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報われる至福。異国情緒溢れるお茶会。3

 年内最後の投稿です。

 完了したら年賀状を書かないと。

 買ったのは12月の上旬だったんだけどなぁ……。

 

  


 前菜の箱を食べ尽くし、次は食事の箱へ……と指先を伸ばす途中で、強い視線を感じて箱から視線の元へと目を向ける。

 そこには驚いたような表情の透理がいた。


「申し訳ございません! 不躾に見つめてしまいまして……」


「いいえ、この茶会は無礼講。構いませんわ。もしかして、私に何か聞きたいことでもあるのかしら?」


「えぇとぉ! です、ね。ローザリンデ様は守護獣をお持ちにならないのかなぁ、と思いまして……」


「今までは縁がありませんでしたのよ。あとは……元婚約者の許可が下りませんでしたの」


 ハーゲン・アインホルン。

 幼い頃から愛しさを持って接してきた元婚約者。

 現プリッツダム王国の国王。

 光をそのまま宿したかのような美しい金髪に、豊かな森を思わせる深い緑眼。

 堂々たる風格で、誰もが聡明な王になるであろうと信じて疑わなかった彼の方。

 最後に会ったのは、あの忌まわしい追放の場。

 味方が一人もいない中での断罪劇は、今でもローザリンデに悪夢を齎す。

 まるでよくできた物語のようだったと、思い返せたのは娼館で身を落ち着けた頃合いだった。


 そんなハーゲンは、実に嫉妬深い男だった。

 上手に隠していたし、ローザリンデもそつなくフォローしてきたので、その度を超した振る舞いは、ゲルトルーテに寵が移るまで気付く者は限られていたけれど。

 さて今は、どうなっているのだろう……。


「尊き御身に守護獣は必要な存在と思われますが、如何でございましょう?」


 以前であれば許さなかった守護獣の主になる夢も、ハーゲンに貸ししかない現状であれば叶うに違いない。


「透理殿が勧める守護獣はおられますか?」


「……ローザリンデ様であれば、今現在拒否する者はおらぬのでしょう」


「それならば……隠蔽に長けた者だと嬉しいわ」


 他者にはできる限り見えないと嬉しい。

 ローザリンデにしか見えない者であれば、最高だ。

 お茶会参加者は全員口を噤んでくれると信じて疑わない。

 今であれば、秘密の護衛者が得られるのだ。


「で、あれば。避役カメレオン族か豹族の黒豹がお勧めです。できれば両方を。避役は結界がメインの防御系、黒豹は雷魔法がメインの攻撃系ですのでバランスがよろしいかと。尚、避役は周囲の景色に溶け込んで気配を消しますし、黒豹も闇や影に潜み気配を感知させないのです」


「! 私が望む者です。足を運ぶことは叶いませんが、希望する者を連れてきてもらえるでしょうか?」


「許可さえいただけましたら、可能でございます。本人の希望を優先させますが、きっと。ローザリンデ様には御満足いただけるかと存じます」


「素敵! リゼット! 透理殿の許可証発行をお願いできるかしら!」


 バザルケットと話し込んでいるバローに声をかける。


「承りました、ローザリンデ様。透理殿の都合に合わせますので、何時なりとも御連絡くださいませ」


「……ふむ。ローザリンデ嬢の話がすんでいるのであれば、茶会終了までに希望者を妾たちが連れてこよう」


 茶会には参加しないが、同じ部屋にいた彩絲がそんな発言をする。


「いいんですか、彩絲?」


「妾も雪華も構わんぞ。早いにこしたことはなかろう?」


「じゃあお願いね。候補者が多かったら彩絲と雪華の判断で、選別してくれて構わないから」


「了解だよー。では、ローザリンデ様。楽しみにしていてくださいねー」


 容貌が自慢の貴族令嬢たちも彼女にはかなうまい。

 雪華はどこまでも愛らしく、彩絲は恐ろしいほどに妖艶だ。

 本性が蛇と蜘蛛と聞かされても、そちらの姿もきっと美しいのだろうとしか思えない。

 これまで蛇も蜘蛛も苦手な生き物であったのだが、この二人のお蔭で忌避感は随分と薄れた。

 二人が連れてきてくれる守護獣なら、きっと忠誠を誓ってくれるだろう。

 その分大切にしよう。

 守護獣は得ようと思っても得られる存在ではないのだから。


 透理が彩絲に鍵を渡している。

 店は閉めてきたようだ。

 留守番がいないのは意外だった。

 それだけ扱いが難しい守護獣が多いのかもしれない。

 守護獣屋は少なくないが、信用できる店は多くないのだ。

 アリッサが認める守護獣屋ならば、安心してお願いもできるけれど。

 

「彩絲と雪華は御方様に仕えるまでは、守護獣屋の中で一、二を争う実力者でした。こちらのお屋敷へ連れてくるまで、守護獣たちが損なわれる心配は皆無ですので、御安心くださいませ」


