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氷ダンジョン 四階。前編

 明日は順調に作業が進んでいるご褒美に、ミスドの新作ドーナツを買いに行く予定です。

 前回のピエール マルコリーニとのコラボが凄く美味しかったので、今回も期待大なのですよ。

 楽しみー。

 


 四階へ下りれば彩絲とランディーニが先回りしていた。

 労ってから問題がどうなったかをふんふんと聞く。


 二人もの冒険者を引き留めて死に至らしめた男は、冒険者ギルドマスターの息子だったらしい。

 しかもギルドマスターは息子が負うべき贖いを拒否したとのこと。

 あきれ果てて溜め息しか出ない話だ。

更に続きを聞けばギルドマスターの暴挙が出るわ出るわ。

 彩絲の祖母に下半身にだらしない男をギルドマスターにした理由を、問いただしたくなってしまった。

 組織の外でハーレムを作るならまだしも、ハーレムを組織で展開するとか駄目でしょう。


 仕事とプライベートは混同してはいけません。

 組織が健全に運営される条件の一つですね。

 

 夫が常々口にしている言葉が脳裏に浮かぶ。

 二次の世界をこよなく愛する身としては、ハーレムも逆ハーレムも二次世界だけで十分だ。

 だからといってそれを否定はしない。

 ただし!

 周囲に迷惑をかけなければ、と条件がつく。

 本人たちで完結できるハーレムは少ない。

 少ないけれどないわけでもない……はずだ。


 とにかく冒険者ギルトはしばらく一つの方がいいと思う。

 彩絲の祖母には責任を取ってもらい、冒険者ギルドが失ったあらゆる信頼を取り戻してほしい。


 モンスターの横取り行為の件については、遠縁の知り合いの貴族、という随分と厄介な存在だったようだ。

 エックハルトが清々した様子だったと聞けば、どれほどの問題児だったか簡単に想像ができた。

 面倒な柵がなければ統制は大分楽になるだろう。

 立て直しされる冒険者ギルドに、引き続き徹底してもらいたい。

 横取り行為は弱者にこそ、行われやすいものなのだから。


 そして愛し子かしらねぇ? と推測していた少年は氷ダンジョンモンスターの愛し子だったらしい。

 随分と狭い範囲の愛し子だ。

 だが氷ダンジョンに潜り続けるのなら、凄まじいアドバンテージとなるだろう。

 ルカと名付けられた少年の今後を祈るとしよう。

 自分を売った両親が訪ねてきたら、氷ダンジョンへ招待すると言っていたらしい。

 教会の孤児たちとダンジョンアタックに挑み、健全な精神を養えればいいのだけれど。


「お疲れ様でした。こっちは温泉の罠があったりして楽しかったわよ」


「温泉じゃと! 我も入りたかったのぅ」


「氷ダンジョンを踏破したらゆっくり入ればいいでしょう」


「最終階層踏破の御褒美に、もっと大きな温泉とか出てきそうよね」


「そんな気もするな。さて。二人が戻ったなら自分は引っ込むとしよう。くれぐれもアリッサの身に危険が及ばぬように」


 和気藹々と話をしている皆を静かに見守っていたペーシュが、言葉を残してその姿を消す。

 もしかしたら私たちに見えないように気配を絶っただけなのかもしれない。


「……主様には心からの忠誠を誓っておられるようですが……やはり恐ろしい存在です」


「忠誠というより家族相当? 無償の情に使い印象を受けるのぅ」


「一緒に戦う分には本当に頼りになるんだけどね」


「何にせよ、ペーシュ殿の力を借りぬよう頑張らねば」


 真面目で一生懸命な四人が頷き合う様子には、きっとペーシュも満足だろう。

 私はただ嬉しい。

 

「四階はどんなモンスターが出るの?」


「この階はさすがにアンノーンはいないはずよ。四階のモンスターは氷系飲み物ね」


「ポーションアイススラリーの攻撃は率先して受ける冒険者も多いのぅ」


「え? 攻撃を率先して受けたら大変じゃない!」


「ポーションアイススラリーの攻撃は、ポーションを投げつけられるのと同じ効果があるのじゃよ。冷たいのが難点だが、ポーションによる回復の方が勝るからのぅ」


 おぉ、そんな攻撃もあるんだ。

 攻撃といえばこちらにダメージが入るものだと信じて疑わなかった。

 

