第24話 天界1
「…………朝か」
小鳥の囀りで目を覚ます。…ってここ何処だ?
「そうか」
青龍んちに来てたんだったな。
寝間着から動きやすい服装に着替える。
「月代く〜ん、起きてる〜?」
「あ、はい」
どうやら紗夕さんが起こしに来てくれたようだ。
「朝ご飯出来てるから〜」
「わかりました。すぐ行きます」
客室に備え付けてある洗面所で顔を洗い、食堂に向かう。
「なんつーか…すげー家だよなここって」
普通は客室があっても洗面所は付いてないだろ。そもそも客室があるってことがすごい。
ま、客室ぐらいならうちにもあるんだけどな。
「おはようございます」
「おはよ〜」
「おはよう」
食堂に入ると閠龍さんと紗夕さんが座っていた。
「あれ?青龍はまだ来てないんですか?」
食堂に青龍の姿がないことに気付く。
「そうなの〜あの子ったらなかなか起きて来ないの〜」
「…大変ですね」
寝起きが悪いのか、アイツ。
「月代くんも大変でしょ〜?」
「いや、いつもはすぐ起きて来ますけど…」
「へぇ〜不思議ね〜」
不思議、か?というか不思議で済ましていいのか?
…まぁ紗夕さんなら何でも軽く受け流しそうだけど。
「…少年はどうやって起こしてたんだい?」
閠龍さんは気になるようだ。
「えっとですね…」
「まさか…おはようのキスなんてしてないだろうね!?」
「してねぇよ!」
親バカというかバカ親だな。
「青龍は朝食を作ってたら勝手に起きて来るんですよ」
「……本当かい?」
「本当です!」
つーか、ここで嘘ついても意味ないだろ。
「ふふふ、仲がいいのね〜二人とも」
「そう見えますか?」
「そう見えるかい?」
見事にかぶった。ちょっとショックだ。
「ほらね〜息もぴったりじゃな〜い」
「…ま、それは置いといて。試しに匂いを送ってみたらどうです?」
無理矢理話を逸らす。
「それは青龍ちゃんの部屋に?」
「そうです」
「ふふふ、釣りみたいで面白いわね〜」
話を逸らすことが出来たのはいいが…紗夕さんがめちゃくちゃ上機嫌なのが不安だ。
紗夕さんって結構イタズラ好きだったりするのか?
「それじゃあ早速釣ってみましょ〜」
「表現は少しあれだが、やってみる価値はありそうだね」
そんなことに価値を見いだしてどうするんだ。
「え〜っと、これがいいわね〜」
紗夕さんは味噌汁をパタパタと団扇で扇ぐ。
で、待つこと2、3分。
「来ないね」
「…………来ないっすね」
「もうお腹減ったからご飯食べましょ〜」
もう飽きたのか紗夕さんは朝食を食べ始めている。
「私たちも食べよう」
「そうですね」
随分諦めが早い気がするが、俺も食べ始める。
朝食はやはりと言うべきか、和食だった。その朝食を美味しく頂いていると、
「おはよー」
青龍が起きて来た。
「あら、月代くんの言った通りね〜」
青龍の朝食を用意しながら紗夕さんが言う。
「うーまだ眠いよ」
「はいはい、さっさと朝ご飯食べましょうね〜」
青龍はもぐもぐと朝食を食べ始める。
全員が朝食を食べ終わる。閠龍さんは道場に行くと言って居なくなってしまった。
「俺は…」
紗夕さんがテキパキと食器を片付け始めている。
「あ、手伝います」
「え〜それは悪いわよ〜。月代くん、お客様ですもの〜」
「いえ、気にしないで下さい」
「そ〜お?じゃあお願いね〜」
「ユウは真面目だね〜」
「これが普通だ」
お前も手伝えよ、と青龍に言いたい。
「そういえば紗夕さん、使用人がいるのに何で料理とか上手いんですか?片付けも手慣れてますし」
だいたいそういうのは使用人の仕事じゃないのか?
「ん〜知りたい〜?」
「ええ、まぁ」
「それはね〜私がこういうの好きだから〜」
それなら妙に手際が良いのも頷ける。
食器を洗い終わって紗夕さんと居間に行く。
「あ、お疲れ〜」
「お疲れ様、二人とも」
居間では、青龍と閠龍さんが寛いでいた。
「道場の準備は終わったんですか?」
「ああ、終わったよ」
じゃあ、いつでもOKってわけか。
「父上とユウ、何かするの?」
「ん、まぁな。聞いてないのか?」
「うん」
閠龍さんをちらりと見る。
「少年は今から私と模擬戦をやってもらう」
「あら、そうなの〜?」
青龍も紗夕さんも話を聞かされていなかったらしい。
「うん、そういうことで今から模擬戦をやってくるよ」
「は?今からですか?」
今からなんて聞いてないぞ。
「あ、私も見たいよ」
「じゃあ〜お母さんも見る〜」
おいおい、マジかよ。
「観客が居るけどいいかい?」
「………いいですよ」
「それでは、行こう」
観客も揃ったところで道場に移動する。
「ところで少年の武器は何だい?」
「俺の武器はこれです」
俺はそう言ってポケットからナイフを取り出す。
このナイフは、夢から覚めたら何故か手に持っていた、というなんか怪しげなものだ。
「武器はそれでいいのかい?」
「はい」
まぁ大丈夫だろ。そもそも武器を使うのに慣れてないし。
「それじゃあ、青龍ちゃん。開始の合図よろしく」
パチンとナイフの刃を出す。閠龍さんの手には木刀が握られている。
「……………」
……いつ出した?
「任せて!…………よーい、始めっ」
青龍の掛け声で俺と閠龍さんの模擬戦が始まった。