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氷ダンジョン 四階。中編

 今回はオリジナル蛙の描写があります。

 想像すると、うわぁ……となる外見の蛙ですので、苦手な方はご注意ください。



 こんなとき私たちのパーティーは異常だよなぁと思いつつ、ノワールに休憩小屋の召喚を頼んだ。

 快く頷けばダンジョンの中に小屋がどどん! と出現する。

 兄は口をぱかーんと開けていた。

 中に入って抱き上げていた兄を彩絲がそっとソファの上に下ろす。


「まずは、怪我の手当じゃな」


「それは自分が」


 ここでもノワールの出番だ。 

彼女の救急で手当のち、休憩小屋でのんびりすれば完治! が役に立つ。


「救急」


 ノワールが兄に向かって両掌を向けて呟く。

 両手にぽうっと光が灯った。


「痛みが……消えました」


「軽傷が多すぎましたね。よく我慢したものです」


 ノワールが兄の頭を優しく撫でる。

 兄の目にじんわりと涙が浮かぶも、薄汚れた袖でぐいっと拭った。


「もしかして泣くのは軟弱とか、言われちゃった?」


「はい。すみません」


「大人でも辛いときは泣くものなの。貴男は軟弱なんかじゃないわ。御両親と弟がちょっとおかしいって、思ったことはない?」


 兄はぐっと唇と拳を握り締める。

 答えを考えあぐねているようだった。


「そういえば、おぬし。名は?」


 沈黙を不憫に思ったのか彩絲が助け船を出した。

 珍しい。

 

「! 名も名乗らずに失礼しました。スヴェンと申します」


 痛みがなくなったからか勢いよくソファから立ち上がりぴょこんと頭を下げる。

 そのままめまいを起こしたらしく、どさっとソファに沈んだ。


「無理はせんでよい。主の質問は難しいものではなかろう?」


「あ、るじ?」


「妾は守護獣じゃ。主人を持ってその力を発揮する者」


「私も守護獣だよー」


「す、素敵です! あ、握手したいです!」


 あら、守護獣って男の子にそんなに人気なのかしら?

 男性で強そうなら男の子が憧れるのもわかるけど。


「よいかぇ、主?」


「勿論いいわよ。貴女たちが素敵なのは私も知るところですし」


「ほほほ。全く主には叶わぬのぅ。ちなみにスヴェンの怪我を治したのはシルキーで、肩に止まっておるのはブラックオウルじゃ」


 死んだ目をしていたスヴェンの瞳が子供らしく輝く。

 シルキーもブラックオウルも冒険者なら憧れるよね。

 一緒に冒険したい筆頭の妖精たちでしょう。


 全員に握手をしてもらったスヴェンは勇気を得たのだろう。

 重い口が開かれた。


「両親と弟はおかしいと思います。母は少しマシな部分もあると思いますが、おかしいか、おかしくないか、どちらか選べと言われたら、おかしい方だと思います」


 きっぱりと言い切ったあとで大きな溜め息を吐く。

 認めるのは難しいだろう。

 自分以外の家族が屑だと認めるのは。

 ましてやその屑に冷遇されているのだと理解していれば尚更に。


「酷なことを言うようだけど、君。このままだと死ぬよ」


「……はい」


「死にたい?」


「……死にたくない、です。でも! どうしたらいいか、わからなくて……」


 ぼろぼろぼろっと涙が零れ落ちた。

 相談できる相手などいなかったのだろう。

 本来信じられる家族が誰一人として信じられないのだ。

 疑心暗鬼に陥っても仕方ない状況だった。


「私たちがダンジョン踏破するまで同行を許します。その間に家族とは違う戦い方を学びなさい」


「はい! ありがとうございます」


「踏破完了後、冒険者ギルドへ行く前に教会へ行きましょう。教会と孤児院は最近真っ当な子が過ごしやすい環境になったからお勧めよ」


「あの……孤児院は両親がいない子が行くところでは?」


「いない方がいい親もいるからね。完全に縁を切らずとも時間を置いて見えてくるものもあるの」


「それは……何となくわかります。僕が強くなったら家族は僕を認めてくれるでしょうか?」


 真っ直ぐな目で問われた。

 やはり血のつながりは強い。

 信じたいのだろう。

 だが今回の場合は別の懸念がある。


「認められるかもしれない」


「本当ですか!」


「でも、寄生される可能性が高いわ」


「あ……」


 私の指摘にスヴェンの紅潮した頬は一気に蒼白となった。

 残念ながら寄生される未来しか見えなかったのだろう。


「距離を置いて、私たちや他の子たちとパーティーを組んでみて、また考えるといいわ」


「……はい。御言葉に甘えさせてください……」


「まだおぬしは恵まれておる。我が主が見つけてくださった」


「そうね。死ぬ前で良かったわよ、本当」


「……さぁ、これを飲みなさい。体が温まります」


「甘くて、温かくて、美味しいです……」


 色と香りからして蜂蜜入りホットミルクだろう。

 ホットのぶたんミルク、ビーハニー入り……かな?


