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第34話 文化祭2



文化祭。それは一年に一度しかないイベントである。

只今、盛り上がる筈の準備期間中だ。しかし…。


「こんなに暇だとはな…」


俺のクラスは準備がほとんどいらない展示をするので、準備期間中は暇になる。

なので、あちこちから釘を打つ音や指示をする声が聞こえる中、こうして校内をぶらぶらと歩いている。


「賑やかだねぇ…なんかこういう準備も面白そうだね」


作業をしている生徒たちを見て青龍が話し掛けてくる。


「ああ、文化祭は準備が醍醐味っていうか、準備してる時も楽しいからな」


「なんか私たち損してるみたいだね」


「まったくだ」


そんな会話をしながら、他のクラスを見物していく。


「……………」


「……うーん」


しばらく歩いていると、青龍が唸りだした。


「どうした?」


「なんか、ただ歩いてるだけじゃつまんないと思って」


「まぁな」


「で、なんかないかな〜と思ってたわけだよ………あ、ひらめいた。ユウ、ゲームしよ!」


………唐突だな、おい。


「題して…ここは何のお店でしょう?ゲームだよっ。どう?やる?」


「いいぞ」


他にやることないしな。

というか、ゲームの名前まんまだな。


「第一問〜あそこは何のお店!?」


青龍が指差した先には、段ボールや木材、屋台の骨組みらしきものが置いてある。


「………」


ぶっちゃけ、あれだけではわからない。


「…青龍はわかるのか?」


「ううん、エスパーじゃないから無理」


「…………」


「………このゲーム、失敗みたいだね」


青龍は、あはは、と苦笑いをしている。


「あーあ、なんか面白いことないかな〜」


何回目になるか分からない言葉を言いながら、ぶらぶらと歩いていく。


「あ」


「どうした?」


「あれって生徒会長じゃない?」


「そうだな」


見ると、生徒会長こと楠木美琴がふらふらしながら資料のようなものを運んでいた。


「大変そうだね」


「そうだな」


余程重いのか息も少し上がっているようだ。


「これは手伝わなくちゃね」


「……………」


思わず青龍を凝視する。


「な、何?」


「いや、青龍が珍しいこと言ったから驚いただけだ」


「なんかバカにされてる気がするよ?」


「気にするな」


ということで、楠木のところまで行って声を掛ける。

声を掛けるのは何故か俺の役目だ。


「会長、手伝おうか?」


「!!」


声を掛けた瞬間、遠くからでもわかるくらいに驚かれた。


「わ、悪い。そんなに驚くとはな…」


「い、いえ」


「美琴ちゃん、手伝おーか」


ファーストネームで呼んでるし。つーか青龍は楠木と面識がないはずだ。


「あ、あの…」


ほら、楠木困ってるし。


「私は青龍っていうの。よろしくね」


「よ、よろしくお願いします」


「で、こっちがユウ」


「月代悠だ」


「は、はぁ」


いきなりのことでキョトンとしている。


「楠木美琴です」


「とりあえず…っと」


律儀に頭を下げている楠木から資料を取る。


「あ、わ、私の仕事なので手伝って貰うのは悪いです」


「いいって。会長も辛そうだったし」


「そうだよ。荷物はユウに持って貰って、私たちはおしゃべりしよ〜」


………こいつ、最初からそのつもりだったな。


「会長、これ何処に持っていけばいいんだ?」


「え、えと、生徒会室まで…」


「了解」


「…すみません」


三人で話しながら生徒会室を目指す。

生徒会室に着くと適当な机に資料を置く。


「ありがとうございます」


「別にいいぞ。こっちが好きでやってることだから」


ま、半分青龍から強制されたけど。


「つーか、生徒会室って初めて入ったな」


「私も〜」


生徒会室と言ったらもっとスゴい所だと思っていたが、十畳ほどの部屋に机と椅子と棚などがあるだけだった。


「あ、あの!お礼と言っては何ですが…お茶にしませんか?」


「いいねぇ〜」


「じゃあ貰おうか…というか、ここ何にも無いけどどうするんだ?」


水道もなければ、コップもない。


「会長室なら一式揃っているので…」


「会長室?」


そう言うと楠木は部屋の隅の方へ歩いていく。


「こちらです」


呼ばれて行ってみるとドアがあった。棚に隠れて見えないようになっていた。

入ってみると、生徒会室の倍くらいある。


「お〜」


「こっちはやけに広いな」


「はい」


会長室を観察する。

まず目につくのは会長専用と思われる机と椅子。無駄に豪華だ。イメージとしては社長が座るような椅子、と言った感じだ。

次に目を引くのは何やら馬鹿デカい絵。さらには簡易的なキッチンまである。まぁ調理器はやかんくらいしかないが。


