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氷ダンジョン 五階。後編

 主人が新作ゲームを購入して楽しんでいるのですが、採取が楽しそうで購入を迷っています。

 マルチで楽しむのもいいよね……。

 採取→調合→貯蓄のループが好物なんです。

 ちなみ今は7 Days to Dieとインフィニティニキをパソコンで堪能中。

 一つのゲームを延々とやるタイプです。

 


 雪華とボンベ・アラスカの勝負は、二人が肩? を抱き合って双方の健闘を称えて終わった。

 何処の青春映画なのかと突っ込みを入れ損ねたが悔しくはない。

 ボンベ・アラスカは大量のドロップアイテムを残して消え失せた。

 その間ベイクド・アラスカは他のメンバーにさくっと倒されており、ドロップアイテムも回収されている。


「何時まで続くのかのぅ、この戦闘……」


 と呆れた口調で溜め息を吐いた彩絲の背中をノワールがぽんぽんと叩くという珍しい光景まで見てしまった。


「毎回こんな楽しい戦闘ならいいんだけどね!」


 額の汗を拭う雪華はしらけた眼差しを向けられても御機嫌なままだった。


「スヴェンが目を覚ましたので、遠慮なくボス戦に……何があったのじゃ?」


 普段通りのサイズになりスヴェンの肩に乗ったランディーニが、話しかけようとして口ごもる。

 それだけ複雑な雰囲気が漂っていたのだ。


「ちょっと変わったモンスターを戦闘してただけよ、ね?」


 満面の笑みを浮かべた雪華を否定する者はいなかった。

 疲れたように揃って頷いて見せる。


「それならいいのじゃが……スヴェン。ドロップアイテムを拾ってくれるかのぅ」


「はい。ランディーニ師匠!」


 ランディーニの羽毛に埋もれての睡眠はスヴェンの回復に大きく役立ったようだ。

 子蜘蛛と子蛇に声をかけて仲良くアイテムの回収を始めた。


「どうした? まだ五階を堪能したいのと申す……」


 私たちのなんともいえない表情を、探索不足と判断したらしいランディーニが言葉を続けようとした、そのとき。


 恐ろしいプレッシャーがかかる。

 全身からぶわっと冷や汗が溢れた。

 スヴェンは昏倒している。

 ペーシュが姿を現した。


「異界の者が顕現した。異界の神を模した者だな。随分と愚かしい……」


 何処までも可愛いペーシュの声が恐ろしく冷たく聞こえる。

 どうやら現れたモンスターはペーシュを不機嫌にする歪さを持っているようだ。


「かの有名なクトゥルフ神話のアフーム=ザーに憧れた存在が、本体になろうとしてなれなかったようだ。邪神といえど神には変わらない。本来神に成り代わるなどあり得ぬし、禁忌とする世界が多かろう。もともとはそれなりに力ある者だったが禁忌を犯して排除されて、この世界に現れた……ということになるな」


 え?

 そんなことあるの?

 随分と無茶な話だ。

 夫の力で異世界を堪能している自分も十分おかしいとは思っているけれど。

 っていうか、邪神のなり損ないでも、このプレッシャーなんだ。

 まぁ本物の邪神だったら顕現した途端、全員死亡が確定だと思うから、その程度といってしまえば、それまでなんだけど。


「本物がいないこの世界であれば成れると考えたのかもしれぬが……全く浅はかな愚か者だ。己が世界から排除されたのだと認識できておらぬ。神に成り代わろうとするなど……所詮その程度の者だ、が。これは我が倒すとしよう」


