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旦那様も読書家です。食後のお茶を飲みつつ。

 やっとこさ、コロナのワクチン接種予約が完了しました。

 同居人が既に一回目を受けていたので焦っていたので、本当良かったです。

 接種後の感想はどこかで語りたいですね。

 


 食後の紅茶は癖のないホット。

 一緒に蜂蜜、巣蜜すみつ、ジャムが三種類も置かれていた。

 引き続きロシア風を追求しているようだ。

 元々私の認識では、紅茶にジャムを入れて飲むのがロシアンティーだったのだが、ジャムを舐めながら飲むのが正しいロシア式らしい。

 しかもジャムを入れるのはロシア全土の習慣ではなく、ロシアンティーという呼び名も日本独自のものと聞いて驚いた。

 紅茶に入れる専用ジャムなども存在している上に大変美味なので、紅茶にジャムが添えられているときは、たっぷりと入れて飲むようにしている。

 別に無作法ではなさそうだしね。


 オリジナルジャムと薔薇ジャムが秀逸だったなぁと思いだしつつ、並べられた三種類のジャムを凝視する。

 雪華にくすくすと笑われた。

 

「ジャムに興味津々だねぇ、アリッサ。右から順番にロベリートス、オレンジン、クローザ(ザクロ)のジャムだよ。雪華様厳選の紅茶にあうジャムとなっておりますよ」


 恭しいポーズをつけながら説明してくれた雪華には、ありがとうの意味を込めながら頷いておく。

 珍しいクローザのジャムを選んだ。

 たっぷりと入れて、スプーンで丁寧に掻き混ぜる。

 濃かったら、サモワールでお湯を追加すればいい。

 銀色のサモワールは、私が考える異世界のティータイムに相応しい逸品だった。

 大人数にはちょうど良さそうだ。

 皆も楽しそうにサモワールから追加のお湯を入れている。


 一口確かめた紅茶の味は、酸味が強かった!

 慌てて少量の蜂蜜を入れると、酸味と甘味のバランスが良くなって、ほっと息をつく。

 

「アリッサ様は、どんな御本を、お読みになったのでしょうか?」


 小柄な体にあった小さなティーカップを片手に問うてくるネイの目は、きらきらと輝いていた。

 あの目はよく知っている。

 同好の士と語り合いたいときに向けてくる眼差しだ。

 どうやら私はネイに読書好き仲間と認定されているようだった。


「『御主人様に恋をした』よ。途中まで読んで寝落ちしたくらいに面白かったわ。朝風呂を堪能しながら完読したの」


「シルキーが主人公の、名作ですね! 作中の奉仕描写がとても秀逸で、愛読しています!」


「自分もノワール殿に薦めていただき、完読いたしました。恋とは、げに恐ろしきものですなぁ……」


「あーねぇ。あそこまで盲目的なのも凄いよねぇ」


「私はこの作品で二人の世界って、こういう雰囲気なんだーって、感心しちゃいました」


「恋情に忠心が加算されたのであろう? まぁ、盲目的な恋愛が怖いのには同意するがのぅ」


「同僚の声にすら聞く耳を持たぬとは、末期としか」


「そうだよねぇ。その時点でシルキーは失格な気がするわ」


 ネイ、フェリシアに続いて、雪華、セシリア、彩絲、ネル、ローレルが続く。

 

「仕えるべき御主人様が、アリッサ様で良かったと心から思いました」


 ネマの感想で全員がこっくりと大きく頷く。

 感想を述べなかった、ノワールとランディーニも頷いていた。

 

「ありがとう。私も今まで以上に良い主でいるように努めるわね。そうそう、この作品には続編があるんだけど、そちらは読んだのかしら?」


 フェリシア以外は読んでいた。

 想定内の結果だ。


「そちらの感想も聞きたいけれど、読んでからにするわね」


「お許しいただければ、近日中に入手、してまいります」


「御主人様は速読家でもあられると、ノワール殿からお聞きしましたので……」


「良作の続編はすぐに読みたいものですよね!」


 リス族の三人は、揃って読書好きのようだ。

 ドジっ子末子と次女は、何となくだが読書嫌いの気がする……。

 売られた先で、読むのを許された古書の数々が自分の身を助けるのだと、姉たちを思い出して気がついてくれればいいのだが、それは難しそうだ。


「御主人様?」


「……まだ読む本はたくさんあるけれど、気になるから都合をつけて買ってきてくれると嬉しいわ。三人揃って行ってもいいけど、心配だからフェリシアあたりと一緒に行ってね?」


「心配いただきまして、ありがとうございます。小さくてすばしっこいのは種族上の特性ですが、隠密にも長けておりますから、私たちだけでも安全にお使いはこなせますので、御安心くださいませ」


