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魅了娘と駄目な大人たちに、相応しいざまぁを。1

 うきうきと半額で購入してきたチーズにカビが!

 冬と同じ感覚では駄目ですね。

 赤カビがやばかったような? と念の為検索した結果。

 カビ部分をがっつり削除していただきました。

 半額購入するときは気をつけないと。

 店内加工なので劣化が早いっぽいです。

 


 護衛二人の背後に犯罪者が続いて中へと入ってきた。

 でっぷりと太って豪奢な衣装を着ているのが院長。

 孤児院経営のお金を絶対に着服している装いだ。

 太っているのも体質ではなく、怠惰な生活のせいだろう。

 そして。

 その院長と対等な関係だといわんばかりに隣を歩くのが魅了娘。

 恐らく。

 だって、ピンク髪だし。

 ツインテールだし。

 ……この世界にツインテールって表現あるのかしら?

 普通に二つ結びとかいいそう。

 そんな彼女もまた、孤児院に寄附されたのではない豪奢なドレスを身に纏っていた。

 しかも!

 ティアラまでつけている。

 王族以外でもつけていいのかなぁ?

 デビュタントのときは大丈夫だったような……。


その認識で間違いありませんよ。


 あ、夫が答えてくれた。


 王族が許可を出した場合でも着用可能です。

 女性に功績があったときに、ティアラの贈与とともに着用が許されるという流れが多いですね。

 また身内のパーティーであれば暗黙の了解で見逃されるようです。

 花嫁も大丈夫だったと思います。

 今回は不敬に当たりますよ。


「きゃっ!」


 魅了娘の頭からティアラが外れた。

 何本かの髪の毛を引き抜いたらしく、空中を移動するティアラにピンク色の髪の毛が絡みついている。


「いた! いたぃ……待ってよぅ、私のティアラっ!」


 院長の頭上よりも高い位置を移動するティアラに向かって、魅了娘がジャンプするも無様に転がった。

 子蜘蛛が何匹か見えたので、単純に勢いで滑ったわけではなさそうだ。


 せっかくの豪華な……蛍光ピンクが目に眩しい……ドレスの一部が破れてしまった。

 案外安価な生地を使っているのかもしれない。

 ティアラはふわふわと移動して彩絲の手の中に落ち着いた。


「ちょっとおばさん! 私のティアラを返しなさいよ! きゃあああ!」


 魅了娘が突進してくるも子蜘蛛たちが壁となって立ちはだかる。

 蜘蛛に驚いたのか耳に優しくない甲高い悲鳴を上げた魅了娘は、そのまま蜘蛛たちの糸でぐるぐるに巻かれて転がされてしまった。


「御館様! 彼女の拘束を解いてくださいませ!」


「……解く必要はなかろう。どんな教育をすればそこまで恥知らずな娘になるんだ?」


「……無礼者が。何故ティアラの着用を咎めない? 最愛様の前で不敬を働くとは! その罰が軽いものであるなどと、夢想を抱くでないぞ」


 魅了娘は口を蜘蛛糸で塞がれているのでしゃべれない。

 ふがーふがーと鼻息は荒いので、呼吸はできているから問題はないだろう。

 しかしドレスはどんどん破れるし、パンツ丸見えなんだけどいいのかしら。


「さ、最愛様?」


「そうだ。ダンジョンで酷い目に遇っていた孤児たちを保護してくださったのじゃ。そこの娘と貴殿に追い出された孤児たちを、な」


「わ、わたくしめは追い出してなど! あぁ、最愛様! 誤解なのです! 全ては神の思し召し!」


 今度は院長がずだん! と結構な音をたてて転がる。

 足元に子蛇たちの影を見た。

 私に近づけないように頑張ってくれたらしい。


「近寄るな、下郎。そのまま伏しておれ。頭を上げるでないぞ」


 ティアラから丁寧に髪の毛を取り除いていた彩絲が、怒気の溢れた声で院長に命令する。

 院長はひっ! と小さく声を上げたが、彩絲の指示に従った。


「さて。諸悪の権化は院長とその娘だとして。追従した者は誰じゃ?」


 追従の意味がわからないんじゃあ? とこっそり心の中で突っ込みを入れたが、シスターが一人素早く床に額ずいた。


「も、申し訳ございません! 院長に脅されて、指定された孤児を贔屓しておりました!」


「し、シスターは悪くないよっ! 院長が悪いんだよ!」


「あ、あとエッダ! エッダが悪いんだ!」


 男の子が二人、シスターを庇う。

 シスターは男の子の体を素早く抱えて、同じ体勢を取らせた。


「こ、この子たちは悪くありません! 私どもが上手に導けなかっただけなのです! ば、罰は全て私に与えてくださいませ!」


 子供を庇うシスター、シスターを庇う男の子。

 しかし、何処かが胡散臭い。

 喜劇を見せられている気分だ。


「発言をお許しくださいませ……そのシスターは男の子の贔屓が酷いのです。エッダの我が儘に乗じて、可愛い女の子を率先して追い出していました。院長は……脅していないと思います。どころか、エッダが申しておりましたわ……と唆していました」


