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カプレシアの宿にて。

 あ、あれ?

 主人公の攻撃手段ってなんだっけ?

 もう一つの連載作品とごっちゃになっている気がします。

 また確認作業をしないとなぁ……とほほ。

 


 砂漠にある宿ってどんな感じなのかなぁ? とあれこれ考えていたものと、入った宿は随分と違っていた。

 外観はあちらのネットで見た如何にもな宿でした。

 砂で作られた壁。

 入り口にはふわふわした布が扉代わり。

 防犯とか大丈夫なのかしら? と少し心配な無防備さ。

 でもね?

 よくよく観察すると壁が宿を覆い尽くしていて中は見えなくなっていました。

 あとはたぶん魔法かな。

 内側から見ると外の景色が見える窓とかが幾つもあるの。

 空気も流れてくるからね。

 異国情緒と異世界情緒が両方堪能できる宿かな。


 で。

 かなり想像と違っていたのは内装ね。

 えーと高級なアラビアンリゾートホテルが一番近いかな。

 足元に砂粒一つもないとか本当に凄い。

 この点はあちらのホテルより凄いのかも。

 椅子とか衝立の透かし彫りとか近くに行って眺めたくなる精緻さ。

 アンティークな置物は手入れが行き届いていて、どれも艶々。

 お触り厳禁とわかっていても触れたくなる魅力に溢れていました。


 ノワールか誰かが事前に通達してくれていたのだろう。

 案内してくれたのはヒジャブに近い形のスカーフをまとった女性。

 スタッフさんにはニカブやチャドルに似た格好の女性もいる。

 服装が自由なのは観光客だけなのかな?

 それともここが高級な宿だからか。


 通されたのは恐らく一番ランクの高い部屋。

 広くて高価そうな置物がたくさんあったからね。

 骨董品や部屋の説明は彩絲と雪華が聞いてくれた。

 主人は聞かないのがこの世界流儀らしい。

 ノワールは一番大きくて豪奢なソファに私を座らせるとお茶の準備を始める。

 説明はかなり長かった。

 そのせいなのか、彩絲が案内をしてくれた女性にチップを渡している。

 女性は一度断ったが、雪華にも言われて受け取っていた。

 本来チップの習慣はないのかな?


「うわ! さすがノワール。何時手配したの!」


 ノワールがテーブルの上へ揃えたのは飲み物とスイーツ三種類。

 飲み物はポメグラネイトン(柘榴)ジュース。

 氷は入っていないのにキンキンに冷えているのは、カップに魔法がかかっているとのこと。

 日本で飲んだ柘榴ジュースと違い渋み? えぐみ? が薄くて凄く飲みやすい。

 暑かったせいもあって半分ぐらいをごくごく飲んでしまった。

 

「予約時に手配済みでございます」


 雪華の言葉にノワールが会釈をする。

 さすノワですね。


「これこれ! すごく美味しいけどレアドロップなんだよね。美味しいから最初に食べてみ?」


 雪華が絶賛するのは氷ダンジョンでのドロップアイテムらしい。

 そうめんを刻んだものに苺シロップがかかっている見た目。

 世界のイケメンを攻略する乙女ゲームで見たことがあるような……。

 あ!

 イランの有名なデザートかな。

 確かファールーデ。

 白い麺が入ったレモンとローズ・ウォーターのシャーベット。

 もしそうなら初めて食べるので楽しみだ。


「ん!」


 ローズの香りが結構強い。

 レモンは香りよりもさっぱり感が際立つ。

 麺を食べればピスタッチオとアーモンドにミルクの味。

 凍っている麺を食べる機会がないので不思議な食感だ。


「これって、何て名前のドロップアイテムなの?」


「ファールーデ。普通に店でも作られているんだけど、ダンジョン産がダントツで美味しいんだよね」


 あ、名前は向こうと一緒なんだ。


「同じ組み合わせだと勝てぬので、手作りのファールーデにはフレッシュフルーツやジャムをかけるのが一般的じゃの」


「なるほどね」


 そちらも食べてみたいな。

 少し溶けかけた麺の食感もまた珍しい。

 一気に食べてしまった。

 ポメグラネイトンのジュースがさっぱり系なので、食べ終わりに飲んで口の中をリセットしておく。


「ふむ。デーツデーツはそのままでも十分美味なのじゃが……」


 彩絲がデーツデーツ(デーツ)を指先で摘まみながらしげしげと眺めている。

 あちらのデーツよりは一回り大きいだけで見た目は同じ。

 そのデーツを半分に割って、中にドライフルーツやナッツが詰め込まれていた。

 カロリーが心配だが彩りは良い。

 口の中と体が大分冷えたので、ここにきて冷えていないスイーツは歓迎だ。

 デーツのしっとり感とナッツのかりかり感が口に楽しい。

 大きくてもぺろりといけてしまった。

 ランディーニは三個目に突入している。

 よほど口に合ったのだろう。


「次の飲み物はモロッカンミントティーですがホットとアイス、どちらにいたしましょうか?」


「もう一つのスイーツはなんだっけ?」


「ナッツカシュー(カシューナッツ)のクルフィでございます」


「アイス系かぁ。じゃあ、ホットミントティーの方がいいんじゃない?」


「雪華に同意します」


「妾はアイスにしようかのぅ。印象がかなり違うので両方楽しめばよいぞ」


「ええ、ありがとう」


 彩絲の提案にも大きく頷く。

 ミントティー専用ポットは初めて見た。

 可愛らしい。

 主人がミントティーを好むので専用ポットを買ってもいいかな?


