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hello new world

俺もアラブの王族に生まれたかった、、、

さて私、いや僕は転生した。奇しくも同じバハムート家でアクラムの名を授かった。どうやら王族のようでしかもかなり裕福らしい。父がアラブ首長国連邦という国の王族で母は日本という東の島国出身らしい。

転生して初めに驚いたのはどうやらこの世界には知的生命体が人族、、、こちらでいう人類しかいないらしい。

肌の色は今世でも魔族のそれに近いが一応同じ人類らしい。

さて、やはり1番の楽しみは食事だ。最近ようやく離乳食を離れ、毎日の食事が楽しみで仕方がない。こちらの世界では前世よりも数段は技術が進歩しており、例えばトマトひとつとっても甘いのから酸っぱいのまでたくさんの種類がある。そんな世界で一般家庭よりも格段に金が使われているであろう食事は素材も調理方法も新鮮で実に楽しい。

そんなある日いつものように食事を楽しんでいると父上と母上が何やら興味深い話をしていた。


「カエデ、もうすぐ新年だが今年はアクラムも大きくなったし日本に帰ってみないか?」

「そうね、この子にもおじいちゃんやおばあちゃんと会わせたいし、一度帰ろうかしら」

「日本、、、母様の出身国だよね。そういえば季節がはっきりしていて美しい国とは聞いていたけどご飯は美味しいの?」

「んふふ、この子は食べることが好きね」

「そうだね」


母様の出身国、日本。たまに母様が食べている『米』という穀物が主食のはずだ。あれはなかなか美味しかったがそれでも流石にこの豪勢な食事は期待できないかもしれない。


「そうだね、、、日本は世界でもトップレベルに食文化が発達した国だろう。例えばフランスは食に美を求め、フレンチはまさに美味の象徴となったけど、食に味を求め、どんな文化も広く受け入れ応用していったのが日本かな。しかも日本食はフレンチに引けを取らないほど美しいんだ」

「そうね久しぶりに美味しいお刺身も食べたいし、みんなで鍋なんかも突いて、、、今から楽しみだわ」


私は愕然とした。思わず一人称が昔に戻ってしまうくらいには愕然とした。フランスという美食の国があることは知っていた。いつか私もいってみたいとは思ったが父上がフランスから有名なシェフを連れてきてコースを作ってもらったから食べたことはある。とても美味しかった。しかし!まさかあれが『見た目』を追求した料理であり、味を極限まで追求した国が他にあるというのか!?しかし日本料理、、、確か一度母様が食べていてそれを少しもらったがあの赤くてただただ酸っぱい何かだった。あれが本当に味を追求した国の食べ物だろうか?わからない。あれ一つで評価するのはあまりにもナンセンスであることは承知しているが、それでも私の知識の中にある日本食は『米』と『赤くて酸っぱい何か』である以上他の味が全く思い浮かばない。


「母様、日本にはどのような料理があるのですか?」

「そうね、、、地域にもよるけれど首都の東京なんかだと世界中の食べ物が大体は揃っているんじゃないかしら?」

「ああ、私も何度か行ったが本当にどんな国の料理もあったな。本場の味から、日本人用にアレンジしたものなど、むしろ余程こだわってどこどこの店の何と言わないのであれば本当になんでもあるね」


な、なんだその楽園のような国は、、、私の国は『石油』という特産物のおかげで世界でもトップレベルに潤った国だ。そのおかげもあって世界中の食べ物がある程度は揃っている。しかし、そんな国の王族たる父上が『なんでもある』と評したのだ。なんという恐ろしいことだ。もしかすると私は今世でも人生の半分以上を『無知』故に無駄にしようとしていたのではあるまいか、、、これは今すぐにでも日本に赴かなければ。


「でも、向こうでは日本語が喋れないと何かと不便なのよね、、、」

「ああ、私も苦労したものだ。一時期日本が気に入って長期休暇の時に滞在していたのだが英語がほとんど通じない。日本語以外の言語だと道を聞くのも一苦労で必死に日本語を勉強したがとても難しくてね、、、いくつかの単語を組み合わせて意思を伝えるのがやっとだった、、、」

「アクラムはまだ子供だし喋れなくても大丈夫とは思うけど、おじいちゃんたちと話せないのはかわいそうね」

「問題ありません母様!日本に行くまでに日本語を話せるようにします!」


母様によると日本語が喋れないと意思疎通ができない国らしい。これでは美味しい店を現地で聞こうにも聞けない可能性が高い。しかし!これでも元魔王、魔族語、人族語、アラビア語、英語、フランス語はすぐにマスターした。もう一つ言語を習得するのは造作もないことである。


、、、と思っていた。実際発音は難しいが単語は結構な数覚えた。文法も基本的なことは覚えた。がしかし!Utubeで日本人の動画を見てみたが教わった文法とはかけ離れた意味のわからない文だし、辞書を引いても載っていない単語のオンパレード。訳がわからない。私はちゃんと日本語を学んだはずなのに何ひとつ理解できない。


「母様、日本語を学んでみたのですが全くわかりません。単語も辞書を引いても全くわからないものばかりです。なぜですか?」

「いい?日本語はね常に新しい単語が生まれ続けている言語なの。そして全ては言わないで相手が自分の言いたいことを察して会話をするって特殊な文化なの。だから言語だけを学んでも日常生活ではあまり役に立たない。相手の文化や地域を理解して会話をしなくては行けないのよ」


私は絶望した。なんだその言語は、、、言語なのに意思疎通が読心術の類だというのか、、、それをあたかも言語で会話しているように話す言語、、、だめだ頭が混乱している。

ほんとに同じ人類なのか?実は別の種族で人類に擬態しているのでは、、、いや、母様も日本人。仮に人類でないのなら息子である私にその特性が受け継がれていないのはおかしい。言語としての知識だけでなく文化の知識が圧倒的に不足していると考えるべきか、、、


というわけで私は日本の文化について学んだ。あれから一年である。本当は新年が明けたタイミングで日本に行く予定だったが父様に大事な商談が入りあえなく断念した。また日本語についても難しい言語とはいえ、意思疎通を図るには問題がない程度には習得していたようで母様とも日本語で会話できるようになっていた。

そして今日からいよいよ初の日本である。今日は12月30日、日本ではお正月と言われる新年を祝う催しを母様の実家で行うらしく、それに参加する形だ。実は初めての海外旅行であるため少しばかり緊張しているが、それ以上にワクワクしているのも事実である。

さっさと日本に行きます

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