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氷ダンジョン 五階。中編

 結婚記念日にストロベリービュッフェを予約しました。

 楽しみー。

 ストロベリービュッフェはなかなか取れないし、お一人様が駄目な場合が多いのですよ。

 高評価でストロベリーアイテム以外も美味しいとの噂。

 ティースタンドの無料貸し出しまであるとか、実況者さんたちには嬉しい対応だと思います。

 


 スヴェンの睡眠は深いようでまだ起きないという。

 それならばと探索を続けた。


「宝箱だね」


 突然雪華が声を上げる。

 今回の宝箱は隠蔽仕様らしい。

 雪華が目の高さの空間をノックする。

 こんこんと扉をノックする音がした。

 扉が開くように空間が開く。

 何もない場所から突然金庫の中身が現れるのを想像するのが一番近そうだ。


「ん? 宝箱じゃないんだ」


 中に入っていたのは瓶だった。

 装飾が施された綺麗な瓶だが、剥き出しだ。

 今までの傾向だと、宝箱に瓶が入っている場合がほとんどだったのだが。


 取り出して掌に載せて、瓶を見せてくれたので鑑定する。


 シャワーミスト

 逆さまにぶら下げると、霧が降り注ぐ。

 持ち主が心地良いと感じる気温と湿度を維持してくれる。

 瓶が壊れない限り永続使用が可能。

 瓶はそこまで頑丈ではないので、補強推奨。


「へぇ、これまた需要がありそうだね」


「そうですね。補強はさほど難しくないでしょう。主がお使いならこの場で補強しますが?」


「売るとしても補強済みなら高く売れそうだし。お願いします」


「畏まりました」


 瓶がノワールに渡る。


「補強」


 一言だけ、ノワールが囁く。

ぐにゃりと瓶周辺の空間が瞬きの間歪む。


「……これでかなり強度が上がりました」


「補強って、スキル? 魔法?」


「どちらでもありません。シルキーであれば取得可能な技能と申せばよろしいでしょうか」


 なるほど。

 人物鑑定をかけても出てこないのはそのせいか。

 ノワールの場合、ステータスに表示されない技能はまだまだありそうだ。

 どうぞと手渡されたので再鑑定を試みた。


 シャワーミスト 補強済み

 逆さまにぶら下げると、霧が降り注ぐ。

 持ち主が心地良いと感じる気温と湿度を維持してくれる。

 瓶が壊れない限り永続使用が可能。

強者が全力で破壊を望んでも難しいレベルの補強が施されている。


 うん。

 さすノワ。

 今回の仕事も完璧です。

 見た目もおしゃれな照明器具みたいだから手元に残してもいいかな?


「モンスター登場じゃぞ。ふむ。アイス大福と葛アイスのコンビじゃな。今回も三体ずつとは……最終階層らしく多めの出現になっておるのかもしれんのぅ」


 いそいそと自分の収納に入れておく。

 指輪を近づければ、しゅん! と入ってくれるので便利なのだ。

 人前では使わないけどね。


「アイス大福は種類によって攻撃方法が異なるので厄介じゃぞ。葛アイスは基本体全体を使った打撃攻撃じゃ」


「えーと? キコナアイス大福とロベリートスとズーチーアイス大福みたいね。キコナが目潰し、ロベリートスは異音、ズーチーは悪臭攻撃よ。随分と手が込んだ面倒な攻撃ねぇ」


