2.桜が散った日(2011版)
わたしはもう長いこと入院している。
勉強も病院の中の学校に行けるときだけ行っている。
薬を打たれて髪の毛が抜ける。だるくて吐き気がする。
だけど病名は分からない。パパもママも教えてくれないからだ。ただ、悪いんだろうということは分かる。同じ症状の子が死んじゃってるから。薬品の匂いの病室が、無機質な部屋へと変わる。
ママが、嬉しそうに病室に入ってきた。肩には桜の花びらがついている。まだ咲き始めなのに。
ここの病院は桜の木に一面囲まれていて、楽しむことができる。
「ママ、どうしたの?」
「しぃちゃんの手術が受けられるかもしれないの!」
「ホント!?」
「ええ。ほんと。今まで順番待ちだったけど、我慢したかいがあったわね」
確かにこの病気は手術が成功すれば、治る確率が高いみたい。だけど、それすら半分の確率。みんな運を天に任せる。
「頑張ろうよ、しぃちゃん。絶対じゃないかもしれないけど受けてみよう!」
その言葉には希望が溢れていて、わたしはぼーと外の桜の木を見ながら頷いた。
手術当日、不安と戦いながらストレッチャーに乗せられてオペ室へと向かう。ママとパパに手を握られて。
ふと窓の外の桜を見たら満開だった。見事としか言いようがないほどに。
手術が終わったら、お花見したいな。病室からでも。
それぐらい綺麗な桜が、病院を囲っていた。
その日、窓の外の桜が散った。
【終】
※ 個人誌収録なし
2011年4月10日執筆
※ この作品は1990年に書いた同名の作品を基に2011年にリライトしたものです
(1995年発行の同名の作品(全集1に収録)も同じ)




