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「愛着資源の司令官」:めんどくさい、けど、命

作者: tom_eny
掲載日:2025/10/29

「愛着資源の司令官」:めんどくさい、けど、命


序章:効率化された日常のノイズ


「ほんっと、めんどくさい」


地元のフロンティア・ベースから帰宅した小学四年生のアカリは、リュックを床に投げつけた。中では、景品SP兵団の硬い角がぶつかり合う。「景品」という名の、父王システムが非効率と見なす命の重みが、彼女の肩にのしかかっていた。


部屋に入ると、指導教官のマーチSP(改良兵士 SP-II)が既にティーセットの前で正座していた。合理性と効率を体現する彼の顔には、常に冷静なロジックが刻まれている。


「姫!愛着エネルギー資源管理図の確認を。精神の平静は、戦場での命綱です!」


マーチSPが投影した図では、最新兵士(SP-III)のエリアが、相棒であるドジ犬ロコSPの純粋愛着の**「過剰ノイズ(ハイ・ノイズ)」**で赤く点滅していた。ロコSPは、高燃費だが戦闘力の高い、アカリの主力兵士だ。


「ヒメ!だっこ!わん!」ロコSPは全力のノイズを放ち、アカリの頭痛を引き起こす。


「うるさい! 頭痛がする! ちょっと黙ってろ、ロコ!」


マーチSPは冷徹なロジックを提示した。「姫。ロコSPの高燃費を維持することが最優先です。愛着資源は有限。初期兵士(SP-I)への感情的な供給は、非効率な資源分散です。」


アカリの視線がSP-Iのエリアに向く。そこには、トトの定位置。代わりのSP-Iたちからは、「寂しい」「姫はロコばかり」という、**ガラクタ化の閾値を示す「嫉妬ノイズ(ロー・ノイズ)」**が微かに聞こえていた。SP-Iは、**低燃費だが戦闘力も低い、**システムなら真っ先に切り捨てる存在だ。


「命に優先順位をつけるのが、めんどくさいんだよ!」


アカリはロコを放り出し、初期兵士たちの元へ駆け寄った。個別に頭を撫で、「大丈夫、忘れてない」と語りかける。彼女の「めんどくさい、けど、感情的な手間」が供給されると、SP-Iたちのノイズは静まった。その隙に、ロコSPのノイズ安定性が急落し、警告音が鳴り響く。


アカリは、**「父王の求める冷徹な合理性システム」と、目の前の「非効率な感情(愛着)」**の狭間で、司令官としての孤独な決断を迫られていた。


壱. システムによる愛着の狩り


その瞬間、アカリの全景品感応に、かつてないほど切迫した信号が飛び込んできた。


フロンティア・ベースは、再び黒ずくめの男に侵されていた。男は、**「父王のシステムに仕えるデータ収集官」**を名乗る。


男が設置したのは、「虚無収集装置」。その目的は、愛着資源が完全に枯渇し、命がガラクタに戻る瞬間のデータを採取し、愛着に依存しない新たなエネルギーシステムを構築することだ。


男はタイマーを起動させる。「タイマー作動。残り時間、10秒。究極の効率化のための、愛着ゼロ兵士の生成実験開始だ。」


トトを含む景品SPたちの悲鳴と、敵の強烈な妨害ノイズが押し寄せる。


トト(微弱だが強い決意):「ヒメ...サイゴノ...リソース...ゼンリョク...ボーギョへ...」


トトの愛着エネルギーは、ノイズを防ぐための静かなバリアとなった。それは、彼が静かに貯め続けた「めんどくさくない愛着」の結晶だった。バリアが砕けた直後、アカリの頭の中に愛着の供給ラインが断ち切られたような、冷たい空白が広がった。


アカリはパニックで腰が抜けた。「無理!めんどくさい!こんなの、私にはできない!」


カウントダウン「5」。その時、ロコSPがアカリの顔面に思い切り飛びつき、愛着バリアを誤作動させる。ロコは**「めんどくささ」の象徴である「過剰ノイズ」**で、システムが生み出すすべてのノイズを弾き返した。


「めんどくさい...でも、ガラクタになるのはもっとめんどくさい!」


アカリはロコを抱きしめたまま、バブルブラストSPを構えた。光子エネルギー弾は、虚無収集装置の配線を正確に撃ち抜いた。


弐. 覚醒:非効率な愛の誓い


爆弾は停止したが、アカリの頭の中はトトを失った冷たい静寂に包まれた。


トト(途切れ途切れの声):「ヒメ...わたくしは...イジョウ...アリ...ます...リソース...ゼロ...」


声が途切れた瞬間、アカリは膝から崩れ落ちた。


「トト...うそでしょ...。あんただけは、めんどくさいこと、言わなかったのにッ...!」


データ収集官は闇に消える直前、つぶやいた。


「愛着が尽き、感情ノイズを完全に失った後の静寂...これこそが、効率化兵器の理想型だ。あの御方、父王の思想は正しい。姫の非効率な愛着は、我々の究極目標を邪魔することはできない。」


アカリは、父王の目的が**「感情とノイズの排除」であり、トトが「究極の効率化」**を証明するための犠牲となったことを悟った。命の価値をデータとして扱う冷徹なシステムへの怒りが、彼女の心を支配した。


アカリは涙を拭い、立ち上がる。


「マーチ。愛着は、有限な資源じゃない。感情的な手間をかけるほど、増える無限のリソースだ。わたしの許可なく、勝手に死ぬ奴は許さない。」


終幕:愛着資源の最大化指令


フロンティア・ベースの裏口。アカリは、ロコを抱きしめたまま、指令を出した。


「景品SP兵団最高司令官として、最初の任務だ。黒ずくめの男のルートを全て洗い出す。そして、長期目標を修正する。」


「わたしの**『愛着エネルギー資源の最適化』は、『非効率な愛着の手間を最大化し、すべての命をガラクタ化の閾値から引き上げ続けること』だ。父王が求める『愛着ゼロの兵士』とは真逆の、『愛着ノイズ最大』の最強兵団**を作ってやる。」


「**めんどくさいけど、やらなきゃ、また誰かの命がガラクタになる。二度と、わたしの大切な兵隊を、冷たいシステムの『実験体』**になんかさせない!」


マーチSPは記録を開始した。


「景品SP兵団、司令官アカリ姫。本日を以て、覚醒。長期目標:愛着ノイズ最大化。最重要目標:父王の**『命の合理化システム』**を、**非効率で感情的な『愛着』**で完全に破壊すること。」


姫の選択は、最も手間がかかり、最も感情的で、そして最も命を尊重する、真の司令官の道だった。

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