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服ダンジョン 隠しフロア おまけ

 何度か行ったケーキオーダービュッフェが開催されると聞き、公式サイトをうきうきとチェックしに行ったところ。

 アクセスが一番良いお店では開催されない模様……。

 行ける場所は開催時間が折り合わず、今回は見送ることにしました。

 諦めも肝心です。

 もっと気になるアフタヌーンティーがあるから、簡単に諦められたという話なのですが。



 それぞれ入手したアイテムはアイテムボックスやバッグに収納したのだろう。

 身軽な姿で現れた面々はしかし。

 私たちを先導するスライムを見て、それぞれ大げさなポーズを取った。

 雪華は四つん這って何やら、絶望。

 ランディーニはひたすらその場でくるくると円を描いて飛び、混乱。

 彩絲は巨大蜘蛛へと変化して、威嚇。

 ノワールは大きく目を見開きながら肩を竦めて、諦観。


「……皆、どうしたの?」


「主様」


「改まって、なぁに、ノワール?」


「そこなスライムは、エンシェントスライムでございます。国どころか世界を滅ぼせると謳われた伝説の存在。色がピンクならネームドで間違いございません。デスペアと申します」


「あれ? 名前あるの?」


 型抜き屋の店主は、本人が望んだら名付けをしてやってくれ、と言っていたんだけれど……。


『絶望とは、我と戦ったハイエルフが勝手につけた忌み名。我には名前がない。御主人がつけてくれねば、永遠に』


「え! 可愛い!」


 声が凄く可愛いのに驚く。

 女性に嫌悪感を抱かせないアニメ声と表現すればいいだろうか。

 口調が古風なのも萌える。


『可愛い? 我が? さすがは御方様の最愛。肝が据わっておる』


「えー姿形はさて置き、声はすっごく可愛いよね?」


 皆に聞いてみても揃って首を振られた。

 しばらく時間を共にした子蜘蛛と子蛇すら首を傾げる始末だった。


「私にしか聞こえないのか……残念。しかし名前に絶望はないよねぇ。もしかして気に入っている?」


『最愛ならどうだ』


「嫌がらせ以外の何物でもない」


『ふっ。我も同じ感想だ』


 感じ方も十分真っ当だ。

 相変わらず嫌なモノに対峙したとき特有の悪寒は感じない。

 皆も私が名前付けをすれば安心するだろう。


「ペーシュとかどう? 向こうの言葉で桃って意味なんだけど……」


『桃……ピンクピルンのことか。フランス語は最愛にとって、洒落た言語の印象なのだな? ふむ。悪くない』


 え、この子……凄い!

 異世界知識も搭載しているの?