「じゃあそんな素敵な様子を見たいから、私がついて行くわね~。私でも大丈夫ですよね、御主人様?」


 戦闘能力こそ劣るが、それ以外の能力はローレルに軍配が上がる。

 理不尽に差別されていたフェリシアは、そのせいで一般常識には特に疎かった。

 ローレルは人魚族でありながらも、十分な良識を持っているようだ。

 容姿こそお花畑の住人に見えるローレルだからこそ、想像の及ばない苦労があったのだろう。


「ええ、勿論。高いところの本を取ってもらうのとか、便利でしょう?」


 私の言葉に顔を見合わせた三人は、納得したように頷いた。

 三人の身体能力を持ってすれば、高いところの物を取るなど簡単だが、それが屋敷外の話となると控えるのが無難だ。

 人の目は何かと厄介なのだから。


「じゃあ、いくときはよろしくね、ローレル!」


「ええ、勿論。人魚族が好きな食べ物屋さんとか教えてほしいわ~」


「「「喜んで!」」」


 三人とローレルのやり取りを温かく見守る。


「それ以外にも何か欲しい本はありますか?」


「セシリアが薦める兎獣人の作品はあるかしら?」


「……それがですねぇ、御主人様」


「ん?」


「兎獣人が主人公の作品は、大変性的な描写に力を入れた内容が多いのです……」 


「なるほど……」


 兎の体質を考えれば当然の流れだ。

 緻密な性描写の作品も、それはそれで読み応えがあるのだが、やはりそこにいたるまでの、いたっている最中の、いたったあとの、心理描写を読み込みたい。


「ちなみに、性描写多めな作品でもいいといったら、何がオススメかしら?」


「タイトルからして、問題しかないんですけどね……『ミリアーナは王族たちとの愛に溺れる』という作品です」


「あー、あれは本当に凄いわよね、性的描写」


「シリーズものだったわね。別名・ただ理不尽に犯されまくる小説」


「基本無理矢理ですから。ミリアーナは男爵令嬢で、相手は全員王族なので、身分差問題もまるっと無視していますし……」


「だからこそ、創作色が強く、安心して夢を、見られるような?」


「しかし、ミリアーナ嬢は王族に見初められるまで、どんな生活をしていたんだろうな?それだけの人数を相手にしていたら、普通は身が持たないと思うのだが……」


 フェリシアの感想に、皆が揃ってしょっぱい顔をした。

 逆ハーレムエンドの作品を読んだとき、私も同じ感想を抱いたのだ。


「ミリアーナ嬢が丈夫な理由わけというタイトルで本を出したら、絶倫な主人に悩む夫人が殺到しそうだのぅ」


 うん。

 私も読んでみたい。

 

 加減はしておりますよ?


 はい、旦那様は黙ってくださいね!


「指南書でしたら、ございますよ?」


「ノワール?」


 夫とのやり取りを見ていたようなタイミングでノワールが口を開く。


「指南書でしたらございます。御方様がおっしゃるところの、逆ハーレムを成した、とある小国の女王が残されたものです。高貴な方々の間では有名な指南書でございますが、取り寄せをいたしましょうか」


「指南書、なんだ」


「はい。完読いたしましたが……相手の性癖によって使う性技は選ぶべし。複数同時行為は消耗が激しいので控えるべし。言葉は有効に使うべし。基礎体力は行為の最中でも上げられるので気を抜かないように。オネダリに羞恥は必要だが遠慮はいらない。体調不良だけでなく精神の不調は迅速明確に伝えること……が、特に印象に残った目次でした」


「す、凄いのね」


 逆ハーレムらしい項目が多いが、絶倫な相手を持つ妻や恋人にも有効な内容だ。


「取り寄せてもらってもいいかしら?」


「承りました」


「……御主人様」


「私が読んだあとなら回し読みしていいわよ、勿論」


「ありがとうございます!」


 私の言葉に質問したネイ以外も笑顔を浮かべた。

 皆興味津々のようだ。


「御主人様……その……必要であれば体に負担のない体力増強方法などを、指南したいと思うのだが……いかがであろうか?」


 フェリシアがおそろおそる聞いてきた。

 フェリシアでさえもわかってしまったのだ。

 私の主人が、この世界では知らぬ者がいないと謳われる時空制御師が、絶倫なのだと。


「お手柔らかにお願いします……」


 羞恥に全身が真っ赤になっているだろう自分を自覚しつつも、俯きながら小さな声で返事をする。


 体力増強が必要でしたら、私が指南しますのに……。


 聞こえた夫の声には、喬人さんの方法は御遠慮申し上げますー! と返事をしておいた。

 

 予約完了して浮かれていたら、あちらこちらが痛いことに気がつきました……。

 ひょう疽にも気がつかないとか、どれだけ気合いを入れて挑んでいたのかと。

 さくっと手慣れた手順で手当てをしました、この時期は悪化しやすいんですよね。

 

 次回は、旦那様の謀略は無敵です。夜蝶のはばたきにて。前編(仮)の予定です。


 お読み頂いてありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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