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夭下一ぶどう会ダイジェスト 1

読者様おいてきぼり?

でも書いちゃったものは仕方ない……

■第1試合 アイリ VS ルーザー ■


「まさか、ルーザーと本気で剣を交えることになろうとはな……」

 アイリが呟く。そのアイリは本気モード。クマのベアリーくんはBブロックの出場者でもあるため、お留守番。

 普段から切っても切り離せないアイリとベアリーとの友情。絆。それをルールとはいえ、分離させられたのだ。

 アイリは憤っている。逆恨みだ。


「ちょっ、本気って! マジで! 俺斬られるの?」


「お前も、男だろうっ! 戦わずして負けを認める気か? そうじゃないだろう?

 男なら己の力をすべて出し切って、それで敵わなかったときにだけ、『まいった』をする。

 それが、本来であるべきだ。

 安心しろ、峰打ちにしておいてやる! では行くぞ!」

 ・

 ・

 ・

「そんなわけで、アイリさんの力説を受けて、ルーザー様が『死神っぽい……の斧』を持ってアイリさんに切りかかったのですが、あっけなくあしらわれて、首筋に剣を突き付けられたルーザー様が降参してアイリさんの勝利となりました」

 とクルジェは(ダイジェスト版として)説明してくれたが、


「いや、そんな説明いらない。俺当事者だから……」


「ちなみにですが、ベアリーさんも出場選手登録がされている以上アイリさんと同じ闘技場にあがることができませんでした。

 なので、アイリさんはベアリーさん無しで戦ったのですが、それによってアイリさんの秘められた力が解放されるとか、逆に、ベアリーさんが居ないと本来の力が出ないとかそういう設定は今のところ無かったようです」

 はい、解説ありがとう。




■第2試合 キラータロウ VS グランド・飛場 ■


「知ってのとおり、キラータロウさんは魔戦十二鬼将軍の一人です。ルーザー様の魔王復活の野望を阻止する立場のスライムです。

 対戦相手の飛場さんは、名前の響きと異名から、故・ジャ○アント場○さんを想像される方も多いようですが、あらゆる武術を極めたうえで、プロレスラーという道を選択した、二十歳の格闘家さんです。

 朴念仁というキャラからか、終始無言であったキラータロウさんとは異なり、いろいろ叫びながら戦っていました。


 先手を取ったのはキラータロウさんです。律儀に相手の流儀に合わせて、間合いを詰めてからのタックルに行きました。

 ええ、この試合、総合格闘技ルールが適用されているとしてもおかしくありません。

 もちろん3カウントのフォールはありません。プロレスではないですから。

 ダウンしての10カウント。ギブアップが勝負を決めます。そのはずです。


 さて、タックルを敢行したキラータロウさん。

 しかし、飛場さんはそのタックルをいとも簡単に切りました。ちなみにタックルを切るとは、格闘用語でタックルを仕掛けてくる相手に対して、

 1.足を取らせない

 2.頭を触れさせない

 という二点に重点を置いて相手のタックルを無効化させるディフェンスの動作です。

 飛場さんの場合は、まずステップバックして、キラータロウとの距離を取りました。これにより、キラータロウさんは飛場さんをテイクダウン(相手をグラウンドに倒すこと)ができません。

 タックルを切られたキラータロウは再度タックルに行きます。片足タックルや、両足タックル、打撃でフェイントを入れてのタックルなど、何故かキラータロウさんのタックルは多彩です。

 しかし飛場さんには通じません。


『これが、本当のタックルだ!』

 と叫んだ飛場さんは、キラータロウに対してタックルを仕掛けます。

 これは見事に決まり、キラータロウをテイクダウンさせます。

 しかし、飛場さんはそのまま寝技には行きませんでした。飛場さんはすぐに立ち上がり、キラータロウとの間合いを取ると、

『観客は寝技なんて望んじゃいない! 立って勝負だ!』

 と相手を打撃での攻防に誘います。キラータロウもそれに応じました。ちなみに観客はこの後の試合に夢中で飛場さんとキラータロウさんの試合に入れ込んでいる人は少数です。

 それでも、プロレスラーである飛場さんは、観客を意識したショーマンシップを忘れませんでした。


 どちらかというと、キラータロウの本来の強みは立ち技で、驚異のタフネスとその重いパンチにあるようでした。

『へいっへいっ!』

 と、小刻みにローキック、そしてボディへのミドルキックなどと言った足技、それに顔面への掌底――この大会では、グローブなしでの顔面への拳の攻撃は禁止されていまして、キラータロウはオープンフィンガーグローブを着用してきましたが、飛場さんは素手での参加なので、パンチは打てないのです――でダメージを蓄積していく飛場さんでしたが、抜群の耐久力を誇るキラータロウには有効打となりません。

