第7話 ちょっとした疑問
……カリカリ……カリカリカリ
俺は今半端じゃないくらい集中している。
何でかって?そりゃもちろんテストがあるからだ。んで勉強しているわけだが青龍がうるさい。
「ユウ、何してるの?」
「ん〜?勉強、もう少しでテストがあるんだ」
「テストって学校でやるやつ?」
「ああ、テスト知ってるのか」
デパート知らなかったのにテストは知ってるのか。つーか受け答えが面倒だからテキトウに答えとこ。
「うん、必要最低限の知識は仕入れたつもりだよ。これでどこでも行けるよ」
「へぇ」
「でね私も学校に行きたい」
「へぇ、いいんじゃないか?」
「じゃあ学校に行ってもいいの?」
「いいと思うぞ」
「やったー」
いきなり青龍が抱きついてきた。
「なっ何だ!」
「えへへ〜」
抱きついてくるのはいいんだけど、自分が女の子ってことを理解してほしい。いい匂いはするし、腕には何か柔らかいものがあたってるし。
「青龍!少し離れろ」
「うん、わかった〜」
考えろ、何かあったはずだ。でなければ青龍がこんなにハイテンションなはずがない。
(回想中)………
うん、何かトンデモナイことを言ってるっぽい。
「なぁ青龍、さっき言ったこと撤回してい……」
「ダメ!」
最後まで言い終わる前に拒否された。
「じ、じゃあ今日何か食べたいものないか?」
「ふっ、私は食べ物には釣られないよ」
食べ物作戦は通用しないようだ。まぁ後でどうにかしよう。
気を取り直して再び勉強開始。
……カリカリ……カリカリカリ
「ねぇねぇそういえばユウって何で一人暮ししてるの?」
「何でって……言ってなかったか?」
「言ってないよ」
うん、じゃあ説明しよう。
「う〜ん、あれは高校入学前か」
−−−−−−高校入学前
「合格おめでとう、悠」
「ああ、ありがとう親父」
俺は今、合格が内定して親父と話している。その時親父が突拍子もないことを言いやがった。
「言ってなかったけど高校入学したら一人暮しだから」
「はぁ?聞いてねぇよ」
「息子よ、よく話を聞くんだ、言っていないと言っただろう」
子供かっ!と言いたくなるような返答をしてくるバカ親父。
「月代家では代々高校生の間は一人暮しをする、という掟があったりなかったり」
「どっちだ!!つーか今作っただろ!?」
「どっちにしろ月代家の跡取りだから社会経験を積まなくてはならん」
言い忘れたが月代家は古くからある由緒正しい家柄(かは知らんがそうらしい)だったりする。
ちなみに親父も祖父も思い付きで行動する人だったらしく、後から聞いた話だが親父の時は一年間山籠りをさせられたらしい。だからか知らないが俺は武道の類をたたき込まれている。
「今言ってることも親父のことだからどうせ思い付きだろ」
「ふっ、さすが我が息子、よくわかってるじゃないか。まぁとにかく一人暮しは決定事項だ」
「わかったよ、一人暮しすればいいんだろ」
「じゃあさっさと荷物まとめて今すぐ出ていけ」
さすが親父、思い立ったらすぐ行動か。やることが違うな。しかし…
「今すぐ出ていけるかっ!このバカ親父!」
−−−−−−
「というわけだ」
「へぇ愉快だね、ユウのお父さん」
あれを愉快といいますか青龍さん。どう考えてもあの親父はアホだろ。
あーあ親父を思い出したら勉強する気も失せてきた。暇だしこっちも質問してみるか。
「青龍は何でそんなに学校に行きたいんだ?」
「面白そうだから」
なるほど恐ろしいほど単純な理由だ。
「そんなに面白くないぞ?学校ってのは。それに入学の手続きとか面倒だし」
「それでも行ってみたいの!……それにあっちは学校なんて無いから…」
最後の辺りはボソボソっとくらいしか聞こえなかった。青龍は親に怒られる子供のように、しゅんとなっている。
なんだか物凄く悪いことをした気分だ。あっち、というのは青龍たちの世界を言っているのだろう。
「……ああっ、くそっ」
「どうしたの?」
自分がこれほどお人好しだとは思わなかった
「学校に言って編入の手続きをしてやる」
「…本当?でも手続きとかが面倒だ、って」
「ああ問題無い、任せろ」
とは言ったものの正式な手続きなんてする気はない。こうなったら校長に直接言って無理矢理にでも編入させる。
やっぱ俺は親父の息子だ。思い立ったらすぐ行動してしまっている。
「んじゃちょっと話つけてくる」
思い立ったらすぐ行動、ってな訳で学校に行く。
・
・
・
−−校長室前
やって来たはいいがこれからどうしよう?……ええい迷っていても始まらない。こうなったらダメ元で言ってみるか。秘策もあるし。
コンコン
「はい、どうぞ」
「失礼します」
「おや月代くんじゃないか、どうしたんじゃ?」
校長はなかなかの爺さんだが現役で頑張っている。
「単刀直入に言います。裏編入させてほしい奴がいるのですが」
「すまないが正式な手続きを踏まないとダメなんじゃ」
やっぱりダメか。しょうがないここは秘策を出そう。
「これでなんとかなりませんか?」
そう言って校長に差し出したのは札束……ではなくガリ〇リ君。
何でガリ〇リ君かって?それはこの前校長がガリ〇リ君の歌を歌っていたからだ。それでピーンときた『この人はガリ〇リ君が好きなのだっ』と。
「つっ月代くんそれはガリ〇リ君じゃないか!」
「先生、ですからこれで手を打ちませんか?」
予想どおり食い付いてくる校長。
再びガリ〇リ君を目の前にチラつかせる。
「う〜〜〜む………このことは他の先生方には内緒じゃよ?」
「はい!もちろん!」
「必要な書類はこちらで用意しとくからの」
「ありがとうございます」
よし青龍の入学決定!!
そうと決まれば早速青龍に報告だ。
俺は足早に家に帰る。
帰り道、テンションが上がっていた俺は思わず呟いてしまった。
「……………勝った」
今回のはビミョーです(^_^;)