旦那様はストーカー。
小説家になろうには初投稿です。
まったりのんびりいきますので、ご了承ください。
乙女ゲーム的、異世界トリップ的な要素はちらっと出てくる程度になるかもしれません。
「ただ今戻りました。今日も良い子にしていましたか?」
玄関の扉が静かに開かれる。
十分前に帰宅コールがあった。
当然のように時間ぴったりだ。
夫は時間に厳密すぎるくらいに厳密に行動する。
「おかえりなさい。良い子にしていたかどうかは、旦那様が一番良くご存知でしょう?」
指示されている言葉遣いで返事をすれば、夫は満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。
「そうですね。今日も一日。誰とも会いませんでしたね。宅急便の対応も良かったですよ。回覧板の受け取りもしなかった。これは特に評価しましょう」
宅急便の対応は居留守。
大変申し訳ないが、普段はきちんと夫が引取りをしてくれているので、今回限りの暴挙ということで勘弁していただきたい。
たまたま時間指定が不可の品物だったのだ。
床に置かれたカバンを所定の位置へ置こうと腰を屈めると、そのまま抱き上げられた。
どちらかというと細身の身体にどれだけの力があるのだろう。
筋肉は綺麗についているので、男性というものが今ひとつよくわかっていない自分が考え以上に男らしいのかもしれない。
伏せられた目尻に軽い口づけを落とせば、穏やかな目尻は喜びに解りやすく撓んだ。
「宅急便は明日再配達をお願いしたし、回覧板は貰っておきました。今度からぜひ奥様にお届けをお願いしたいと伝えたら、快諾してくださいましたよ? 私が嫉妬深いせいでご迷惑をおかけして申し訳ありませんね、と告げたら、羨ましい限りです! と力説もされましたね」
「ありがとうございます」
お隣さんもきっと喜んだだろう。
夫のファンクラブ会長だ。
もしかしたら夫に会いたくて、自分の夫の尻を叩いて回覧板を届けに行かせたのかもしれない。
夫を完璧に尻に敷いていると、引き篭りがちな自分でも知っている。
夫は世間様のイケメン度で換算すると120%を軽く上回るようだ。
ご近所の奥様方とは夫の意を汲んで薄い付き合いだが、会う都度に悶えられる。
「今日も良い匂いですね。夕食は何ですか?」
「夏野菜ごろごろ五穀米カレーとシーチキンと刻みタマネギのサラダ。冷製コーンポタージュにしてみたわ」
「頑張ってくれたみたいですね。お疲れ様でした」
「普段は貴方に丸投げですから……たまには、ねぇ」
夫が数少ない外出する日には、私が作る決め事になっている。
普段は夫が料理をし、気を抜くと太りやすい私の体型をしっかりコントロールしていた。
抱えていたカバンを所定の位置に置き、椅子へ姫抱っこ移動の後、座らせて貰う。
食卓の準備は既に整っていた。
こういう時、帰宅時間を明確に伝えてくれるありがたさをしみじみ感じる。
背広の上着をハンガーへかけ、ネクタイを緩めた夫はテレビの電源を入れた。
「……飽きないねぇ」
「麻莉彩!」
「……よく飽きませんわねぇ」
「飽きる訳無いでしょう。万が一見落としがあったら、後悔してもしきれませんからね」
画面に映るのは夫が外出していた間の私の映像記録だ。
当然音声もついている。
付け加えるなら、夫が私を見出してからざっと十年分のデータがパソコンの中に保管されていた。
80インチというテレビというには大型サイズの画面が六分割されており、それぞれに自分の姿が映り込んでいる。
足元から見上げる角度の画像を見て、ムダ毛処理が今一つなのを発見してしまった。
「おや。剃り忘れですね」
夫も同じ画像を見ていたようだ。
私が額に皺を寄せたので、チェックしたのだろう。
「すみません」
「麻莉彩が謝罪することはありませんよ。私のミスです。今夜は念入りにケアしましょうね」
「……はい」
全身脱毛はなかなか慣れないが、致し方ない。
初めは毛の生え始めのちくちく感が辛かったが、慣れれば随分気にもならなくなった。
体調次第で、3日に一度程度の更新になるかと思います。
頻度変更や、長く空く場合は、活動報告に明記いたします。
1回の投稿は1000~2000字程度。