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第3話 穴があったら入りたいっ!!

 


(……なにかしら。少し……暖かい? 何かが私を包んでいる?)


 幼いころ母に抱かれて眠っていた時のように、なんだか安心する温度だ。


 ……もしかしたらお母さま?



 私はゆっくりと目を開く。



 まず目に入ったのは……何だろう、これ。

 そうだ。ちょうど服のボタンみたいな……ん? ボタン?


 なんだか嫌な予感がしてゆっくりと顔を上げていく。


「ん? 起きたのか」

「っき、きゃあああああああ!!!」


 公爵さまだった。

 彼が私を抱えて横になっていたのだ。


 あんまりにも驚いて思いっきり公爵さまの顔を手で押し返す。

 体に回った腕を必死にはがして距離を取った。



 だ、大丈夫だよね? 毒移ってないよね!?


 乱れて露出してしまっているところがないか、私は半泣きになりながら確かめた。



 ……よかった。手袋も服もインナーも乱れは見られない。


 少しほっとしたら、どくどくと心臓が動き出した。

 どっと冷や汗が出る。


「な、ななななななに、なにし、して」

「ははは、まあ落ち着け」

「落ち着いてられるわけないでしょう!? 大丈夫ですか!? 毒は? 痛いところは!?」


「大丈夫だ」

「ほんと? ほんとにほんと!?」

「ああ」

「よ、よかった~~」


 離れた所からじろじろと公爵さまの全身を見るが、特に何も変化はなさそうだ。

 安心すると体から力が抜けてへたりと座り込んでしまう。


「心配性だなフラリアは」


 公爵さまは可笑しそうにくすくすと笑っている。

 それを見たらふつふつと怒りが()いて来た。


(こっちはこんなに心配したというのに何笑ってるのよ!)


 さすがに頭にきた。

 本当に何を考えているのか。


「……公爵さま、流石に悪ふざけが過ぎるのでは?」

「そうか?」

「そうです。いくら毒女とはいえ女なのですよ? あらぬ誤解を招きかねません!」

「誤解って、俺たちは夫婦だろう。それにここは俺の屋敷の庭だ。(とが)められることなどないはずだが?」

「茶化さないでください」


 ぴしゃりと言い放つ。


 夫婦とはいえ契約の仮面夫婦だろうに。



「いいですか、一応夫婦とはいえ毒持ちは毒持ちなんです。触れば死ぬかもしれないんです! そこをあなたは分かっていない! ご自分の体を大切にしてくださいと言ったばかりじゃないですか!」


 眠りに落ちる前にもしたはずの会話。


 今までも何度もそう言う注意はしてきたけれど、公爵さまはそのたびに嬉しそうに微笑むだけ。



(とりあえず笑っておけばいいやと思っているようだけど、今回は許さないんだから!)



「そっちがその気なら私にだって考えがるんですからね!」


 精霊を見つけて協力を得られたらもう脱出してやるんだ。


 だってこのままここに居たら近い将来絶対にこの人は毒で死ぬ。

 それなら離れて5年後に死ぬ方がまだ長生きできるというものだ。



「あ、あのぉ。奥様……」

「何かしらイニス」


 傍にいたイニスがおずおずと手を上げる。


「旦那様は寝ている奥様を気遣って離れようとしたんですが……」

「?」


 言いにくそうに言葉に詰まるイニス。

 もごもごと口ごもっている。

 その間公爵さまはにやにやと笑ったままだった。


「そのですね。奥様が旦那様の服を掴んで離れなかったので……」

「!?」


 ちょっと待って? 私が、なんて?



 その話が本当なら、元凶は私なのに一人で勘違いして一人で慌てて怒っているということになる。


「な、何を言っているのかしら?」


 受け止めきれずに上擦(うわず)った声が出た。

 指で自分をさしてイニスを見れば、うんと頷きを返される。


「~っ!」


 顔が熱い。

 とんだ勘違い女じゃないか。


 挙句の果てに公爵さまに説教まで……。


(穴があったら入りたいっ!!)



 残念ながら穴はないがとにかくこの場を離れたかった。

 その衝動(しょうどう)のままに私は走り出した。


「あっ奥様!」

「いや、いい。俺がいく」


 そんな会話が聞こえた気がするが振り向くことなどできるはずもない。

 私はそのまま誰もいない方へと走っていった。



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