 視界が青白く染まった。

 それが、目の前に突然現れたのだ。

 瞬間移動かもしれない。

 私とペーシュ以外が全員膝をついた。

 立っていられないらしい。

 夫による結界の凄まじさを思い知った。


『■■■! ■■! ■?』 


 もどきがこちらに向かって話しかけてくる。

 何を言っているのかはわからない。

 異世界語翻訳変換が機能していないところをみると、言語とは違う何かなのだろうか。

 話しかけているとわかったのは、もしかすると翻訳機能が頑張った結果なのかもしれない。


「ここもまた、貴様の存在が許されぬ世界。悍ましき所業の末路を知るがいい」


 ペーシュはもどきが何を言っているのか明確に理解したようだ。

 凄い。


『■■! ■■■!』


 青白く燃えさかる巨大な球体が何かを叫ぶ。

 やはり翻訳機能が頑張っているのだろう。

 何を言っているかはさっぱりわからないが、わからなくて正解なのかもしれない。

 与えられるプレッシャーに変化はなかった。

 しかし新しい冷や汗はまだ額から首筋に滑っていく。

 愚かでも力はあるのだ。

 世の理から排除されてさえも。

 否、排除されたモノ特有の強さがあるのだろうか。


「静まれ」


 可愛らしい声だ。

 善人ならば言うことを聞いてあげたいと思うに違いない。

 もどきは善人ではないだろう、けれど。

 叫び声は止まる。


「禁忌を犯した者に相応しいなれの果て……己以外の何も者もいない世界で永遠に一人、漂い続けろ」


 もどきの背後に大きな黒い穴が現れる。

 ブラックホールに似ていた。

 しかし全てを飲み込むはずのブラックホールは、絶叫を上げるもどきのみを吸い込んでいく。

球体が踏む地団駄を見た。

 なかなか良い経験だったと思う。

 きゅぽん! と小気味よい音とともに、もどきの姿は消えた。

 凄まじいプレッシャーも失せる。

 今度は安堵の汗がどっと噴き出た。


「……ペーシュ殿……かたじけない」


 よろよろと彩絲が立ち上がる。

 雪華も続いた。

 ランディーニとノワールはスヴェンの様子を見ている。

 変な後遺症などをもたらさないといいのだけれど。


「僥倖とはいいたくないが希有な巡り合わせだ。ダンジョンマスターが、ちょっと変わったボスを用意しようとした画策が徒となったのだろう。それでも想定外の強さに遭遇する機会に恵まれたと、感謝するべきかもしれないな?」


 彩絲と雪華が目に見えて落ち込んでいる。

 ノワールとランディーニも精彩を欠いているようだ。

 それだけもどきは強かったのだろう。

 四人が一丸となって死力を尽くしても、もどきは倒せなかった。

 勿論、他の時空へ飛ばすなどという離れ業も使えなかった。

 私一人は助かっただろう。

 それでも皆を失ったショックは酷かったはずだ。

 そうならないように夫が介入して、ペーシュの代わりを務めたかもしれないが、今ほど状況は良くなかったと思う。


「……この世界であれば神や、邪神などとも対峙した経験がありましたが……あれは、別次元というか……」


「対処方法が全く見いだせなかったのじゃ……」


「言い訳か?」


「違うよ! あー、でも言い訳なのかな……」


「改めて考えても、ペーシュ殿がいなかったら何が最善だったのかわからぬよ」


 難しい話だ。

 ここまでの厄災に遭遇するなんて、想像を超えている。

 ペーシュもその辺りは認識しているはずだ。


「我がいる以上、我に任せるのが最善だった。此度、そなたたちの選択は正しかったぞ?」


「動けなかった、だけだよ」


「次があるとは思わないが……せめてその場を離脱する力は欲しいのぅ」


 反省し、次に生かそうとする二人の考え方はすばらしい。

 すばらしいが! 

 そもそも主である自分が、皆を連れて離脱すべきだったのではないかと思うのだ。

 ペーシュに任せてしまったが、動けたのは私とペーシュだけだったのだから。


「真面目だなぁ、奥方は」


 みにょんと伸びてきた触手が私の頭を優しく撫でる。

 じんわりとした温かさが染み入るようだった。


「いいんだよ。奥方は大人しく守られてくれれば。それが最善で最良だ」


「……ありがとう、ペーシュ」


「そうそう。それでいい。主からの感謝は何よりの糧で誇りだからな」


 その言葉に皆も口々に礼を言った。

 誰かに気づかされた礼でも、しないよりはいいと個人的には思う。


「ダンジョンマスターが御褒美とお詫びに気合いを入れた宝箱を用意したみたいだぞ? 皆で確認するといい。そこの男児も起こしてやれば良い経験になるだろうさ」


 ぽんと一跳ねしたペーシュは再び姿を消してしまった。

 ペーシュはスヴェンに厳しいのかもしれない。

 可愛い声に時々忘れがちだが、ペーシュはこの世界では最上位にいるだろうエンシェントスライムのネームドなのだ。


 ランディーニが優しくスヴェンを起こす。

 気絶前後の記憶は曖昧らしい。

 少し考えたランディーニが強すぎるボスが出た途端、気を失ってしまったのだと説明した。

 新人あるあるなのでスヴェンは、頬を赤らめて恥ずかしいです、と言いつつ納得したようだ。

 

