服ダンジョン 隠しフロア 前編
すみっコなくらしの映画を見てきました。
まさかカーチェスなシーンがあるとは!
今回も終始楽しめましたよ。
すみっこたちがクレーンに運ばれるシーンが何故か好きなのですが、今回はそのシーンが多くて幸せでした。
釣果の量と質の良さに喜んでいる子供たちを見て、子蜘蛛&子蛇たちと一緒にこっそりと喜んでいるとノワールが音もなく、隣……一歩下がっている……にやってきて、ひそりと囁いた。
『主様、隠しフロアの探索は子供たちには毒だと思われますので、地上へ送りたいのですが如何いたしましょう?』
全員口止めは無理だろうしね。
子供たちが場所を吐け! と拉致されて脅される予感もする。
『休憩小屋で待機じゃまずいの?』
『それでもよろしゅうございますか?』
『ノワールが嫌じゃなければ』
雪華やランディーニとともに宿で待機してもらってもいいけど、いい宿だから孤児たちが入れるのか微妙。
宿自体は寛容であってもその客までが同じとは限らない。
んー。
どうしたらいいのかな?
休憩小屋で隠しフロア攻略まで待機。
攻略完了後、孤児院で話し合い?
魅了娘にざまぁをして、追い出す方がいいのかなぁ。
商人を訪ねて、状況を聞くのもありかもね。
間違いなく情報通だと思うし。
『では、そういった流れで手配いたしましょう』
当然のように頷かれた。
『主様はあと少々、竿を振るってくださいませ』
ここまでさくさく釣れると本来の釣りとはかけ離れた気しかしないけれど、アイテムのコンプリートをするのは好きなので大きく頷く。
何故か同時に当たり判定があった。
ひょいと竿を持ち上げる。
「ブラウン トランク、ブラック スーツケース、ブラウン ボストンバッグ、キャンディーカラー オーバーナイトケース……どれも高級品で需要が高いものじゃ。高貴な旅行者に好まれるものばかりじゃぞ?」
ランディーニが教えてくれる。
オーバーナイトケースは夫が使っている物によく似ていた。
部屋を移動するときに小物を入れる収納箱。
初めて見たときは、贅沢品! と思ったなぁ。
使ってみると想像していたより便利だったので、あちらでは重宝していた。
こちらだと誰かが持ってくれるので、使う機会はなさそうだけどね。
「おぉ、良さそうなものが釣れておるのぅ。奥方用の物も一通り釣ったらどうじゃ?」
「アイテムボックスがあるから、小さいバッグならまだしも、大きい物はそこまで必要な気がしないのよねぇ……あ」
そんなこと言わないで! と声まで聞こえた気がする。
釣り竿を振った記憶もないのに、当たりの手応えも感じていないのに。
如何にも女性が好みそうな物が釣れる。
ラインナップは先ほどと同じだったが、違う点もあった。
「……随分と軽量化もされておるが、品質は超一流じゃ。よほど奥方に使ってもらいたいんじゃろうて」
ランディーニがばさりと羽を大きく羽ばたかせた。
再び池が煌めく。
「……池で釣れるアイテムコンプリートまで、あと何種類ぐらいかしら?」
「奥方以外が釣った物も含めるかのぅ?」
「含めていいです」
本当は自力でコンプリートをしたかったが、そこまでの時間はなさそうだ。
「あと五十二種類じゃな」
「どれだけあるの、服飾小物!」
私は叫びながら竿を振るう。
即時の当たり判定。
「……そうきたか」
「愛されすぎじゃなぁ、奥方は」
かかっていたのは、宝箱。
開けるまでもなくわかった。
自力でコンプリートしたかった分も入っているのだと!
おそるおそる宝箱を開ける。
宝箱のサイズは100×50×40といったところ。
竿を持ち上げたら地面に鎮座していた。
当然重さは感じなかった。
しかし中身は凄かった。
「……奥方一人で集めきったようじゃぞ」
「そうね。ダンジョンに感謝とかどうすればいいのかしら? 別途池にも感謝したいのだけれど」
「奥方の場合。素直に感謝の祈りでよいじゃろう」
奪取しなくてもスキルが生えそうな気がしてきた。
不要なスキルなら夫が封印してくれるだろう。
さて、感謝は口にしてすべきもの……。
「洋服ダンジョン三階の池さん。おかげさまで釣りが……釣りと言って良いかもはや不明だけど、とても楽しかったです。どうもありがとう。心から感謝いたします」
直角に腰も曲げておく。
深々と頭を下げた。
途端。
目を開けていられないほどの光が放たれた。
咄嗟に目を閉じる。
『こちらこそ、時空制御師最愛様に楽しんでいただけて嬉しかったですわ!』
池の声がはっきりと聞こえた。
ここまで通じるのね、夫の威光……。
怖いわーと内心で囁く。
「主様。準備が調いました」
「了解! じゃあ、隠しフロアへと参りましょうか」
「待ってました!」
何処まで高性能なのか、ノワールの休憩小屋は転移が可能らしい。
三階で休憩小屋を召喚して子供たちを入れて安全を確保。
隠しフロアへ入ってから、隠しフロア内に休憩小屋を転移させるとのこと。
こんなときは、恒例のあれだね。
さすノワ!