 や、違うなぁ。

 私の知識から選び取っているのか……。


『そうだ。最愛が持っている異世界の知識を共有できる。最愛が我に名をつけても、つけなくても』


 目も鼻も耳もないぷるりとしたそこに、口だけが嘲笑の形で浮かぶ。

 私に対しての嘲笑でないのが、何故か伝わってきた。


「じゃあ、これからはペーシュでよろしくお願いします」


『では命名を持って最愛を主人と認めよう。我をペーシュと呼ぶが良い。我は何と呼べば良い? アリッサ様かそれとも御主人様か』


『奥方もしくは奥方様でお願いしますね』


 あ、夫が介入してきた。


『なんだ。真名でもなかろうに。名前を呼ばせたくないのか? 御方様は随分と悋気が凄いなぁ』


『ふふふ。我が愛しの妻は、いろいろなモノを惹き付けるのですよ。貴女とて、それを、身をもって感じたでしょう?』


「我が身が主を持つとはなぁ……長く生きてみるものよ」


 ふふふふと、笑う夫とペーシュの声は不思議ととてもよく似ている。

 案外と近しい存在なのかもしれない。


「それでも妾たちは、ペーシュ様とお呼びするべきかのぅ」


「同格扱いで構わんよ。ペーシュでも。ペーシュさんでも。ペーシュ殿あたりが無難か?」


「では統一させていただきましょう。ペーシュ殿と」


 ノワールが有無を言わせぬ声音で決定する。

 大きくない声は驚くほどよく響いた。


「それで問題なかろう。そうだ、奥方よ。ここで救い屋からの貢ぎ物を見せるといい。皆を驚かせられるぞ?」


「……貴殿が主を得るより驚くことなどそうそうないと思うがのぅ」


 ランディーニが顎を羽で摩りながら反応している。

 可愛い。


「というか、アリッサ。救い屋に行ったの?」


「ええ。子蛇さんが案内してくれたわよ?」


 雪華は頭を抱えた。

 まさか自分の眷属が連れて行くとは思わなかったようだ。

 子蛇は雪華の様子に首を傾げている。


「くっく。子蛇も子蜘蛛も奥方と行動を共にしただけあって、肝が据わっておるようだぞ。奥方、先ほどの箱を」


「はい」


 言われて箱を差し出す。


「あぁ、最後までしぶとい奴だ。奥方が開けていたら少々厄介な目にあっておったわ」


「えぇ?」


 さすがは漆黒球体。

 何処までもえげつない真似をするようだ。


 おや。

 どうやら自分は救われたくないようですねぇ。


 夫が怒っているところをみると、漆黒球体は最終的に自分が救われたいらしい。

 今の商売っぷりではどう考えても無理と思うのは私だけではなさそうだ。


「中身は、良い物だがな」


 ペーシュがぱかりと蓋を開ける。


「これは……呪いが解かれていますね?」


「うむ。呪いがなければ王族が独占するか、博物館の倉庫で眠るか……どれを選んでも、正規ルートでは表に出せぬものじゃ」


 ノワールとランディーニはこれが何か知っているようだ。


「アリッサが身につければ良いじゃろう」


「そうよね。コーディネイトが楽しみ!」


「……御方よ。それでよいのか? これを身につけたら奥方は間違いなく傾国になるぞ?」


『今更ですねぇ。ちょっと気を抜くと傾国になりますから、ええ』


 夫の声が低い。

 私には身に覚えは全くないのだが。


「では我々は気を抜くことなく奥方を守るとしようか」


 箱の中身はジュエリー一式だった。

 インド式ジュエリーで婚礼用十四点セットらしい。

 黄金とルビーが恐ろしく豪奢だ。

 特に二種類あるデザイン違いのネックレスは、首が凝ること間違いなしだろう。


「魔除けの意味が強いものだからな。悪いモノは何であれ寄せ付けぬよ」


 またにゅうっと浮かんできた口が、綺麗に嘲笑の形を描く。

 悪いモノの運命を未来視しているのだろうか。


「引き寄せても弾けるなら問題ないかぁ……それでも眷属や仲間と一緒に守るからね!」


 雪華が拳を握り締めて誓ってくれる。

 ペーシュを含めて皆がこっくりと深く頷いてくれた。


 それからは何故か存在している休憩所で、入手したアイテムの品評会だった。


 皆がとっておきの逸品を出すたびに、ペーシュが自分の持つ中の一つを出してくる。

 この中で誰よりも長生きらしいペーシュが出してくる超絶なアイテムに誰もが惨敗をしていた。


 雪華の場合、髪の毛が艶々になる効果がついた櫛で、オーバル型 ハンドメイド 完成形。

 対してペーシュが出したのは、髪の毛が艶々になる効果に加えて、髪の色を変化できる効果や禿げない効果がついた櫛。

 半月型 柘植 進化形とのこと。

 柘植の櫛はきちんと手入れをすれば長く使えるといわれているが、こちらでは大切に扱えば壊れない効果が付くとのこと。

 既存の材料でなくハンドメイドで材料を作り出した雪華の櫛も、かなりのレアものだったが、結局壊れてしまうのが確定しているので、負け判定となった模様。


 彩絲の場合、レッド 振り袖 小物一式付。