 ダンジョンマスターが用意したお詫びの品も、御褒美もそれはそれは凄いものだった。

 スヴェンなどは飽和状態で終始ぽかーんとしていた。

 死蔵アイテムが増えていくのはどうなのだろう? と眉を顰めれば。


 世界に愛されるヒロインですから仕方ないのです。

 ちょっとずつ慣れていきましょうね?


 と夫の声が響いた。



 ベイクド・アラスカ

 中央に一輪の薔薇が描かれた皿に載っている、ベイクド・アラスカ。

 柄が薔薇の形をしたスプーン付。

 ダークラムにしっかりと漬けたダークチェリーがたっぷりと飾られている。


 ベイクド・アラスカ

 焼きメレンゲ。

 瓶にみっしりと詰まっている。

 甘すぎないのでそのまま食べてもいいし、飾りに使ってもいい。

 本来は一口サイズが数個瓶に入っている。


 ベイクド・アラスカ レア

 メレンゲ。

 ホイップされた状態。

 無糖なのでお菓子以外にも使われるようだ。

 瓶にみっしりと詰まっている。

 開封しても最高の状態が保たれる特殊仕様。

 本来は一度開けると劣化する。


 ボンベ・アラスカ レア

 全体的に繊細な薔薇が描かれている皿に載っている、ボンベ・アラスカ。

 柄が薔薇の形をしたスプーン、フォーク、ナイフ、カトラリーレスト付。

 一口食べるまでは炎が上がったままなので、大人気間違いなしの一品。


 ボンベ・アラスカ レア

 ダークラムの樽。

 雪華のうわばみっぷりに感動してドロップした。

 小瓶と違い飲用としてオススメ。


  ボンベ・アラスカ レア

 中央にボンベ・アラスカがモチーフとして使われているティアラ。

 炎が揺らめいて見えて美しい。

 緩やかに暖かい空気を纏っているので、寒い地域では重宝される。

 

宝箱に入っていた御褒美とお詫びの品には、それぞれ御褒美、お詫びの品と書かれた綺麗なカードがついていた。


 お詫びの品

 氷ダンジョンでドロップする食べられるアイテムを作ってくれるボックス。

 説明書付。

 唯一品。

 登録者以外は使用不可能。

 

 御褒美品

 氷ダンジョンでドロップする食べられないアイテムを作ってくれるボックス。

 説明書付。

 唯一品。

 登録者以外は使用不可能。





 柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

      

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 装備品

 ゴーグル 可視光線透過率 自動調節機能付

 ふわもこキャップ 防寒効果抜群

 メリノンウールシャツ 保温性、通気性、防臭力が高い。

 タートルネックジャケット 速乾性、吸汗拡散性、保温性が高い。

 ハードシェル フード付 雨雪も安心の撥水性

 メリノンウールタイツ 保温性、通気性、防臭力が高い。

 マーサラップパンツ 速乾性、吸汗拡散性、保温性が高い。

 アルンパインパンツ 滑り止め効果が高く、防風も完璧。

 メリノンウールハイソックス 防菌防臭効果有

 アルンパインスノーブーツ 緊急離脱機能付 疲れにくい効果付与

 メリノンウールグローブ 防菌防臭効果有

 スノーグローブ 緊急移動機能付 加熱機能付

 リュック型冷蔵&冷凍庫 無限収納で時間停止状態


 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛  

 今回本文中にちらっと出たクトゥルフ神話のアフーム=ザー。

 あまりシナリオで見かけないので、調べたらそれなりにある模様……。

 まずはシナリオよりも神格解説動画の視聴が先かな。

 定期的にクトゥルフTRPG動画を見たくなるのですよ。


 次回は、とある家族の選択(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。


 

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