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その頃彩絲とランディーニは……。中編

 コンタクトが曇って校正に四苦八苦しました。

 そろそろ替え時なのかしら……前回の購入は何時だったかなぁ?

 出納帳で確認すればいいかしら。

 


 訪問の約束がないことを門番に告げて、急ぎ話をしたい旨を伝えると、数分だけ待たされたあとで屋敷に通された。

 アリッサがいなくとも、その対応は彼女がいるときと変わらない点に好感が持てる。


「お待たせいたしました」


 門番が走って戻ってきた。

 かなり急いでくれたようだ。

 門を潜ったところで待っていたメイドに先導されて屋敷の中に入る。

 先日とは違う小さな部屋に通された。

 密談に向く雰囲気が漂っている。

 アリッサがいないからと軽視されたわけでなく、むしろ主がいないからよほど急ぎの案件だと判断したようだ。

 全力の遠視は壁などの遮蔽物も意味を成さない。

 早足で部屋に向かってくるエックハルトと従者の口元を見て、話の内容を解読したランディーニは、ふむ、と小さく頷いた。


「……何ぞ、楽しい話は聞けたかぇ?」


「エックハルト殿は優秀だと見はしたのぅ」


 ランディーニが遠視で情報収集している間、彩絲は子蜘蛛を放って情報を収集している。

 同程度の情報を得ているだろう。


「ふむ。妾も聞いたぞ。奥方がおらなんでもそこそこはやるようじゃ」


「その割には冒険者ギルドを随分と放置していたがのぅ……祖母殿の意見を尊重したのかもしれぬが」


「ここにくるまでに子蜘蛛で連絡したわ! さすがの祖母も御館の意見に従うと申しておったぞ。今までは祖母の顔を立ててくれたようじゃが……ここまでじゃよ。最愛の守護獣に対して相応しくない振る舞いをしたのじゃ。大鉈を振るえるじゃろうなぁ」


 何も聞いていませんよーといった雰囲気を漂わせながら、メイドが準備してくれた紅茶を飲む。

 味が良く、淹れ方も完璧だ。

 つまりは優秀なメイドを即時派遣したのだろう。

 彩絲とランディーニにそれぞれ出されたクッキーの大きさが違う。

 ランディーニ用は一口で食べられるものばかりだ。

 良いメイドだと褒めておかねばのぅと思いつつ、三個のクッキーを美味しくいただいたところで、エックハルトが入室してきた。


「誰が、何をしでかしましたでしょうか?」


「挨拶もなしかぇ?」


「っつ! 失礼いたしました」


「いじめるでない、彩絲」


「おや。どんなときでも挨拶は必要じゃろ」


 ころころと笑う彩絲の様子を見て、エックハルトは深々と頭を下げる。

 気分を害したわけではないのが伝わったのだろう。


「ようこそおいでくださいました、彩絲殿。ランディーニ殿」


「うむ。先触れも出さずに押し掛けてすまんのぅ」


「幾つか御館を通した方がよさそうな案件に遭遇してしまったのでな」


 エックハルトの前にも紅茶が置かれ、彼がくいっと一口飲むのを見計らってから続きを話す。


「まずは、冒険者ギルドについてじゃのぅ」


「ダンジョン入り口で他者を巻き込んで死んだ遺体をギルドに連れ帰ってみれば……」


「それはギルドマスターの息子じゃった」


「我らは蘇生料の負担を息子にさせるべきだと意見したのじゃ」


「だがギルドマスターは息子には支払えぬとぬかす。なれば親である貴様が代わりに支払えと申せば……」


「ギルドマスターならば決まりを破っていいと申すので、御館に報告すると告げれば……」


「暴力をふるってきたのじゃよ。我のウインドカッターで返り討ちにしたがのぅ」


 エックハルトはギルドマスターの愚か極まりない行動に頭を抱えている。

 そんなエックハルトを見ながらランディーニはクッキーを食べた。

 小さいが味が濃厚で美味だ。

 アリッサにも食べさせたい。


「……そこまで腐っていたとは……今日中に強制解雇の手配を取らせていただきます」


「今までは把握できていなかったのかぇ?」


「新しいギルドの方は暴力的で、もう一方のギルドは静観していたので、口や手を出していいのか考えあぐねておりました。冒険者ギルドよりも優先すべき案件もございましたし」


