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服ダンジョン 二階 後編。

 不動産と太陽光パネルのセールス電話が多いですね……。

 とりあえず出る前に検索かけているので、出ないでさくっと着信拒否にしていますけど、面倒です。

 もっと面倒なのは訪問販売なのですが……。

 


 摩訶不思議な倒し方をする私に羨望の眼差しを向けながらも、子供たちは懸命にモンスターへと挑んでいた。


「やぁ!」


 掛け声とともにレオンが剣を振るう。

 新しい武器は既にその身に馴染んでいるようだ。

 違和感がない。


 相手のモンスターは、ホワイト ナガソデ ブラウス……でいいのかな?

 レギュラーカラーだから需要は高そうだ。


「くぅっ!」


 仲間があまりにも規格外過ぎるので、一般人の戦闘は貴重だ。


 レオンはブラウスの袖に剣を絡め取られそうになり、バックステップで逃れた。

 剣に絡めたら生地が破れそうな気がするけど、そこはモンスターだから大丈夫なのかな。


 体勢を整えたレオンが果敢に挑んでいく。

 今度はブラウスの片袖を切り落とした。

 しかしブラウスも負けていない。

 反対側の袖を突き出して、レオンの頬に切り傷をつけている。

 どんな鋭い布なのかと!


「レオン!」


 対峙していたモンスターを片付けたディアナがレオンのサポートに入る。

 そうだよね。

 本来はこういう連携が必要なのがダンジョン攻略。

 うちのパーティーだと、連携はたぶんボス相手ぐらいだろうなぁ。

 下手したらボス相手でも、一人で挑んで軽く勝ちそうな気がする。

 特にノワール。


 ショートソードを巧みに操りながら所謂ヘイトを集めているディアナの反対側へ、素早く移動したレオンがブラウスを背後から切り裂いた。

 致命傷だったらしく、ブラウスが消える。

 一瞬の間を置いてドロップアイテムへと変化した。


「助かったよ、ディア」


「強い皆様につられないようにしないとだよ、レオン」


 アドバイスがすばらしく的を射ている。

 講師陣が強すぎると、自覚しないうちにつられるケースは少なくないだろう。

 講師の実力を自分の実力と錯覚してしまう状況だ。

 レオンはもしかしたらそんな傾向にあるのかもしれない。

 乙女ゲームの攻略対象者っぽいしね。

 ヒロインに助けられて欠点を克服するなんて展開は鉄板だ。


 だとすると、ヒロインはディアナに手を出してきそうな予感がする。

 孤児院に巣くっているヒロインは自分の手を汚さない、いやらしいタイプとみた。


「ああ、気をつけないとだな! でぃあ! うしろっ!」


 孤児たちのフォローには子蜘蛛や子蛇をつけているが、命にかかわらない限り手を出してはいけないと命じている。

 そうでなければ訓練にはならないからだ。

 小さい子たちは勿論、怪我をしそうになったら手を出していいとしている。

 現に子蜘蛛たちがいなかったら、重傷とまではいかずとも間違いなく怪我を負う子がいただろう。


「っつ!」


 レオンの警戒にディアナがその場から飛び退く。

 飛び退いた場所にはブラック ロング スカートがいた。

 フレアーなのでこれまた需要が高そうだ。


 ふわっと飛び上がったスカートがそのままディアナの頭部を覆い尽くそうとする。

 包んだ頭部をばりばりと貪り喰らうホラー話を、ふと思い出した。


 ディアナは広がるスカートを覗き込みながらスライディングで逃れる。

 逃れた先でレオンが手を貸して、素早く体勢を整え直した。


 レオンが剣に力を込めるように大きく息を吐いた。

 次の瞬間スカートが切られる。

 ロング丈がミニ丈になった。

 それでもアイテム化はしない。

 結構なダメージだと思うんだけどね……と検証している途中で、ディアナがショートソードの切っ先をスカートの腰回りに突き立てる。

 手首が器用に捻られて、スカートは真っ二つになった。

 さすがにこれが致命傷となったようだ。

 綺麗に畳まれた状態で、地面に落ちる。

 ヒルデが自慢げに回収していった。


「……フォルス様の恩恵を分けていただいているのかなぁ……」


「間違いないわね。なんて有り難いのかしら。あのワンピース二着で家が買えそうよ!」


 仲良く並んでやってくるワンピースに、二人が嬉しそうに頷いている。

 私の方を見て会釈するのも忘れない。


 ホワイト ノースリーブ ワンピース、ピンクノースリーブ ワンピースの二体。

 ホワイトがマーメードラインでピンクがデルフォスドレス。

 ホワイトなマーメードラインはさて置き、ピンクのデルフォスドレスは珍しい気がする。

 何となくもっとシックな色合いが多い印象があるのだ。

 ピンクといっても幅広いし、このドレスのピンクは落ち着いた色味だとは思うけれどね。


 ワンピースは裾に力を入れるように少しだけかがむと、一気に距離を縮めてきた。

 レオンがホワイトを、ディアナがピンクを相手にするようだ。

 ブラウスやスカートより戦闘力が強いのか、戦闘を許している子供たちが集合する。


「……フォルス様のおかげ。逃がさないようにしないと」


「うん。きちんと仕留めないと申し訳ないものね」


 こちらは戦闘枠の双子。

 まだ十歳とのことだが、戦闘種族らしい。

 見た目は普通の人間なんだけどね。

 龍族と人族のハーフらしくて、打たれ強いとのこと。

 二人とも男の子。

 赤髪赤眼の子がヴィリで白髪白眼の子がヴィム。 

 ヴィリが赤龍の血をヴィムが白龍の血を持つらしい。

 双子なのに父親が違うの? と思ったけれど、双子というからには違うのだろうか。

 デリケートな問題なので質問する機会はなさそうだが、気にはなった。


「フレイム!」


「ブリザド!」


 フレイムは焔系の魔法。

狙われたホワイトは軽やかに裾で飛んできた焔を跳ね返している。

 強い。


 ブリザドは氷系の魔法。

 狙われたピンクは逃げるのに失敗したらしい。

 すてん! と見事に転んだ。

 おかげでプリーツの裾がかしゃりと凍ってしまった。

 ドジっ子なの?


