服ダンジョン 三階 前編。
医者のはしごをしているとき、微妙な空き時間があっったので、久しぶりにサーティーワンのアイスをコーンで食べました。
選んだのはロッキーロード、マシュマロとナッツとチョコレートの組み合わせは秀逸ですよね!
しかし何十年ぶりに食べたのだろう……。
駅近くにあるので、また食べに行きたいです。
三階へ降りる前に休憩小屋で一休みする。
これだけでも他のパーティーでは得られない恩恵だろう。
何処でも何時でも安全に休める場所があれば、高難度のダンジョンの攻略も各段と楽になるはずだ。
子供たちは雪華を中心にして、戦利品の確認をしている。
既に孤児院から独立できる最低限の資金は得られたようで何よりだ。
喜びの声を上げる孤児たちに、雪華はもっと余裕を持っておかないと駄目だよ? と指摘している。
特に戦える子供たちの怪我を心配しているようだ。
喜び一色だった子供たちも、我に返ったようで雪華の声に、再び耳を傾けはじめた。
「女性服の依頼分は大丈夫なの?」
「ふ。妾に抜かりがあるとでも?」
「ないでしょうけど、確認は必要よね?」
「その通りじゃな。無論、問題はない。依頼分以上の良品が集まったぞ」
子供たちの面倒を見つつもじっくりと確保していたのは知っている。
でも主と扱われているならば必要な言葉だろう。
「主に似合いそうな服も存分に入手したからのぅ。あとでファッションショーをしてもらわねばなるまいなぁ」
「そそ。主が好むシンプルで愛らしい物も幾つかあったしね。御方様が喜ばれそうな典雅なドレスも入手できたよ。ほんと! 主専用! みたいなドレスで驚きだよ」
子供たちはいいのだろうか?
雪華が話に入ってきた。
様子を窺えば、子供たちだけで今後の相談をさせているようだ。
私たちと一緒にいられる時間は長くない。
子供たちだけできちんと考えられるようにとの心遣いは、実に雪華らしかった。
「そういえば、あのベリーダンスの衣装も試着ぐらいしてみればいいのでは……ごふっ!」
ランディーニの言葉を最後まで言わせないマン! になったノワールが、ランディーニの頭部を叩く。
テーブルの上でひくひくと痙攣しているランディーニの体に、そっと白いハンカチを乗せた雪華。
突っ込みを入れたいが勿論沈黙を守る。
守らないと夫の声が聞こえてきそうだったからだ。
子供とはいえ、男性がいるのだ。
試着でも許されないに決まっている。
子供たちの消耗が激しいので、ぐっすりと眠ってから次の階へ行くと決めたのはノワール。
私も彼女の意見に異論はない。
皆も素直に従って夕食ののち、私はゆっくりとお風呂に浸かってからやわらかいベッドの中へと潜り込んだ。
朝食は賑やかに全員で取って三階へと向かう。
このダンジョンは一度クリアしてしまえば、その階はスキップできる仕様らしい。
勿論一階から下りる選択もできる。
なかなかに都合が良いダンジョンだ。
服飾小物はノワールが依頼を受けている。
数もさることながらかなりのレア物も入っているようだ。
珍しく熱い眼差しを向けられる。
期待されているらしい。
「主様にはできれば釣りに集中していただきたく……」
釣れるアイテムの中には気になる物も多い。
だが普通の三階も少しは探検してみたかった。
「その前に何体かは倒したい……」
なぁ……までは言わせてもらえなかった。
三体の小物がスライディングタックルの勢いで足元へやってきたのだから。
汚れないのかな? と余計な心配をするくらいには激しかったのだ。
「手袋三種類セット?」
「ホワイト レース グローブ、ホワイト イブニング グローブ、ホワイト コルセットグローブ……どれもレアで需要の高い物です。三体一緒に出るとは……存じませんでした」
ノワールも呆然としながら三体のグローブを凝視している。
「うーん。このモンスターはどうやって倒すんだろう」
ウインドカッターで簡単に倒せる気もした。
でもそれはきっとグローブの望む倒され方ではない。
動かない三体の前で悩んでいると。
更に追加のモンスターがやってきた。
今度はドレス三体。
ドレスは服飾小物でないので、この階で出現しないはずなのでは?
「ブラック ミニ ドレス……しかも幻のロリータ型! 主! あれは主用に確保して!」
悩む私の前で、雪華の鼻息が荒い。
好きだもんねぇ、ロリータファッション。
「ホワイト ロング チャイナドレス! 主! あれも主用に確保じゃ!」
彩絲の鼻息も荒くなった。
うん。
好きだよね、チャイナ系。
「ホワイト ロング ウェディングドレス? ベール付! あ、主様!」
ノワールが興奮状態だ。
私に着せたいのかしら、ウェディングドレス。
夫もいないのに?
着るなら行きますけど?
ええぃ、簡単に言わないでほしい!
でもノワールの願い事で、夫にも会えるなら何の問題もないのかな?