 目、耳、鼻が同時に使えない状態に追い込まれると、想像以上にストレスを感じるものだ。

 一つの器官に問題があっても不快になる。

 それが三箇所同時にいきなりとか、パニックに陥る冒険者は多いだろう。


「スヴェンの家族だったら間違いなく死亡フラグが立つわね」


「じゃな。同士討ちで全滅もあり得そうじゃのぅ」


 彩絲の言葉に何やら予見めいた雰囲気を感じて震えが走った。


「あらら。結構間抜けなモンスターなのかしら?」


「ふむ。圧倒的な強者を前にして混乱しているのではないのかぇ」


 アイス大福三体はノワールに、葛アイスは二体と一体に分かれて彩絲と雪華に襲いかかった。

 ちなみに私は全スルーである。

 敵認定されていないと感じるほどだ。

 解せない。


 アイス大福たちの攻撃はノワールの箒一閃で攻撃を全てそのまま返された。

 返されて、それぞれ悶絶している。

 フレンドリーファイヤーどころか、自分の攻撃で窮地に陥るとは滑稽だ。


 自らの体をバットのようにして殴りかかった葛アイスもまた、呆気なく倒されてしまう。

 大蛇化した雪華の尻尾に襲いかかった二体は、ボールのように弾き飛ばされた。

 場外ホームランになるのだろう。

 壁と天井に激突してドロップアイテムを落とした。

 彩絲に向かっていった一体は子蜘蛛たちに食べ尽くされてしまった。

 大きめの子蜘蛛が彩絲にも一口与えていたのには、思わず大口を開けて見詰めてしまった。


「なかなかに美味じゃのぅ」


 しかも美味しかったらしい。

 何を突っ込めばいいかわからないわー、と慣れた諦観を抱きつつ、ドロップアイテムを拾いに向かう。

 すっかりドロップアイテム回収隊となった子蜘蛛や子蛇たちが、自慢げに持ってきてくれるのが可愛い。


 アイス大福

 バニラアイス大福。

 和風の器に入っている。

 さっくりと切れるミニナイフ付。


 アイス大福 レア

 バニラアイス以外はレア。

 キコナ、ロベリートス、ズーチー、生クリーム、フルーツ味。

 現在はこれで全種類。

 もっと増やしてくれてもいいのですよ?


 アイス大福 レア

 切り餅十二個入り。

 箱の中にみっちりと詰まっている。

  

 葛アイス

 棒状の葛アイス。

 バニラアイス以外はレア。

 アイス生地に葛が練り込まれていて、溶けにくいのでとても人気がある。

 

 葛アイス レア

 パープルベリー、オレンジン、モーレン、ポメグラネイトン、ブルードラゴンルツ、スイスイカ。

 現在はこれで全種類。

 他にどんな味がいいと思います?