 クルフィはかなり濃厚かつクリーミーなアイスだった。

 というか、カシューナッツのアイスクリームなんて初めて食べた!

 もともとカシューナッツが好きなので大変好ましい。

 ミントティーを途中で挟む間もなく一息でいただいてしまった。

 是非ダンジョンでたっぷりとドロップさせたい。


「わ! 甘っ!」


 てっきりさっぱりとした、ミントの香りが強いものを想像していたので、あまりの甘さに驚いた。

 しかしたっぷりのミントとたっぷりの砂糖を入れるのが一般的らしい。

 

「でも美味じゃろう? ほれ、アイスも試してみるのじゃ」


 勧められてアイスのミントティーをいただく。

 同じように砂糖もたっぷり入っているはずなのに、こちらの方がさっぱりしている不思議。

 

「随分と印象が変わるけれど、こちらも美味しいわ」


「そうじゃろう。外ではアイス。中ではホットがお勧めじゃの」


「さ! 体が落ち着いたら着替えてダンジョンよ! 早くアリッサに似合う服を見つけたいわ!」


「えー。私は氷ダンジョンに行きたいなぁ」


「そう言うと思って、先に氷ダンジョンのドロップスイーツを食べさせたのじゃよ。妾たちに付き合ってもらうためにのう」


 く!

 敵の策略に嵌まった悔しさと、私の好みを優先してくれた嬉しさを同時に味わう複雑さを感じるわ!

 夫の苦笑まで聞こえる気がした。


「はぁ……わかりました! 貴女たちの服に対する情熱はよく知っているもの! さくさくっと攻略しましょうね」


「ふっふっふ。アリッサがやる気に満ちているということは、彩絲!」


「うむ。念願の隠しフロアを見つけられるということじゃのう、雪華よ」


 珍しく二人が手と手を取り合って見つめ合っている。

 それだけ魅力的なんだね、隠しフロア。


「ではダンジョンに相応しい服装に着替えてもらうとするかのぅ」


「ミニスカートは御方様が許さないからなぁ。やはり旅装にも着たロングキュロットがいいかも」


「じゃな。色は瑠璃紺で統一しよう。レースのブーツに防汚付与をつければよいか」


「瑠璃紺一色じゃ重くなりそうじゃない? 帽子のリボンとかに白を入れたいわ」


「うむ。よかろう。しかし帽子よりサークレット付きのヴェールがよさそうじゃ。刺繍なら妾が今、入れるわ!」


 私の服装のこととなると本当にこの二人はヒートアップする。


 二人を中心に時々ノワールが口を挟んだ結果。

 私の服ダンジョン攻略服は、お腹を見せないベリーダンス風の衣装となった。

 三人の無茶ぶりに応えてくれた宿の方には感謝しかない。

 私がこっそりと感謝をすれば、逆に指摘が細やかで手配しやすかったと丁寧な言葉で告げられた。

 確かに絶対暑くなくて誰よりも美しい衣装を! とか言われるよりはマシかもね。


 袖も当然のロングタイプだ。

 ダンジョンだからね。

 暑くても肌は極力見せない方向でいく。

 安全的にも主人の意向的にも。

 着替えを完了したときに聞こえた夫の、いいですね! 頑張ってダンジョンを攻略してきてください。の声は、私以外にも聞こえたようだ。

 彩絲と雪華は勿論、ノワールとランディーニまでもがほっとした顔をしていたよ。


 もう少し緩くてもいいんじゃないかなぁと思うも、夫の心配性は今に始まったことじゃない。

 そして私の巻き込まれ体質というか、電波ほいほいを考えた末なのだと思えば、大人しく頷くしかないのだ。


 ダンジョンは全員で行くらしい。

 しかも馬車での移動らしい。


 また目を引くなぁ、いろいろな意味で、と思いながらも、私は大人しく馬車の中へ収まった。



 そして世界のお菓子ですよ!

 いろいろと食べてみたいです。

 トルコでも有名店がこちらへ来ていて、購入したバクラヴァは驚くほど美味しかったんですよね。

 また来てくれないかなぁ……。

 

 次回は、服ダンジョンに入る前に。(仮)の予定です。


 お読み頂いてありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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