私はさすがにグローブの倒し方に気がついたので、もじもじと目の前に並んでいるグローブを三体のドレスに手渡した。
何故か手渡せた。
ロリータにはコルセットグローブ、チャイナドレスにはレースグローブ、ウェディングドレスにはイブニンググローブの組み合わせだ。
よくできました! とばかりにグローブは箱詰めに、ドレスはトルソーに着せられた。
ウェディングドレスはベールもかけられる特殊なトルソーにかけられている。
もうどこにも突っ込むところはない。
どのアイテムを誰が収納したかは言うまでもないだろう。
「……大人しく釣りをするよ。池はどこにあるのかな?」
「我が案内しよう。のぅ奥方よ。そんな魚が腐ったような目をせずとも……」
「え? そんな目をするわけないわよ。ランディーニったら、何時から見る目がなくなったのかしら」
「し、辛辣な奥方は珍しいのぅ。御方様ならそんな奥方も良いと惚れ直しそうじゃ」
ランディーニは私がよくわかっていますねぇ。
本人には聞こえなかったようなのであえて教えはしない。
大喜びさせるのにイマヒトツ乗り気になれなかったのだ。
何にそこまで苛つかされているのかわからないまま、池まで案内してくれたランディーニを皆の元へ追い返す。
ランディーニはしばし粘ったが諦めて戻っていった。
しょんぼり飛ぶ、という表現が似合う姿は初めて見る。
少しだけすっきりした気がした。
さすがに一人にはしてもらえなかったらしい。
近くに子蜘蛛と子蛇がうろうろしている。
虐めているようで落ち着かない。
手招きすれば嬉しそうに近寄ってきた。
きらきらした目で見上げられるので、護衛をお願いしておく。
大喜びで警戒をはじめた。
結局のところ一人になりたかったのかな? と首を傾げながら釣り師の長靴を取り出す。
いそいそと履いた。
ゴム長靴を履いたとき特有のぺたっとした感触もない。
実に履き心地が良かった。
高級釣り竿に刻んである百合柄はワンポイントで可愛らしい。
一人大きく頷いた私は釣り竿を振るった。
当然使うのは練り餌だ。
生き餌は敷居が高すぎる。
誰かがつけてくれたのを振るうのも微妙なレベル。
それぐらい苦手だった。
竿を振るって待つこと数秒。
早すぎない?
鼻歌を謳う間もなく当たりの感覚。
強い引きではないので、腰を入れて一気に持ち上げる。
「え?」
餌は一つ。
針も一つ。
なのに何故、二つ同時に釣れたのだろう……。
生きの良さを表すようにばたばたとはためいている。
スカーフ二枚。
色は薄い水色と濃い青色。
鑑定するまでもないが鑑定する。
ウォータースカーフ、アイススカーフと出た。
「こんなに早く釣れるんじゃあ、時間をおいて竿を振るといいのかも……」
そんな独り言を言えば、ざばっと激しい水音。
足元に置いておいた練り餌箱の隣に、水の中から飛んできたのは傘。
「えーと?」
開いたり閉じたりしている。
何となくだが文句を言われている気がした。
「竿はがんがん振ってほしい。むしろ振るべきとか?」
傘に向かって話しかければ、傘はしゅぱりと閉じて、ころんと練り餌の隣に転がった。
鑑定の結果はホワイトアンブレラ百合柄。
……一体何処まで私に都合が良いダンジョンなのかと!
多少は苦労するべきなのでは? と思うも、ドロップ以外の部分で面倒な目にあっている。
これはむしろ御褒美なのかもしれない。
あとは謝罪。
これからも面倒に巻き込むけどよろしくね? みたいな。
封印された神様との語らいができれば、似たような謝罪をされる予感があった。
「まぁ、少しは一般的な釣りっぽさを楽しませてくださいよ。そんなに長い時間は無理でも、一人きりで」
明確には一人きりではない。
子蜘蛛や子蛇が頑張ってフラグを折ってくれているようだ。
何せ幾度となく、そこまで遠く離れた場所でないところから、男性冒険者の悲鳴が聞こえるのだから。
それでものんびりと練り餌をつけて、竿を振るえば数秒でかかりはしなくなった。
五分以上の待ち時間がなかったといえば、釣り好きには地団駄を踏まれてしまいそうだけれども。
柊麻莉彩 ひいらぎまりさ
HP ∞
MP ∞
SP ∞
スキル 鑑定∞
偽装∞
威圧∞
奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図
王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲
浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)
ウインドアロー ウインドカッター
固有スキル 弱点攻撃
魔改造
簡単コピー
特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。
サファイアのネックレス
サファイアの指輪
サファイアのイヤリング
装備品
ベリーダンサーキュロット仕様 虹糸蜘蛛による体感温度一定刺繍付
サークレット付ベール 虹糸蜘蛛による身体能力上昇刺繍付
レースのブーツ 虹糸蜘蛛による防汚刺繍付
特殊アイテム
リゼット・バローのギルドカード
魚屋紹介状
衣類屋紹介状
称号 時空制御師の最愛
更に食べ物の話になりますが、お昼はハワイアンカフェでいただきました。
ロコモコ丼美味しかったです。
今度自宅でも挑戦してみようかなぁ。
パンケーキに添えてあったクリームも好みでした。
こちらも自宅で……自宅だとパンケーキはつい、メープルシロップとバターの組み合わせにしちゃうんですよね。
次回は、服ダンジョン三階 後編。(仮)の予定です。
お読み頂いてありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。




