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第21話 帰省〜月代家〜



「ついに来てしまった……」


大したことはないが、少し大袈裟に言ってみる。

今、俺が居るのは月代家、つまり実家だ。学校からアパートに対して真逆に行った位置にある。

門を通り、無駄に広い庭を通って玄関まで歩く。


「これがユウの家…なんかすごいね」


俺の家は青龍の言う通りすごい。何がすごいかって言うと、ごちゃごちゃし過ぎですごい。

まず、時代錯誤という名に相応しい洋館。そして、玄関まで歩かなくてはならない広い庭にはオブジェらしき物が置いてある。


「うん、我が実家ながらとんでもないな」


玄関(というか家の入口)まで歩く、という通常ではありえない実家の大きさを再認識しながら洋館のチャイムを鳴らす。


「は〜い」


中からは女性の声。そしてパタパタと走ってくる音が聞こえ、扉が開く。


「ただいま、母さん」


「あら、悠ちゃん。お帰りなさい」


出迎えたのは、俺の母、月代葵あおいである。


「悠ちゃん、言うな」


「いいじゃない、悠ちゃんは悠ちゃんなんだし」


俺が中学、高校と進学しても母さんは俺のことを悠ちゃん、と呼ぶ。いい加減止めてほしいのだが言うことを聞いてくれない。


「で、こちらの方は?パパが言ってた悠ちゃんの彼女さん?」


ずいぶん嬉そうに聞いてくる。


「初めまして、青龍です。今、ユウの所に居候させてもらってます」


「あらあら、ご丁寧に。初めまして、悠ちゃんの母の葵です」


自己紹介をしている二人を放っといて、リビングへ向かう。


「うーん、一年ぶりだとさすがに懐かしいな」


変わってないな、と思いながらリビングの扉を開ける。

そこには、ソファーに座っている親父がいる。


「ただいま」


「よう、帰ったか」


なんとも適当な挨拶である。


「悠ちゃん、レディを置いていくなんてダメよ」


と、青龍と母さんが後ろからやってきた。


「いや、母さんが話すと長いんじゃないかと思ってね」


「あぁ!また母さんって呼んでる!ママって呼んでって言ってるじゃない」


「お断りします」


ママって…小学生でも呼ばないぞ。


「うぅ、小さい頃はママ、ママって言ってくれてたのに」


「勝手に事実を捏造するなっ!」


よよよ、と泣き真似をする母さん。相変わらず子離れ出来ていない。


「初めまして、青龍です」


「どうも、わかってると思うが悠の父だ。よろしく」


俺と母さんが不毛な争いをしている間に、さっさと挨拶を済ませている青龍と親父。


「ねぇねぇ、悠ちゃん。青龍ちゃんってとっても良い娘ね」


コソコソと母さんが喋り掛けてくる。


「そう、だな…いい奴かな」


「それで、どこで引っ掛けたの?」


引っ掛けたって…なんか聞こえが悪いな。


「……………俺がナンパするように見える?」


「うーん?見えないけど…悠ちゃんはカッコいいから女の子なんて一発で落ちると思うわ」


「……ま、母さんがどう思おうが勝手だけど、青龍はナンパとかじゃないぞ」


「じゃあ、どうやって出会ったの?」


「家の前に落ちてたから拾った」


簡潔に正確な説明をする。


「…………………冗談よね?」


「本当だって」


どうやら信じてくれないらしい。


「まぁ、いいわ。そのことは置いといて」


「置いとくのかよ!」


「お茶取ってくるわ」


パタパタとキッチンに行く母さん。

相変わらずよく分からん人だ。


「そういえば…親父、ちょっといいか?」


「なんだ?」


青龍と話していた親父に気になっていたことを聞く。


「あのさ、帰って来るの卒業してからでもよかったんじゃないか?」


「いや、駄目だ。お前が帰って来なかったら、母さんがお前のアパートに行くと言うんだぞ」


む、なんか嫌だな、それ。


「そうか…じゃ、気になってたことも分かったし帰るよ」


いつでも帰って来れるし、長居は無用だな。


「え、ユウもう帰るの?」


「そのつもりだけど」


「まぁもう少しゆっくりしていけ」


珍しく親父が親らしいことを言う。

久しぶりに息子に会って、もっと話したいのだろう。


「親父がそう言うならまだ居るけど」


「そうか、俺は別として、母さんが喜ぶだろう」


そうか、母さんが…


「って親父は喜ばないのかよっ!」


「当たり前だ!ボケッ!葵と2人っきりのラブラブタイムを邪魔されたくないんじゃ!」


…なんつー親だ。つーかさすがの青龍も唖然としてるな。

俺も開いた口が塞がらない、というわけではないが、開いた口からはため息しか出てこない。

それにラブラブタイムって何だ?意味わかんねぇ。


「どうしたの?二人とも騒がしい」


そんなカオスな空気の中、母さん登場。


「青龍ちゃんもびっくりしてるじゃない」


「あ、私のことはお気になさらず…」


青龍は苦笑い。

そりゃそうだよな。


「悠は帰るらしい。じゃあな、さっさと帰れ」


「ちょっ、待て!それは親としてどうかと思うぞ」


「駄目だ、待ったなし」


ったく、ガキかよ。


「パ〜パ〜?悠ちゃんがせっかく来たのになんてこと言うの?」


母さんがドスのきいた声で親父を咎める。


「な、何のことだ?…ゆ、悠、久しぶりだからゆっくりしていけよ」


「弱っ!」


恐るべきスピードの手のひら返しだ。


「悠ちゃん、ゆっくりしていってね」


「ああ」


今日は泊まることになりそうだ。


「ユウの母さんってすごいね」


「ん?そうか?…でも女性は強いよな」


「ゆ〜う〜ちゃん、何か言った?」


「ナンデモナイデス」


月代家は女性が強い家系だということが判明した日だった。

今回はちと短めです(^^;)更新頻度と執筆速度を上げたいけど上がらない(T_T)

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