第9話 初登校
波乱含みのテスト期間がようやく終わり、今日が青龍の記念すべき初登校だ。いろいろと不安はあるが、まぁなんとかなるだろ。
「青龍〜行くぞ〜」
「はいはーい、ちょっと待ってー」
朝からバタバタしてるな。…このままじゃ遅刻か?
「よーし、準備終わったよ」
「んじゃ行くか」
そうして青龍と歩いていると、華凛登場。
「ユウくん、おはよー、って隣の女の子だれ?」
うおぉ、朝からダーク華凛かよ。
「話しただろ?コイツが青龍だ。青龍、コイツは幼なじみの朝宮華凛だ」
「私は青龍って言うんだ、よろしくね」
「う、うん。よろしく」
あ、ダーク華凛が青龍の無邪気さに負けて普通に戻ってる。
青龍なかなかやるな。
「ユウ〜置いてくよ〜?」
考えている間に二人とも先に行っていた。
もう仲良くなってるし。つーか先に行く前に声かけろよ。
その後は何事もなく無事に学校に着いたわけだが、問題が発生した。
「ねぇねぇ私ってドコに行けばいいの?」
「あ…聞いてない」
「とりあえず職員室に行けばいいんじゃないかな?」
華凛の意見も尤だがあの爺さんのことだから気を利かして同じクラスにしてくれている……はず。
「いやメンドイし教室に行ってみよう」
「なにがメンドイし、じゃ。面倒臭がるでない」
「うわっ」
本っっ当に神出鬼没な爺さんだ。
「校長、出てくる度に驚かさないで下さい」
「いやいや驚かすつもりはないんじゃがな。それより言うのを忘れとったが転校生の教室は月代くんと一緒じゃ」
「そうっすか、わかりました」
「そういうことで、さらばじゃ」
そう言って走り去っていく校長。
元気だな〜。
「んじゃ青龍は俺たちと同じクラスらしいから行こう」
「うん」
三人で教室に向かおうとするが、再び校長出現。
「もう一つ言い忘れたが転校生はまずは職員室じゃ」
「わ、わかりました」
そして校長は再び走り去っていった。
…どこから出てきた?
「な、なんかパワフルだね校長先生」
「……………」
青龍も少し引き気味だ。華凛は固まってるし。
「そういうことだから青龍、職員室に行かなきゃならんらしい。場所分かるか?」
「うーん、まぁ分かると思うよ」
「じゃあ俺は華凛と教室に行ってるから」
「うん、また後でね〜」
そしてようやく教室に向かうことができた。
「おはよう、お二人さん」
「おはよー、宴ちゃん」
「おはよう」
遊沢と挨拶を交わし席に着く。
それと同時に和馬が、
「悠、知ってるか?今日このクラスに転校生が来るらしいぜ」
「ああ、知ってる」
知ってるも何もこっちはその転校生を居候させてんだ知らないわけがない。
「マジかよ、最新情報だったのに…おっと担任だ。じゃあまた後でな」
「ああ」
担任が教室に入ってくる。
「え〜皆知ってるヤツもいると思うが、このクラスに転校生が来た。今から紹介するから静かにしろよ」
ガラガラっと音をたてて青龍が教室に入ってきた。
『『おお〜〜』』
沸き上がる男どもの歓声。それもそのはず転校生はギャルゲーよろしく、美少女というスキルを持っていたからだ。
「青龍っていいます、まだ来たばかりで分からないことも…………」
自己紹介をしている青龍をぼーっと眺める。
まぁ青龍は可愛いし男どもの反応もわかる。とにかく青龍が余計なことを言わないかぎり俺は平和に暮らせるだろう。
「……あ、ついでに言うと今はユウの家に居候してます。皆よろしくね」
俺の心配を知ってか知らずか、とんでもないことを口走りやがった。
――――――シーン
一瞬にして教室の温度は氷点下。そして俺に注がれる悪意、敵意、嫉妬などいろいろな感情が交ざった視線。
うん、ものの見事にやっちゃってくれたね。
「あ、あれ?私何か悪いこと言っちゃった?」
言ってしまった青龍ですら収拾できないこの状況、どうしたものか。
「まぁそういうことだ」
とりあえずぶっちゃけてみる。しかし皆の反応は変わらない。冷めた雰囲気の中バカという名の救世主が現われた。
「ち、ちくしょー!両手に華じゃないか!悠の女たらし!うわ〜ん」
意味不明なことを言って救世主こと、間塚和馬は泣きながら走り去っていった。そんな和馬の奇行にクラスに居るすべての人間が唖然としている。まぁ大半は引いているが。そして俺への視線は無くなっている。
和馬、グッジョブ!俺は今、お前に俺的ノーベル平和賞を贈りたい気分だ。つーか俺の中のノーベル平和賞は和馬で決定!
担任もポカーンとしている。おーい早く目覚めろ〜。
「先生?もうすぐチャイム鳴りますけど?」
「え?あ、そうだな。じゃあ一限目の準備しとけよ」
教師にすら我を忘れさせるとは、和馬恐るべし。
・
・
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今は食後のまったりタイム。青龍、華凛、遊沢、和馬と雑談している。しかし…
「この野次馬どもが!貴様ら視線とか囁き声が鬱陶しいんじゃ、指差すなボケッ」
蜘蛛の子を散らすように逃げていく野次馬。
美少女が転校してきた、と既に噂になっていているらしく、いろいろなクラス、学年から見にくる奴等が絶えない。
「まぁまぁツッキー、イライラしない」
「イライラせずに居られるかっ!」
遊沢の言うことは尤だが、あまりに鬱陶しすぎる。
「そうだよ、ユウくん。イライラすると良くないよ」
「ユウは気にしすぎだね、気にしないのが一番だよね〜」
「うんうん、皆の言うとおりだ。悠、それにあんまりイライラするとハゲるらしいぞ?」
くっ言いたい放題言いやがって。こっちもある程度までなら我慢できるっつーの。
「そういえば、この間、皆で遊びに行くって言ってたじゃん?あれどうする?」
さすが言い出しっぺ、よく覚えてるな。
「あ〜忘れてた」
「私も〜」
「何っ!そんなもんオレは知らないぞっ!」
そりゃそうだ、あの時和馬は購買に行ってたはずだ。
「それで思いついたんだけど、遊びに行くのは中止にして青龍ちゃんの歓迎パーティしない?」
「いいぞ」
「賛成〜」
「いいね〜」
「えっ!?私のためにパーティ開いてくれるの?」
青龍は本当に嬉しそうな笑顔で言う。
「で、場所なんだけど……」
そう言って遊沢は俺を見る。そうすると自然と俺に皆の視線が集まってくるわけで…
「まさか…俺ん家?」
「「「…………」」」
青龍を除く三人から無言の圧力がかかってくる。
どうやら俺に拒否権は無さそうだ。
「しょうがないな、まぁいいだろ」
もう後はどうなっても知らん、と半ばやけくそになりながらOKを出す。
「じゃあ今度の休日は、ツッキーの家に集合ね」
「あいよ」
「了解〜」
「悠ん家は久しぶりだな」
「はーい」
さぁ今度の休日は大変そうだ。気合い入れていかないとな。
…つーか何故遊沢が仕切る?