 なるほど、そんな心配もあるらしい。

 優秀で、誠実な者は何処の世界でも引く手数多だ。

 だが優秀な者が必ずしも強いわけではない。

 

「……ふむ。何となくじゃが、想像はついたぞ。あやつらも初めて仕える主がローザリンデ嬢になるとは、果報者じゃな」


 バザルケットが楽しそうに笑う。

 その笑いがまた、ローザリンデの守護獣になる者が優秀なだけでなく、自分にあう守護獣なのだと知れて嬉しい。


「初めて主を持つとなれば……そこまで練れてはいなかろう。となれば……ローザリンデ嬢。バザルケット製のバッグなどを持たぬかのぅ? 一つであれば帰還祝いとして贈ろう。それ以上欲しくば、これまた祝いとして希望数を販売してもよいが」


「是非にお願いいたします! 守護獣たちに初めて差し上げる私からのプレゼントですので、そちらは購入させてくださいませ。図々しくもいただけるのであれば……その……アリッサ様がお持ちの型と同じバッグを……よろしいでしょうか?」


 アリッサを見つめて問う。

 バザルケットもアリッサを見た。


「同じ型のバッグ……王宮で持っていてもおかしくないものとなると……今のバッグは向かないわね。新しい注文を受けていただこうかしら?」


「アリッサの注文とあれば、無理難題でも聞くぞ。王宮に持ち込んでも無難なデザインにしておくか?」


「……幾つか案がございます。手前にお任せいただけますでしょうか?」


 リゼットが会話に入ってきた。

 王宮へ持ち込むのに相応しいデザインともなれば、この中ではリゼットが一番通じていよう。

 

「おぉ! バロー殿にお願いするという手があったのぅ。我は王宮の流行にはとんと疎いからのぅ」


「バザルケット殿が望まれれば、最先端の流行も掌握できましょうに」


 お互い牽制しているのかと思ったら、表情がやわらかい。

 どうやら褒め合っているようだ。

 心の底から技術などを称えているのだろう。

 貴族同士の遠回しで面倒なやり取りを見慣れた身としては、何とも面映ゆくそれ以上に憧れた。


「守護獣も主との繋がりが深まれば、バザルケット殿のお手に匹敵する収納を会得できますが……すぐにとはいかないでしょう。現時点では収納力の高いバッグを、お持ちになればよろしいと愚見いたします」


「これも何かの縁じゃ。透理殿にも一つお作りしようかのぅ」


「! よろしいのですか! それでしたら、収納力の高いリュックサック型をお願いいたします! 機会があれば手に入れたいと思っておりました。機を窺っていたのです!」


「ん? エリスさんのバッグは普通に購入できるのではなかったのかしら?」


 不思議そうなアリッサに、バザルケットがにやりと笑う。

 弟子に秘密を明かす、師匠の表情というのが最も相応しい笑いだった。


「我の店は訪れる者を選ぶ。邪な者にはそもそも見えぬ店なのじゃよ」


「ふぉ!」


「魔法に長けたエルフ族でも、簡単には会得できぬ希少な魔法でございますよ」


 感動するアリッサを見て我慢できなかったのかもしれない。

 キャンベルも話に入ってきた。  


「エルフ族の長けた者ほどには、上手くできておらぬよ。キャンベルは我より上手いのではないのかのぅ?」


「短時間であれば、あるいは。ですが営業時間中一度も解除せずとあれば、バザルケット殿の足元にも及びませんよ」


 他種族を下に見る傾向にあるエルフ族ではあるが、キャンベルは実力者には相応の敬意が払えるらしい。

 王族に近しくなると、接するエルフはプライドだけが高い無能が多く、辟易としていたのだ。

 優秀で場の空気を壊さないキャンベルと、きちんと縁を持てたのは嬉しかった。


 世辞でもなく、心の奥から湧き出るような好意を隠すでもなく、伝えあえる関係なんて早々得られるものではないのだ。


 食事に入るのも忘れて会話を楽しむ最中にも、リス族の一人が淹れてくれた粉末茶を美味しくいただく。

 健康にもいいのですと、会話の妨げにならぬよう耳元で囁いてくれたリス族の愛らしさに、こっそりと悶えるのも忘れない。

 ふと目線を感じるのでそっと伺えばナルディエーロが神妙に頷いている。

 驚愕を禁じ得ないが、美しくも聡明な吸血姫であるナルディエーロは、リス族の愛らしさをローザリンデ同様に感じていると気がつく。

 何時かその愛らしさについて論じる機会があればいいと、ローザリンデも神妙な瞬きをしておいた。

 しかし年賀状のソフトって年一しか使わないから、イマヒトツ使い切れていない気がします。

 まぁ印刷されている年賀状を購入して、住所録の印刷にソフトを使う程度なので、上達しようがない気もしますが。

 一からの作成もしてみたいのですが、年末はばたつくので毎年断念し続ける予感しかないのです。


 次回は、報われる至福。異国情緒溢れるお茶会。4(仮)予定です。


 お読み頂いてありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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