 冒険者ギルドと教会の問題ならば確かに、教会の問題を優先するべきだろう。

抵抗できない被害者は教会にこそ多かったことだし。


「そうそう。ギルドマスターも大概屑じゃが、サブギルドマスターや職員にも問題大ありの者がおるぞ」


「ギルドマスターの愛人は同じく強制解雇で、迷惑をかけた者たちへの慰謝料の支払いも手配願いたいところじゃな」


「詳しくお伺いしてもいいでしょうか?」


 手を組んで肘をテーブルについたエックハルトに頷いて、腐れた冒険者ギルドの内情をつらつらと語った。


「自分が直接行って、通告することにいたします。その足で静観されていたギルドマスターにも報告と相談に参ります」


 祖母を糾弾するのではなく、報告に相談と言ってくれる。

 エックハルトもまた、祖母のように寛容が過ぎる性格なのかもしれない。

 祖母が素直に聞き入れてくれるか以前なら迷うところだったが、今はかなり反省と後悔をしているので謝り合戦になりそうだ。


「そうじゃ! 今回傍観者であったと詫びをした上で面倒を引き受けてくれた冒険者には、エックハルト殿からも御礼を言ってほしいのじゃが」


「当然です! 謝礼金も手配するつもりです。優秀で善良な冒険者には長くいてほしいですから」


 これで真面目に活動している冒険者たちは随分と楽に活動できるようになるだろう。

 屑な冒険者たちは居心地が悪くなって移動するか、自分たちの行いを省みるか。

 どちらに転んでもアリッサは良かったと幸せそうに笑ってくれるはずだ。


「次はモンスターの横取り行為についてじゃ」


「! 未だにそんな愚かな行為に走る冒険者がいるのですか?」


「正確には、いた、じゃな」


「うむ。これで身元がわかるのではないかのぅ」


 彩絲が揃いのペンダントを三個、テーブルの上へ載せた。


「こ、このペンダントは!」


 どうやら知っている人物だったようだ。


「もしかして蘇生も許されない……そんな状態になりましたでしょうか?」


「ああ、その通りじゃ。必要なら装備品も提出するぞ。腕前の割には良い物を随分と貯め込んでおったのぅ」


 エックハルトが知るなら背景がややこしい冒険者かもしれない。

 それほど彼女たちの腕前は残念だった。


「はぁ……そうですか。何時か、そうなるのではないかと忠告はしていたのですが……最期を看取ってくださったのが皆様で良かったです。行方不明のままでしたら、何かと面倒でしたから」


「ほぅ」


 彩絲が先を促すような音で呟く。

 彼女はこういった誘導がとても上手いのだ。

 雪華ではできないだろう。

 案の定エックハルトは事情を話し始める。


「彼女たちは遠縁の知り合いの貴族で……貴族とは名ばかりなのですが、彼女たちはどうにもそれを理解してくれずに……随分と迷惑をかけられました」


 エックハルトが遠い目をしてしまった。

 最初に話を持ちかけられた段階できっぱりと切り捨てられないのが、貴族という柵なのだろう。


「看取ったのが最愛様だとお伝えしても問題ありませんか」


「うむ。ないぞ。装備品はどうする?」


「冒険者の決まり事に従わせますのでお収めください。こちらのペンダントも買い取らせていただきます」


「悪くない品じゃろう?」


「彼女たちが家から持ち出した物ですから、返却すれば喜ぶでしょう」


「……家に迷惑をかけられる可能性はあるのかぇ?」


「ございません。またこれを話のネタにして繋ぎを取ろうとする輩がおりましたら、切り捨て御免でお願いいたします」


 どうやら家にも問題があるようだ。

 しつこく絡んでくるようであれば、アリッサに感づかれる前に駆除しておこう。


「この際、そういった面倒な冒険者は駆除したらどうじゃ?」


「……遠縁絡みで残っているのは彼女たちだけでしたので、その点は問題ございません。

正直、肩の荷が下りた心持ちでございます」


 残っていた最後の面倒がなくなったようだ。

 迷惑しかかけない遠い親戚の知り合いとか害悪でしかないので、エックハルトの妻もさぞ喜ぶだろう。


「そういう事情であれば装備品は早急に売却した方が良さそうじゃ」


「ふむ。では三日後にギルドへ行く際にでも売却しようかのぅ」


 ギルドも金が出るばかりでは大変だろう。

 健全なギルドになるのなら、アリッサに頼んで利益率の良いドロップアイテムを売却しておこう。

 恩もたっぷりと売れそうだ。


「以降もこういった罪を犯す冒険者が出ないように情報はしっかりと共有させておきますが、問題ございませんか?」


「うむ。問題はないの。新人もベテランも同じように気を引き締めてダンジョンアタックをするじゃろうて」


 ルールはそもそも冒険者の安全と利益を考えて作られている。

 破る方が馬鹿なのだ。



 ブラックフライデーセールでうきうきとまとめ買いをしています。

 化粧水はまだ平気かな? とチェックしたら、前回購入していた物がまだ残っていました。

 たっぷりつけているんですけどね。

 まとめ買いすると専用の段ボールで送られてくるので、地味に感動です。


 次回は、その頃の彩絲とランディーニは……。後編(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。

 

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