ノワールにこほんと咳払いをされてしまった。
今後も心の中だけでしか言わないので許してほしい。
「……それで、奥方よ。隠しフロアへの入り口はどこなのじゃ?」
「あ、そこは私頼みなのね?」
「最初からそうにきまっとるじゃろ!」
決まっていたらしい。
ランディーニの物言いに、ノワールが勢いよくその頭を叩く。
これも一種のノリツッコミの関係なのだろうか?
必須ですよ! と夫に言われていたけれど、優秀な周囲のお蔭ですっかり使っていなかったスキル、地図を展開する。
目の前に大きなウィンドウが現れた。
ゲーム画面に目一杯広がる感じ。
「うわ……」
喜ぶべきなのだろう。
三階の緻密な地図が展開しただけでなく、赤い矢印をタップすると地図が拡大されて、隠しフロアへの入り口! と御丁寧に書かれていたのだ。
自分がどの方向を向いているのかわかる矢印が出るので、方向音痴の自分でも迷わないですむだろう。
案外一人で放置されても生きていける気がした。
夫との繋がりは切れないだろうしね。
「しかし、一番大きい道のど真ん中に階段が隠されているとは……誰か気がつきそうなものだけれど……」
私は矢印が点滅する場所までメンバーを先導し、足元をこんこんと叩く。
音もなく下へ降りる階段が現れた。
「隠しフロアって普通、三階にない?」
「……っていうか、今までの報告例ってそうではなかったかのぅ? ノワール」
「自分の経験ではそうでございますね。ランディーニ?」
「うむ。我の知識でも初めてじゃな」
なるほど。
そもそも存在しなければ、気がつけるはずもないってね。
私が肩を竦めて階段を下りようとするも、ランディーニの羽で止められた。
先頭は彼女に変わるらしい。
「……これはもう。ダンジョンとは言わぬぞ?」
ランディーニの合図で隠しフロアへと足を踏み入れた。
某国際展示場の一ホールを使った、展示会のように見受けられる。
各ブースで静かにモンスターが佇んでいた。
看板やノボリなども立っている。
ますます某おたくイベントのようだ。
ものは試しにと地図を展開してみた。
各ブースはブロックにも分かれているようだ。
一階、二階、三階、隠しフロアのブロックに分かれている。
お勧めルートは隠しフロアブロックからスタートして、三階、二階、一階とのことだ。
そっか。
お勧めルートも出るんだ……遠い目をして地図を覗き込んでいる私とは対照的に、他のメンバーは嬉々として地図を覗き込んでいる。
皆にも私の地図が見えるのは便利だ。
「敵がいないのであれば、一人行動でも構わぬな!」
止める間もなくランディーニがすっ飛んでいく。
ノワールの伸ばした手が届かない早さだ。
何かめぼしいものでも見つけたのだろう。
「私には子蛇と子蜘蛛がいるから皆も、自由に見て回っていいわよ?」
私の声に瞬時、躊躇ったのはノワールだけだった。
「では。主様。くれぐれもお気をつけくださいませ」
深々と頭を下げて、走るよりも速いスピードで歩くノワールの背中から、バーゲン会場へ挑む猛者の気配がする。
「うちらはのんびり行こうねー」
右肩に子蛇、左肩に子蜘蛛を乗せた私はゆっくりと歩き出す。
「二人のお勧めはあるの?」
子蛇が右側に首を向け、子蜘蛛は左側に一本の足を向けた。
一瞬の沈黙。
二人は、あっちむいてほい! をはじめた。
じゃんけんは無理だもんねぇ。
ほのぼのと見守っていると、子蛇が勝利したようだ。
私は頷くと子蛇が示すブースへと足を運んだ。
柊麻莉彩 ひいらぎまりさ
HP ∞
MP ∞
SP ∞
スキル 鑑定∞
偽装∞
威圧∞
奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図
王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲
浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)
ウインドアロー ウインドカッター
固有スキル 弱点攻撃
魔改造
簡単コピー
特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。
サファイアのネックレス
サファイアの指輪
サファイアのイヤリング
装備品
ベリーダンサーキュロット仕様 虹糸蜘蛛による体感温度一定刺繍付
サークレット付ベール 虹糸蜘蛛による身体能力上昇刺繍付
レースのブーツ 虹糸蜘蛛による防汚刺繍付
特殊アイテム
リゼット・バローのギルドカード
魚屋紹介状
衣類屋紹介状
称号 時空制御師の最愛
すみっこたちにちなんだ、プリンアラモードを食べてみたり、足を伸ばして専門店に行ってみたりと充実したツアーでした。
姪っ子ちゃんが、これが欲しい! とすっごく可愛らしく泣くので、横からおばちゃんが買ってあげようね……と言いたくなるのを堪えるのに苦労しましたよ。
可愛らしい缶目当てに購入したのど飴が地味に好みだったので、また足を伸ばしてもいいかなぁと思ってしまいました。
次回は、服ダンジョン 隠しフロア 中編。(仮)の予定です。
お読み頂いてありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。