「スヴェンは魔法が使えるようじゃ。風魔法は得意だから、我も教えてやろうかのぅ」


 スヴェンの肩に移動したランディーニが、もふもふと頬ずりをしながら提案する。

 鑑定はしていないのでわからなかったが、どうやらスヴェンは風魔法が使えるようだ。

 ランディーニの講師はうってつけだろう。


「魔法……使っていいんですよね?」


「ああ、親に禁止されていたのかのぅ。気にするでない。自分たちが使えぬので嫉妬でもしたのじゃろうて」


「嫉妬……」


「残念じゃがそういう親もいるのじゃよ。運が悪かったな」


 家族に恵まれないつらさはよくわかっている。

 本当にどうしようもないことなのだ。

 私は夫のお蔭で早く離れることができた。

 彼も離れた方がいい状況だと経験上思う。


「さて、行くとしようかのぅ」


 彩絲が腰を上げる。

 カップをノワールに手渡して御礼まで言えるスヴェンは、よくあの家族の中でここまで礼儀を学べたものだ。

 見るに見かねた第三者がこっそりと教えていたのかもしれない。


 休憩小屋から出る。

 モンスターの待ち伏せはなかった。

 瞬間で消える休憩小屋を驚きの眼差しで見詰めたスヴェンは、肩に乗ったままのランディーニの頭をおそるおそる撫でた。

 もふもふを撫でると落ち着くのよね。

 わかる。


「……チアシードドリンクが来ます。十二体です」


「主よ。蛙は大丈夫か?」


「ん? 大丈夫よ。十二体ぐらいなら」


「なら良かったけど、一応。覚悟しておいてね。チアシードで、蛙だからね?」


 チアシードが蛙の卵に似ているのは知っているので大丈夫。

 大丈夫……だよね?


 大丈夫じゃなかった!

 露骨すぎるでしょ!


 今まではお皿だの器だのに入っているのがほとんどだったから安心していたんだけど、今回は想定外だ。

 驚くべきことに透明の蛙の中にチアシードがみっしりと詰まったモンスターだった。

 見た目がとにかく気持ち悪い。

 そしてチアシードを食べる気が失せる。


「美味しいし、健康にも良いのですが」


「モンスター状態を見ちゃうと、飲めなくなる人が多いのよね」


 雪華の言葉に大きく頷く。


「チアシードを飛ばしてくる攻撃じゃぞ。ウインドサークルで皆を守るか? ウインドカッターで敵を裂いてみるか?」


「攻撃をしてみます! ウインドカッター!」


 ランディーニの質問に答えたスヴェンが素早くウインドカッターを放つ。

 家族が見ていないところで練習していたのだろうか。

 ウインドカッターは離れた場所にいたチアシードドリンクを見事に切り裂いた。


「おぉ! 想像より優秀じゃ。続けていけるかのぅ?」


「はい! いけます! ウインドカッター!」


連続で撃てるとはなかなか優秀だ。

 これだけ魔法が使えるなら、剣での攻撃を強要されるのはさぞストレスだっただろう。


「全滅まで、頑張ってみるかのぅ」


「いけるかもしれませんが、外しそうな気がします。お願いしてもよろしいでしょうか?」


「うんうん。冷静で良いのぅ。では、我が残りを片付けよう」


 ランディーニの放つウインドカッターが残っていた敵を殲滅する。

 スヴェンが放ったウインドカッターよりもスピードがあり、威力もある。

 魔法を放った者の力量で随分と変わるものだ。

 こうして同じ魔法が放たれると、その差がよくわかる。


「ランディーニ師匠、凄いです! 早くて、強いウインドカッターです」


 スヴェンにも違いがわかるようだ。

 首をねじ曲げて肩の上にいるランディーニを賞賛している。


「スヴェンも十分に優秀じゃ。今後もきちんと訓練を続ければ我のようなウインドカッターも放てるようになるぞ」


「頑張ります!」


「では、ドロップアイテムの回収に行くとしようかのぅ。スヴェン個人の取り分など、初めてじゃろ?」


「いいのでしょうか?」


「構わぬよ、のぅ? 主よ」


「ええ。倒した分はスヴェン君の分としてしっかり拾ってくださいな」


「はい!」


 良い笑顔に良い返事。

 楽しそうにドロップアイテムの回収に向かう二人の背中を温かく見守りながら、私たちの出番はあるのかしら? と雪華が首を傾げていた。



 チアシードドリンク

 コップに入っているチアシードドリンク。

 チアシード、クラッシュアイス、シュガーパウダー、ローズウォーターで作られている。

 消化を助ける働きがあるので、食事中に飲む人も多い。


 チアシードドリンク レア

 チアシード。

 乾燥した状態。

 ブラックチアシードとホワイトチアシードがそれぞれ小瓶に入って、一ダースずつ箱に収まっている。

 




 柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

      

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 装備品

 ゴーグル 可視光線透過率 自動調節機能付

 ふわもこキャップ 防寒効果抜群

 メリノンウールシャツ 保温性、通気性、防臭力が高い。

 タートルネックジャケット 速乾性、吸汗拡散性、保温性が高い。

 ハードシェル フード付 雨雪も安心の撥水性

 メリノンウールタイツ 保温性、通気性、防臭力が高い。

 マーサラップパンツ 速乾性、吸汗拡散性、保温性が高い。

 アルンパインパンツ 滑り止め効果が高く、防風も完璧。

 メリノンウールハイソックス 防菌防臭効果有

 アルンパインスノーブーツ 緊急離脱機能付 疲れにくい効果付与

 メリノンウールグローブ 防菌防臭効果有

 スノーグローブ 緊急移動機能付 加熱機能付

 リュック型冷蔵&冷凍庫 無限収納で時間停止状態


 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛  


 生のバターサンドがでるんですって!

 https://www.sugarbuttertree.jp/patisserie_buttersand.html

 シュガーバターの木は福袋も買いに行きました。

 美味しいんですよね。

 早く地元でも販売してくれないかしら。


 次回は、氷ダンジョン四階。後編(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。

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