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翼の記憶  作者: 逢生ありす
第一章 悠久の王・キュリオ
5/109

アオイ



「・・・お父様?」





私室で書物に目を通しているキュリオの元にアオイの声が届いた。





重い扉はまだアオイには開けるのは難しいか?と一人で笑いながらドアをあけてやる。艶やかな茶色の髪をなびかせアオイが抱きついてきた。





「困った子だね。まだ一人で眠れない?」





優しく頭をなでてやるとアオイは不満げな顔を向けてきた。





「最近、夜じゃなきゃお父様と一緒にいられないんですもの・・・ちょっと気になる事もありましたし・・・」





キュリオはアオイを部屋の中へ入るように手をひいて、ぐっすり眠れるようハーブティを淹れてやる。





「一緒にいてやれなくてすまない・・・して、気になる事とは?」





カップを受け取ったアオイはキュリオのベッドに腰掛け俯いている。なかなか話そうとしないアオイの隣に座るキュリオは顔を覗きこんだ。




「アオイ?」




おずおずと何かを取り出し、それが手紙であることがわかった。(これを読めばわかるのか)とキュリオはそれを受け取った。



キュリオは目を疑った。



それは・・・

五大国の1つ[吸血鬼]の国の王ティーダからのものだったからだ。手紙の内容はアオイと直接逢いたいという・・・まるで恋文のような内容だ。




「・・・こんなものいつの間に?」




「3日前です、お父様・・・」





不安げに見つめるアオイを抱きしめ、大丈夫だお前は何の心配をしなくてもいい。そう言いベッドに寝かせた。アオイは優しいキュリオの手とキュリオの匂いのするベッドに包まれこれ以上ない安堵感に目を閉じた。




穏やかな寝息をたてているアオイの額にキュリオは口付けを落とした。そしてティーダからの手紙を怒りにも似た感情で握り潰した。






「・・・やはり貴様だったか・・・」






「ん・・・」




月の光で目覚めたアオイはゆっくり目を開けた。横を向くと美しい銀髪、長い睫毛のキュリオが自分に寄り添うように眠っている。その寝顔があまりにも綺麗でアオイはしばらく眺めていた。(お父様って本当に綺麗・・・)

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