていくなんて、一度だってなかったというのに。


 どうしたらいいかと呆然としていたら、次男が走って行った。

 勘が良い次男なので母の気配を察知したのかと思い、その後を追う。

 全力の次男はここまで早かったのか。

 装備が重い自分は足が遅くても仕方ない。

 年を取ったのだから息が切れるのは当然だ、などと言い訳をしながら走ったのだが。


 妻の姿も次男の姿もなく。


 目の前には既に攻撃態勢の入った三体のチアシードドリンクがいた。

透明の体の中のチアシードが蠢いたと認識した次の瞬間。


「ぎゃあああああああ!」


 無数のチアシードに全身を貫かれていた。

 痛い。

 苦しい。

 涙が勝手に流れて、口からはひゅうひゅうと荒い呼気が零れている。


 そんな絶望的な最中で、何処からか人の気配を感じて、その方向を見た。


 次男がこちらを見ていた。

 すぐに助けてくれるだろう。

 そう信じて疑わなかった。

 けれど次男は真逆の方向へと走っていく。

 

 見捨てられた、と思った。

 妻に助けを求めに行ったのだ、とも思った。

 長男が美女パーティーとともに救出してくれるはずだと、信じた。

 信じたのに。


 誰も来なかった。


 助けが来ないのだと、自覚したのと同時に。

 夫の意識は暗転し、二度と目覚めることはなかった。


 

 ショート動画で流れてくるお菓子情報に踊らされています。

 今はドバイチョコとハリボーのチョコマシュマロが気になっているのですが、なかなか入手できません。

 安価で手に入れようとするから難易度があがるんですよね……。 


 次回は、冒険者ギルドへ立ち寄る。(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。 

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