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第7話 お誘い


 

 ――あれから一週間、私は考え続けた。

 

 考えて考えて、一つの仮説を導きだした。

 ソレを今から確かめに行こうとしているのである。



 今、私は一人ノルヴィス様の部屋の前に来ていた。


 月明かりだけが廊下を照らす、使用人たちも寝静まった夜のことだった。


 ――コンコン



 深呼吸をして決意を固めノックすると、すぐにノルヴィス様が出てきた。


「どうしたんだこんな時間に? って、薄着じゃないか!風邪(かぜ)を引くだろう、これを」



 ノルヴィス様は私の姿を見るや否や自分の羽織りを肩にかけてくれる。

 でも全然寒くはなかった。


 どちらかというと、熱いほどだ。



 ……だって今から。


 頬にとは言わない。

 顔じゅうが火を吹いているかのように熱い。



 私はその熱に浮かされる様に何も言わずにノルヴィス様に寄りかかった。


 背中の奥では、ぱたんとドアが閉まる音がした。



 彼の胸に耳を当てれば少し早い心音が伝わってくる。


(……ああやっぱり愛おしいな)


 すりっと頬をこすりながらそう思う。

 

 ずっと自分のこの気持ちが分からなかった。

 でも気が付いてしまえば、名を付けてしまえば、もう止めることはできなかった。



「フ、フラリア?」


 その声にいつもの余裕な笑みはなく、明らかに狼狽(うろた)えている。


 それすらも可愛く思えて、私はそのまま背伸びをして彼の頬に口を寄せた。



 チュッと可愛らしい音がする。


「ど、どうしたんだ? 何かあったか?」


 顔を離せば彼の顔は真っ赤に染まっていた。

 それでも私の心配をしてくれているのか、こちらの様子を伺ってくれている。


「……」


 私はそれでも無言で彼の手をとってベッドへと誘う。


 とんと軽く押してあげればそのままどさりと倒れ込んだ。



 それで確信したノルヴィス様は慌てて声を上げる。


「まてまてまて! 本当にどうしたんだ!?」


「……ノルヴィス様は、私が嫌ですか?」



 彼に乗り上げたままそう問う。


「は? 嫌なわけがないが……いや、ちょっと落ち着けって!」


 ノルヴィス様は体を起こした。

 彼が力を入れたら私にはどうしようもない。


 そのまま両肩を掴まれた。


「フラリアちょっと前からおかしいだろう? それが関係しているのか?」


 彼が言うようにおじい様から言われた言葉をずっと考えていたから、少し挙動不審(きょどうふしん)気味ではあっただろう。


 でももう決心したのだ。



「……ずっと考えていたんです。おじい様から言われたことを」


「あいつに言われたこと?」


 コクリと頷く。


「真実の愛のキスだけでは呪いが解けないって……」


「……ああそのことか」


「キスじゃ真実の愛とは言えないのかなって思って……それなら、その先なら? って思って」


 ノルヴィス様は絶句(ぜっく)してしまった。


 言っていてじわじわと熱くなってきた。

 自分がとんでもないことを言っていることはよくわかっている。


 でもそれしか考えられなかったんだ。


 自分は、まあ怖くはあるけど嫌という訳じゃないし、ノルヴィス様が望むなら。


 と思い顔をあげる。

 未だに絶句の表情のまま固まっていた。



 やがて口が動く。


「……お前は、俺とするのは呪いを解くためなのか? そのために体を捧げるというのか?」


 その言葉にハッとした。


 そうだ。

 いくら自分が嫌じゃないと言っても彼の気持ちが同じだなんて分からないだろうに。



「……っ!」


 一気に後悔が押し寄せてくる。

 これではノルヴィス様が嫌っていた地位に群がる女性たちと同じになってしまうではないか。


 自分だけはそうではないと証明してみせなくてはいけなかったのに……。



 なんで気が付かなかったのだろう。


 ぎりりと口の中を噛んだ。


「だが俺は……」


 ノルヴィス様の言葉を聞く前にアコニに頼んで睡眠毒をだし、肩に置かれた手を振り払って走り出す。


 彼に拒絶(きょぜつ)されるのが怖かった。

 拒絶の言葉を聞くのが怖かった。


 だから逃げ出したのだ。


(ごめんなさい……)


 彼の好意は私のそれとは違ったのだ。

 だから拒まれた。


 ぽろぽろと涙を零しながら夜の廊下を走っていく。

 いつもより冷たいような空気が私を責めているようだった。



ここまでお読みいただきありがとうございました!


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