『さすがは、噂に高い十二鬼将の一人だけはある! だが、俺の栄光の道筋はこんなところで終わらない!』

 満を持してフライングニールキックを放つ、飛場さんでしたが、それも一瞬キラータロウをぐらつかせただけでした。

『打撃が効かない!? それならばっ!』

 と飛場さんは、攻撃手段を打撃から、関節技に切り替えます。

 俗にいう立ち関節という奴で、立ったまま相手の関節を取り、粉砕します。アームロックや、膝挫ひざひしぎといった技を立ったままのキラータロウに仕掛けて、関節を破壊していきます。

『折れる時に折るのが俺の流儀!』

 などと叫ぶその主張は、まさにそのとおりで、技を仕掛けた瞬間には折っている、飛場さんのジョイント破壊力は抜群です。さすがジョイントキラーの異名を持つ誰かと戦って、関節技で勝利を収めただけのことはあります。

 キラータロウは両肘、両肩、両ひざ、両足首と重要な関節をほとんど折られて満身創痍です。

 しかし、

『その決意! その姿勢! そしてその態度! 立ち技最強を目指す格闘家の理想像だ! しかし! だからと言って俺も負けるわけにはいかない!』

 と、飛場さんが言うように、キラータロウは決して倒れることはありません。彼が『立ち技最強』を目指しているのかどうかはわかりませんが……。

 だからといって、攻め手を投げ技や、絞め技に移行するには、飛場さんのプライドは高すぎました。

『しかと見届けた! お前のその格闘者としてのプライド! 俺が締めや投げ技を使えばお前は簡単に倒せただろう。

 しかし、俺は言った。立ち技で勝負しようと。ならば、立ったままのお前を倒しきることができなかったその時点で俺の負……』

 と、飛場さんが自ら敗北を認めようとしたその時です。

『お待ちなさい!』

 と声を張り上げたのはリングサイドに居たカヲルコさんです。彼女は自身も出場者でありながら、キラータロウさんのセコンドについていました。

 カヲルコさんは言います。

『たしかに、立ち技で戦うにつけて、キラータロウは飛場のマインドを打ち砕いたのかも知れない。

 だけど、キラータロウは勝者にはなりえない。

 なぜなら、あらゆる重要な関節を破壊されては、とても次の試合には出られないから。

 それに、結局飛場に大きなダメージを与えることができなかった。

 この試合の勝者は飛場よ。それでいいでしょう? ねえタロウ?』

 その言葉にコックリと頷いた、キラータロウ。

 その瞬間に試合の勝者が決まりました」

 とクルジェが長い長い解説をしてくれたが、


「うん、それ、その試合見てたから知ってる」


 異世界での出来事なんだよな? これ? そもそも東洋ってどこを指すんだ?


■第3試合 ミリア VS サラサ ■


「第三試合は、熟女対決。いえ、魅惑の魔女対決といったところでしょう。

 清き魔女ミリアさん。そして魔性の女サラサさん。

 試合の勝ち負けはともかく、お二人の美貌に注目が集まり、老人、中年男性、それから熟女好きの若い男性に人気の対戦カードとなりました。

 観客席には徹夜組を含めて、多くのファンが集っています。

 本来は、七節根やヌンチャク、トンファー、十手等という使いこなすのが難しいあらゆる武器を自在に操るというミリアさんと、実はアイリさんをしのぐという剣術の達人であるサラサさんの武器を使っての対決が予定されていたのですが、観覧者からの熱い要望に応えて、ひっかき噛みつきなんでもござれという素手によるキャットファイト、そして泥レス形式で試合が始まりました。

 泥まみれになりながら、くんずほぐれつを繰り返す二人の熟年女性の姿はファンならずとも興奮は必至の展開。

 結局、ご主人を一途に思い、夫婦間の信頼も厚いミリアさんが勝ちました。

 顔にできたひっかき傷にショックを受けたサラサさんが、棄権を申し出たためです。

 爪で出来たひっかき傷なんて回復魔法で治りますけど、あまりに数が多いとしばらくは跡が残ることがあります。

 サラサさんは、やはり現役で恋愛を楽しんでいるお方ですので、顔の傷が付くなんていうのはできれば避けたいと思ったのでしょう」


「わりありあっさりとした試合の説明だね。まあ見てたから知ってるけど」


「ええ、ミリアさんはともかく、サラサさんの試合中の発言や、二人の熱戦は青少年の育成によろしくないとの観点から、かなり省略させていただきました」


 それが良いと思う。最後は二人ともほとんど半裸状態で戦ってたし……。熟女ランジェリーファイトなんて詳細をお伝えしてはいけない。刺激が強すぎて。


■第4試合 トーマ VS クルジェ ■


「トーマさんは、魔法、そして剣技、体術とバランスのとれたファイターです。

 ボクなんかが敵うわけありません。

 そこで、ボクは素直に負けを認めて、試合開始前に決着が付きました。ここまでがAブロックの一回戦の模様です。

 次回は、Bブロックの一回戦の模様を、同じくダイジェストでお送りします!」


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