「嘘は許しませんよ、ハイデマリー!」


「ま、まりぃお姉ちゃんは、嘘なんてつかないもん!」


「そうだぞ! 本当のことしか言わねぇ! ちょ、ちょっと怖いけど、何時だって俺らを庇ってくれるんだ!」


 諦観の眼差しを湛えたハイデマリー。

 そんな彼女を庇う幼い女の子と、男の子。

 

「……私は健康だけが取り柄ですから、全員は守れずとも、己の手が届く範囲では、せめて」


 拳がぎゅっと握り締められる。

 追い出された子たちも守りたかったのだろう。

 でも守り切れなかった。

 そんな悔しさが感じられた。

 先ほどの人物とは違う本物の真摯さがあった。


「発言の許可をいただけますでしょうか、御館様」


 諦観よりも業が深そうな、虚無の眼差しをしたシスターが丁寧なカーテシーをする。

 酷く華奢な体は病に冒されているのかもしれない。

 顔色は悪く、カーテシーも話をするのも辛そうだ。


「許す」


「お許しいただきまして、ありがとうございます。ハイデマリーの申しました通り、院長はエッダ本人とその言葉を盲目的に信じており、従っております。またシスター メヒティルトは男児贔屓が酷く、いくつかの教会を転々としているのです。エッダにつきましては御館様に魅了のスキル持ちを報告し、処遇を仰ぐ手配を取っておりましたが……」


「届いておらぬな」


「奥方様への御報告は……」


「ごめんなさい。届いていないわ」


「申し訳ございません。私が直接出向くべきでした」


 緩く噛み締めた唇の端が切れて血が滲み出る。

 唇の乾燥が酷いのか、何度も噛み締めて出血がしやすくなっているのか、はたまた両方か。

 このシスターは残すべきシスターなのだろう。

 シスターの言葉を聞く子供たちの大半が涙目だ。

 ハイデマリーも、彼女を庇った子供たちも涙を浮かべている。

 院長は何故か惚けた表情をしていた。

 自分の行動に自覚がなかったのかもしれない。

 魅了中は自分の行動の是非を理解できていないとも聞くし。


「子供たちについては、新しい院長に導いていただければと思います。院長、エッダ、シスター メヒティルト、シスター ピーア、そして私には相応の罰を与えていただければ有り難いです」


「私は何もしていないでしょ! アンタのことだって庇ってあげたじゃない!」


「シスター ヴェローニカはわるくないんです、おやかたさま!」


「シスター ヴェローニカが罰を受けるなら、代わりに私が受けます!」


 庇ってあげたじゃないとか、何たる上から目線。

 そういう人は実際庇ってないんだよね。

 庇っていても空回っている。

 むしろ迷惑を被っている場合が多い。

 そもそもこの女、自分から何も言わずに黙って嵐を過ぎるのを待っていた気がする。

 随分と馬鹿にされたものだ。

 

 最愛の旦那様はこの断罪劇を見守っている。

 夫が罪を見逃すはずがないのだ。


「……罪にもいろいろあるし、罰にもいろいろある。シスター ヴェローニカ以外に意見がある者は挙手せよ」


 ばっと手を上げたのはピーアと思わしき人物。

 化粧が濃い。

 香水が強い。

 高々と挙げた手は随分と丁寧な手入れが施されている。

 本当にシスターだろうか? と突っ込みを入れたくなった。


「化粧があり得ないほどに濃く、香水は鼻が曲がるほどにつけすぎ。しかも高級ハンドクリームで手入れをしている者がシスター?」


 口元でぱんと扇子を開いて首を傾げるクレメンティーネ。

 横領、していてそれなの? という残酷な副音声が聞こえてきそうだった。




 映画で見た作品を家でも見たのですが……あれぇ?

 ちょこちょこエピソードが削られている?

 ノーカット版じゃないと安心して見れませんね。

 ただ二次創作も大量に見ていたので設定が入り乱れていた可能性も高いのです。

 やれやれ。


 次回は、魅了娘と駄目な大人たちに、相応しいざまぁを。中編(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続きよろしくお願いいたします。

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