「えーっと、飲み物は何にします?」


「何でもいいぞ」


「私も〜」


「わかりました」


手慣れた様子でお茶の準備を始める楠木。


「何か…意外です」


「ん?何がだ?」


「月代さんとか生徒会に入ってそうなイメージがあるのに」


会長と副会長以外は志望者だったりする。


「そうか?」


「あ〜なんか分かる気がするよ」


…どんなイメージだ、それ。


「というか会長慣れてるな」


「はい、たまにやってるので…」


こうして喋っている間にもテキパキと準備が進んでいる。


「………」


「………」


楠木が一人でやっているので俺と青龍は何もやることがない。


「あ、あの…月代さん…その…会長って呼ぶの止めてもらえませんか?…あまりその呼ばれ方は好きじゃないので…」


楠木が唐突にそんなことを言ってきた。


「了解」


「ありがとうございます」


別にお礼を言われるようなことじゃないけどな。

と、用意が終わったらしく楠木がティーセットを持ってきた。


「あ、いい香りだね」


「確かにいい香りだな」


カップからは紅茶の良い香りが漂ってくる。


「サヤちゃ…桐生さんが選んできてくれるんです。私はあんまり詳しくなくて…」


「へぇ〜」


「だけど楠木の方が紅茶のイメージだよな」


桐生は日本茶っぽいイメージがある。


「私はそういうの苦手で…でも、桐生さんは何でも出来るんです」


「完璧主義。不正は絶対許さないって感じだもんね〜」


「あはは…そんなに厳しくないですよ」


苦笑しながら答える楠木。

…うん、紅茶も美味いな。


「あ、これお茶請けです」


そう言って取り出したのはシフォンケーキ。そう、ふわふわのあれだ。


「いただきま〜す」


「いただきます」


それぞれ一つずつ手に取る。


「……………」


「……………」


「ど、どうでしょうか?」


恐る恐る聞いてくる。


「美味しいよ!」


「うん、美味いな」


「そ、そうですか」


ホッと一安心したような感じの楠木。


「よかった…サヤちゃんにしか食べてもらったことなかったから…」


「これ楠木の手作りなのか…」


「は、はい」


それほど甘くもなく紅茶に絶妙にマッチする。


「ねぇユウ、これ家でも作ってよ」


「ああ、いいぞ」


楠木に後でレシピでも聞くか。


「家でって…お、お二人は同棲してるんですか!?」


「そうだよ」


さらりと返答する青龍。


「違うだろ…居候だ」


同棲というより居候と言った方が正しい。…大した差はないが。


「他のクラスの奴は知らないんだな」


「はい、初耳です」


他のクラスには伝わってないってことか…。


「うちのクラスの人はみんな知ってるのにね〜」


「そ、そうなんですか?」


「まぁな」


青龍が転校早々バラしたからな。


「そういえば、今文化祭の準備中じゃね?」


「いいんじゃない?うちのクラス何もやることないし」


「いや、俺たちはいいかもしれんが…楠木は何か他にもやることがあるんじゃないか?」


仮にも生徒会長だ。


「そ、そうですね…すっかり忘れてました…」


…忘れてたのか。


「じゃあ俺たちは戻るか」


「え〜もっとサボろうよ〜」


「お茶、ご馳走様」


何か言っている青龍を引きずりながら会長室を出る。

ドアに手をかけようとした瞬間、ドアがひとりでに開いた。


「「…あ」」


「……………」


そこには副会長の桐生が居た。


「二人揃って、あ、とは失礼ね」


「いや、いきなりびっくりしたからな…」


「ユウ、失礼だよ」


…青龍…お前もだ。


「で、二人はどうして此処に居るのかしら?」


すっ、と目を細めて尋ねてくる。


「楠木からお茶をご馳走になってた」


「うん、美味しかったよ」


「……………」


…あ、ちょっと眉間にシワよった。


「月代さんたちが資料を運ぶのを手伝ってくれたの…そのお礼に。サヤちゃんも飲むよね?」


「え、ええ」


すかさず楠木がフォローを入れると、またテキパキとお茶を入れ始めた。


「…あなたたちもサボってないで準備しなさい」


すっかりペースを崩された様子の桐生。


「ああ」


「うん、じゃあまたね〜」


足早に生徒会室を去る俺と青龍。

なんとなく窮地を脱した気分だ。


「ねぇ」


「なんだ」


「副会長に準備するって言ったけど、私たちって何もすることないよね?」


「………何も言うな」


再び散歩を続ける俺と青龍だった。


更新が滞って申し訳ないっ!!……………はい、テンションで誤魔化せるものじゃありませんね(´;ω;`)次こそは更新速度を上げ…たいと思いますm(__)m

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