「体力回復系と魔力回復系がございます。どちらのドロップ品も重宝されておりますよ」


 それはつまりポーションと同じ効能があるのだろうか。

 ひんやりと美味しいポーションなら、特に砂漠地帯では人気だろう。


「そんな噂をすればやってきたようじゃ……むぅ? 背後には冒険者がおるのぅ。残念じゃがここは引くとしよう」


 横取り認定されたら困るよね。

 二人に横取り駄目! 絶対! って話をしに行ってもらったばっかりだし。

 目の前を疾走するモンスターを見送った。


「おい、あんたら! 何で倒さねぇんだよ?」


 せっかく冒険者ルールに則って静観したというのに、難癖をつけられた。

 しかも四人パーティーと思われるうち、一番攻撃力はありそうな男性が私たちの前に残る。


「……こちらは冒険者の決まりに従ったのじゃが?」


「め、目の前にモンスターがきたら普通は倒すだろ!」


「普通は静観でしょ。横取り認定されたら困るし」


「に、逃げられたら、意味がねぇじゃねぇか!」


「別に。私どもは他のモンスターを狩るのみでございます」


「逃げられちまったよ、アンタ!」


 先に走って行った女性が戻ってきた。

 もこもこ装備の割には俊敏だ。


「父ちゃん、ごめん」


「……すみません」


 女性に続き男の子が二人戻ってくる。

 一人は悔しそうに謝り、一人は何処か怯えの色を見せながら謝罪をした。


「こいつらが足止めでもしてりゃあ、倒せたのに!」


「ちょっと、アンタ。ケチをつけるために残ったのかい?」


 女性が男性の頭に拳骨を落とす。

 自分より頭一個分背の高い男性への制裁は、どうにも手慣れているらしい。

 男性は涙目になりしゃがみ込んで頭を抱えた。


「うちの旦那が失礼した。申し訳ない。運良く四階まで来られたんだが、どうにも逃げられてばかりでね」


 しゃきっと頭を下げた女性が苦笑しながら、男性の暴挙理由を語る。

 ただの八つ当たりだと説明されても、はいそうですかとしか言えない。

 私は言わないけれど。


「……子供にこの階層は厳しいのでは?」


「私もそう言っているんだけど、こいつが言うことを聞かなくてね」


「うるせぇよ! お前らのために、頑張ってやってんだよ、俺ぁ!」


 どことなくモラハラ臭がする。

 またその隣で何度も頷く兄? らしき男児の様子もまた気になった。

 将来暴君の気配を察知したのだ。

 萎縮している弟? は、ぼくができそこないだからすみません、と小さな声で何度も繰り返している。

 家族というなら明らかにおかしい。


「貴方方は、御家族でパーティーをされていらっしゃる?」


 ノワールが先ほどより声を低くして問うた。

 わずかに威圧も感じられる。

 私が問題ありと判断したように。

 彼女も許せない何かに気がついたのだろう。


「お、おう! 文句あっかよ!」


「だから、アンタはどうして、そんなに喧嘩腰なんだい! うちらは家族パーティーで間違いないよ。こいつが父親。自分が母親。こっちの子が兄で、こっちが弟だよ」


 怯えた気配を漂わせている、背の低い子が兄で、背の高い父親似と思われる子が弟だった。

 ……兄、虐待されているよね?

 母親、気がつかないのかしら?


「……兄の方が、傷を負っているようじゃが?」


「え、本当かい? 早く言わないと駄目じゃないか。何処、何処を怪我したんだい?」


 母親が兄の肩を掴んで揺さぶっている。

 うん、たぶん肩も怪我をしているみたい。

 打ち身かな?

 母親の心配している様子をみると、ただ鈍感なだけなのかもしれない。

 そんな母親に対して、兄は素直に助けてと言えない感じかな。


「はぁ、落ち着くのじゃ。肩も怪我をしておるぞ」


「え? ご、ごめんよ! アンタ! ポーションを寄越しな」


「ねぇよ! つーかあっても、そんな軟弱者に使わせねーぞ」


「っつ! 自分の息子なんだよ?!」


「……母ちゃんは、そいつに甘過ぎ。置いていこうよ。そんな使えない奴」


「兄ちゃんに対して、お前は何処まで、上から目線なんだい?」


 母親のヒステリックな声に、兄が怯えている。

 単純に罵声が飛び交う状況が恐ろしいようだ。


「……兄はこちらで保護するよ。うちらの方が余裕があるしね。このまま踏破完了するまで同行させて、冒険者ギルドまで責任を持って送り届けるよ」


「あ? そんな屑より、俺らと一緒に!」


「それは無理じゃよ。心配せずともよい。きちんと怪我の手当もするからなぁ」


「屑より俺を連れて行ってもいいんだぜ?」


 父親がきっぱり断られていたのを見ていてこの態度の弟。

 英才教育済みの印象を受ける。

 母親は唇を噛み締めて黙っていた。

 そして兄を見詰める。

 兄は彩絲の服の袖を掴んだ。


「……御迷惑をおかけして申し訳ない。必ず迎えに行くので、その子をお願いいたします」


「おい!」


「任されました」


 ノワールが深々と頭を下げたその瞬間、私たちは彼らの前から離脱した。

 遠い背後で。


『俺様を連れて行けー』


『屑ばっか、ずりぃぞー』 


『……あんたらは本当、いい加減にしろぉおおおお!』


 と、それぞれの雄叫びがしていたが、気にせずに距離を取った。



 

柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

      

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 装備品

 ゴーグル 可視光線透過率 自動調節機能付

 ふわもこキャップ 防寒効果抜群

 メリノンウールシャツ 保温性、通気性、防臭力が高い。

 タートルネックジャケット 速乾性、吸汗拡散性、保温性が高い。

 ハードシェル フード付 雨雪も安心の撥水性

 メリノンウールタイツ 保温性、通気性、防臭力が高い。

 マーサラップパンツ 速乾性、吸汗拡散性、保温性が高い。

 アルンパインパンツ 滑り止め効果が高く、防風も完璧。

 メリノンウールハイソックス 防菌防臭効果有

 アルンパインスノーブーツ 緊急離脱機能付 疲れにくい効果付与

 メリノンウールグローブ 防菌防臭効果有

 スノーグローブ 緊急移動機能付 加熱機能付

 リュック型冷蔵&冷凍庫 無限収納で時間停止状態


 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛  


 



 

 待てば無料系のコミックスで新作を読み始めました。

 珍しく男性が主人公の役者もの。

 強くてニューゲーム仕様の模様……。

 今の所100話近く公開されているので、しばらく堪能できます。


 楽しみです。次回は、氷ダンジョン四階。中編(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。

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