 葛アイス レア

 固形タイプと粉末タイプがそれぞれ瓶詰めされている。

 一ダースずつドロップ。

 本来は固形タイプか粉末タイプのどちらか一瓶しかドロップしない。


「……大福がさっくり切れるナイフが地味に便利」


「器とセットで人気じゃな」


「ドワーフが頑張って再現したくなる繊細さらしいよ?」


 是非とも格安で販売していただきたい。

 お餅以外の切りにくい料理でも使えそうだしね。


「それにしても……違う味のアイスを求められている気がするんですけれど?」


「食べたい味があれば遠慮なく告げればよいと思うぞ」


「今でも十分種類があるよね? そもそもレアドロップだから普通はそんなに出ないんでしょうし」


「そうですね。レアドロップは常に高値で取り引きされています」


「うーん。強いて言えばミルク味が欲しいかな? バニラとは味が微妙に違うんだよね。あの素朴な味が好きなんだー」


「素敵な提案じゃな。万人受けしそうだから、すぐにでも採用される気がするぞ」


「次の宝箱はきっと詰め合わせね!」


「……宝箱の前に、モンスターが来たようですね」


 ノワールの冷静な声に促されるように前方を見やる。


「おぉ、燃えているアイス?」


 現れたのは皿の上に炎をあげているアイスクリームを乗せたモンスター。

 お皿の柄が薔薇柄で人気がありそうだ。


「ベイクド・アラスカじゃのぅ。炎攻撃とダークチェリリンを飛ばしてくる攻撃だったはず……」


『我が輩は、ベイクド・アラスカではない! ボンベ・アラスカだ!』


「そういえばあちらでは、フランベされたものがそう呼ばれていたような……」


『その通りだ! お主はなかなか優秀な冒険者とみた。これをやろう』


 燃え盛る炎の中から瓶が飛んできた。

 すわ、火炎瓶? と思ったが違ったらしい。

 子蜘蛛たちが放った蜘蛛の巣で軽く受け止められた瓶は、私の手の中へと収まった。


 ダークラムの小瓶

 良質のダークラムが入っている。

 そのまま飲んでもいいが、お菓子作りに最適。

 ボンベ・アラスカのレアドロップ品。

 ベイクド・アラスカと認識しているとドロップされない。

 つまりは大変希少なアイテム。


「む? するとベイクド・アラスカと呼ばれているモンスターは全てボンベ・アラスカなのかぇ?」


『違うぞ! 我が輩の周囲にいるモンスターはベイクド・アラスカだ。冒険者に言わせればベイクド・アラスカの上位種がボンベ・アラスカになるぞ』


 ボンベ・アラスカを守るように囲んでいるモンスターは確かに燃えていない。

 燃えていないモンスターがベイクド・アラスカで間違いなさそうだ。

 

「そうなのね! 知ってた?」


 一番詳しそうなノワールが深刻そうに首を振る。

 しかしふと思い至ったように呟いた。


「五階層で酒に溺れ死ぬ者がおりましたが、珍しい罠が原因だと考察されておりましたが……」


『我が輩の手にかかった愚かな冒険者で間違いないな! ちなみに我が輩はレアモンスターであるが、一体だけというわけではないぞ!』


 元気でおしゃべりなモンスターで有り難い。

 これで氷ダンジョンの出現モンスターに追記がされるだろう・


『では、尋常に勝負だ! あ、優秀な冒険者は下がって見学していてもいいぞ?』


 贔屓されて思わず笑ってしまう。

 何とも人間に近しい感性のモンスターだ。


「ではアリッサには下がってもらいましょうかね!」


 雪華が大蛇化する。


『おぉ! さては我が輩のダークラムを飲み干すつもりだな。一度ウワバミと戦ってみたかったんだよ!』


 ボンベ・アラスカは雪華の大蛇化を見て武者震いをしていた。

 さては脳筋だな? と疑っていると、凄まじい雨が降り注いだ。

 噎せ返るアルコール臭がするので、ダークラムの雨に違いない。

 雪華が美味しそうに雨を飲み、ノワールは大樽で回収し、彩絲はグラスで受け止めて、その味を確認している。

 うんうんと頷いているので、かなり美味しいようだ。

 氷ダンジョンでは、服ダンジョンとは違った楽しさがあるなぁ、と感心しながら私は勝負がつくのをのんびりと待った。





 柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

      

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 装備品

 ゴーグル 可視光線透過率 自動調節機能付

 ふわもこキャップ 防寒効果抜群

 メリノンウールシャツ 保温性、通気性、防臭力が高い。

 タートルネックジャケット 速乾性、吸汗拡散性、保温性が高い。

 ハードシェル フード付 雨雪も安心の撥水性

 メリノンウールタイツ 保温性、通気性、防臭力が高い。

 マーサラップパンツ 速乾性、吸汗拡散性、保温性が高い。

 アルンパインパンツ 滑り止め効果が高く、防風も完璧。

 メリノンウールハイソックス 防菌防臭効果有

 アルンパインスノーブーツ 緊急離脱機能付 疲れにくい効果付与

 メリノンウールグローブ 防菌防臭効果有

 スノーグローブ 緊急移動機能付 加熱機能付

 リュック型冷蔵&冷凍庫 無限収納で時間停止状態


 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛  







 プランターに何を植えようかと何時も足を運ぶ花屋さんに行った所……なんと! ラナンキュラスが特売だったのです。

 居合わせたおばあさんと鼻息荒く選んでしまいましたよ。

 暖かくなったので毎日花がほころんでいく様子を絶賛観察中。


 次回は、氷ダンジョン 五階。後編(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。

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