 起き上がれないピンクに容赦なくディアナが躍りかかる。

 ショートソードが胸から腹部辺りを綺麗に切り裂いた。

 ドレスを破かれた女性のような甲高い悲鳴が上がる。

 

「きゃ!」


 耳を塞いで転がったディアナの体を双子がしっかりと抱き留めた。

 どうやら断末魔が攻撃になったらしい。

 耳を押さえるディアナの、指の隙間から血が滴り落ちている。


「ディアねぇ!」


「ポーション!」


 双子はディアナの体を素早く引き摺って戦線を離脱させると、耳を塞いでいた手を外させてポーションを両耳の中へと流し込んでいる。

 これは正しい措置なのだろうか。


「……ありがと、二人とも。こういう場合は飲ませるより患部に直接かけた方がいいわ」


 御礼を言いながらも首を傾けている。

 耳に水が入ってしまったときの不快感を払拭しているのかもしれない。

 それでもディアナはしっかりと二人の頭を撫でていた。

 龍族とのハーフは幼く見えても年齢を重ねている例が多いようだが、この双子は見た目通りの年齢なのかもしれない。

 撫でられて、とても誇らしげな顔をしている。


 未だホワイトと対峙しているレオンは戦いに集中していた。

 けれど一瞬だけ気が緩む。

 ディアナが心配だったのだろう。


「っ!」


 ホワイトはかなり優秀なワンピースだったようだ。

 焦がせなかったスカートの裾でレオンを殴り飛ばす。

 レオンの体はダンジョンの壁へと激しく叩きつけられた。


「レオンっ!」


 ディアナの叫びは悲痛だった。

 自分の状態に安堵したレオンが隙を作ったと理解できてしまったからだ。


 レオンにトドメを刺そうと颯爽と歩み寄るマーメイドワンピースを倒したのは雪華だった。

 説明の機会が多いからかな?

 子供たちに対して過保護気味になっているらしい。


「獲物の横取りをしてごめんね?」


 呆気なくドロップアイテム化したワンピースをナータンに手渡す。

 どうしようか迷ったナータンの目が、私を見つめる。

 私は大きく頷いて見せた。

 この場合はダンジョンルール的にも、レオンに受け取る権利がある。

 助けを求められる前に、介入してしまったからだ。

 助けられて文句を言うな! という意見は通らない。

 助けを求められた場合のみ、助ける。

 そうでないと理不尽かもしれないが、罰せられるのは助けた側なのだ。

 ドロップアイテムを放棄しても、敵を倒した経験値は倒した者へと渡るのだから。


「雪華さん、すみません。助かりました」


「うん。求められないのに助けてごめんね。レオンならぎりぎり間に合ったと思うんだけど、主が許さないほどの怪我を負いそうだったから」


 自作ポーションがあるので、腕の一本や二本折れたところで大した怪我ではない。

 ただ切断されてしまうと少々厄介だった。

 雪華は切断の気配を察知したのだろう。

 その程度には強いワンピースだった。



「レオンとディアナは休憩ね。雪華はあと少し、双子の様子を見てあげてくれる?」


「了解!」


 雪華が目を細めて笑う。

 彩絲にしろ雪華にしろ誰かを助ける側。

 何しろ守護獣。

 最優先は私だが、将来有望な子供たちの手助けをしたくなってしまう性分なのだろう。

 蛇や蜘蛛本来の姿を見ていないからか双子もよく懐いている。

 純粋無垢な者は、強い守護獣に惹かれるのだ。

 レオンやディアナがいる以上、二人が歪むこともないはずだ。


 ふと、孤児たちが望むなら、王都の拠点へ送ってもいいかな? と思ったのは、双子がなかなかの戦果を上げたからかもしれない。

 




 柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


 HP ∞ 

 MP ∞ 

 SP ∞ 


 スキル 鑑定∞ 

     偽装∞

     威圧∞  


 奪取スキル 生活魔法 育児 統率 礼節 謀略 地図

      王宮料理 サバイバル料理 家庭料理 雷撃 慈悲 

      浄化 冷温送風 解呪 神との語らい(封印中)

      ウインドアロー ウインドカッター 


 固有スキル 弱点攻撃

       魔改造 

       簡単コピー 

       

 特殊装備品 *隠蔽中につき、他者には見えません。

 サファイアのネックレス

 サファイアの指輪

 サファイアのイヤリング


 装備品

 ベリーダンサーキュロット仕様 虹糸蜘蛛による体感温度一定刺繍付

 サークレット付ベール 虹糸蜘蛛による身体能力上昇刺繍付

 レースのブーツ 虹糸蜘蛛による防汚刺繍付

 

 特殊アイテム

 リゼット・バローのギルドカード

 魚屋紹介状

 衣類屋紹介状


 称号 時空制御師の最愛 



 涼しくなってきたはずなのに汗だくで困ります。

 ホットフラッシュ以外に要因があるのかしら……。

 

 次回は、服ダンジョン三階 前編。(仮)の予定です。


 お読み頂いてありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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