 総絞りで大小様々な菊の文様が美しい代物で、小物もそれぞれ高価だと一目見てわかるものばかりだった。

 しかしペーシュが出してきたのは、レッド 色打ち掛け 小物一式付。

 豪奢度のランクが違ったようだ。

 彩絲の出した物とて、王族が代々引き継いでいくレベルのものだったようだが、ペーシュの方はほぼ唯一無二品だったらしい。

 彩絲はしばらく色打ち掛けを見て惚けていた。


 ランディーニの場合、ゴールド 腕時計 自動巻き。

 基本手動なので、自動巻きは希少。

 しかもゴールドはそもそも人気が高い。

 文字盤は装飾が多く、少々時間を読みにくいのが難点だが、飾りとして使う男性も多いのでむしろそちらの方が評価が高い。

 そんな自信満々の一品だったようだが。

 ペーシュが出したのは、ピュアゴールド 腕時計 自動手動選択巻き。

 高価な時計には手動が多いという印象があるので、なんと選べるように作られているとのことだ。

 この作りの珍しさにはやはり、ランディー二の腕時計は遠く及ばなかった。

 

 ノワールの場合、砂漠に最適なコーディネイト。

 長袖のワンピース、靴、マント、ターバン。

 さすノワ、完璧なコーディネイト品だ、と思った。

 が、ペーシュはそれの上を行く。

 ノワールは日常的なコーディネイトだったのだが、ペーシュは長期間滞在できる用のコーディネイトだったのだ。

 ノワールのコーディネイトだと、夜の砂漠はきつい。

 だから、ペーシュのコーディネイトにはコートやブーツなど主に防寒物が充実していた。

 ノワールは、そこまで気が回らない自分はメイド失格です……とまで落ち込んでしまった。

 

 皆ががっかりと落ち込む中、ペーシュが可愛らしい声で笑う。


「それでも御方には勝てぬよ」


 ペーシュの体から人形のように精巧で細い腕が伸びてきて、隠蔽されているサファイア三点セットに触れてくる。

 

「どれも御方のオリジナルであろう? こちらの世界では決して生み出せぬアイテムばかりだ」


「そうなの?」


「ああ。複数を組み合わせれば理論上は可能だが、実現は無理だろう。身につけるがわにも素養が必要だからな。御方の最愛だからこそ身につけられる品々なのだよ」


 サファイアのネックレスは攻撃無効化の絶対防御機能付。

 攻撃は悪意を持たないものであっても、私の心身が害されるときに発動するので、災害などでも効果を発揮するようだ。

 夫曰く一番力を入れたアイテムとのこと。


 サファイアの指輪はアイテムボックスで状態維持の無限収納。

 ここまでなら国に数個レベルであるらしい。

 ただ食材や資材の解体機能付となると、唯一品のようだ。

特に生きたままのモンスターを収納して、解体できるのが脅威らしい。

 彩絲と雪華が手を握りあって震えていたのが印象的だった。


 サファイアのイヤリングは異世界語翻訳変換機能付。

 異世界で使われている言語全て、日本語に変換してくれる優れもの。

 会話に不自由ないのは本当に有り難い。

 しかも読み書きまで可能なのだ。

 こっそり試した結果。

 モンスターの中にも文字に似た表現をする種族がいて驚いたよ……。

 ちなみに象形文字っぽかったです。


「主人には何時でも感謝しています」


「御方の愛は重そうだものなぁ。逃がしてはやれぬけど、愛情の軽減になら相談に乗れると思うぞ?」


 今度はペーシュがにやりと笑う前に。


『余計なお世話です!』


 と夫の声が響いた。

 全員に聞こえたらしく、私とペーシュ以外が飛び上がって驚いてしまったのが申し訳なかった。





 柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

       

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 装備品

 ベリーダンサーキュロット仕様 虹糸蜘蛛による体感温度一定刺繍付

 サークレット付ベール 虹糸蜘蛛による身体能力上昇刺繍付

 レースのブーツ 虹糸蜘蛛による防汚刺繍付

 

 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛  

 福袋を申し込んだり検索しているので、知らない情報が広告としてわんさか表示されます。

 あとだしやめてぇ、びくんびくんと悶えるのも毎年のことです。

 一応検索してみるのですが、まとめサイトに載っている段階で、既に完売御礼とか申込期間終了とかが多いのは仕様ですね、ふぅ。


 次回は、商人へ会いにいく。前編(仮)の予定です。


 お読み頂いてありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします 

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