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高市総理の「台湾有事は日本の存立危機事態」発言について

作者: 相浦アキラ
掲載日:2025/11/24

 高市総理が「台湾有事は日本の存立危機事態になりうる」と明言したことで中国の反感を買い外交問題になっているようです。何もカードがない状態で無駄にヘイトだけ高めてしまった格好で、自説の整合性や世論受けを考えただけの無責任な発言にしか思えないのが正直な所です。まあ高市総理は勢いで突っ走ってしまうようなタイプに見えるのであまり驚きはしませんでしたが、それより気になったのは高市総理に「台湾有事は存立危機事態ではないと明言しろ」と主張している方々です。


 確かに高市総理が「台湾有事は存立危機事態ではない」と発言を撤回すれば水産物の輸入停止が無くなって短期的にはいいかもしれませんが、そうなると中国の武力行使へのハードルが下がってしまいかねません。アメリカからしても補給拠点として有用な日本が台湾有事の際に協力する可能性が高いからこそ台湾は守りやすいというのはあるでしょうが、日本が「台湾有事は関係ないので知りません」という態度をとっていれば腰が引けてしまうかもしれません。確かに高市発言は失言としか言いようがありませんが、今さら前言撤回するのはそれはそれでよくない結果をもたらす可能性が高いでしょう。


 まあ台湾がどうなろうが知ったこっちゃないので何が何でも戦争に巻き込まれたくないというなら、「台湾有事は関係ない」と明言して米軍を追い出して自衛隊も解体して中国寄りの態度を示しておき、攻め込んできたらすぐに白旗を上げて政権を明け渡すのがいいでしょう。しかし中国が常任理事国である以上、占領された後に国民が虐殺されようがどうなろうが拒否権を発動すれば国連は何もできませんし日本が台湾にそうしたように「日本有事は関係ない」と見捨てられて誰も助けてくれない可能性が高いでしょう。降伏すれば戦争にならないとも限らず無理やりアメリカとの戦争の矢面に立たされるということも考えられます。


 そもそも戦争に巻き込まれなければなんでもいいというのもどうなんでしょうか。戦争は確かに悲惨でしょうが、戦争以上の悲惨がないと考えているなら想像力が足りないと言わざるを得ません。町を壊され家族を殺され去勢され強姦され奴隷同然の扱いを受けて屈辱に天を呪うばかりの地獄のような日々の中で、あの時戦って死んでおいたほうがましだったと後悔することもあるかもしれません。かといって戦争というのは結局人が人を殺す地獄なわけで、戦争が正しいということも言えません。戦争を防ぐために今からでも「台湾有事は関係ない」と高市総理が明言しておけば日本は攻撃されずに済み救われる国民の命があるかもしれません。


 結局あんたは何が言いたいんだと突っ込まれてしまいそうですが、私が言いたいことは現実世界には絶対的な「正しさ」なんてないということです。あるとしたらせいぜい「ベターそうな行動」「あとから見たらベターだった行動」くらいなもんでしょう。例えば第二次世界大戦で日本がなかなか降伏しなかった件にしたって今から見れば天皇が処刑されないこともアメリカが日本人を虐殺しないことも分割統治されない事も内戦にならない事も分かっているので「日本はとっとと降伏しておけばよかった」なんて事後孔明できますが、当時の人からしたら無差別爆撃して原爆まで落として民間人虐殺してくる連中に無条件降伏したらどうなるかわかったもんじゃないので、おいそれと降伏するわけにもいかなかったことは理解できます。結局その時その時の不完全な情報を集めながらなんとかベターを探っていくしか我々にできることはないのでしょう。


 しかしTwitterなんかを見ていると本気で完全な「正しさ」があり、間違っている事の反対を行えば「正しさ」に到達できると思っているような極端な発言が立場にかかわらずしばしば見受けられます。もちろん「台湾有事は存立危機事態」と明言することは失敗だったでしょうが、だからいって「台湾有事は日本有事ではない」と明言することが「正しい」とは言えません。沖縄にばかり米軍基地を置いて負担を強いる事が「正しい」とは言えませんが、米軍を追い出して台湾を見捨てる事が「正しい」とも言えません。


 「正しさ」があると妄信している人たちの極端な政治談議はどうも一種の娯楽になってしまっているのかもしれません。自分の立ち位置を何らかの間違いや欺瞞や不条理と逆側に置く事で、「正しさ」の側に立って間違いを見下すことができ思う存分優越感に浸れるという事なんでしょうか。問題はアホやバカを「正しさ」で成敗するというゲームを楽しみたいがあまりに、自分の「正しさ」のほころびに繋がる情報は無視するか頭ごなしに否定し、逆に対立相手の間違いに繋がる情報や自分の「正しさ」に繋がる情報は不正確でも飛びついてしまうバイアスがかかってしまう恐れがあるという事です。


 これがネットの中だけの話ならまだいいのですが、現実の政治にまでこういった発想を持ち込んでしまっては大変なことになりかねません。高市総理も左翼の逆張りが正しいという極端な思考をこじらせるあまり、とにかく中国に厳しく台湾に優しい事を言っておけば正解だろうということで後先考えず勢い余って「台湾有事は日本有事」発言をしてしまったのではないか……と考えたら腑に落ちてしまう感じがします。


 まあわかりやすい「正しさ」を突き通して対立相手の逆張りをする政治家が受けてしまうのは何となくわかるのですが、そういう人は政治屋の素質があるだけで政治家としては落第でしょう。本当に政治家にとって大切なのは中立的な視点に立ち、行動の結果として考えられるリスクやメリットやデメリットを冷静に分析し、リスクをなるべく軽減できるようベターそうな決断していく事でしょう。そして有権者もそういう政治家を選べるようにならないといけないと思います。……まあとか何とか言っている私も「正しい」事を言っているわけではなく、ただ現時点でベターだと思えた感想を言っているだけなのですが。

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