パソコンルーム
「パソコンルームで七宮君が変な動画を見てる」と学年の中で噂になっていた。七宮は授業が終わってからずっとパソコンの前に座りそこから動かない。話しかけようにも彼は耳からイヤホンをして周囲との環境を断ち切っていた。そしてパソコンの画面を見てはニヤニヤと笑っていた。やましい事はないのだろうけど、噂は立つ物である。特に女子生徒の動きは早かった。
ある時、吉川が彼に声をかけた。彼もまたパソコンルーム常習者だ。家にパソコンがないらしく、学校で楽しんでいた。吉川が七宮に「パソコンで何をしているのか?」と尋ねた。すると七宮は、「遊んでいるんだ。楽しい遊びをね。」とニヤッと言った。高校生らしい無邪さがあった。毎日夜遅くまで残ってまで何をやっているのか?七宮は「プログラミングを学んでる。独学で」と言って吉川を驚かせた。吉川は学年中で変な噂が立てられていることを伏せた。七宮のプライドを気にしたのだろう。「一体なんのプログラムを勉強してるんだ?」と質問すると、七宮は消える様な小さな声で「好きな人物を作るんだよ。プログラムでね」
「自分好みのキャラをプログラムで作るんだ。もちろんパソコンの中でしか存在出来ない。でもやがてスマホやタブレットに保存が出来る様になるだろう。そうなれば、自分の好きなパートナーをいつでも携帯できるようになる。それは世界中でどこでも可能だ。僕たちのような高校生なら好きなクラスメート、先輩や後輩、先生だってプログラムで作ればいい。そうなればハッピーだろ!」得意げに語る七宮は少年が夢を語る姿そのものだった。
吉川は「ハハア、なるほど。」という顔で聞いていた。