旦那様は乙女ゲーマスター。
次の話を迷ってます。
旦那様は実家がお嫌い。
旦那様は義実家が更にお嫌い。
の二編か。
旦那様はシェフなグルメ。
全部書くには書くのですが、順番が……。
は!
遅ればせながら、この作品は色々実験的な事をしております。
嗜好に合わない方は、読まない方向でお願いします。
「おや、覚えたんですね?」
乙女ゲームのプレイする私の姿を見て、夫がにこやかに微笑む。
「歌って欲しそうにしていたから、頑張ってみましたよ?」
画像の中で私が歌っているのは攻略対象が全てハーフでヤンデレという、なんともマニアックな乙女ゲームのオープニングテーマだった。
愛してる、あなたが獣とのハーフでも♪
愛してる、あなたがどんなに病んでいても♫
なんて、歌詞なのだから恐れ入る。
オープニングからのかっ飛ばしっぷりは、数々の乙女ゲームを攻略してきた猛者達をも唸らせるもので、そこそこの乙女ゲープレイヤーである私も数え切れない失笑をしている代物だ。
ちなみに昨年度プレイ時間が一番長い乙女ゲームの、堂々一位を取ってもいた。
タイトル『闇(病み)と獣(人間)の交わりし日常』
通称『やみけも』
乙女ゲーというよりは、男性向けのホラー18禁ゲーム的なタイトルだと思ったのは私だけではないはずだ。
「どこまで攻略できましたか?」
「八割方でしょうか……うー。趣味系の喋り口調は何時もどおりじゃ駄目?」
「んー。仕方ないですね。よしとします。全部、というわけでもありませんから、その都度確認してくださいね?」
「ありがとー。必ず確認します!」
食事中にも構わずに夫の頬に私の髪の毛を擦り付ける。
丁寧なブラッシングと夫が厳選した高級シャンプー他ヘアケアグッズ達のおかげで、長い黒髪はなかなかの艶を保っていて、夫の頬にも気持ち良いらしい。
頭を撫ぜられるので、話を続ける。
「後は最後の一人のエンディング攻略をして。そのあとにハーレムエンドか、トゥルーエンドで終わりだと思うんだよねー」
「おや珍しい。攻略サイトを見なかったんですか?」
「……今まで使ってるサイトがパス制になっちゃったの!」
「連絡してくれればOKしましたよ?」
「……仕事中に申し訳ないし」
「麻莉彩からの連絡なら24時間最優先ですから、今度からかけてきなさい」
「私に攻略センスがあれば、見ないでフルコンプできるだけどなぁ」
攻略サイトを見ながら攻略しても、何故かやり直しを強いられる迂闊っぷりは、結構荒む。
夫に言わせれば悶える私も、それはそれでツボらしいのでどん底まで沈むことはないのだが。
「好きなゲームで無駄なストレスをかけてどうするんですか。自分が楽しめるのを最優先でプレイすればいいんですよ」
身体の向きを変えた夫は膝の上へ乗せたノートパソコンに向かって凄まじい速さでタイピングする。
攻略サイトのパスを申請してくれているのだろう。
パスぐらい申請なくても閲覧には問題ないんですけどねぇ……と言うけれど、なるべく目立ちたくないので、守るべきルールは守るようにして貰っている。
「そういえば、新作ゲームが出ましたね?」
「あーそうだね。すぐやりたいんだけどさぁ。『やみけも』のコンプが先かな」
予約特典も厳選して注文してある。
事前投票では不人気キャラだったが、私は真面目系クズが大好きなのだ。
ジャンルはこれまた乙女ゲー。
そして、猟奇殺人がテーマで、巷では『やみけも』を超える欝ゲームになると言われていて、キャラクター紹介こそ一通りされていたものの、それ以外の情報が極端に絞られていた。
「では、私が先にプレイしますよ?」
夫は私が興味を持つ物全てを先回りして確かめる癖がある。
そして、私が不愉快になると判断すれば、事前に教えてくれるのだ。
夫の判断は何時でも明確なので、どれほど首を長くして待っていたゲームでも、駄目だと言われれば素直に諦めることにしている。
「うん。よろしく」
「攻略サイトはどうします?」
「うーん。時間があったらお願いしようかなぁ。今回も課金制?」
「当然ですよ。貴方以外に無料で情報提供をするなんて冗談でもごめんですね」
夫が私のためにと作る攻略サイトは人気が高い。
特に発売から短時間で、メーカーが直接クレームめいたメールを送ってくるような完璧攻略をするので、一部マニアの間では有名だ。
課金制にも関わらず、アクセス数は常にランキング上位に入っている。
私の趣味に関する出費が全て賄われているほどだ。
作者のゲームスタイルです。
攻略サイトがないと、絶対コンプできません。
毎回必ずお世話になってます。
大好き乙女ゲームのPC版攻略サイトが飛んでしまって、途方に暮れながら手探りコンプ中です。
次も3日後ぐらいで更新できる予定です。